[ゆけむり通信 番外1998]

8/6/1998
『エクスカリバー〜美しき騎士たち〜』
『シトラスの風』

ディズニー・アニメ的様式美

 宝塚宙(そら)組の東京お披露目公演。
 第 1部のミュージカルも第 2部のレヴューも、なかなかに楽しかった。

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 第 1部のミュージカル『エクスカリバー〜美しき騎士たち〜』は、ディズニー・アニメ『王様の剣 THE SWORD IN THE STONE』でも知られる、アーサー王の残した伝説の聖剣エクスカリバーをめぐる物語。

 アーサー王が戦に敗れて命を落としてから数百年。リチャード王によって再び統一され安泰だったブリタニアは、ヘンリー率いるサクソンの攻撃を受ける。リチャードは戦死し、王の証である聖剣エクスカリバーはヘンリーの手に渡るが、生まれて間もない王子エドワードは従者の手により城外に連れ出され、素性を知られぬままスタイン卿に拾われる。

 ここまでを、狂言回しの吟遊詩人を使ってユーモラスに、そして一気に説明してしまう。
 この手法、最近では『ワンス・アポン・ア・マットレス ONCE UPON A MATTRESS』でも使われていたが、物語の背景や登場人物を簡潔に説明するという本来の役割と同時に、“おとぎ話”感を強調するという効果もある。
 ブロードウェイ、ハリウッドのミュージカルに精通した小池修一郎(作・演出)ならではのオープニングだ。
 もちろんここには、いつもの宝塚のパターン通りに全員出演のショウ場面も盛り込まれている。

 以下ストーリーは、エドワードの正体がいつ本人や周囲にわかり(エクスカリバーは石の台座に刺さっていて真の王にしか抜けない)、どうやってヘンリー(+その甥クリストファー)を倒すのかという興味に沿って運ばれていく。
 サブ・ストーリーとして、エドワードと、反ヘンリー派のサクソン貴族の娘との恋や敵役クリストファーの横恋慕、育ての親スタイン卿の実子ブラッドとの確執、両陣営にいる魔法使い同士の対決などがうまく組み込まれていて、意外性はないが飽きることもない。
 とにかく、オープニングで示された“おとぎ話”感のせいで、観客としては、たいていのことは OK な気分になってしまう。

 その OK 気分を殺がないように、場面はテンポよく変わり、暗転に頼らない装置の転換も鮮やか。ダンス場面もふんだんに盛り込まれ、さらに殺陣までもダンス的で、いやが上にも華やかさが増す。
 そうしたことも含めて一切が、ちょうどディズニー・アニメの世界のように健康的な、様式美とでも呼びたいような筆致で描かれる。おそらく、宙組という新たな組、及び新トップ・スター姿月あさとの清廉なイメージを強調する意図もあってのことなのだろう。

 と、ここまで肯定的に書いてきたが、最後にひと言。
 ブロードウェイ、往年のハリウッド、ディズニーなどの手法の宝塚的展開。それはそれでいいのだが、新組誕生と新王誕生とを重ね合わせてみせるというだけの視線は、あまりにも内輪で閉じられ過ぎてはいないか。予定調和の生ぬるさの中で手法の引用のうまさだけが際立つというのも、何かもの足りない。
 それが、唯一この舞台に対して僕が感じた不満だが、この不満、はらんでいる問題は決して小さくないとも思う。

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 第 2部のレヴュー『シトラスの風』は、作者(作・演出/岡田敬二)の気迫を感じる力作。

 中で最も印象に残ったのが、花總まりを中心にした娘役たちによる「花占い」の景。無邪気な少女たちが花占いに興じるという設定の、けっこう長いダンス・ナンバーだが、見かけの可憐なイメージに反してかなりハードな振付。特に中盤の“その場跳び”の連続は、観ているこちらの息が切れそう。それをニコニコしながら踊り続ける彼女たちの力量。感動です。
 プログラムによれば 84年の作品のリメイクらしい(オリジナル振付/司このみ、新振付/名月かなで)が、こういうものなら大歓迎だ。

 やはり同じ振付によるリメイクだという「誕生」の景も、量的にはハイライトのひとつだったが、こちらは、社会問題に対する抽象的な主張が前面に出過ぎて面白味に欠けた。意欲はわかるが、このレヴェルでは思いつきの域を出ない。
 とは言え、この場面を含めて全体に、様々な手法を試しつつ宝塚の枠を広げようという志の高さが感じられ、見終わっての印象は清々しかった。

(11/8/1998)

Copyright ©1998 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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