[ゆけむり通信 番外2012]

  • 11/ 5/2012
    『浮世柄比翼稲妻(うきよづかひよくのいなづま)』
    国立劇場大劇場
  • 11/ 6/2012
    『吉例顔見世大歌舞伎 夜の部(一谷嫩軍記~熊谷陣屋/汐汲/四千両小判梅葉(しせんりょうこばんのうめのは))』
    新橋演舞場
  • 11/ 7/2012
    『吉例顔見世大歌舞伎 昼の部(双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)~井筒屋~難波裏~引窓/文七元結)』
    新橋演舞場
  • 11/ 8/2012
    『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』
    東京宝塚劇場
  • 11/12/2012
    『十一月花形歌舞伎 夜の部(天竺徳兵衛新噺(てんじくとくべえいまようばなし))』
    明治座
  • 11/13/2012
    『客家~千古光芒の民~』
    天王洲銀河劇場
  • 11/29/2012
    『JIN~仁~
    『ゴールド・スパーク~この一瞬を永遠に~

    東京宝塚劇場

2012年11月観劇記

 国立歌舞伎は、鶴屋南北作『浮世柄比翼稲妻』の通し(補綴/国立劇場文芸課)。
 白井権八を幡随院長兵衛が「お待ちなせえ」と呼び止める二幕目「鈴ヶ森」の場が有名な演目だが、国立なので“通し”での上演。いつも思うが、通しは面白い。たとえ、全体のつながりが荒っぽくても……。いや、荒っぽいから、かも。
 悪役の不破伴左衛門(こちらが主役)と幡随院長兵衛が幸四郎。腰元岩橋(後に)傾城葛城、下女お国、幡随院長兵衛女房お近が福助。本来は、ここに染五郎が、名古屋山三、白井権八の役で加わるはずだったようだが、他ならぬ国立劇場での舞踊公演中のケガによる休演のため、前者を錦之助、後者を高麗蔵が代演。
 他に、友右衛門、彌十郎、錦吾、右之助、市蔵、歌江、新悟、隼人、といった布陣。
 幸四郎も、もちろんハマり役で貫禄を見せたが、三幕目、浅草鳥越山三浪宅の場での福助が、傾城葛城と下女お国を入れ替わりの二役で演じて光る。

 新橋は『吉例顔見世大歌舞伎』で、菊五郎、仁左衛門、時蔵、菊之助と揃うはずだったが、こちらも残念ながら仁左衛門が休演(月の最後の方に復帰)。
 というわけで、昼の部の初めが、左團次の濡髪長五郎、時蔵の遊女都後に女房お早、翫雀の放駒長吉、扇雀の山崎屋与五郎、そして仁左衛門に代わって梅玉の南与兵衛後に南方十次兵衛で、「双蝶々曲輪日記~井筒屋~難波裏~引窓」。続いて、菊五郎、時蔵、菊之助で「文七元結」
 夜の部は、松緑が仁左衛門に代わって熊谷直実を演じる「一谷嫩軍記~熊谷陣屋」と、藤十郎、翫雀の踊り「汐汲」、そして「四千両小判梅葉」という個人的には非常に珍しい演目の通しを菊五郎中心で、というプログラム。
 「引窓」の場が有名な「双蝶々曲輪日記」は、「井筒屋」の場の上演が歌舞伎では珍しいらしく、一昨年の大阪松竹座での上演が半世紀以上ぶりだとか。左團次の長五郎が意外にも若々しく、よかった。翫雀、扇雀の兄弟も、それぞれ持ち味を発揮。あと、「引窓」での竹三郎の長五郎の母お幸が、さすがにしっとりした味わいだった。時蔵は、ここだけでなく、全てで素晴らしい。
 「文七元結」は菊五郎劇団のお家芸。團蔵の角海老藤助とか、出てくるだけでうれしくなる。他に、松緑、魁春、東蔵、右近、松緑の長男・藤間大河といった顔ぶれ。
 「熊谷陣屋」は、さすがに仁左衛門の不在が痛かった。仁左衛門の代わりだと思うと、松緑ではちょっとキツい。他は、源義経=梅玉、相模=魁春、藤の方=秀太郎、白毫弥陀六=左團次、梶原平次=松之助。
 「四千両小判梅葉」は黙阿弥の白波モノで、実際にあった御金蔵破り事件を元にしているらしいが、2人の犯人が示し合わせる発端の次が、もう盗み出した千両箱を自宅に運び入れている場面で、次では、すでに逃走先で捕まって江戸へ護送される途中、というスピード感が面白い。で、最後に長い牢中の描写があって、処刑のために牢から出されたところで終わる。不思議だけど味わいのある演目。野州無宿富蔵の菊五郎と示し合わせる浪人が梅玉、護送される富蔵との別れの場面に出てくるのが時蔵=女房と東蔵=義父、別れを目溢ししてやる役人が彦三郎、菊五郎の仇敵が團蔵、牢名主が左團次、その他、松緑や菊之助がイキのいい新入り囚人として出てくる等、にぎやかな顔ぶれ。

 宝塚1本目は、凰稀かなめトップ就任後初の新生宙組『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』
 原作(田中芳樹)は未読だが、宝塚版を観る限りは、SFというより、どこか『ベルばら』を思わせる展開。だから宝塚でも舞台化したのだろうが(ストレート・プレイとしては、すでに舞台化済み、らしい)。
 小池修一郎(脚本・演出)は、宇宙船同士の戦闘シーンを、一昔前のTVゲームを思わせるプロジェクター画像と(宝塚ではよくある)戦闘群舞とで簡潔に表現。地上戦のアクションも最低限に留め、もっぱら各勢力の権謀術数が入り乱れて展開するドラマに仕立てた。プラス、敵味方を超えた共感と友情の物語。
 結果、緒月遠麻演じるヤン・ウェンリーと、朝夏まなと演じるジークフリード・キルヒアイスに感情移入してしまうことになる。七海ひろき演じる善悪不明のウォルフガング・ミッターマイヤーも個性が強烈。その分、凰稀かなめ演じるラインハルト・フォン・ローエングラムが、カッコいいものの、後半になって、なんとなく脇に回る印象。
 一緒に出演することが多い気がする、一樹、磯野の両千尋が、いつもながらの存在感で盛り上げる。娘役新トップの実咲凜音は、しどころの少ない役ながら、目には止まった。
 いかにも続編が作られそうな終わり方だが……、さて。

 明治座は『十一月花形歌舞伎』の夜の部「天竺徳兵衛新噺」の通し。“三代猿之助四十八撰の内”という但し書きが付いている。でもって、“市川猿之助宙乗り相勤め申し候”な舞台。早い話、大ケレンな演目なわけだ。
 猿之助が、主人公の大悪人、天竺徳兵衛を、そして早替わりで、小平次とその女房おわ、の2人を演じる。その他の主な配役は、尾形十郎=右近、枝折姫=笑也、木曽官の霊/馬士多九郎=猿弥、小平次妹おまき=米吉、百姓正作=寿猿、奴磯平=亀鶴、梅津桂之介=男女蔵、川左馬次郎=門之助、今川奥方葛城=萬次郎。菊地大膳太夫貞行の段四郎は休演。
 序幕の遠州の船上から、ジョークを交えたフリートークっぽい(ある種の)口上を述べて、猿之助は好調。襲名の時とは打って変わって、リラックスして演じていた。もちろん、熱演のほどは変わらないが。ま、そういう演目なので、大変ではあるが楽しくもあるのだろう。観ているこちらも楽しくなった。

 天王洲銀河劇場は、謝珠栄主宰、TSミュージカルのオリジナル・ミュージカル『客家~千古光芒の民~』。漢民族内の“一族”である客家(はっか)が、南宋末期、元の侵攻に伴って南下し、海を越えて(たぶん)台湾に渡るまでの物語。
 “非戦”を一族の旨としながらも、誇りや怨恨(近親を殺された)のために戦いを挑まずにはいられない若者たちの、焦燥と葛藤、友愛が描かれるわけだが(そこには、複雑な人間として描かれるチンギス・ハーンとの交流もあり、実は、それが肝かも)、形而上的なテーマを抱えているので、第1幕は、やや退屈。歌の内容も観念的な要素が多くなっている。第1幕の最後に風雲急を告げ、それが伏線になって第2幕にサスペンスが生まれて、ようやくドラマが動いていく感じ。
 このカンパニーのウリであるダンス(+アクション)は、振付・演技ともに充実していて、ドラマにとっても効果的だが、やや過多か。とはいえ、凡百のミュージカルよりははるかに面白い舞台だった。大田創の美術、小川修の照明、西原梨恵の衣装が、三位一体で素晴らしい。
 いずれにしても、こんな時代にこの物語を日本で上演した謝珠栄の真意が興味深い。
 主な出演者は、水夏希、吉野圭吾、畠中洋、平澤 智、未沙のえる、伊礼彼方、坂元健児、今拓哉。音楽/玉麻尚一、演出・振付・ミュージカル台本・作詞/謝 珠栄、原作/斎藤栄作、アクション/渥美博。

 宝塚2本目は雪組公演で『JIN~仁~『ゴールド・スパーク~この一瞬を永遠に~。トップ音月桂、舞羽美海のサヨナラ公演。
 前者は、TVドラマ化もされた、あのヒット漫画の舞台化。なぜタイムスリップするのか、の表現が原作を知らないと、わかりにくかったんじゃないか、と思ったが、ま、別にいいのか(笑)。それも含めて、(細かいところで原作ともドラマとも人物設定が違っていることは別にして)いろんな意味で大雑把な脚色だが、一幕にまとめるためには致し方ありますまい。とはいえ、各キャラクターに深みがなさすぎた気はする。
 後者のショウは、よくまとまっていたようだが……、帰国後の時差ボケもあって、途中うつらうつらしました。すみません(笑)。

(12/26/2012)

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