[ゆけむり通信 番外2013]

  • 2/ 3/2013
    『二月博多座大歌舞伎 夜の部(吹雪峠/身替座禅/河内山~質見世より玄関先まで~)』
    博多座
  • 2/ 4/2013
    『二月博多座大歌舞伎 昼の部(俊寛/口上/義経千本桜~渡海屋~大物浦/芝翫奴』
    博多座
  • 2/ 5/2013
    『二月大歌舞伎(義経千本桜~吉野山/新皿屋舗月雨暈(しんさらやしきつきのあまがさ))』
    日生劇場
  • 2/ 8/2013
    『アルレッキーノ~二人の主人を一度に持つと~
    世田谷パブリックシアター
  • 2/12/2013
    『文楽二月公演 第三部(妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)~道行恋苧環~鱶七上使の段~姫戻りの段~金殿の段)』
    国立劇場小劇場
  • 2/20/2013
    『ザナ』
    シアター・クリエ
  • 2/25/2013
    『文楽二月公演 第一部(摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)~万代池の段~合邦庵室の段)』
    『文楽二月公演 第二部(小鍛冶/曲輪文章~吉田屋の段)』
    国立劇場小劇場
  • 2/26/2013
    『ブラック・ジャック~許されざる者への挽歌~
    日本青年館
  • 2/27/2013
    『ベルサイユのばら~オスカルとアンドレ編~
    日本青年館

2013年2月観劇記

 博多座は“中村勘九郎襲名披露”『二月博多座大歌舞伎』
 昼の部が、扇雀、孝太郎、梅玉の「吹雪峠」、勘九郎(山蔭右京)×仁左衛門(妻・玉の井)で「身替座禅」、仁左衛門(河内山宗俊)×勘九郎(松江出雲守)で「河内山~質見世より玄関先まで~」
 夜の部が、仁左衛門の「俊寛」「口上」を挟んで、勘九郎=平知盛の「義経千本桜~渡海屋~大物浦」、最後が橋之助の成駒屋所縁の踊り「芝翫奴」
 「吹雪峠」は、宇野信夫作の新歌舞伎で、密室での心理劇。梅玉は、ちょっとやさぐれた役も案外似合う。
 「身替座禅」の右京は、さすがに勘九郎にはまだ早い気がするが、それでも、仁左衛門を相方に得て、かなりの好演。太郎冠者で七之助も出演。
 「河内山」は、仁左衛門の“悪に強きは善にも”のチョイ悪ぶりがたまらない。勘九郎も、癇症の松江出雲守はハマり役。憎まれ役・北村大膳が亀蔵、松江家家老が橋之助、和泉屋清兵衛が彌十郎、腰元浪路が新悟、といった顔ぶれ。上州屋番頭が松之助なのも、うれしい。
 「俊寛」の仁左衛門もいい。てか、仁左衛門が悪いはずはないのだが(笑)。この公演、仁左衛門が勘三郎に代わって後ろ盾になっているのが、ホントによくわかる。成経=扇雀、康頼=錦之助、千鳥=孝太郎、丹左衛門尉基康=橋之助、瀬尾=彌十郎。
 「口上」は、上手から、梅玉、錦之助、彌十郎、仁左衛門、勘九郎、七之助、橋之助、亀蔵、扇雀。仁左衛門の「父・勘三郎に成り代わりまして…」という挨拶の真情が沁みた。
 「渡海屋」の知盛も勘九郎にはまだまだ重いが、後半の立ち回りは迫力があった。うまい七之助も、典侍の局となるとさすがにまだ若いか。義経が梅玉、弁慶が彌十郎。渡海屋の場はちょっと端折ってた気がした。
 「芝翫奴」は、アイディアの多い洒脱な振りを橋之助が軽妙に踊ってみせて、よかった。

 博多座公演は、3日に博多に着き、夜の部を観て、4日に昼の部を観たわけだが、3日の夜中、ホテルのTVのニュース速報で團十郎死去を知る。心配はしていたのだが、いきなり亡くなるとは思っていなかったので、呆然。
 翌日、暗い気持ちで博多座に行ったのだが、舞台の上でいつも通りに演じる役者たちを観ていて、おかしな話だが、不思議に気持ちが安らいだ。こうやって時は進んでいくのか、と。

 日生劇場は『二月大歌舞伎』。高麗屋中心の公演。
 演目は、「義経千本桜~吉野山」と通し狂言「新皿屋舗月雨暈(しんさらやしきつきのあまがさ)」
 「吉野山」の幕前で、まずは幸四郎が「口上」。染五郎の復帰についてのお詫びとお礼。
 「吉野山」は、佐藤忠信実は源九郎狐が染五郎、静御前が福助。安心して観ていられる配役。逸見藤太は亀鶴。
 「新皿屋舗月雨暈」は、通しなので、「弁天堂」から入る。で、「お蔦部屋~お蔦殺し」と来て、後半が「魚屋宗五郎」
 宗五郎=幸四郎、お蔦&宗五郎女房おはま=福助、磯部主計之助=染五郎、お蔦召使おなぎ=高麗蔵、 宗五郎父・太兵衛=錦吾、三吉=亀鶴、悪役・岩上典蔵=桂三、家老・浦戸十左衛門=左團次。
 幸四郎の宗五郎、よかった。この人、軽めの役がいい。福助は、お蔦も悪くないが、圧倒的におはまがいい。染五郎の酒癖の悪い殿様もハマっていた。

 世田谷パブリックシアターのオペラシアターこんにゃく座公演は、『アルレッキーノ(ARLECCHINO)~二人の主人を一度に持つと~』
 これ、原作(カルロ・ゴルドーニ)が、ブロードウェイで観た『男一人、ご主人二人 ONE MAN, TWO GUVNORS』と同じ。そんなこともあって観に行ったしだい。元々、こんにゃく座は好きなのだが。
 これが面白かった。舞台上に円形の台を作り、その周囲を、シャワー・カーテンのような可動式の幕(絵が描いてあって、ドア部分は出入り出来る)で囲んである。その可動式であることを、タイミング命の出入り(入れ違い)のコメディに見事に生かしていた。役者の動きも上々。
 楽曲も、時に言葉遊び的に韻を踏む(つまりラップ的)歌詞を生かして面白く、魅力的。聴かせどころの「青いカナリア」の叙情性もよかった。
 作曲/萩京子、台本・演出/加藤直、美術/乘峯雅寛、衣裳/太田雅公、照明/服部基、振付/山田うん。 アルレッキーノ役はダブル・キャストだったようだが、観た回は、大石哲史。ヴォードヴィル的な動きも含め、哀感漂う無責任男ぶりが、いい感じだった。

 国立劇場小劇場の『文楽二月公演』
 今月は三部に分かれていて、第一部が『摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)』の後半、「万代池の段~合邦庵室の段」、第二部が『小鍛冶』『曲輪文章』(文章は「文」が偏で「章」が旁の1文字)の「吉田屋の段」(この後もう1つ、面白いと評判の演目があったが、残念ながら都合で観られず)、第三部が『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)』の四段目で、「道行恋苧環~鱶七上使の段~姫戻りの段~金殿の段」という流れ。
 第一部の「万代池の段~合邦庵室の段」は、俊徳丸の病を治すために悪女を装う義母の命懸けの真意がわかる、という話で、ちょっと第三部の内容と似ていなくもない、文楽らしい強引な(だから面白い)話。
 第二部の『小鍛冶』は能が元だそうで、歌舞伎で言えば踊りの感じ。剣を打つ様がリズミカルに表現されて面白い。『曲輪文章』は歌舞伎でもおなじみ。ダメ男と傾城がジャラジャラとあって最後にハッピーエンド。その情愛を楽しむべきなのだと思う。
 第三部の『妹背山』の四段目は歌舞伎でもよく上演さるが、お三輪という娘がホントにかわいそうで、腹が立つほど(笑)。なにしろ、三角関係で事実上捨てられ、男を追っていった先で底意地の悪い官女たちに嬲られ、嫉妬に狂った挙句、善玉に刺し殺される、という始末。なぜ刺し殺されるかというと、嫉妬に狂う女の生血が蘇我入鹿(超悪玉)を滅ぼすのに必要だから。そう聞かされて、喜んで死んでいく、お三輪。まあ、現代の感覚で言うと納得できないところが文楽や歌舞伎の面白さなんで、これは慣れていくしかない(笑)。

 シアター・クリエの『ザナ』は、03年5月にオフ・ブロードウェイで観た『ザナ、ドント ZANNA, DON'T』の翻訳版。面白かったことだけ覚えていて、細かいこと……のみならず大筋もすっかり忘れてたことに、観て気づいた(笑)。
 実は、この『ザナ』のプロデューサーは、小嶋麻倫子さんといって、オフの『ザナ、ドント』初演にも主要なスタッフ(ドラマターグ)として関わってらした方(ちなみに今回は翻訳も担当)。たまたまニューヨーク時代の彼女に知己を得ていたこともあり、これは観なければ、とチケットを買ったしだい。
 結論から言うと、やはり面白かった。ひと言で言えば、“同性愛がノーマル(つまり、異性愛はアブノーマル)な世界の青春ドラマ”で、ザナは魔法使いだったりするという、ある種の寓話なわけだが、脚本がよく練られていて、コメディの衣を纏いながらも端々にリアルで苦い感触がある(最後はちょっとバタバタするが)。キャラクターも、それぞれ魅力がある。楽曲もイキイキして、いい。
 出演者に注文がないわけではないが(すごく気になったことを1つだけ言えば、ザナ役の田中ロウマが、歌は大丈夫なのに、なぜかセリフの時の声が籠もってた)、まあ、元気があってよろしいということで。Spiという男優が達者だったのが印象に残った。

 青年館の『ブラック・ジャック~許されざる者への挽歌~』は、未涼亜希主演(ブラック・ジャック)の宝塚歌劇雪組公演。
 作・演出/正塚晴彦は、前回……と言っても20年近く前の1994年、花組公演の『ブラック・ジャック~危険な賭け~』と同じ。とはいえ、内容は全く違う。前回は大劇場公演、今回は小劇場。なので、装置等の規模は前回の方が大きいが、逆に、前回は第2部にショウがあったため1幕ものだったのに対し、今回は2幕の通し。そのため、より面白くなった。
 ちなみに、前回の公演は、トップ安寿ミラが不在(宝塚大劇場公演の後、ロンドン特別公演に行っていたはず)だった時の東京公演のみを観ているので、僕の知っている初代ブラック・ジャックは真矢みき。
 今回の『~許されざる者への挽歌~』は、ほとんど肉体を持たずに生まれたピノコ(桃花ひな)の再生のドラマを軸に据え、そこに、ブラック・ジャックの前に現れた2人の男──数百年の命を持つ一族に生まれたために恋に苦悩する裕福な男(夢乃聖夏)と、足が不自由なことで劣等感を抱いてスネて生きる貧しい若者(彩風咲奈)と──が絡んで展開していく。ヘタをすると生真面目なヒューマン・ドラマになる素材だが、そこを、突き詰めすぎない脚本と(とはいえ、軸のピノコの再生=成長はかなり丁寧に描かれていて、それがブレてなかったのが勝因の1つ)、時にユーモラスさも感じさせるブラック・ジャックのキャラクター(未涼亜希好演)とで、うまく緩急をつけて、全体には柔らかな感触の舞台に仕上げているところがよかった。ブラック・ジャックの友人で人はいいが腕は悪い医師(真那春人)と、クールで優秀な看護士(早花まこ)の凸凹コンビも、いいアクセントだった。
 観た日の公演後にオマケで座談会があり、その温さ加減も面白かった。そう言えば、この日は安寿ミラも含め前述の花組初演キャストが前の方で観ていたようだ。

 東京宝塚劇場は、前の週のチケットがあったのに痛恨のミスで観逃してしまった月組の『ベルサイユのばら~オスカルとアンドレ編~』。なんとかネットでチケットを入手してのリヴェンジ。ちなみに、観た日は、龍真咲(オスカル)、明日海りお(アンドレ)の回だった(ダブル・キャストだそうで)。
 まず言いたいのは、星条海斗の怖いほどの熱演のせいもあって、このドラマの鍵を握るのはアランなんだなと気づいた、ということ。まあ、元々、肝っちゃ肝の役なのだが、改めて、この衛兵隊のキャプテン的存在が、王家(貴族)と民衆の間で揺れるオスカルとアンドレを、最終的に民衆の側に立たせることを認識したしだい。
 幕前芝居の多い演出は、(残念ながら)ほとんど変わっていなかったが、龍=オスカル、明日海=アンドレの見栄えの良さで、いろんなことが帳消しになるのかもしれない。なんてことを言いながら、泣かせどころでは泣かされるのだが(笑)。

(3/19/2013)

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