[ゆけむり通信 番外2013]

  • 1/ 6/2014
    『コンダーさんの恋~鹿鳴館騒動記~
    明治座
  • 1/ 7/2014
    『壽初春大歌舞伎 夜の部(仮名手本忠臣蔵~九段目 山科閑居/乗合船惠方萬歳(のりあいぶねえほうまんざい)/東慶寺花だより)』
    歌舞伎座
  • 1/11/2014
    『三千両初春駒曳(さんぜんりょうはるのこまひき)』
    国立劇場大劇場
  • 1/15/2014
    『真田十勇士』
    青山劇場
  • 1/21/2014
    『壽三升景清(ことほいでみますかげきよ)』
    新橋演舞場
  • 1/23/2014
    『新春浅草歌舞伎(博奕十王(ばくちじゅうおう)/恋飛脚大和往来~新口村(にのくちむら)/屋敷娘~石橋(しゃっきょう))』
    浅草公会堂
  • 1/24/2014
    『壽初春大歌舞伎 昼の部(天満宮菜種御供(てんまんぐうなたねのごくう)~時平の七笑/梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり)~鶴ヶ岡八幡社頭の場/松浦の太鼓/鴛鴦襖恋睦(おしのふすまこいのむつごと))』
    歌舞伎座
  • 1/28/2014
    『シャル・ウィ・ダンス?』『コングラチュレイションズ宝塚!!』
    歌舞伎座

2014年1月観劇記

 明治座の『コンダーさんの恋~鹿鳴館騒動記~は、作・演出/G2、主演/大地真央。鹿鳴館を設計したイギリス人コンダーさん(ほとんど登場しない)に恋した(後に結婚する)、日本舞踊の名取になるはずだった女性、前波くめが主人公。実在だという、くめを中心に、鹿鳴館時代の日本が慌てふためく様子を描いたコメディ。その着想は面白い。
 全体の構成を、ドラマにも登場する勝海舟(江守徹)の回想にしたのは、歴史的背景の説明をしやすくすると同時に、事実の生々しさを和らげる意図もあったのかも。その分、コメディとしては緩くなっているが、明治座だから、これでいいのだろう。ただ、江守徹の滑舌が悪くなっていたことは残念。
 もう1つ残念だったのは、スラップスティック調の追いかけギャグが不発だったこと。ホントに体の動く役者は、日本にはなかなかいない。
 大地真央は変わらぬ華やかさ。コメディが似合う。他に、役者では、アメリカ(系?)娘に扮した牧瀬里穂の天真爛漫な明るさがよかった。大山巌に扮したベンガルの愚直な感じも印象に残る。くめの師匠役の寿ひずるも貫禄で舞台を支えていた。期待した未沙のえるは、役柄(伊藤博文の妻役)にあまり為所がなく、もったいなかった。

 歌舞伎座は『壽初春大歌舞伎』
 昼の部は、「天満宮菜種御供~時平の七笑」「梶原平三誉石切~鶴ヶ岡八幡社頭の場」「松浦の太鼓」「鴛鴦襖恋睦」
 夜の部は、「仮名手本忠臣蔵~九段目 山科閑居」「乗合船惠方萬歳」「東慶寺花だより」
 「時平の七笑」は初めて観る演目。菅原道真(歌六)を、善人の仮面を被って陥れる藤原時平(我當)。最後に時平の高笑いで終わる、という悪役礼賛に見える幕切れが面白い。道真に味方する輝国が進之介、時平の手下玄蕃が錦吾、偽証する唐使が松之助。
 「梶原平三」の梶原は幸四郎。吉右衛門ほどには似合わない。刀を持ってくる六郎太夫は東蔵、娘の梢は福助の代役で高麗蔵、憎まれ役の兄弟は橋之助と錦之助(こういう役もいい)、ギャグを言いに出てくる科人剣菱呑助は秀調。
 「松浦の太鼓」の殿様は吉右衛門。これは適役。楽しい。宝井其角は歌六、大高源吾は梅玉、その妹お縫は米吉。
 「鴛鴦襖恋睦」は踊り。染五郎と、福助の代役で魁春。そして、悪役で橋之助。
 歌舞伎座では、11月、12月と顔ぶれを変えて2か月連続の「仮名手本忠臣蔵」の通し上演だったが、「山科閑居」は、その「九段目」でありながら、そこでは上演されていない。討ち入りの直前に、この辛気臭い話が入ると流れが悪くなるからだと思われる。高師直を討とうとした塩谷判官を松の廊下で止めた加古川本蔵は、そもそも高師直を討とうとしていた若狭之助の家来で、本蔵が師直に賄賂を贈ったせいで師直のいじめの対象が塩谷判官に変わった。ところが、本蔵の娘・小浪は大星由良之助の息子・大星力弥の許嫁である。で、「山科閑居」は、本蔵の後妻である戸無瀬が義理の娘である小浪を嫁がせるために由良之助を訪れる、というところから始まる。この捻りに捻った設定がすごい。話はさらに捻ってあるが、その辺は各自調べてください(笑)。戸無瀬=藤十郎、大星由良之助=吉右衛門、由良之助の妻・石=魁春、小浪=扇雀(福助の代役)、大星力弥=梅玉、加古川本蔵=幸四郎。藤十郎、魁春のやりとりは、やっぱり迫力がある。
 「乗合船惠方萬歳」は、正月らしい、おめでたい踊り。出演は、梅玉、翫雀、彌十郎、橋之助、扇雀、孝太郎(福助の代役)、又五郎、児太郎。
 「東慶寺花だより」は“井上ひさしの小説を新作歌舞伎に!”と謳われていて、文字通り、故・井上ひさしの原作を舞台化したもの。江戸時代、女駆け込み寺である東慶寺周辺で起こるドラマを、戯作者である信次郎(染五郎)が狂言回しとして自らもドラマの渦中に巻き込まれながら見聞していく、という構造の人情話で、3組(半)の男女のあれこれが重層的に織り込まれている。会話による論理劇に傾きがちな井上ひさし物としては、うまく情と論のバランスが取れていたのではないだろうか。夫を愛するが故に駆け込んできて、信次郎を手助けすることにもなる、おせん役が孝太郎、駆け込む女性たちを一時的に世話する宿屋の主人が彌十郎、東慶寺の女住職が東蔵、恐妻から逃げてくるダメ夫が翫雀、妙に色っぽいその恐妻が秀太郎、と、味のある役者が揃う。他に、笑也、松之助、虎之介等。染五郎は狂言回しに向いている、というと本人は気を悪くするだろうか(笑)。適役だった。

 国立歌舞伎の通し狂言『三千両初春駒曳』は、正月恒例の“音羽屋”菊五郎劇団による復活上演で、今回は、辰岡万作作『けいせい青陽■』(■は集に鳥)の改作とか。
 家康亡き後の将軍後継者問題を、時代を変えて織田信長の跡目争いを巡る策謀のドラマに移し替える(しかも、例によって名前は変えてある)、という複雑な手続きを経ているが、わかりにくい話ではない。舞台が高麗にまで及ぶ大風呂敷で、その高麗の姫(菊之助)が日本にまでやって来て活躍をする。
 菊五郎の演じる主人公は、三代将軍家光の甥・松平長七郎(TV番組「長七郎天下ご免!」とか「長七郎江戸日記」の大元ですな)の伝説を取り入れて書かれたという小田三七郎信孝で、信孝が“悪党を切り伏せて三千両の載った馬を曳いて行く<馬切り>の場面”は、単独で上演されてきたらしい。その他、釣天井の大仕掛け等、楽しい見せ場が多いのも、正月の国立ならでは。
 出演は他に、時蔵、松緑、亀三郎、亀寿、梅枝、右近、大河(松緑長男)、竹松(萬次郎長男)、松也、権十郎、萬次郎、團蔵、彦三郎、田之助(元気そうでした)、と菊五郎劇団お馴染みのラインナップ。

 青山劇場の『真田十勇士』は、脚本/マキノノゾミ、演出/堤幸彦。
 映像を多用した、けっこう荒唐無稽な脚本+演出だが、主人公猿飛佐助(勘九郎)の行動(でっかい嘘をついてやろう)の動機が判然としないので、全体がぼんやりしてしまった印象。福田善之『真田風雲録』ほどの説得力がなく、勘九郎の体のキレばかりが際立っていた。期待した真矢みきも、あまり為所がなかった。
 それにしても、プログラム3000円は高すぎ。

 新橋演舞場は、通し狂言『壽三升景清』
 “通し狂言”と言っても、成田屋“歌舞伎十八番”の中から悪七兵衛景清を主人公とする4編「関羽」「鎌髭」「景清」「解脱」をつなぎ合わせたもので、極端に言えば、話の筋は無視してもいい。海老蔵をうっとりと観ていればいい、という舞台(笑)。加えて今回は、獅童もよかった。かなり様になる歌舞伎役者になってきた感じ。
 他に、芝雀、左團次、友右衛門、家橘、右之助、市蔵、新悟、廣松、萬太郎、等。

 『新春浅草歌舞伎』は夜の部のみ観た。演目は、「博奕十王」「恋飛脚大和往来~新口村」「屋敷娘~石橋」
 芝居が始まる前に「お年玉」と題された恒例の年始の挨拶が役者日替わりで行なわれ、観た日は壱太郎。これは偶然だが、今回の浅草の目玉は、個人的には壱太郎。
 「博奕十王」は、猿翁(先代猿之助)の創作舞踊。六道の辻で待ち構える閻魔大王(男女蔵)と獄卒たち(弘太郎、猿四郎)を、博奕打ち(猿之助)が煙に巻くというユーモラスな内容で、猿之助の愛嬌が生きていた。
 「新口村」は、忠兵衛が愛之助、梅川が壱太郎。まだまだかな、壱太郎。可憐だが。忠兵衛の実父・孫右衛門が橘三郎、おしゃべりな忠三郎女房が吉弥。
 「屋敷娘」「石橋」は、それぞれ別の踊り。前者が若手の女形3人で、壱太郎、米吉、梅丸。後者が獅子の精3人で、歌昇、種之助、隼人。若手女形は楽しみな人が多い。

 宝塚歌劇雪組公演『シャル・ウィ・ダンス?』『コングラチュレイションズ宝塚!!』。壮一帆がトップになってからの雪組公演は東京初じゃないか、とmixiの日記に書いたところ、観劇の友NANAさんのご指摘で、昨年夏、『ベルサイユのばら~フェルゼン編~で来ていたのに見逃していたことが判明。残念。
 『シャル・ウィ・ダンス?』は、周防正行監督の同名映画(1996年)を、舞台をアメリカに移し替えてミュージカル化した作品(04年のアメリカ版は未見なため、関連は不明)。主役のサラリーマン、ヘイリー役はもちろん壮一帆だが、この役、舞台ミュージカルでは生かしにくいと思った。もちろん、壮は的確に演じているが。ヘイリーがほのかな恋心を抱く女性ダンス教師エラは、男役2番手の早霧せいな。娘役トップの愛加あゆは、ヘイリーの妻役。未涼亜希は、エラが組もうとする競技ダンス界のトップダンサー、アルバート役。目立ったのは、ヘイリーの会社同僚で密かにダンスを習っているドニー役の夢乃聖夏。
 『コングラチュレイションズ宝塚!!』は、宝塚100周年を意識したショウ。壮一帆、ややお疲れだったか。ともあれ、トップでの舞台を観られて、うれしかった。

(6/23/2014)

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