[ゆけむり通信 番外2012]

  • 7/2/2012
    『天日坊』
    シアターコクーン
  • 7/18/2012
    『七月大歌舞伎 夜の部(将軍江戸を去る/口上/黒塚/楼門五三桐(さんもんごさんのきり))』
    新橋演舞場
  • 7/19/2012
    『七月大歌舞伎 昼の部(ヤマトタケル)』
    新橋演舞場
  • 7/22/2012
    『男の花道』
    ル・テアトル銀座

2012年 7月観劇記

 コクーン歌舞伎『天日坊』は、黙阿弥の『五十三次天日坊』という長尺の芝居を元に宮藤官九郎が脚本を書いた、古典のような、新作のような……そんな作品。コクーン歌舞伎なので、演出は串田和美。
 八大将軍吉宗の御落胤を騙った、あの“天一坊”事件を、例によって歌舞伎の約束事で時代を鎌倉とし、頼朝の御落胤を騙る“天日坊”の話として仕立て直してあるわけで、あらすじは“ご承知の通り”とさせていただきます。
 孤児の法策→天日坊が勘九郎。盗賊にして平家再興の謀反を企むのが、人丸お六=七之助と、地雷太郎=獅童。御落胤のネタを密かに抱えていたお三婆と盗賊の仲間赤星大八の二役=亀蔵。平家方の公家猫間光義=萬次郎。天日坊の陰謀を暴く潜入捜査官的な役回りが、白井晃、近藤公園。法策の育ての親と北条家家老の二役を真那胡敬二。あと、若手では巳之助と新悟も出演している。
 全体としては、けっこう面白かった。特に、黙阿弥調で歌舞伎役者たちがやりとりする場面は。話は筋が通ったり通らなかったりだが、それが歌舞伎なので問題なし。むしろ、筋が通らなくいところの方が面白い。逆に、流れの中で妙に心理の辻褄を合わせようとするところは、ちょっと退屈。ことに主人公の気持ちは、あんまり追ってくれない方がいい。ちなみに、法策→天日坊が、実は平家方の大物、木曽義仲の子、義高だったという裏設定があって、この世に怨念を残した亡き義仲に後押しされる形で法策は天日坊への道を突き進んだのだ、ということがわかる。ここのところを、もっと強調していけば、さらに面白くなった気がする。なにしろ、最初に化け猫が出てくるぐらいなので、主人公の悩みは脇において、義仲の怨念の線で押したかった。
 と注文をつけつつも、先に書いた通り、けっこう楽しんだ。しかし、七之助はいいなあ。

 新橋演舞場の『七月大歌舞伎』は、先月に続いて、“初代市川猿翁・三代目市川段四郎五十回忌追善”+“二代目市川猿翁・四代目市川猿之助・九代目市川中車襲名披露+五代目市川團子初舞台”。團十郎・海老蔵出演のせいか、この月もよく入っているようだった。
 前月夜の部でやった“スーパー歌舞伎”『ヤマトタケル』が今月は昼の部。出演者は先月とほぼ(全く?)同じで、開演前の亀治郎改め猿之助と中車による“ミニ口上”も先月同様やったが、さすがに今月は長々とはしゃべらなかった。多少は落ち着いたのだろう。てか、先月が興奮状態だったのか。しかし、『ヤマトタケル』は、古典と呼ばれるには、まだまだ時間をかけて練りこまれないとダメだろうな。
 夜の部は、徳川慶喜=團十郎、山岡鉄太郎=中車、高橋伊勢守=海老蔵で『将軍江戸を去る』『口上』、亀治郎改め猿之助の安達原鬼女で『黒塚』、石川五右衛門=海老蔵と、なんと真柴久吉=猿之助改め猿翁で『楼門五三桐(さんもんごさんのきり)』
 『将軍江戸を去る』は本来、慶喜と山岡鉄太郎の芝居になるのだが、ここでは海老蔵の存在感が大きい上に中車が一本調子なので、結果、團十郎と海老蔵の親子共演を楽しむ演目になった。
 『口上』は、大人数が並んだ先月と違って、亀治郎改め猿之助、中車、團子の他は、團十郎と海老蔵だけ。まあ、この親子が出れば充分ということだろう。市川宗家(團十郎)が出て中央で挨拶するからには、猿翁が最後に襖を開けて出てくるわけにもいかないだろうし。團十郎、海老蔵の口上は楽しいものだった。
 『黒塚』には、猿之助の他に、阿闍梨祐慶役で團十郎が出演。俄然華やかになる。猿之助の踊りはうまいが、この演目自体は、個人的にはちょっと苦手。團十郎に従う山伏役は、門之助と右近。
 最後の『楼門五三桐』は、わずか 10分の演目。とにかく、猿翁を出すためにだけやるようなものだが、なにしろ石川五右衛門が海老蔵なので、派手。見映えがする。猿翁の舞台はこれが最後なのかなあ。それとも復活するのか。
 いずれにしても、この月の夜の部は團十郎、海老蔵が出るので楽しかった。

 ル・テアトル銀座の『男の花道』は、福助初の外部出演舞台。
 この演目、古川ロッパの日記でタイトルは知っていたが、観るのは初めて。これが面白かった。江戸時代に実在した歌舞伎の女形と、やはり実在した眼科医の、これはフィクションだと思われる熱い交流を描いた話で、詳細は各自調べてください(笑)。
 芸一途の女形が福助、一本気だが優しい眼科医が梅雀。この 2人が役にハマって素晴らしい。新たな脚本(齋藤雅文)が当て書きしたところもあるのだと思うが、とにかく、 2人のキャラクターが、劇的過ぎるストーリーを納得出来るものに仕立てている。
 周囲では、尾上松也が演じた中村勘三郎が思いの外よかった。眼科医の弟子役の風間俊介も悪くない。あと、新派のベテラン森本健介が、さすがの味だった。
 演出・マキノ雅彦(=津川雅彦)、音楽・宇崎竜童。

(9/14/2012)

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