[ゆけむり通信 番外2013]

  • 2/ 6/2014
    『二月花形歌舞伎 昼の部(心謎解色糸(こころのなぞとけたいろいと)~小糸左七・お房綱五郎)』
    歌舞伎座
  • 2/ 7/2014
    『二月花形歌舞伎 夜の部(青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)~白浪五人男)』
    歌舞伎座
  • 2/11/2014
    『二月文楽公演 第一部(七福神宝の入舩(しちふくじんたからのいりふね)/近頃河原の達引(ちかごろかわらのたてひき)~四条河原の段~堀川猿廻しの段)』
    国立劇場小劇場
  • 2/11/2014
    『二月文楽公演 第二部(染模様妹背門松(そめもよういもせのかどまつ)~油店の段~生玉の段~質店の段~蔵前の段)』
    国立劇場小劇場
  • 2/11/2014
    『二月文楽公演 第三部(御所桜堀川夜討(ごしょざくらほりかわようち)~弁慶上使の段/本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)~十種香の段~奥庭狐火の段)』
    国立劇場小劇場
  • 2/20/2014
    『眠らない男・ナポレオン~愛と栄光の涯(はて)に~
    東京宝塚劇場
  • 3/6/2014
    『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)~車引』『處女翫浮名横櫛(むすめごのみうきなのよこぐし)~切られお富』
    国立劇場大劇場
  • 3/10/2014
    『鳳凰祭三月大歌舞伎 夜の部(加賀鳶(かがとび)~本郷木戸前勢揃いより赤門捕物まで/勧進帳/日本振袖始(にほんふりそではじめ)~大蛇退治』
    歌舞伎座
  • 3/13/2014
    『空ヲ刻ム者~若き仏師の物語~
    新橋演舞場
  • 3/20/2014
    『鳳凰祭三月大歌舞伎 昼の部(壽曽我対面(ことぶきそがのたいめん)/身替座禅(みがわりざぜん)/封印切(ふういんきり)/二人藤娘(ににんふじむすめ)』
    歌舞伎座

2014年2~3月観劇記

 2月の歌舞伎座は『二月花形歌舞伎』で、昼夜それぞれが通し狂言。昼の部は、南北の「心謎解色糸~小糸左七・お房綱五郎」、夜の部は、黙阿弥の「青砥稿花紅彩画~白浪五人男」
 「心謎解色糸」は、副題にある、小糸(芸者)と左七(鳶)、お房(糸屋の娘)と綱五郎(武士)、それに加えて、九郎兵衛とお時(悪人夫婦。お時はお房の姉)、という3組の男女の色恋がドラマの一方の筋。そこに、お得意の“紛失(ふんじつ)いたせし家宝”の行方が絡む。南北ならではのドロドロな気分も濃厚で、子殺しがあったりもするが、申し訳ないことに、けっこう面白い(笑)。
 左七と九郎兵衛を染五郎、お房とお時を七之助、と善玉・悪玉の一人二役が2組あり、それぞれに早替わりの趣向もあって、それが最大の見どころか。小糸は菊之助、綱五郎は松緑。悪事の中心人物、山住五平太が松也。お房に横恋慕する番頭佐五兵衛が、適役の松之助。
 他に、秀太郎、歌六、高麗蔵、男女蔵、錦吾、松江、歌昇、萬太郎、米吉、廣松、玉太郎、宗之助。
 ごぞんじ「白浪五人男」は、菊之助を観る舞台。演じる役は、もちろん弁天小僧菊之助(と最後に青砥左衛門藤綱)。いやあ、ようございました。
 五人男は、日本駄右衛門=染五郎、南郷力丸=松緑、赤星十三郎=七之助、忠信利平=亀三郎、という顔ぶれ。亀三郎は、いずれは羽左衛門を継ぐことになるんですかね。
 騙されて殺される千寿姫の梅枝が変わらずよかった他に、浜松屋の場で、團蔵(浜松屋幸兵衛)、(尾上)右近(浜松屋倅宗之助)、亀寿(鳶頭清次)、藤間大河(丁稚長松)に加えて、なくてはならない番頭役で橘太郎、五人男の一味の下見役で菊十郎が出ていて盛り上がる。

 国立劇場小劇場は『二月文楽公演』
 第一部が「七福神宝の入舩」「近頃河原の達引~四条河原の段~堀川猿廻しの段」。第二部が「染模様妹背門松~油店の段~生玉の段~質店の段~蔵前の段」。第三部が「御所桜堀川夜討~弁慶上使の段」「本朝廿四孝~十種香の段~奥庭狐火の段」。10時間マラソン観劇で、3分の1ぐらいはウトウトしてました(笑)。
 面白かったのは、“お染久松”として知られる「染模様妹背門松」「油店の段」。登場人物が入れ替わり立ち替わりでにぎにぎしく(太夫の声の使い分けも楽しい)、ギャグも満載。後の悲劇とは対照的だ。「本朝廿四孝」「奥庭狐火の段」の人形遣いもアグレッシヴで面白い。

 東京宝塚劇場の星組公演は、『眠らない男・ナポレオン~愛と栄光の涯(はて)に~』
 作・演出は小池修一郎。この人の場合、宝塚向けに脚色したものは出色の出来の場合が多いのだが(代表が『エリザベート ELISABETH』)、オリジナルはイマイチな印象。今作も1部2部通しの“大作”だが、ドラマ(ことに人物造形)といいショウ場面といい、物足りない。作曲は『ロミオとジュリエット ROMEO & JULIETTE』(宝塚版は小池修一郎の脚色・演出)のジェラール・プレスギュルヴィック Gerard Presgurvic で、大仰すぎるところがあるものの、けっこう流麗なメロディを書いている。が、残念ながら、乗せる歌詞(小池修一郎)が音楽的でない。テーマ曲(「眠らない男」)は悪くないが。
 というわけで、作品としては首を傾げるが、例によって、柚木礼音以下、今一番勢いのある星組の面々が、カッコいい舞台に仕上げている。ご贔屓、紅ゆずるは難しい役どころを、重くなりすぎず、ある種、軽妙にこなしていた。

 国立劇場の歌舞伎は、『菅原伝授手習鑑~車引』『處女翫浮名横櫛~切られお富』で、萬屋中心の公演。
 お馴染み『車引』は、松王丸=錦之助、梅王丸=萬太郎、桜丸=隼人、杉王丸=國矢、藤原時平=秀調。萬屋の若手の勉強会的舞台だが、萬太郎(時蔵の次男)も隼人(錦之助の長男)も、がんばっていた。
 『切られお富』(河竹黙阿弥作、国立劇場文芸研究会補綴)は、“切られ与三郎”(Do you know 春日八郎「お富さん」?)として知られる『与話情浮名横櫛』(三世瀬川如皐作)の“変奏曲”。男と女の立場が入れ替わるぐらいなのかと思っていたら、かなり感触が違う。元ネタの方はいろいろありながらもハッピーエントだけれども、こちらは、与三郎を助けたお富は追手に捕まる。全体に、黙阿弥らしい悪人たちの話になっている。なにしろ、お富は、与三郎を助けるために弁天小僧ばりに強請りを働いたりして、そこが見せ場でもある、という風な内容。
 お富=時蔵なのだが、期待したほどの色気が感じられず、やや肩透かし。むしろ、蝙蝠安=彌十郎が全体を支えるほどよかった。“切られ与三郎”では脇に回る(とはいえ見せ場はある)蝙蝠安だが、こちらでは、お富の運命を左右する重要な役になっている。ちなみに、与三郎は錦之助。『切られお富』の与三郎は、どちらかと言えば真面目な侍なので、まあ、合ってると言えば合っていた。

 歌舞伎座は『鳳凰祭三月大歌舞伎』。“鳳凰祭”ってのは、歌舞伎座松竹経営百年と先人の碑建立一年を記念してのことだとか。身内のお祝いってことか。
 演目は、昼の部が「壽曽我対面」「身替座禅」「封印切」「二人藤娘」、夜の部が「加賀鳶~本郷木戸前勢揃いより赤門捕物まで」「勧進帳」「日本振袖始~大蛇退治」
 観た順に言うと、夜の部から――。
 「加賀鳶」の序幕第一場は、喧嘩に行こうとする鳶連中に扮する威勢のいい役者がズラッと並んで次々に啖呵を切るのが気持ちがいい、という(だけの)場で、その後のドラマとほとんど関係がない。唯一、鳶の1人、日蔭町松蔵が両方に登場するのが繋がりと言えば繋がり。序幕第二場以降は、外題に“盲長屋梅加賀鳶”とあるように(別の意味も含むようだが)、盲長屋に住まう按摩竹垣道玄を主人公にした黙阿弥の悪人世界に入っていく。ところで、そんな前半と後半だが、実は、前述の日蔭町松蔵以外に別の位相での共通点がある。喧嘩に行こうとする鳶連中を止める役で、親分格の天神町梅吉という鳶が出てくるのだが、この役と後半の竹垣道玄とを同じ役者が演じる。初めて観た時には(菊五郎だったが)、しばらく両者が同じ役だと思って観ていた。その天神町梅吉と竹垣道玄が、今回は幸四郎。お得意の“河内山”を軽く演じたという感じか。道玄の情婦の女按摩お兼が秀太郎。日蔭町松蔵が梅玉。鳶連中が、(花道の並び順に)橋之助、児太郎、勘九郎、松江、歌昇、廣太郎、種之助、桂三、由次郎、高麗蔵、友右衛門、左團次。道玄の女房が歌女之丞、その姪お朝が宗之助、お朝の奉公先伊勢屋主人が錦吾。
 「勧進帳」は、吉右衛門の弁慶に菊五郎の富樫。義経は藤十郎。四天王は、歌六、又五郎、扇雀、東蔵。太刀持で松江の長男(東蔵の孫)玉太郎が出ていた。
 「日本振袖始」は、玉三郎が岩長姫実は八岐大蛇(途中で変身)を演じるダイナミックな踊り。生贄になる稲田姫が米吉(可憐)。素盞嗚尊(すさのおのみこと)が勘九郎(体のキレが素晴らしい)。
 昼の部は――。
 「壽曽我対面」は、曽我五郎=橋之助、曽我十郎=孝太郎、工藤祐経=梅玉、舞鶴=魁春、大磯の虎=芝雀、化粧坂少将=児太郎、鬼王新左衛門=歌六、近江小藤太=松江、八幡三郎=歌昇。
 「身替座禅」は、菊五郎(山蔭右京)と吉右衛門(奥方玉の井)。太郎冠者が又五郎、侍女が壱太郎と(尾上)右近。ここは吉右衛門の奥方が見どころなんだと思うが、菊五郎のうまさにばかり目が行く。あと、可憐な壱太郎にも(笑)。
 「封印切」は、忠兵衛=藤十郎、梅川=扇雀、八右衛門=翫雀、という山城屋・成駒屋親子と、井筒屋おえん=秀太郎、槌屋治右衛門=我當、の松嶋屋兄弟、すなわち関西歌舞伎勢揃いの舞台。長い間、藤十郎は苦手にしていたが、ここに来て、やっぱうまいなあ、と思ってしまう。まあでも、好みで言うと、翫雀と秀太郎。ことに、翫雀の憎まれ役は、柔らか味もあって、いい感じ。
 「二人藤娘」は玉三郎の当たり芸。今回の藤の精は玉三郎と七之助。愛嬌たっぷりに踊って、七之助のみならず玉三郎も可憐(!)だった。

 新橋演舞場は、スーパー歌舞伎Ⅱ(セカンド)『空ヲ刻ム者~若き仏師の物語~』(作・演出/前川知大)。先代猿之助(現猿翁)の創始したスーパー歌舞伎のニュー・ヴァージョンというわけだ。
 (四代目)猿之助、門之助、(市川)右近、猿弥、笑也、笑三郎、春猿、寿猿、弘太郎、という澤瀉屋一門に加えて、佐々木蔵之介、福士誠治、浅野和之、という非歌舞伎役者の面々が参加していた。
 “いにしえの日本”(プログラムより)を舞台に、幼馴染である、十和という天才仏師(猿之助)と一馬という頭脳明晰な領主の息子(佐々木蔵之介)が、農民たちの窮状を救いたいという同じ志を抱きながらも、運命に翻弄されて対決に到る、という物語。
 主人公が仏師というアイディアは面白く、その流れで終盤に不動明王が出てきて屋台崩しで見せる展開は、この場面から逆に発想したんじゃないかと思わせる、スーパー歌舞伎ならではの派手さで胸がすくが、残念ながら、いいところは少ない。その不動明王は、十和の師である仏師九龍(右近)が斬り殺された後の魂が乗り移った、という設定なのだが、そういった歌舞伎ならではの大胆な発想は、ほぼ、そこだけ。大部分は、新作歌舞伎にありがちなのだが、辻褄を合わせようとして説明しすぎる感じが強く、同時に説教臭くもある(浅野和之と福士誠治を狂言回し的に使って、そうした雰囲気を解消しようとしていたが、成功にまでは到っていない)。その辺は、以前のスーパー歌舞伎のまま。
 澤瀉屋の面々は、それぞれ、それなりに自分の色を出して、過不足なく役をこなしていた。気になったのは佐々木蔵之介の声。大舞台で、イマイチ届いて来なかった。

(8/24/2014)

Copyright ©2014 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

[ゆけむり通信 番外2014]
TITLE INDEX(domestic)


[HOME]