[ゆけむり通信 番外2012]

  • 12/ 3/2012
    『吉例顔見世興行東西合同大歌舞伎 昼の部(佐々木高綱/梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり)~鶴ヶ岡八幡社頭の場/寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)/廓文章~吉田屋)』
    京都四條南座
  • 12/ 3/2012
    『吉例顔見世興行東西合同大歌舞伎 夜の部(仮名手本忠臣蔵~五段目・山崎街道鉄砲渡しの場~二つ玉の場~六段目・与市兵衛内勘平腹切の場/(六代目中村勘九郎襲名披露)口上/船弁慶)』
    京都四條南座
  • 12/ 4/2012
    『女子高生チヨ』
    東京グローブ座
  • 12/ 5/2012
    『12月文楽公演(苅萱桑門筑紫いえづと(かるかやどうしんつくしのいえづと)~守宮酒の段~高野山の段/傾城恋飛脚~新口村の段)』
    国立劇場小劇場
  • 12/ 6/2012
    『鬼一方眼三略巻(きいちほうげんさんりゃくのまき)~六波羅清盛館の場~今出川鬼一法眼館菊畑の場~檜垣茶屋の場~大蔵館奥殿の場)』
    国立劇場大劇場
  • 12/ 7/2012
    『十二月大歌舞伎 昼の部(御摂勧進帳(ごひいきかんじんちょう)~山城国石清水八幡宮の場~越前国気比明神境内の場~加賀国安宅の関の場)』
    新橋演舞場
  • 12/10/2012
    『十二月大歌舞伎 夜の部(籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)/奴道成寺)』
    新橋演舞場
  • 12/25/2012
    『ジパング・パンク~五右衛門ロックⅢ~
    シアター・オーブ

2012年12月観劇記

 南座は、『吉例顔見世興行』にして“東西合同大歌舞伎”にして“六代目中村勘九郎襲名披露”公演。というわけで、勘九郎・七之助の気迫の籠もった演技が印象的。ところで、今回、昼の部の始まりが10時半と早く、夜の部の終わりが21時10分と遅い。始まりはともかく、終わりが微妙に東京までの新幹線の終電に間に合わない時間なので、最後の演目は泣く泣く諦めた。
 演目は、昼の部が、我當の「佐々木高綱」、團十郎の「梶原平三誉石切~鶴ヶ岡八幡社頭の場」、勘九郎(曽我五郎時致)+時蔵(曽我十郎祐成)+仁左衛門(工藤左衛門祐経)で「寿曽我対面」、藤十郎(伊左衛門)+扇雀(夕霧)親子で「廓文章~吉田屋」、夜の部が、仁左衛門(勘平)+時蔵(おかる)+橋之助(斧定九郎)で「仮名手本忠臣蔵~五段目・山崎街道鉄砲渡しの場~二つ玉の場~六段目・与市兵衛内勘平腹切の場」「(六代目中村勘九郎襲名披露)口上」、勘九郎(静御前/新中納言平知盛の霊)+團十郎(弁慶)+藤十郎(義経)で「船弁慶」。観なかった最後の「関取千両幟~稲川内より角力場まで」は、翫雀が稲川次郎吉という関取を演じる演目。
 「佐々木高綱」は岡本綺堂作の新歌舞伎で、セリフを聞かせる作り。なので、声の通る我當に相応しい(ずっと足の調子が悪いようで心配)。共演は、彌十郎、孝太郎、愛之助、新悟(名題昇進おめでとう)、進之介。
 「梶原平三誉石切」の主人公梶原平三景時は、歌舞伎ではたいてい悪役だが、この演目では珍しく善玉。最後に手水鉢を真っ二つに斬る見せ場があって、團十郎の華が生きる。と言いつつ、途中ちょっとウトウトしてしまったが(笑)。左團次・男女蔵親子が悪役で、團十郎に助けられるのが彌十郎と七之助の父娘。市蔵が罪人役で斬られに出てきた時は完全に寝てたな(笑)。
 「寿曽我対面」は、言ってみればお祝い事演目で、勘九郎襲名を祝っての上演。ここでは先の梶原平三景時がちゃんと悪玉として出てくる。演じるは先ほど斬られた市蔵(笑)。秀太郎、橋之助、翫雀、愛之助、男女蔵、七之助、壱太郎(名題昇進おめでとう)、薪車らも顔を揃える。
 「廓文章」は個人的には仁左衛門の印象が強い演目。ではあるが、元々は初代藤十郎に端を発した出し物だそうで、そういう意味では一度は観とかなくちゃ、という舞台だったのだろう。吉田屋の主人夫婦は、彌十郎と吉弥。
 「仮名手本忠臣蔵」の五段目・六段目は、いわゆる“おかる勘平”の話。そこに超悪役として(ほとんど)誰とも絡まずに出てきて目立つのが斧定九郎。実は一番大変かもしれない、おかるの母おかやは竹三郎。秀太郎(一文字屋お才)、松之介(源六)の達者なやりとりも見どころ。
 「口上」の並びは上手から、團十郎、左團次、孝太郎、愛之助、進之介、時蔵、我當、藤十郎(メインの挨拶)、勘九郎、七之助、橋之助、彌十郎、扇雀、翫雀、秀太郎、仁左衛門。
 「船弁慶」には船頭役で左團次、扇雀、七之助が登場。義経の家来4人は、男女蔵、薪車、壱太郎、新悟。
 ここまで観て、後ろ髪を引かれつつ帰京(新横浜までですが)。

 ご承知の通り、この2日後に勘三郎が亡くなった。
 思い返せば、今回の南座、ご陽気な演目がなかった。少なくとも、中村屋兄弟の出る演目は、そうではなかった。「口上」も、東京、大阪、名古屋と観てきたが、やはり、今回、ぎこちない感じが強かった気がする。
 そもそも、大阪松竹座、名古屋御園座まで足を伸ばして“勘九郎襲名披露”を追いかけたのは、個人的な“中村屋応援ツアー”だったわけで、勘三郎不在で心細かろうと、何者でもない一観客がいらぬお節介をしていただけなのだが、その根底には、こんなことになるのではないか、という不安があったのも事実。例の難聴に見舞われる以前から、勘三郎は、とにかく超人的な過密スケジュールで活動をしていたから、密かに「この人、死んじゃうんじゃないか」と思ったりしていた(同い年だし、その大変さが想像できたから)。それが現実となったわけだ。
 とにかく、我々は勘三郎を失った。勘三郎亡き後は、中村屋のみならず、歌舞伎界が大変だと思う。伝承芸である歌舞伎は、1人の役者が亡くなると、そこから伝わるべき芸が全て死ぬことになる。團十郎、菊五郎、仁左衛門の世代と、海老蔵、菊之助の世代を繋ぐはずの重要な役者がいなくなった。これは、深刻な事態なのだ。と、まあ、僕が言っても詮無いことなのだが……。
 なにはともあれ、これから先、1人でも多くの人が歌舞伎の劇場に足を運ぶことを祈らずにいられない。

 ミュージカル『女子高生チヨ』は、アトリエ・ダンカン製作の、一応“木の実ナナ、デビュー50周年記念”作品らしい。
 原作は「女子高生チヨ(64)」という実話に基づくコミック・エッセイのようで、64歳のチヨさんが突然、定時制高校に通い始めて巻き起こる騒動の数々、といった話。原作(ひつらさとる)の方は知らないが、舞台版(脚本・斎藤栄作)には、様々な人生における定時制高校の意味、とでも言うべきテーマが横たわっていて、バタバタの展開の割には、それが案外うまく表現されていた。
 ただ、楽曲が基本的に既存ヒット曲の替え歌なのが少し残念。
 情熱を持った高校教師役の新納慎也が物語の要となって(ギャグも飛ばしつつ)好演。その新納や、馬場徹、大山真志、窪塚俊介、才川コージといった若手男性陣が集客の目玉なのだろうか。てことは、男性客を呼ぶのが高橋愛(チヨの孫で狂言回し的役)か。その辺の客層と木の実ナナ、というのが相性がいいのか悪いのか、よくわからないが。他に、小沢真珠 明星真由美 大橋ひろえ、大和田獏が出演。
 始まって間もない(4日目)からかもしれないが(とはいえ、ほぼ中日)、木の実ナナのセリフの入りがイマイチで気になった。

 国立小劇場は『12月文楽公演』で、演目は、「苅萱桑門筑紫いえづと(かるかやどうしんつくしのいえづと)~守宮酒の段~高野山の段」と、「傾城恋飛脚~新口村の段」(「いえづと」という字がPCでは出てこない)。
 ここは一点だけ。前者の「守宮酒の段」が、なかなかに艶かしい話で、日本のエロティックさについての歴史的開放度が知れようというもの。こうした文化は西欧キリスト教的倫理感とは根本的に相容れない気がするが、いかがだろう。

 国立大劇場は『鬼一方眼三略巻~六波羅清盛館の場~今出川鬼一法眼館菊畑の場~檜垣茶屋の場~大蔵館奥殿の場』
 今回序幕となった「六波羅清盛館の場」の上演が約40年ぶりだそうで。それ以外は、二幕目が「菊畑」、三幕目~大詰が「一條大蔵譚」として、しばしば上演されている。
 今回は吉右衛門(鬼一方眼/一條大蔵卿)を中心にした舞台で、歌六、又五郎、歌昇、種之助、米吉といった播磨屋が勢揃い。他に、梅玉、東蔵、魁春、芝雀、錦之助、高麗蔵、松江、隼人らも顔を見せていた。

 新橋演舞場は『十二月大歌舞伎』
 昼の部は、通しで「御摂勧進帳~山城国石清水八幡宮の場~越前国気比明神境内の場~加賀国安宅の関の場」「山城国石清水八幡宮の場」「暫」「越前国気比明神境内の場」「色手綱恋の関札」「加賀国安宅の関の場」「芋洗い勧進帳」、という別タイトルがそれぞれ付いている。各場の趣向の説明になっているわけだ。
 「山城国石清水八幡宮の場」「暫」は、歌舞伎十八番の「暫」とほぼ同じ。「暫!」と叫んで出てくる熊井太郎が松緑。あとは、権十郎、亀三郎、亀寿、(女たらしの、と松緑が紹介していた)松也、萬太郎、右近、亀蔵、右之助、秀調、彦三郎といった布陣。
 「色手綱恋の関札」は舞踊で、菊之助(義経)が梅枝(忍の前)を口説いて踊るのが個人的には肝。他に、松緑、亀三郎・亀寿兄弟(昼の部は基本、この兄弟が大活躍)。
 「芋洗い勧進帳」は、弁慶=三津五郎、富樫=菊五郎、義経=菊之助。他に、團蔵、錦吾、亀寿、宗之助、萬太郎、右近、廣太郎ら。ここでは三津五郎が大立ち回りを演じる。
 夜の部は、菊五郎(佐野次郎左衛門)の「籠釣瓶花街酔醒」通しと、三津五郎の「奴道成寺」。
 「籠釣瓶花街酔醒」の配役は、八ツ橋=菊之助、佐野次郎左衛門の下男治六=松緑、八ツ橋の間夫・繁山栄之丞=三津五郎、釣鐘権八=團蔵、立花屋長兵衛=彦三郎、立花屋おきつ=萬次郎、佐野次郎左衛門の同業者丈助=亀蔵、同丹兵衛=秀調、傾城の九重=梅枝、同七越=松也、同初菊=右近、遣手お辰=歌女之丞。あと、最初に佐野次郎左衛門を騙そうとする客引きで橘太郎、芸者で芝のぶ、といった人も出ていた。
 この演目、菊五郎劇団とは縁が薄かったそうで、菊五郎、菊之助はじめメインどころも初役が多いようす。でも、さすがに自然にハマっていた。中でも團蔵の“ちょいワル”釣鐘権八は最高。もちろん、菊之助の八ツ橋は美しく、ウットリしたことは言うまでもない。
 「奴道成寺」は三津五郎の趣向を凝らした踊りを堪能する演目で、楽しかった。が、9月の『秀山祭』での「京鹿子娘道成寺」同様、ここでも所化の亀寿がサーヴィスの手ぬぐいを3階席まで投げ上げ、負けじと前回は出演していなかった兄の亀三郎も続く、という目立ちぶり。兄弟揃ってドヤ顔だった(笑)。
 なお、この演目中、長唄の三味線・杵屋巳太郎さんと(聞き違いでなければ)常磐津の三味線・常磐津菊寿郎の襲名が、三津五郎の口上で披露された。それと、筋書きで、梅枝と萬太郎の名題昇進も紹介されていた。おめでとう。

 劇団☆新感線の『ジパング・パンク~五右衛門ロックⅢ~がシアター・オーブに登場。サブタイトルにもある通り「五右衛門ロック」シリーズの最新作にして、どうやら最終作でもあるようだ。と言いつつ、続く気もするが(笑)。
 石川五右衛門VS.豊臣秀吉という、歌舞伎でもお馴染みの物語を大枠にして、明智光秀の遺児(明智姓を生かして、初めは名探偵として登場させる仕掛けあり)や堺の悪徳商人、他の盗賊たちが宝探しに奔走する、という王道の活劇。中央で開閉する可動式の湾曲した壁を、かなり精緻なプロジェクションと連動させて、宙吊り等も交えつつスピーディに展開する舞台は楽しい。アクションも、よく訓練されている。
 が、いつも気になるのが、セリフの聴き取りにくさ。半分はPAのせいかと思うが、半分は歌舞伎で言うところの“口跡”の問題ではないだろうか。事実、“口跡”のいい高橋由美子のセリフはよくわかる。もっとも、そういうことを演出家を筆頭に劇団が気にしていない風にも見え、言っても詮無いことなのかもしれないが。時折感じる客席の微妙に馴れ合った空気も含め、この劇団の公演を、どこか心から楽しめないワタクシではあります。
 出演は、劇団のいつもの顔ぶれ(古田新太、橋本じゅん、高田聖子、粟根まこと)に加え、三浦春馬、蒼井優、村井國夫、麿赤兒らが初参加。前作『薔薇とサムライ~ゴエモン・ロック オーヴァ・ドライヴ~から引き続いてが、浦井健治と天海祐希(映像出演)。2004年(そんな前か!)の『SHIROH(シロー)』以来の登場が、前述の高橋由美子。

(12/30/2012)

Copyright ©2012 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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