[ゆけむり通信 番外2012]

  • 8/2/2012
    『ダンサ・セレナータ』
    『セレブリティ』
    東京宝塚劇場
  • 8/2/2012
    『ビター・デイズ、スウィート・ナイツ』
    CBGKシブゲキ!!
  • 8/13/2012
    『八月花形歌舞伎 昼の部(桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう))』
    新橋演舞場
  • 8/14/2012
    『大江戸緋鳥808』
    明治座
  • 8/15/2012
    『八月花形歌舞伎 夜の部(慙紅葉汗顔見勢(はじもみじあせのかおみせ))』
    新橋演舞場
  • 8/21/2012
    『ロミオとジュリエット』
    東京宝塚劇場

2012年 8月観劇記

 宝塚は星組公演。第 1部『ダンサ・セレナータ』、第 2部『セレブリティ』
 正塚晴彦作・演出の『ダンサ・セレナータ』がとても面白かった。
 スペインかポルトガルあたりを思わせる某国の都会にある、ダンス・ショウを見せる店。そこのダンサーのリーダーが主人公(柚木礼音)。この某国、植民地支配で繁栄してきたらしいが、今やその植民地で反乱が起こっていて鎮圧出来ずにいる。ヒロイン(夢咲ねね)は植民地出身で、兄が独立運動に関わっている。そのヒロインがひょんなことからダンス・ショウに加わることになってドラマが動き始める。
 素晴らしいショウを作ることにしか興味がない、ある意味身勝手な主人公だが、そのためにはヒロインの才能が必要で、結果的には秘密警察に捕らえられた彼女の兄を救わざるをえなくなる。その主人公の心の動きが自然で無理がない。その先に、もう一捻りドラマがあるのもいい。ダンサー仲間たちとの、ある意味クールな関係も、リアリティがある。秘密警察のボス(紅ゆずる)は有能で非情な男なのだが、主人公に自分と似たもの(おそらく一匹狼的人格)を見出し、利用しようという腹積もりもあって近づいてくる。そこに屈折した友情のようなものが生まれる、というサブ・ストーリーも悪くない。
 なにより、誰のセリフも説明的でなく、多くを語らないで様々な事情がわかる、という脚本がいい。ファドやタンゴのエッセンスをちりばめたような楽曲もよかった。
 というわけで、かなり満足度が高かった。
 『セレブリティ』は、安定したダンス・ショウ。てか、柚木礼音が出ればショウは無敵な感じになるな、やっぱり。あと、奔放な紅ゆずるが、またAKBメンバー(まゆゆ)を発見してアドリブ飛ばしてました。
 いつも思うことですが、涼紫央、白華れみといった実力も実績もある人たちの退団は、惜しい限りです。

 新橋演舞場の『八月花形歌舞伎』は、昼の部が福助の『桜姫東文章』=通称『桜姫』、夜の部が海老蔵の『慙紅葉汗顔見勢』=通称『伊達の十役』の、それぞれ通し。
 福助の『桜姫』は、 05年にシアターコクーンでも観たが(演出/串田和美)、今回(補綴/郡司正勝→補綴・演出/石川耕士)の方がより面白いと感じた。その理由の多くは、悪役・釣鐘権助を海老蔵がやったところに拠っていると思う。 05年時の釣鐘権助は橋之助が清玄との二役で演じているが、この手の、ちょっと色気のある小悪党役は海老蔵が見事にハマる。そして、福助自身も、あの時よりはるかに余裕があった。残月=市蔵と長浦=萬次郎の自滅する悪党コンビもよかった。入間悪五郎の亀蔵もぴったりだったが、ちょっと見せ場が少なかったのが残念。清玄の愛之助は、もう一息。
 『伊達の十役』には“三代猿之助四十八撰の内”というリードが付いていて、現猿翁が復活させた演目だが、2年前にやはり新橋で海老蔵が 1度演じていて、今回はかなり手の内な感じになっていた。とにかく、“市川海老蔵十役早替り宙乗り相勤め申し候”というケレンの芝居で、楽しい楽しい。これから観始めると、誰でも、すんなり歌舞伎が好きになるかも(てか、海老蔵ファンになる?)。という訳で、海老蔵にばかり目が行くが、脇では、右近の八汐がなかなかだった。

 シネセゾン渋谷跡に昨年出来た CBGKシブゲキ!!(242席)という劇場での公演が『ビター・デイズ、スウィート・ナイツ』。初めて訪れたが、小振りのオフ劇場のイメージ。親密感のある、好ましい規模の劇場だ。
 出てくる役者は男女 2人ずつの 4人。その辺もオフのステージを意識しているのかもしれない。もっとも、1人は比重が軽いが。
 話は亡くなった女性・フユコ(新妻聖子)を軸に進んでいく。フユコと電撃的に結婚した夫・ミノル(橋本さとし)はカメラマンで、彼女の死後、全くやる気を失っている。フユコの親友で、彼女とミノルが出会うきっかけを作った女性・ヤヨイ(堀内敬子)は、ミノルの再起を促すのに腐心している。そこに、家出同然でアメリカに渡って長い間音信不通だった、フユコの妹・ナツコ(新妻聖子二役)が、フユコそっくりに成長して帰ってくる。
 ドラマの肝は、“ミノルは再起できるのか”、だが、観客を引っ張っていく謎は、“フユコはなぜ死んだのか”、そして、“ナツコはなぜ突然帰ってきたのか”、だ。そうした謎を小出しに解き明かしつつ、一方でミノルを間にしたヤヨイとナツコの、ある種の三角関係も生じ、舞台は緊張していく。
 話自体は、最終的に、やや肩透かしの感がなきにしもあらずだし(ナツコを追ってアメリカからやって来る日系の青年・ジュン=上山竜司の存在自体が、やや都合よすぎる)、生前のフユコも登場する回想場面と現在との行き来が、とてもうまくいっているところもありながら、ややぎこちないところもあったりするが、全体としては、少人数の緊迫したドラマに支えられたミュージカル作りが、かなりの程度成功している、と言っていい。
 さらなる挑戦に期待したい。作・演出/G2、音楽/荻野清子。

 明治座は、大地真央の『大江戸緋鳥808』。原作/石ノ森章太郎、脚本/渡辺和徳、演出/岡村俊一。
 なぜ観に行ったかと言うと、専科の名優、未沙のえるの宝塚退団後初出演作だから。でもって、観劇日には終演後にトーク・ショウがあり、出演者が大地真央・未沙のえる・湖月わたる(司会)だったから。大地真央と未沙のえるって、宝塚で同期なんですね。聞きたいじゃないですか、裏話(笑)。
 ストーリーは同じところをグルグル回ってる感もあったが、アクションや転換がスピーディで飽きない作りになっていた。大地真央のスターとしての魅力も、もちろん大きい。未沙のえるは、話のつなぎ役として難しいところをこなしていた。さすが。脇では、山崎銀之丞が渋く光っていた。あと、アクションのみなさんが立派。
 裏話は……まあ、びっくりするようなことはありませんでした(笑)。でも、楽しかった。未沙が「女優デビューした未沙のえるです」と挨拶すれば、すかさず大地が「女優の大地真央です」と続けるあたりの呼吸は、歌劇団生活で培ったものかも。

 宝塚は新生月組の『ロミオとジュリエット』。 2011年の雪組による上演の再演で(その前に 2010年に星組が大劇場以外でやっているようだが観ていない)、潤色・演出は小池修一郎、オリジナルはフランスのジェラール・プレスギュルヴィック Gerard Presgurvic。本国版が、今度、渋谷ヒカリエ内のシアター・オープにやって来る(呆れたことに、演奏はテープだとか)。
 ちなみに、今、読み返したのだが、雪組公演の時に、こんな感想を書いている。
 [フランス産舞台を、例によって小池修一郎が潤色。正直、ロミオのキャラクターがイマイチ納得できなかったが、ま、いっか。てか、そもそも、このミュージカル、原作(あるいは『ウエスト・サイド物語』)を超えて面白いですかね?]
 ブレがない。今回も同じことを感じた(笑)。なので、なぜ、これを再演するのか大いに疑問。
 新トップの龍真咲は、雪組でロミオを演じてトップになった音月桂と似て、子供っぽさを残した初々しい印象だが、これは役柄ゆえなのかも。と言いつつ、実のところ、これまで月組は霧矢大夢ばかり観ていて、他の役者にまで目が行ってなかった。なので、ホントのところはよくわからない。申し訳ない。
 トップ娘役の愛希れいかは、線が細く物足りない印象だが、なにしろ演目が気に入っていないので、本当の評価は次回に、か。
 ちなみに、今回は 2番手の明日海りおが日替わりでロミオを演じていた。演目が面白ければ、そちらも観たい気がしたが、なにしろ気に入っていないので(笑)、パス。
 よかったのは、専科の、乳母役・美穂圭子とロレンス神父役・英真なおき。この2人がいなければ、全く成り立たなかっただろう。

(9/15/2012)

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