[ゆけむり通信 番外2014]

  • 4/7/2014
    『悪名〜ザ・バッドボーイズ・リターン!〜』
    紀伊國屋サザンシアター
  • 4/15/2014
    『ラスト・タイクーン〜ハリウッドの帝王、不滅の愛〜』『タカラヅカ夢眩』
    東京宝塚劇場
  • 4/16/2014
    『パン屋文六の思案〜続・岸田國士一幕劇コレクション〜』
    青山円形劇場
  • 2/11/2014
    『鳳凰祭四月大歌舞伎 昼の部(壽春鳳凰祭(いわうはるこびきのにぎわい)/鎌倉三代記(かまくらさんだいき)〜絹川村閑居の場/壽靱猿(ことぶきうつぼざる)〜鳴滝八幡宮の場/曽根崎心中(そねざきしんじゅう))』
    歌舞伎座
  • 4/21/2014
    『鳳凰祭四月大歌舞伎 夜の部(一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)〜檜垣〜奥殿/女伊達(おんなだて)/梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)〜髪結新三)』
    歌舞伎座
  • 5/12/2014
    『團菊祭五月大歌舞伎 夜の部(矢の根(やのね)/極付幡随長兵衛(ばんずいちょうべえ)/春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし))』
    歌舞伎座
  • 5/19/2014
    『五月文楽公演 夜の部(女殺油地獄(おんなころしあぶらのじごく)〜徳庵堤の段〜河内屋内の段〜豊島屋油店の段/鳴響安宅新関(なりひびくあたかのしんせき)〜勧進帳の段)』
    国立劇場小劇場
  • 5/20/2014
    『團菊祭五月大歌舞伎 昼の部(毛抜(けぬき)/勧進帳(かんじんちょう)/魚屋宗五郎(さかなやそうごろう))』
    歌舞伎座
  • 5/21/2014
    『太陽王〜ル・ロワ・ソレイユ〜』
    シアター・オーブ
  • 5/26/2014
    『五月花形歌舞伎 夜の部(伊達の十役)』
    明治座

2014年4〜5月観劇記

 『悪名〜ザ・バッドボーイズ・リターン!〜』(脚本・演出/マキノノゾミ)は、沢田研二主演。“音楽劇”と銘打たれていて、音楽がcoba、振付が南流石、舞台上で演奏するのが柴山和彦(ギター)と熊谷太輔(ドラムス・パーカッション)。
 今東光の同名小説を原作にした映画版が勝新太郎主演・田宮二郎助演で作られたのが1961年。同作を脚色した依田義賢のオリジナル脚本で、以降、続編が文字通り続々作られた。アタマの方の2〜3作を昔(と言ってもリアルタイムではなく)観たが、これが、すこぶる面白い。面白さの源は、一本気+ヴァイタリティでトラブルに体当たりしていく主人公・浅吉(勝)の痛快なキャラクターと、その一の子分を自認するモートルの貞(田宮)及び、貞の死を受けて3作目から登場する貞の実弟の清次(こちらも田宮)との、同志愛的な阿吽の呼吸のやりとりにある、と言っていい。
 今回の舞台版は、その映画版の面白さに負けないくらい魅力的だった。もちろん浅吉は沢田研二。相方の清次は野田晋市。2人とも関西の人なので(ジュリーは京都だが)、言葉はイキイキ。映画版の設定を元にしながらも、オリジナルとして作られた脚本も、よく出来ていて、時にボケをかましながらダイナミックに展開する。殺陣(杉本明朗)も多彩。そして、的確な音楽が、それを盛り立てる。人生は悲しいことが多いけれど、そいつを乗り越えていく力も僕らの中にはあるはず、という気持ちにしてくれる、いい舞台だった。終盤にアカペラで聴かせるジュリーの河内音頭にシビレる(ちなみに、勝新版も絶品)。

 東京宝塚劇場の宝塚歌劇は花組の『ラスト・タイクーン〜ハリウッドの帝王、不滅の愛〜』『タカラヅカ夢眩』。蘭寿とむのサヨナラ公演だ。
 『ラスト・タイクーン』(脚本・演出/生田大和)の原作は、F・スコット・フィッツジェラルドの未完の小説(遺作)。1930年代のハリウッドを舞台に、若き天才プロデューサー、モンロー・スターの映画作りに懸ける情熱を描く、といった内容で、鍵になるのは、かつて愛し合い突然亡くなった女優にそっくりの女性キャサリンとの愛。そこに、撮影所内の権力争いと労働争議が絡む。で、労働争議の中心人物の1人がキャサリンの同棲相手であったり、権力争いの相手(かつての同志)の娘が大学で労働問題を学ぶと同時にモンローを愛していたり、と、一筋縄ではいかない要素が複雑に入り組んで、モンローの運命は急展開していく。まあ、そうした諸々が結局は蘭寿とむの“宝塚最後の舞台”という“想い”と二重写しになっていくのは歌劇団の“お約束”で……。なので、胸にポッカリ穴の開いたような寂しさに襲われかねないドラマの最後も、モンロー(=蘭寿とむ)は「すごい人だったね」というカタルシスに変わる。個人的には、これでOK(笑)。
 ショウ『タカラヅカ夢眩』(作・演出/齋藤吉正)は、終盤の白一色の娘役たちの群舞から、おなじみ黒い盛装の男役たちの群舞へ、という流れが印象的だった。
 蛇足ながら、専科に移る華形ひかるの今後の活躍を期待します。

 ナイロン100℃の青山円形劇場での公演『パン屋文六の思案〜続・岸田國士一幕劇コレクション〜』は、ミュージカルではないが、つなぎに音楽をうまく使っていて面白い。
 個人的に、これまでは戯曲の賞の冠として名のみ知っていた岸田國士。彼の書いた7つの戯曲を、ケラリーノ・サンドロヴィッチ(潤色・構成・演出)が、分断して並べ替え、全体が不思議に重層的に見えてくる、魅力的な舞台に仕立て上げていた。漠然と漂う戦争前夜の気分は、意図的だったんだろう。個別に役者をどうこう言う舞台ではないが、それでも、「恋愛恐怖病」の緒川たまきにはグッと来た。

 4月の歌舞伎座は『鳳凰祭四月大歌舞伎』。先月同様の“鳳凰祭”。歌舞伎座松竹経営百年と先人の碑建立一年を記念して、という松竹さんのご事情による命名(笑)。
 昼の部は、「壽春鳳凰祭」「鎌倉三代記〜絹川村閑居の場」「壽靱猿〜鳴滝八幡宮の場」「曽根崎心中」。 夜の部は、「一條大蔵譚〜檜垣〜奥殿」「女伊達」「梅雨小袖昔八丈〜髪結新三」
 個人的な見どころは、病欠していた三津五郎が復帰した「壽靱猿」と、「髪結新三」の彌十郎の大家、……が、まあ順を追って。
 「壽春鳳凰祭」は“歌舞伎座新開場一周年記念”と銘打った、おめでたい踊り。時蔵、扇雀、橋之助、錦之助、梅枝、新悟、萬太郎、隼人、それに後から、我當、進之介親子が、宮中の人々として登場する。我當の足の調子はどうなのだろう。いつまで舞台に立てるのか、心配。
 「鎌倉三代記」は、実は実は、が連続する入り組んだ、歌舞伎の時代物らしい面倒臭い話(笑)。藤三郎実は佐々木高綱=幸四郎、時姫=魁春、三浦之助義村=梅玉、母長門=歌江、富田六郎=桂三、藤三郎女房おくる=歌女之丞。歌右衛門の弟子だった歌女之丞が、この公演から幹部俳優に。おめでとうございます。夜の部にも登場するが、どちらも自害する役(笑)。
 「壽靱猿」は、狂言が元になった、猿回しの猿を巡って女大名と猿回しとがやりとりをするユーモラスな踊り。猿回しが三津五郎、女大名が又五郎、その家来が巳之助。そして、猿が、歌舞伎の家とは関係のない(と思われる)子役。これを2人(男女)が交代で演じていたが、この子(観た日は、たぶん男の子の安藤然クン)が、うまかった、というか、うまく振付けているのだろう。面白い動きをして大ウケ。とはいえ、もちろん一番ウケていたのは復帰した三津五郎。ひと足遅れて花道から登場、七三のところで思い入れたっぷりに客席を見渡すと、満場の拍手。僕もウルッと来た。でもって、素晴らしい踊り。又五郎も気合いが入っているように見えたし、巳之助も精進してうまくなっている気がした。
 「曽根崎心中」は、“坂田藤十郎一世一代にてお初相勤め申し候”という但し書き付き。藤十郎のお初、翫雀の徳兵衛。敵役九平次は橋之助、徳兵衛の伯父平野屋久右衛門が左團次、お初を抱える天満屋惣兵衛が東蔵、下女お玉はもちろん藤十郎一門の寿治郎(じゅうじろう)。初めて藤十郎の「曽根崎心中」を観た時には、くどいなあと思ったけど、近頃は、うまいなあと思うようになった。翫雀もいい。橋之助も憎憎しくて、いい。
 「一條大蔵譚」も、時代物なので、実は実は、と畳みかけてくるが、こちらはけっこう楽しい。と言うのも、阿呆のふりをする大蔵卿のキャラクターが面白いからで、吉右衛門のハマり役。ただし、吉岡鬼次郎役が梅玉であることが多いのが、やや難。もちろん下手なはずもないが、もうちょっと溌剌とした感じがほしい気がする。鬼次郎女房お京が芝雀、常盤御前が魁春、死んでも褒美の金が欲しい八剣勘解由が由次郎、その女房で自害する鳴瀬が歌女之丞。
 「女伊達」は、吉原が舞台の踊り。女伊達は時蔵。これに絡む男伊達が松江と萬太郎。気風のいい踊りで、すっきりする。
 「髪結新三」は、おなじみ黙阿弥の人気狂言の1つ。勘三郎の新三はパキパキしていて気持ちよかったが、幸四郎の新三は、勘三郎より幾分かユーモラスな方に振れている感じ。子分の下剃勝奴が錦之助で、こちらは初役だと思うが、はしっこさが少し足りない気がした。他は、弥太五郎源七=歌六、白子屋手代忠七=橋之助、白子屋娘お熊=児太郎、白子屋後家お常=秀太郎、新三を呼びに来る丁稚長松=金太郎。……と来て、家主長兵衛が彌十郎、その女房おかくが萬次郎。この夫婦が強力。ことに彌十郎の大家は、柄が大きくて最高。

 5月の歌舞伎座は『團菊祭五月大歌舞伎』。歌舞伎座、と言うか、東京での團菊祭は6年ぶり。今回は“十二世市川團十郎一年祭”と銘打たれていて感慨深い。
 昼の部は、歌舞伎十八番の「毛抜」「勧進帳」と、「魚屋宗五郎」。夜の部は、これまた歌舞伎十八番の「矢の根」と、「極付幡随長兵衛」「春興鏡獅子」
 「毛抜」は、この演目を明治になって復活させた二世左團次にちなんでということだろう、当世左團次の粂寺弾正で上演。弾正の陽性なキャラクター+謎を論理的に解明する本格ミステリー仕立て、という楽しい演目で、左團次が神妙に演じているのが余計面白かった。梅枝が腰元巻絹で登場。相変わらず可憐。他に、團蔵、権十郎、友右衛門、秀調、松江、巳之助、廣松、男寅。
 「勧進帳」は、海老蔵の弁慶に菊之助の富樫。つまり、未来の團菊。いい。義経が芝雀。四天王は、市蔵、亀三郎、亀寿、萬太郎。
 「魚屋宗五郎」は、もちろん菊五郎の宗五郎。素晴らしすぎて言葉もない。女房おはまは時蔵、父太兵衛は團蔵、小奴三吉が幹部昇進の(坂東→市村)橘太郎、召使おなぎは梅枝。あと、殿様=錦之助、家老=左團次。
 「矢の根」で主役の曽我五郎を演じるのは松緑で、こういう、型のはっきりした荒事は似合う。他に、権十郎、田之助、橘太郎。
 「極付幡随長兵衛」は海老蔵の幡随院長兵衛。劇中劇「公平法問諍」の途中で喧嘩沙汰が起こって、止めるために長兵衛が(ホントの)客席から舞台に上がってくる。その後姿が團十郎そっくりに見えて、おおーっ、と思ったが、セリフが始まると、(当たり前だが)やっぱり海老蔵で、ちょっと肩透かし(笑)。というわけで、まだまだだが(ことに自宅での家族との別れの場面等)、それでも、水野十郎左衛門の屋敷に行ってからは、けっこう様になっている。水野十郎左衛門が菊五郎、女房お時が時蔵、唐犬権兵衛が松緑、という具合に、新團十郎となるはずの海老蔵の周囲を菊五郎劇団が固める形。長兵衛子分の道化役・出尻清兵衛の男女蔵が案外ハマってるな、と思ったら2度目だった。
 「春興鏡獅子」は踊りで、“新歌舞伎十八番”の1つ。江戸城の新年の余興で、小姓弥生が将軍の前で踊りを披露させられることになる、という設定で、その場に飾られた秘蔵の獅子頭のせいで、後半、弥生が獅子の精に変身して現れる。前半の女形としての踊りと後半の勇壮な獅子の踊りを同じ役者が演じるところが見どころ。で、今回の小姓弥生→獅子の精は菊之助。素晴らしい、のひと言。

 国立小劇場の『五月文楽公演』は、国立文楽劇場開場30周年記念、かつ、七世竹本住大夫引退公演だけれども、住大夫が出るのは昼の部のみ。で、観たのは夜の部(笑)。
 演目は、「女殺油地獄〜徳庵堤の段〜河内屋内の段〜豊島屋油店の段」「鳴響安宅新関〜勧進帳の段」
 「女殺油地獄」は以前にも観たが、今回、幕開きの歌が祭囃子的なのに気づいた。それも含めて、全体に現代的な空気が濃厚な演目。面白い。
 「鳴響安宅新関」は、初めてだったが、歌舞伎の「勧進帳」とほぼ同じ。大人数の太夫が並ぶし、弁慶の踊りも含め、なかなか楽しい。

 シアター・オーブでの宝塚歌劇星組公演『太陽王〜ル・ロワ・ソレイユ〜』
 脚本・演出/木村信司、となっているが、元は10年前に初演されたフランス産ミュージカルで、作詞がライオネル・フローレンス Lionel Florence とパトリス・ギロン Patrice Guirao というコンビ。作曲者は複数いるようだ。木村信司の脚本は“脚色”なのだろうが、どこまで手が入っているのか……。
 “太陽王”と呼ばれたルイ14世の半生、ってことだが、幼くして王になったルイ14世(柚希礼音)が実権を母(万里柚美)と枢機卿(十輝いりす)から取り戻すまでを描いた第1幕は、枢機卿の姪マリー(綺咲愛里)との恋物語と相まって、面白く出来ている。が、第2幕は話が拡散気味。后となるマリー=テレーズ(優香りこ)との関係も描き方が物足りないし、鉄仮面伝説の元となった従兄ボーフォール(真風涼帆)の存在も、ドラマとしては空回り。唯一、愛人モンテスパン夫人(壱城あずさ)の悪役ぶりがイキイキしていたぐらいか。全体を通しても、劇作家モリエール(瀬稀ゆりと)の狂言回しが、役割りとして、王の弟ムッシュー(紅ゆずる)と微妙に被って、ちょっと疑問だった。最大の疑問は、娘役トップの夢咲ねねが出ていなかったことだが。
 ともあれ、幕開きの柚希礼音のたっぷりのソロ・ダンスに始まって、ショウとしての見どころは豊富。ま、星組だから当然か(笑)。しかし、銀橋がないと何か不完全燃焼感が残りますね。

 明治座は染五郎がメインの『五月花形歌舞伎』で、夜の部は「伊達の十役」(ちなみに、昼の部はパス)。
 顔を紅葉のように真赤にし大汗をかいて演じる、という意味で「慙紅葉汗顔見勢(はじもみじあせのかおみせ)」という元々のタイトルの付いたこの演目、先代猿之助(現猿翁)が、七世市川團十郎が演じて大当たりをとったと言われる鶴屋南北の同作の数少ない資料を元に、奈河彰輔の協力を得て、ほぼ新作として復活させたというもの。タイトルの通り十役を主演役者が1人で演じる。以前に海老蔵版を観たが、今回は“市川染五郎十役早替り宙乗り相勤め申し候”。
 伊達騒動をネタ元にした「伽羅先代萩」を下敷きに、ケレン味たっぷりに脚色してあり、早替りを中心に視覚的な面白さで見せていく作品だが、真ん中に「伽羅先代萩」で最も有名な政岡の“飯(まま)炊き”を、そのまま持ってきていて、この“古典の名作”部分があるために全体が締まる、と、そんな風に見える。 染五郎は、海老蔵のようなスケールの大きさはないが、きっちりした演技と、生来の愛嬌(というか色気というか)でもって、最後まで引っぱっていく。ちなみ、“飯炊き”後の仁木弾正の花道の引っ込みが“宙乗り”になるのだが、3階席に座っていた僕にまっすぐ向かってきてドキドキした(笑)。
 役者は他に、高麗蔵、亀鶴、壱太郎(!)、種之助、米吉、廣太郎、隼人、児太郎、吉之助、錦吾、桂三、竹三郎、歌六、秀太郎。

(8/24/2014)

Copyright ©2014 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

[ゆけむり通信 番外2014]
TITLE INDEX(domestic)


[HOME]