[ゆけむり通信 番外2013]

  • 5/ 8/2013
    『五月花形歌舞伎 夜の部(将軍江戸を去る/藤娘/湧昇水鯉滝~鯉つかみ)』
    明治座
  • 5/10/2013
    『五月花形歌舞伎 昼の部(源平布引滝~実盛物語/与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし))』
    明治座
  • 5/13/2013
    『竹本義太夫三〇〇回忌記念公演 第二部(寿式三番叟/心中天網島~北新地河庄の段~天満紙屋内より大和屋の段~道行名残りの橋づくし)』
    国立劇場小劇場
  • 5/14/2013
    『竹本義太夫三〇〇回忌記念公演 第一部(一谷嫩軍記~熊谷桜の段~熊谷陣屋の段/曾根崎心中~生玉社前の段~天満屋の段~天神森の段)』
    国立劇場小劇場
  • 5/15/2013
    『マイ・フェア・レディ』
    日生劇場
  • 5/20/2013
    『杮葺落五月大歌舞伎 第三部(梶原平三誉石切~鶴ヶ岡八幡社頭の場/京鹿子娘二人道成寺)』
    歌舞伎座
  • 5/21/2013
    『杮葺落五月大歌舞伎 第一部(鶴亀/菅原伝授手習鑑~寺子屋/三人吉三巴白浪~大川端庚申塚の場)』
    『杮葺落五月大歌舞伎 第二部(伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)~御殿~床下/廓文章~吉田屋)』
    歌舞伎座
  • 5/28/2013
    『モンテ・クリスト伯』
    『アムール・ド・99!!~99年の愛~

    東京宝塚劇場

2013年5月観劇記

 明治座での『五月花形歌舞伎』
 昼の部が「源平布引滝~実盛物語」「与話情浮名横櫛」。夜の部が「将軍江戸を去る」「藤娘」「湧昇水鯉滝~鯉つかみ」
 「実盛物語」は、4月に観た「熊谷陣屋」「盛綱陣屋」と構造がよく似ている。平家方が源氏の血筋を絶やすために追及に来るが、今は平家の禄を食んでいるものの実は源氏に心を寄せる主人公が、平家方の詮索をかいくぐって源氏方を助ける、という図(細かく言うと、「熊谷陣屋」は平家と源氏が逆、「盛綱陣屋」は源氏内部抗争)。この話が変わっているのは、源氏の白旗をつかんだ女の片腕が登場し、その片腕を、別に発見されたその女の死骸につなげてやると、一瞬息を吹き返すところ。詳しいことは省略(笑)。
 その生き返る女、小万は七之助。主人公、斎藤別当実盛は勘九郎(この手の役は、勘九郎にはまだ重い)。詮議に来るチョイ悪な瀬尾十郎兼氏が亀蔵。詮議される御台葵御前が高麗蔵。小万の父、百姓九郎助が錦吾、その女房小よしが吉弥。
 「与話情浮名横櫛」は歌舞伎の演目としては一般的によく知られたものの1つ。春日八郎「お富さん」の元ネタ、と言ってもわからない方も多くいらっしゃると思いますが(笑)。
 道ならぬ恋に落ちた与三郎とお富は、逢瀬の現場を押さえられ、与三郎はリンチに遭い、お富は海に身を投げる。3年後、江戸で再会する2人。死んだと思っていたお富が、大店の番頭の囲われ者になっていると知った与三郎は、意趣返しに強請りにかかるが……。
 今回珍しかったのは、与三郎が痛めつけられる「赤間別荘の場」が演じられたこと。初めて観た。ま、なんだかんだ言って、この話、ハッピーエンドなので楽しい。
 染五郎の与三郎、七之助のお富、よかった。お富を救う(実は兄の)和泉屋多左衛門=愛之助、痛めつけられる前の与三郎の面倒をみる粋な鳶頭金五郎=勘九郎(こういう役が実にいい)、与三郎を連れてお富のところに強請りに行く奇妙な悪役の蝙蝠安=亀鶴、お富の前のダンナで侠客の赤間源左衛門=亀蔵。
 「将軍江戸を去る」は真山青果の書いた“新”歌舞伎。なので、口調が「なのだ」「なのだ」と硬くなるのだ。そこが、つまらないと言えば、つまらない。でも、まあ、味はある。
 最後の将軍慶喜が染五郎、恭順か対決かで揺れる慶喜を最後に説得する山岡鉄太郎が勘九郎、その山岡の義兄で共に慶喜をを説得する高橋伊勢守が愛之助。基本、この3人の対話劇。若さの残る染五郎が、案外、慶喜はこうだったのかも、と思わせないでもなかった。山岡は叫んでばかりだが、それが似合う勘九郎。愛之助の落ち着きも悪くなかった。
 「藤娘」は名高い踊り。藤の精は七之助。亡き祖父、芝翫が5年前に建て替え前の歌舞伎座で踊った。爽やかな藤の精だった。
 「鯉つかみ」は“片岡愛之助宙乗りならびに本水にて立廻り相勤め申し候”という但し書き付き。という訳で愛之助が大奮闘。
 滝窓志賀之助実は鯉の精、と、滝窓志賀之助実は清若丸、の二役を愛之助が演じる。前半では前者として、釣家息女小桜姫=壱太郎を誑(たぶら)かそうとし(ここで宙乗りが出る)、後半では後者として、鯉の化け物と水の中で格闘する、という趣向。壱太郎は実に愛らしい。その小桜姫の乳母的な篠村妻呉竹を演じた吉弥も、いい味。

 国立劇場の文楽は『竹本義太夫三〇〇回忌記念』
 第一部が、「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)~熊谷桜の段~熊谷陣屋の段」「曾根崎心中~生玉社前の段~天満屋の段~天神森の段」。第二部が、「寿式三番叟(ことぶきしきさんばそう)」「心中天網島~北新地河庄の段~天満紙屋内より大和屋の段~道行名残りの橋づくし」
 ちなみに、「曾根崎心中」「心中天網島」には“近松門左衛門生誕三六〇年記念”と但し書きが付いていた。
 改めて語ることのない名作ばかり。付け加えるとすれば、「曾根崎心中」の「天満屋の段」から、ご近所にお住まいの皇后の来場というハプニングがあった。そのため、第一部が終わった後一般客の退場に時間がかかる、との告知があったので、次の予定が控えていた僕は、「天神森の段」をパスして早退したしだい。

 『マイ・フェア・レディ』は、G2の演出・翻訳・訳詞によるニュー・ヴァージョン……というより、霧矢大夢の宝塚退団後初のミュージカル公演(イライザ役は真飛聖とのダブル・キャスト)。
 懸念した通り、霧矢大夢は高音がやや苦しかったが、そこを除けば見事だった。
 驚いたのは、イライザの父役の松尾貴史。歌が、特別うまいわけではないが、声がよく出て引き込まれる。それ以上に、役の個性をつかんだ演技が素晴らしかった。
 ピアス夫人役の寿ひずる、ビギンズ夫人役の江波杏子もよく、アンサンブルも、男性クァルテットをはじめ、安定した出来。唯一気になったのが、ビギンズ教授役の寺脇康文。歌も演技も場違いな感じで、ミスキャスト感が拭えなかった。
 日本語で演じることを十二分に意識したG2の翻訳・訳詞は大健闘。誰にせよ、もし翻訳ミュージカルをやるのであれば、こうした方向でお願いしたい。

 “新”歌舞伎座は、『杮葺落五月大歌舞伎』
 第一部が、梅玉、翫雀、橋之助、松江の踊り「鶴亀」、幸四郎の松王丸、三津五郎の武部源蔵で「菅原伝授手習鑑~寺子屋」、和尚吉三=幸四郎(團十郎の代役)、お嬢吉三=菊五郎、お坊吉三=仁左衛門で「三人吉三巴白浪~大川端庚申塚の場」
 第二部が、藤十郎の政岡、幸四郎の仁木弾正で「伽羅先代萩~御殿~床下」、仁左衛門の藤屋伊左衛門+玉三郎の夕霧で「廓文章~吉田屋」
 第三部が、吉右衛門の梶原平三景時で「梶原平三誉石切~鶴ヶ岡八幡社頭の場」、玉三郎と菊之助による「京鹿子娘二人道成寺」
 「寺子屋」は他に、源蔵妻戸浪=福助、松王丸妻千代=魁春、春藤玄蕃=彦三郎、園生の前=東蔵、涎くり与太郎=亀寿。
 「三人吉三」でお嬢吉三に堀に突き落とされる夜鷹おとせは、梅枝。
 「伽羅先代萩」の、憎まれ役八汐は梅玉、栄御前は秀太郎、政岡の朋輩、沖の井=時蔵、松島=扇雀、床下で仁木弾正に相対する荒獅子男之助が吉右衛門。
 「廓文章」は、吉田屋女房おきさ=秀太郎、吉田屋喜左衛門=彌十郎、阿波の大尽=秀調、でもって、太鼓持豊作に仁左衛門の孫、千之助。成長している。
 「梶原平三誉石切」には、六郎太夫=歌六、梢=芝雀、大庭三郎景親=菊五郎、俣野五郎景久=又五郎、その配下に播磨屋・萬屋の息子たちが顔を見せる。二つ切りにされる罪人で、出てきて酒尽くしのシャレを言う剣菱呑助が彌十郎!
 「京鹿子娘二人道成寺」の所化は、團蔵、権十郎、宗之助を筆頭に、ずらり22人登場。
 とにかく、顔ぶれが豪勢。過去にも書いたと思うが、歌舞伎は役者だ。

 東京宝塚劇場は宙組公演で、『モンテ・クリスト伯』(脚本・演出/石田 昌也)と、“レビュー・ルネッサンス”という副題の付いたショウ『Amour de 99!!~99年の愛~』
 『モンテ・クリスト伯』は、とにかく、長大なストーリーをどう噛み砕いて観客に伝えるかに腐心している。そのために、ブロードウェイ版『スパイダーマン』のプレヴュー段階で設定されていた“ギーク・コーラス”にあたる、劇世界を客観視する現代の人物たち(それも若者)を登場させて、面倒な部分を説明させる。これが、『スパイダーマン』同様、必ずしもうまく機能していない(ちなみに『スパイダーマン』の“ギーク・コーラス”は正式オープンの時には削られていました)。なんだか、彼らのせいで『モンテ・クリスト伯』の世界がチャラくなっただけのような気もする、といった印象。
 そうした流れからか、モンテ・クリスト伯ことエドモン・ダンテスも、どこか軽い感じ。まあ、その辺は、カッコいい凰稀かなめだからOK、ってことにいなるんだろうが。逆に、悪役連中(悠未ひろ、朝夏まなと、蓮水ゆうや)の方が、芝居のしがいがあるキャラクターになっていた。一方で、ダンテスに仕えることになる元船乗りのベルツッチオ(緒月遠麻)は、本来なら美味しい役になってもいいところだが、そんなアンバランスな人間関係の中で、かえって難しい役回りになってしまう。ま、ヒロイン(メルセデス=実咲凜音)が騙されて悪役と結婚してしまうとか、かなり面倒くさい話ですから、短くまとめるにあたり、いろいろと無理が出て当然だが。いっそ、2幕ものにしたら、どうだったんだろう。観てみたいような観たくないような……(笑)。
 第2部のショウは、歌劇団99周年ということで、過去の名作ショウのエッセンスをピックアップした作り。クラシックな感じも含め、面白く観た。こちらにだけ、専科の美穂圭子という人が出ていたが、専科の人が出ると厚みが出て、うれしい。

(7/28/2013)

Copyright ©2013 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

[ゆけむり通信 番外2013]
TITLE INDEX(domestic)


[HOME]