[ゆけむり通信 番外1997]

8/20/1997
『誠の群像 新選組流亡記』
『魅惑U ネオ・エゴイスト!』

どこまでも男臭い新選組ミュージカル

 宝塚星組の東京公演。
 第1部は、男役主体の宝塚が行くところまで行ったひとつの典型だろう。

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 第1部『誠の群像 新選組流亡記』は、新選組の土方歳三(麻路さき)を主人公にしたミュージカル。プログラムには、司馬遼太郎「新選組血風録」を参考にした、とあるが、大筋は明らかに「燃えよ剣」(の中盤、新選組結成以降)に則っている。
 ドラマの展開は多少荒っぽいが、それが結果的にテンポのよさを生みだし、現代的な感覚のショウ場面ともうまく溶け合って、面白い舞台になった。

 印象的だったショウ場面は2箇所。

 まずは幕開きの、大階段を使った新選組隊士勢ぞろいのダンスから、舞妓と大原女の舞う華やかな京都への流れ。
 強いビートに乗った凄みのある迫力たっぷりの男性的なナンバー(振付/藍エリナ)から、一転して柔らかな日本舞踊系のナンバー(振付/花柳芳次郎)への転換が鮮やか。それが同時に、洗練された京の都に乗り込んできた無骨な粛正集団新選組の異質感を表していて、この舞台全体のムードを決定してもいる。うまい。

 もうひとつは、土方の孤独な心象風景をダンスで描いた「鬼」の場面(振付/藍エリナ)。
 鬼たちが土方を巻き込んで繰り広げる、シャープな感覚の緊迫感あふれるダンス・ナンバーは、この作品最大の見せ場と言ってもいい。赤と黒の衣装(有村淳)も、暗い照明の中、鮮やかに映えた。
 それまでの流れとは無関係に突然登場する主人公の内面世界だが、繰り返し出てくるモノローグが伏線になっていたのか、違和感はなく、描かれ方に混乱のある土方のキャラクターを絞り込む意味でも重要な場面となった。

 ストーリーは――。
 隊の空気を乱す筆頭局長・芹沢鴨(立ともみ)を粛正し、盟友近藤勇(千秋慎)を表看板に押し立てた土方歳三は、違反者は例外なく切腹という隊規“局中法度”を背景に、武闘集団新選組の結束を固めていく。が、池田屋事件(階段落ちこそなかったが、回り舞台を使った立ち回りはよく工夫されていた)あたりをピークに時代の趨勢から取り残され始めた新選組は、大政奉還以降は賊軍となった旧幕軍に合流して退却戦を余儀なくされる。近藤、沖田総司(絵麻緒ゆう)らを失いながらも志を曲げないことで最後まで武士であろうとした土方は、徹底抗戦を主張。追いつめられた函館・五稜郭から単身打って出て、壮絶な死を遂げる。

 この土方の半生を、他の隊員のエピソードを飛び石的に並べることで描き出していくのだが、勝海舟(紫吹淳)を半ば狂言回しにしながら、その勝と交流のあった新選組の山南敬助(稔幸)の悲劇を一貫したサイド・ストーリーとして流すことで、バラけそうな全体をつなぐ脚本は、巧みだ。
 ただし――。
 自分が冷酷な鬼になることで新選組をまとめようとする土方が、実は紫陽花や俳諧を愛する風流人だったというのは、その優しさを証言する武家娘・お小夜(月影瞳)の存在がかなりフィクション然としてご都合主義に見えるため、説得力を欠く。それが、ひいては土方のキャラクターの混乱を招いていた。
 司馬作品に描かれたニヒルなストイックさをたたえた土方像を生かしたまま、ある種センチメンタルな恋愛を絡めるのは、やはり至難の技。お小夜の設定に、より深い因縁が必要だったのではないか。

 役者は、麻路、稔(榎本武揚との2役)、紫吹、絵麻緒、それぞれが柄を生かして好演。黒田了介役の湖月わたるも、薩摩弁の不自然さが気になったものの、スケールの大きさは魅力的。このくらい層が厚いと安心なんですが、5組になったらどうなるのやら。
 その他、むずかしいと思われる近藤役を千秋慎がおおらかに演じて、全体を支えていたと思う。

 実は、隊士・加納惣三郎(彩輝直)をめぐる男色騒ぎの扱いに少しばかり疑問を感じたのですが、それは近いうちに別項で。

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 第2部のレヴュー『魅惑U ネオ・エゴイスト!』は、例えば「ビギン・ザ・ビギン」などでオーソドックスなスケールの大きいレヴューの再生を試みたりしていて、全体には楽しく観たが、どうにも衣装が野暮ったくて、ずいぶん印象を悪くしていた。

 中で、印象に残ったのは、希佳を中心にした男役連がゴールドのレオタード姿で脚線美を見せた「スーパー・ロケット」の場面。
 年季の入った人たちは、ロケッツ・ダンスをやってもさすがに違う。こういう芸がもっともっと観たいなあ。
 

(9/1/1997)

Copyright ©1997 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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