[ゆけむり通信 番外2012]

  • 6/7/2012
    『六月大歌舞伎 夜の部(ヤマトタケル)』
    新橋演舞場
  • 6/11/2012
    『六月大歌舞伎 昼の部(夏祭浪花鑑/素襖落(すおうおとし))』
    『六月大歌舞伎 夜の部(石川五右衛門)』
    御園座
  • 6/19/2012
    『六月大歌舞伎 昼の部(小栗栖の長兵衛/口上/義経千本桜~川連法眼館の場)』
    新橋演舞場
  • 6/20/2012
    『6月歌舞伎鑑賞教室(歌舞伎のみかた/俊寛~鬼界ヶ島の場)』
    国立劇場大劇場
  • 6/21/2012
    『華やかなりし日々』
    『クライマックス』
    東京宝塚劇場

2012年 6月観劇記

 新橋演舞場の『六月大歌舞伎』は、昼の部が、『小栗栖の長兵衛』『口上』『義経千本桜~川連法眼館の場』、夜の部が『ヤマトタケル』。この月は“初代市川猿翁・三代目市川段四郎五十回忌追善”と銘打たれ、さらに“二代目市川猿翁・四代目市川猿之助・九代目市川中車襲名披露+五代目市川團子初舞台”だったりして世間的に大話題……なのかどうか知らないが、「口上」のある昼の部は早くから売り切れた。ちなみに(ご承知だと思うが)、三代目市川猿之助→二代目市川猿翁、二代目市川亀治郎→四代目市川猿之助、香川照之→九代目市川中車という襲名で、五代目市川團子は中車の息子。
 『小栗栖の長兵衛』は、長兵衛を中車が演じる、九代目中車の歌舞伎デビュー作。初代猿翁(二代目猿之助)のレパートリーだったという澤瀉屋所縁の演目だそうで、村の嫌われ者の粗暴な長兵衛が落ち延びる明智光秀を倒す手柄を立てたことがわかるに及んで村人たちの態度が逆転する、という皮肉な喜劇。なのだが、中車の演技は、余裕がないせいか微妙に空回り。ともあれ、重い第一歩を踏み出した記念すべき舞台。脇は、右近、門之助、笑三郎、寿猿、猿弥、春猿、そして段治郎改め月乃助といった面々が固めていた。
 『口上』は“初代市川猿翁・三代目市川段四郎五十回忌追善”ד二代目市川猿翁・四代目市川猿之助・九代目市川中車襲名披露+五代目市川團子初舞台”。舞台には、上手から、秀太郎・竹三郎・寿猿・門之助・彌十郎・藤十郎・段四郎・亀治郎改め猿之助・中車・團子・笑也・笑三郎・春猿・猿弥・右近、と並ぶ。で、最後に後ろの襖が開いて、台に乗った三代目猿之助改め二代目猿翁が登場。ままならないながらも気迫のこもった口上を述べる。眼光鋭く客席を見渡すのが舞台に対する執念の強さを表わしている気がした。
 『義経千本桜』は“三代猿之助 四十八撰の内”という、これまた澤瀉屋所縁の演目。『川連法眼館の場』は狐忠信が正体を現す『千本桜』のクライマックスで、最後に猿之助が“宙乗り狐六法相勤め申し候”となる。配役は、佐藤忠信/忠信実は源九郎狐が亀治郎改め猿之助、源義経=藤十郎、静御前=秀太郎、川連法眼=段四郎、飛鳥=竹三郎、駿河次郎=門之助、亀井六郎=右近。新猿之助の狐忠信は愛嬌があって楽しかった。
 『ヤマトタケル』は、猿之助、中車の他に、右近、猿弥、笑三郎、笑也、春猿、寿猿といった、いわゆる猿之助門下はもちろん、竹三郎、彌十郎、門之助といった所縁の役者も勢ぞろいして盛り上げる。が、実は、スーパー歌舞伎、セリフが説明的な現代語の部分が多く、そこがつまらない。新猿之助には、そこも改良していただきたいと切に願う。

 宝塚宙組公演の『華やかなりし日々』『クライマックス』は、トップスター=大空祐飛とトップ娘役=野々すみ花のサヨナラ公演。
 『華やかなりし日々』は、タイトルに秘められているように「華麗なるギャツビー」を下敷きにしたような作品。プラス『フォーティセカンド・ストリート 42ND STREET』な感じ。大恐慌前のニューヨークを舞台にしているのだが、この脚本が、ご都合主義すぎ。ことに、登場するジーグフェルドやジョージ・ホワイトという実在のプロデューサーに関する事実関係が、かなりいい加減で、ちょっとシラケる。が、まあ、最後はカッコよく主人公が去っていくのでOK、というのが宝塚ならではだが。
 『クライマックス』は、『華やかなりし日々』以上にサヨナラ公演を意識した作り。で、サヨナラ公演には、王位継承の意味もあって、大空祐飛と凰稀かなめの絡みも多め。こういうところを、宝塚ファンは楽しむのだろう。実際、よく出来ていた。

 御園座の『六月大歌舞伎』は成田屋中心。昼の部が『夏祭浪花鑑』『素襖落(すおうおとし)』、夜の部が『石川五右衛門』
 『夏祭浪花鑑』は、海老蔵が団七九郎兵衛と徳兵衛女房お辰の二役で、団七女房お梶は孝太郎、徳兵衛は男女蔵、釣舟三婦は左團次、団七義父義平次は市蔵という顔ぶれ。男女蔵の徳兵衛はまだまだな感じだが、その男女蔵や、珍しく白塗りで磯之丞をやった亀三郎あたりが重い役を余裕をもって演じるようになると、全体に厚みが出て面白くなるのだろう。その点、女形は成長が早いようで、今回も梅枝(傾城琴浦)はよかった。ちなみに海老蔵は、依然、姿形ほどセリフは決まらない。逆に言うと、姿形は素晴らしい。
 『素襖落』は松羽目物で、コミカルな舞踊が見どころ。團十郎の太郎冠者が実に楽しい。
 『石川五右衛門』は海老蔵のために書き下ろされた新作で、09年に新橋演舞場で初演されている。というわけで、海老蔵のカッコよさが堪能できる演目。仕掛けも工夫されていて、最後には宙乗りで“つづら抜け”も披露。大満足、と言いたいところだが、序盤の“修行”のあたりが説明過多でまどろっこしい感じもある。ちなみに、團十郎は豊臣秀吉役で登場、貫禄の違いを見せつけた。

 国立劇場は、『6月歌舞伎鑑賞教室』で、本公演とは違った趣向。まず、『歌舞伎のみかた』という解説があって、その後、本編の『俊寛~鬼界ヶ島の場』
 『歌舞伎のみかた』の解説は若い大谷廣太郎。まっさらの舞台があり、花道のすっぽんから廣太郎登場。舞台の仕掛けの話から入って、音楽の話に移り、研修生たちの立ち回りがあり、最後に「俊寛」の背景を説明して終了。想像以上に面白かった。
 『俊寛』は、俊寛=橋之助、千鳥=児太郎、瀬尾太郎=團蔵、丹左衛門=権十郎、康頼=芝喜松、成経=芝のぶ、という顔ぶれ。橋之助はますます貫禄が出てきた。児太郎はまだまだだが、こういう機会でないと演じる機会のない康頼、成経を、芝喜松、芝のぶが確かな演技でこなすのが面白かった。超憎まれ役の團蔵は楽しそう。
 国立の歌舞伎鑑賞教室、初心者のみなさんはぜひ、と言いたくなる出来。1500円の3階席で充分です。

(9/13/2012)

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