[ゆけむり通信 番外2013]

  • 6/19/2013
    『杮葺落六月大歌舞伎 第一部(鞘當(さやあて)/喜撰/俊寛)』
    『杮葺落六月大歌舞伎 第二部(壽曽我対面(ことぶきそがのたいめん)/土蜘)』
    歌舞伎座
  • 6/20/2013
    『杮葺落六月大歌舞伎 第三部(御存 鈴ヶ森/助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら))』
    歌舞伎座
  • 6/21/2013
    『戦国BASARA~真田幸村編~』
    シアター・オーブ
  • 6/24/2013
    『シルバー・スプーンに映る月』
    東京グローブ座
  • 6/27/2013
    『ダウンタウン・フォーリーズ Vol.9』
    シアター1010
  • 7/ 2/2013
    『天使はなぜ村に行ったのか』
    サンシャイン劇場
  • 7/ 9/2013
    『七月花形歌舞伎 昼の部(加賀見山再岩藤(かがみやまごにちのいわふじ))』
    歌舞伎座
  • 7/11/2013
    『七月花形歌舞伎 夜の部(東海道四谷怪談)』
    歌舞伎座

2013年6~7月観劇記

 6月の歌舞伎座は『杮葺落六月大歌舞伎』
 第一部は、「鞘當」「喜撰」「俊寛」と、“漢字二文字で統一してみました”的演目が並ぶ。
 「鞘當」は、橋之助と勘九郎の“鞘當”に魁春が絡む、見得の連続のような出し物。
 「喜撰」はユーモラスな踊りで、喜撰法師は三津五郎。絡む女形が時蔵。加えて、所化(小坊主)が登場するが、杮葺落らしく大人数で、それなりの顔ぶれ。秀調を筆頭に、若い世代が、亀三郎、亀寿、松也、梅枝、歌昇、萬太郎、巳之助、壱太郎、新悟、(尾上)右近、廣太郎、種之助、米吉、廣松、児太郎、鷹之資と並ぶ。
 「俊寛」は、もちろん吉右衛門。他は、丹波少将成経=梅玉、平判官康頼=歌六、海女千鳥=芝雀、憎まれ役瀬尾太郎兼康=左團次、丹左衛門尉基康=仁左衛門。
 第二部は、「壽曽我対面」「土蜘」
 「壽曽我対面」が個人的には6月最大の見もの(「助六」より、こちら!)。菊之助(曽我十郎)と海老蔵(曽我五郎)が花道に並んだだけでシビレた。なにしろ、明日の團菊ですから。さらに、仁左衛門が第一部の「俊寛」に続いて工藤祐経という重い役で登場。孝太郎、芝雀、七之助、愛之助、市蔵、亀蔵、男女蔵、松江も顔を揃える。
 「土蜘」は、もちろん菊五郎が、僧智籌実は土蜘の精。対する源頼光が吉右衛門。その家臣の平井保昌が三津五郎。侍女が魁春。頼光の四天王が、権十郎、亀三郎、亀寿、(尾上)右近。中間部の狂言に出る番卒が、翫雀、松緑、勘九郎、巫女が芝雀。他に、玉太郎と藤間大河も。
 第三部は、「御存 鈴ヶ森」と、今月の目玉「助六由縁江戸桜」。
 「鈴ヶ森」は、梅玉の白井権八、幸四郎の幡随院長兵衛。飛脚が錦吾、雲助の頭格で團蔵や家橘も。
 「助六」は“十二世市川團十郎に捧ぐ”と銘打たれて、團十郎に代わって海老蔵の助六。揚巻が福助。意休が左團次。開演前の口上が幸四郎。白酒売新兵衛が菊五郎。意休の子分くわんぺら門兵衛が吉右衛門、その弟分朝顔仙平が又五郎、彼らに絡まれる福山かつぎが菊之助(気風のいいこと!)。存命なら勘三郎がやったであろう通人里暁を三津五郎。助六にからかわれる国侍利金太と奴奈良平が市蔵と亀蔵、助六(実は曽我五郎)と白酒売新兵衛(実は曽我十郎)の母・曽我満江が東蔵。揚巻の朋輩傾城白玉が七之助。傾城は他に、壱太郎、新悟、(尾上)右近、米吉、児太郎。傾城に付き添う男伊達が、亀鶴、松也、歌昇、萬太郎、巳之助。他に、友右衛門、右之助、歌江といった人たちも顔を見せる。まずは豪華な配役。……なだけに、言っても詮無いことながら、團十郎と勘三郎の不在が寂しい。ま、全力で演じる海老蔵はカッコよかったですが。
 これで、4月から続いた“杮葺落”公演は終了。

 シアター・オーブは、宝塚歌劇花組公演『戦国BASARA~真田幸村編~』
 原作はカプコンの同名ゲームで、すでにアニメ化、舞台化されているようだが(ゲームも含め未見)、今回は初の舞台ミュージカル化。
 正直、真田幸村のキャラクターが単純すぎて、別に蘭寿とむが演じなくてもいいんじゃないか、と思った。明日海りおのやった上杉謙信や、春風弥里のやった伊達政宗の方が明らかにキャラクターとして面白い。あと、望海風斗の猿飛佐助とか。いのり(蘭乃はな)、かすが(桜咲彩花)といった九の一ですら、真田幸村より深みがある。というわけで、映像も含め仕掛けが派手な割には、あまり楽しめなかった。シアター・オーブって劇場が好みじゃないせいもあるかもしれないが。

 東京グローブ座は、作・演出/G2、音楽/荻野清子の『シルバー・スプーンに映る月』
 このコンビの前作『ビター・デイズ、スウィート・ナイツ』が、ある程度面白かったので期待して観に行ったが、満足度は前作と変わらず、かな。前作同様、脚本の詰めが甘いところが気になった。そう言えば、不在の女性の謎がドラマのキーになる、という構造も似ていた。
 とある会社の経営者一族の住む大邸宅。創業者はすでに故人で、その娘婿(鈴木綜馬)が会社を継いでいる。姉を慕っていた義理の弟(坂本昌行)も屋敷に同居している。“不在の女性”が、坂本の姉で、鈴木と結婚した女性。生死不明なのだが、どうやら嵐の晩に限って屋敷内に現れるのが彼女の亡霊ではないかと、執事やメイドは疑っている。そんな状況下、屋敷に住み込んで、密かに社長の妻の座を狙う秘書(戸田恵子)の勘違いからドラマは動き始める。
 ……という展開なのだが、そもそも、この勘違いの成立に無理がある。以下ネタバレ。
 翌日屋敷に取引銀行頭取の娘を呼んでいるのだが、それが実は“見合い”なのだと鈴木が戸田に打ち明け、その事実を当日まで坂本に隠すことを要請する。これを戸田は、鈴木の見合いだと勘違いして(実は坂本との見合い)、その妨害をするべく坂本にバラす。奥様のことがハッキリしていないのに見合いなんて、という具合に。
 ここで、まず、見合いと言えば坂本の件では? と微塵も思わない戸田に引っかかる。「奥様のことがハッキリしていないのに見合いなんて」は、まさにその通りなのだし。それ以前に、協力を要請しながら見合いの詳細を戸田に説明しない鈴木にも引っかかる。そうした疑問を抱かせない──つまり、戸田が勘違いしても無理ないと思わせる、あるいは、鈴木が細かい説明をしなくても仕方ないと思わせるための仕掛けがない。
 というわけで、スタートから引っかかるので、すんなり楽しめない。その後も、戸田と別れて暮らしてきた娘(新妻聖子)の登場はじめ、偶然の積み重ねが多々あるが、それぞれに伏線がなさすぎ、ご都合主義に見える。
 この舞台、本質的には、ケン・ラドウィグ Ken Ludwig の『レンド・ミー・ア・テナー LEND ME A TENOR』的な、誤解と入れ違いのコメディなのだと思う。とすれば、無理のない誤解と登場人物のスリリングな入れ違いに心血を注ぐ必要がある。そこが甘い。最後には全てに合理的な説明がつくのだが、なんとなく帳尻合わせな感じ。ちょっと残念。とはいえ、面白いオリジナル・ミュージカルを作ろうとする志には敬意を払います。次作に期待。

 シアター1010は、『ダウンタウン・フォーリーズ』の9回目。
 出演/島田歌穂、北村岳子、平澤智、香寿たつき、構成・演出/高平哲郎、音楽監督/島健、振付/川崎悦子、タップ振付/玉野和紀。 ここ何回かはマンネリ気味だったが、それもあってか、今回は、初心に戻っての“ミュージカル”ネタ。となると、いよいよ高平哲郎の限界が表われる。
 ブロードウェイ(オフ・ブロードウェイ)が一般の人にとって遠かった時代には、本場ミュージカルの紹介者として、その仕事に意味があったと思うのだが、未だにその頃とスタンスが変わらない。これでは、まるで刺激がない。 芸達者が揃っているので(島田歌穂はもちろんだが、北村岳子の存在が大きい)、なんとか観ていられるが、続けることに、あまり意味がない気がする。もうそろそろ終わってもいいのでは?

 サンシャイン劇場で熱海五郎一座の“一座結成10周年記念公演”と銘打たれた『天使はなぜ村に行ったのか』
 10周年の起源は2004年の伊東四朗一座。伊東四朗が参加しないと熱海五郎一座。伊東の先の熱海、四朗の次の五郎、というシャレです。
 何度か観ているが、よく出来ていて、いつも楽しい。ちょっと入るミュージカル的場面にも、完成度とは別に、思わず許してしまう真剣なアイディアがあって、微笑ましくなる。
 脚本は妹尾匡夫、構成・演出(+出演)が三宅裕司、出演は、渡辺正行、ラサール石井、小倉久寛、春風亭昇太、東貴博、劇団スーパー・エキセントリック・シアターといったおなじみの布陣に、今回は浅野ゆう子がゲストで加わる。ま、正直、浅野ゆう子のコメディ演技は微妙だが、そんなこを気にさせない大らかな空気が舞台全体にある。国家が老人を切り捨てる、というテーマをさりげなく出してくるあたりの大人な感じにも共感した。
 次回も楽しみ。

 7月の歌舞伎座は、“新開場柿葺落”と付いているものの、一応、時間も値段も通常に戻っての『七月花形歌舞伎』
 昼の部は、通し狂言「加賀見山再岩藤」
 別名「骨寄せの岩藤」という“怪奇趣味”で知られる演目、と思って観たのだが、印象が違った。考えたら、以前に観たのが10年前の平成中村座(@浅草)だったわけで、演出の方向性が違ったんだと思い当たる。骨が集まって岩藤の霊が現れる“骨寄せ”も、勘三郎(当時勘九郎)の岩藤が空中浮遊する“ふわふわ”も、今回はなんだか“普通”で、全体にあっさりした印象。まあ、勘三郎と松緑(=岩藤の霊/鳥井又助)の違いもあるけれども。
 悪役(望月弾正)を演じる愛之助が、話題のTVドラマ同様、いい味(笑)。他は、多賀大領/安田帯刀=染五郎、二代目尾上/お柳の方=菊之助、蟹江一角=権十郎、又助妹おつゆ=梅枝、梅の方=壱太郎、といった顔ぶれ。
 夜の部も通し狂言で「東海道四谷怪談」
 お岩/佐藤与茂七/小仏小平の三役を菊之助がやったが、この“一人三役”は初演時の三代目菊五郎かららしい。なのに、六代目梅幸以後の音羽屋は(ってことは、菊之助の祖父梅幸も父菊五郎も)やってこなかった演目なのだとか。菊之助の挑戦。筋書きのインタヴューで当人が、勘三郎に勧められて、というエピソードを語っている。菊之助のお岩はきれい過ぎる、という説もあるが(笑)、観る価値のある熱演だった。ま、そもそも「四谷怪談」は面白いし。ちなみに、大詰の幻想的な「滝野川蛍狩の場」は初めて観た。
 民谷伊右衛門は染五郎(ダメな感じがよかった)、直助権兵衛は松緑(もう少し凄みがほしい)、お岩の妹お袖は梅枝(可憐)、按摩宅悦=市蔵(いいなあ)、四谷左門=錦吾、伊藤喜兵衛=團蔵、後家お弓=萬次郎、お梅=右近、お梅の乳母おまき=歌女之丞、秋山長兵衛=山左衛門。

(9/22/2013)

Copyright ©2013 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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