[ゆけむり通信 番外2013]

  • 3/ 5/2013
    『三月花形歌舞伎 夜の部(一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)~檜垣~奥殿/二人椀久(ににんわんきゅう))』
    新橋演舞場
  • 3/ 6/2013
    『三月花形歌舞伎(夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)/口上/高坏(たかつき))』
    ル・テアトル銀座
  • 3/ 7/2013
    『三月花形歌舞伎 昼の部(妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)~三笠山御殿/暗闇の丑松)』
    新橋演舞場
  • 3/ 9/2013
    『赤坂大歌舞伎(怪談乳房榎(かいだんちぶさのえのき))』
    赤坂アクトシアター
  • 3/17/2013
    『隅田川花御所染(すみだがわはなのごしょぞめ)~女清玄~』
    国立劇場大劇場
  • 4/ 2/2013
    『オーシャンズ11』
    東京宝塚劇場
  • 4/ 9/2013
    『ゴドーは待たれながら』
    東京芸術劇場シアターイースト
  • 4/15/2013
    『杮葺落四月大歌舞伎 第一部(壽祝歌舞伎華彩(ことぶきいわうかぶきのいろどり)~鶴寿千歳/お祭り/一谷嫩軍記~熊谷陣屋)』
    歌舞伎座
  • 4/15/2013
    『杮葺落四月大歌舞伎 第二部(弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)~浜松屋見世先の場より滑川土橋の場まで/忍夜恋曲者(しのびよるこいはくせもの)~将門)』
    歌舞伎座
  • 4/22/2013
    『杮葺落四月大歌舞伎 第三部(近江源氏先陣館~盛綱陣屋/勧進帳)』
    歌舞伎座
  • 4/23/2013
    『トゥモロー・モーニング』
    シアター・クリエ

2013年3~4月観劇記

 新橋演舞場は、染五郎・松緑・菊之助中心の『三月花形歌舞伎』
 昼の部が「妹背山婦女庭訓~三笠山御殿」「暗闇の丑松」。夜の部が「一條大蔵譚~檜垣~奥殿」「二人椀久」
 「三笠山御殿」「妹背山婦女庭訓」の大詰めに近い部分で、前月に国立劇場で観た文楽公演第三部の後半と重なる。すなわち、どこまでも豪胆な漁師鱶七(実は金輪五郎今国)と、どこまでも悲惨な村娘お三輪とが別々に出てきて、それぞれに見せ場があり、最後に2人の運命が交わって、お三輪は鱶七に刺され、その理由(自分を裏切った男が実は“偉い身分”の人で、自分の血が彼の宿敵である蘇我入鹿を倒すのに役立つ)を聞いて喜びながら死んでいく、という、なんとも凄い話(笑)。鱶七=松緑、お三輪=菊之助。亀三郎が白塗りの烏帽子折求女実は藤原淡海を演じていたのが珍しかった。
 「暗闇の丑松」は長谷川伸の名作。どこまでも暗い話だが、細かいところまでよく出来ていて、最後の意趣返しでカタルシスが得られるので、面白く観ていられる。丑松は松緑。その女房になるお米が梅枝で、とてもよかった。丑松を騙す四郎兵衛役の團蔵、その女房お今役の高麗蔵のワルぶりも見事。最初に出てきて丑松に殺される、萬次郎、権十郎の小悪党ぶりも、ねちっこくて、死なせるのがもったいないほど(笑)。
 「一條大蔵譚~檜垣~奥殿」は、染五郎の一條大蔵卿。阿呆にしては、ちょっとカッコよすぎだが、まあ、いい感じ。他は、吉岡鬼次郎=松緑、お京=壱太郎(かずたろう)、鳴瀬=吉弥、八剣勘解由=錦吾、常盤御前=芝雀。若いが、壱太郎が愛らしい。
 「二人椀久」は、染五郎と菊之助の幻想的な踊り。幻の女、菊之助にうっとり。

 ル・テアトル銀座も『三月花形歌舞伎』。こちらは海老蔵で、「夏祭浪花鑑」の半通し、と、「口上」を挟んでの「高坏」
 「夏祭浪花鑑」は、海老蔵が団七と徳兵衛女房お辰の二役、一寸徳兵衛が亀鶴、釣舟三婦が市蔵(いい!)、三婦女房おつぎが右之助、団七女房お梶が家橘、磯之丞と琴浦は種之助と米吉という若手。団七に殺される義父・三河屋義平次を演じた市川新蔵は国立劇場の研修生から十二代目團十郎の門人となった人で、暗い中での芝居なので、あまり顔も見えないが、確かな演技。
 「口上」は海老蔵単独。今回の演目が勘三郎追善の意図を込めたものであること(客席に波乃久里子がいた)や、亡父・團十郎(“あの方”と言ってました)の思い出を語っていた。
 「高坏」は下駄タップの踊り。海老蔵のタップ、もちろん勘三郎には劣るが、とぼけた味は悪くない。

 『赤坂大歌舞伎』は“中村勘九郎襲名記念”で、中村屋おなじみの「怪談乳房榎」の通し。今回は、滝の場面の後に、タイトルの由来である乳房榎前での大詰めまでやっていた。
 “中村勘九郎三役早替りにて相勤め申し候”とある通り、菱川重信、下男正助、うわばみ三次を勘九郎が演じる。悪役磯貝浪江が獅童、重信妻お関が七之助。亀蔵が松井三郎を演じて最初と最後を締める。
 とにかく、勘九郎がのびのびしてたのが印象的。責任を負うことで、より前向きな気持ちになったのだろうか。それとも“早替り”が好きなのか(笑)。それにつられてか、獅童もよくなった。もちろん、七之助は相変わらず、いい。中村屋、楽しみ。

 国立劇場大劇場の歌舞伎は、鶴屋南北・作、国立劇場文芸課・補綴の通し狂言『隅田川花御所染~女清玄~』
 やはり南北作の『桜姫東文章』の変奏で、こちらの主人公は、桜姫の姉、花子の前。後に、清玄尼。あちらでは桜姫との過去の因縁で“破戒僧”となる清玄が、こちらでは女性になり、別の因縁というか謀略によって“破戒僧”となる。その恋のドロドロに、お家騒動が絡み、なおかつ、怪異の味付けがある、という話。
 前半は因縁の説明で、ちょっと退屈だが、入り組んだ因縁がわかると、けっこう面白い。最後は、道成寺と同じ鐘が出てきて、清玄尼が蛇になる。その前に、蛇絡みのエグい表現もあって(斬られた10本の指が蛇になる!)、大ウケ(笑)。
 清玄尼は福助。あと、翫雀、錦之助が一緒にポスターに載る配役。他に、男女蔵、宗之助といった中堅どころがいて、その他は、若手主体。松也、新悟、隼人、児太郎らが主要な役で活躍する。若手では、松也が悪そうでよかった。あと、同年代では新悟が抜けている。ちなみに、観た日はアフター・トークってのがあって、司会そっちのけで場を仕切った福助が楽しかった(笑)。

 東京宝塚劇場の花組公演『オーシャンズ11』。昨年1月に星組で観ているが、この再演版は、それなりに改変されていたようで……。どこがと訊かれると困るのですが(笑)。
 主役のオーシャンは、もちろん蘭寿とむ、その妻テスは蘭乃はなだが、オーシャンの相棒ラスティー・ライアン役が専科の北翔海莉(余裕で楽しげに演じていた)、悪役テリー・ベネディクト役が望海風斗、と、やや変則的な配役。軽快な動きが光る(ダジャレじゃなく)華形ひかるは金庫潜入のイエン。春風弥里は手品師バシャー・ター役で手先の器用さを披露。コメディ・リリーフ兼ショウの花形、クイーン・ダイアナ役は桜一花で、星組の時の白華れみ同様、大いに沸かせてくれる(最後のショウでも大活躍)。
 総じて、星組の時より落ち着いた雰囲気。蘭寿とむの、しっとりした魅力を生かした、ということだろうか。楽しかった。60年代ビッグ・バンド・ジャズ的楽曲も、いい感じなので、いずれ、また再演してほしいところだ。

 東京芸術劇場シアターイーストで観た、いとうせいこう作、ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出、大倉孝二独演の『ゴドーは待たれながら』はストレート・プレイ。
 ご存知サミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』への返歌と言える1人芝居で、初演は92年らしい。あちらが、決して現れないゴドーを待ち続ける2人組の話であるのに対し、こちらは、待たれているので出かけようとしながら決して出かけないゴドーの話。
 1人芝居と言いつつ、途中で“声の出演”(今回は同劇場芸術監督の野田秀樹。ただし録音)があるので、そこがやや“不完全”なのが惜しい。ま、別に観客が惜しがる必要もないのだが(笑)。
 しかし、15分の休憩を挟みつつも2時間の舞台を緊張と笑いとで引っ張り続けたのは、お見事と言うしかない。

 完成した“新”歌舞伎座の『杮葺落四月大歌舞伎』は、ご承知と思うが、“杮葺落”を記念しての文字通りのオールスター公演。やっぱり歌舞伎は役者だ、と改めて思わされる贅沢な配役。
 第一部は、杮葺落を祝う踊り「壽祝歌舞伎華彩~鶴寿千歳」、“十八世中村勘三郎に捧ぐ”というサブタイトルの付いた、これも踊りの「お祭り」、そして「一谷嫩軍記~熊谷陣屋」。第二部は、今月の目玉と言っていい「弁天娘女男白浪~浜松屋見世先の場より滑川土橋の場まで」と、玉三郎の幻想的な踊り「忍夜恋曲者~将門」。第三部が、仁左衛門の「近江源氏先陣館~盛綱陣屋」と幸四郎の「歌舞伎十八番の内~勧進帳」
 「壽祝歌舞伎華彩~鶴寿千歳」は、名前の上からは中盤に出てくる藤十郎がメインの扱いだが、事実上は最初と最後を締める染五郎と魁春が中心の舞台。周りを固めるのが、権十郎(男)、高麗蔵(女)を軸に、男役が亀鶴、松也、萬太郎、廣太郎、女役が梅枝、壱太郎、(尾上)右近、廣松。
 「お祭り」は、サブタイトル通り、中村屋所縁の面々で、三津五郎、福助を中心に、橋之助、彌十郎、扇雀、亀蔵、獅童、その息子たちの巳之助、児太郎、国生、宗生、宜生、新悟、虎之介、さらに、小山三はじめ中村屋の主要なお弟子さんたちが顔を揃える。そこに遅れて花道から登場するのが、勘九郎、七之助兄弟。でもって、2人が勘九郎の息子、七緒八を連れているという趣向。「十八代目も喜んでる」という三津五郎のセリフにグッと来た。
 「熊谷陣屋」は、熊谷直実=吉右衛門、相模=玉三郎、藤の方=菊之助、源義経=仁左衛門、白毫弥陀六=歌六、という顔ぶれ。他に、又五郎、桂 三、由次郎、歌昇、米吉、種之助。
 「弁天娘女男白浪」は、弁天小僧=菊五郎、日本駄右衛門=吉右衛門、南郷力丸=左團次、赤星十三郎=時蔵、忠信利平=三津五郎の五人男。贅沢なのは、浜松屋の用心棒、鳶頭清次が幸四郎なこと。周りも、浜松屋親子が彦三郎と菊之助、浜松屋を偵察に来て最後に裏切る狼の悪次郎が市蔵、駄右衛門を捕らえに来るのが錦之助と松江、駄右衛門を見逃してやる青砥左衛門藤綱が梅玉で、その家来が友右衛門と團蔵、と豪華。当初の予定では駄右衛門が團十郎だったわけで、想像するだけでクラクラする。そんなこともあって、いつもは3階席で観る僕が、さすがに4月の第二部は1階席へ。五人男が花道に並ぶところもたっぷり楽しんだ。
 「忍夜恋曲者~将門」は、前述したように玉三郎の“怪異もの”舞踊で、相方は松緑。ケレンもたっぷりで面白かった。
 「盛綱陣屋」は、第一部の「熊谷陣屋」とよく似ていて、若武者を犠牲にして首実検で“ニセ首”を通そうとする話。歌舞伎得意の“実は、実は”の連続で面白いのだが、正直、前半はやや退屈。ともあれ、主役の存在感が肝となる。その主役の佐々木盛綱が仁左衛門。最初と最後に登場して舞台を締める、敵ながらあっぱれの和田兵衛秀盛が吉右衛門。以下、盛綱母微妙=東蔵、盛綱妻早瀬=芝雀、高綱妻篝火=時蔵、その息子で自害して父を助ける小四郎=金太郎(染五郎の長男)、盛綱一子小三郎=藤間大河(松緑の長男)、北條時政=我當、伊吹藤太=翫雀、信楽太郎=橋之助、時政の家来役で、錦吾、男女蔵、亀三郎、亀寿、宗之助、進之介、等。とぼけた“儲け役”藤太で、翫雀がしっかり儲けていた。
 「勧進帳」は、弁慶=幸四郎、富樫=菊五郎、義経=梅玉、と来て、四天王が、常陸坊海尊=左團次はともかく(珍しくないという意味で)、亀井六郎=染五郎、片岡八郎=松緑、駿河次郎=勘九郎、と並ぶと、さすがに「杮葺落」ならではの顔ぶれ。幸四郎が気持ち疲れているようにも見えたが、大丈夫か。
 ちなみに、新たな歌舞伎座は、劇場内部の印象は驚くほど変わっていない。それがよかった。3階席に限って言えば、以前より観やすくなって、さらにいい。東銀座駅からの導線が若干わかりづらいのが難と言えば難だが、慣れれば解消されるのかも。もちろん、3階までエスカレーター、エレヴェーター完備です。

 シアター・クリエは、ロンドン産の翻訳ミュージカル『トゥモロー・モーニング』。2011年にはオフ・ブロードウェイでも上演されたようだが、観ていない。脚本・作曲・作詞/ローレンス・マーク・ワイス Laurence Mark Wythe、翻訳・訳詞・演出/荻田浩一。
 2組の男女が登場。若い1組ジョンとキャットは結婚式前夜、中年を迎えそうな1組ジャックとキャサリンは離婚前夜。この2組のやりとりが交錯しながら描かれていく内に、どうやら10年の時を挟んだ同じ2人だということがわかってきて……。という話で、それぞれトラブルを経て、最後はハッピー・エンドに。
 悪くはないが、例えば同じクリエで上演された『ダディ・ロング・レッグズ』あたりと比較すると、脚本や構成の精密度がやや低い。もっとスリリングに出来る素材だと感じた。
 出演は、石井一孝、島田歌穂、田代万里生、新妻聖子。田代万里生は初めて観たが、荒削りながら魅力的。バンドの演奏がよかったな。

(6/12/2013)

Copyright ©2013 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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