[ゆけむり通信 番外2012]

  • 5/7/2012
    『五月花形歌舞伎 夜の部(椿説弓張月)』
    新橋演舞場
  • 5/8/2012
    『ドン・カルロス』
    『シャイニング・リズム!』
    東京宝塚劇場
  • 5/9/2012
    『五月花形歌舞伎 昼の部(西郷と豚姫/紅葉狩/女殺油地獄)』
    新橋演舞場
  • 5/10/2012
    『平成中村座五月大歌舞伎 昼の部(本朝廿四孝〜十種香/四変化 弥生の花浅草祭/め組の喧嘩)』
    『平成中村座五月大歌舞伎 夜の部(毛抜/志賀山三番叟/髪結新三)』
    平成中村座(浅草)
  • 5/14/2012
    『團菊祭五月大歌舞伎 昼の部(菅原伝授手習鑑〜寺子屋/身替座禅/封印切)』
    『團菊祭五月大歌舞伎 夜の部(絵本太功記〜尼ヶ崎閑居の場/高坏(たかつき)/ゆうれい貸屋)』
    大阪松竹座
  • 5/21/2012
    『文楽五月公演 第一部(八陣守護城(はちじんしゅごのほんじょう)〜門前の段〜毒酒の段〜浪花入江の段〜主計之介早討の段〜正清本城の段/契情倭荘子(けいせいやまとぞうし)〜蝶の道行)』
    国立劇場小劇場
  • 5/24/2012
    『文楽五月公演 第二部(傾城反魂香(けいせいはんごんこう)〜土佐将監閑居の段/艶容女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)〜酒屋の段/壇浦兜軍記〜阿古屋琴責の段)』
    国立劇場小劇場
  • 5/25/2012
    『ダウンタウン・フォーリーズ・デラックス』
    渋谷区文化総合センター大和田さくらホール

2012年 5月観劇記

 新橋演舞場の『五月花形歌舞伎』は、昼の部が、翫雀(=豚姫)と獅童(=西郷隆盛)の『西郷と豚姫』、福助(=更科姫実は戸隠山の鬼女)+獅童(=平維茂)で『紅葉狩』、愛之助(=与兵衛)+福助(=お吉)で『女殺油地獄』、夜の部が『椿説弓張月』の通しで、源為朝が染五郎、白縫姫と寧王女(ねいわんにょ)が七之助、為朝の家来役で、歌六(=紀平治太夫)、愛之助(=高間太郎)、その妻磯萩が福助、為朝ももう一人の妻簓江(ささらえ)が芝雀、後半に出てくる悪女阿公(くまぎみ)が翫雀、という布陣。
 この月は多くの役者が複数の芝居に出て複数の役を演じていたが、中で目立ったのが翫雀。もちろん、福助や獅童や愛之助も活躍しているが、この月に限って言えば、翫雀の不思議な個性が生きていた。すごくうまい、というわけじゃないのだが。
 『西郷と豚姫』は大正時代に書かれた“新”歌舞伎で、西郷隆盛と置屋の女・お玉(豚姫)との情愛を描いた作品。ややおっとりしすぎ、の感なきにしもあらずだが、舞妓たちとお玉とのやりとりに味があって、退屈はしない。
 『紅葉狩』は歌舞伎新十八番。というわけで、福助の芸を楽しむ。
 『女殺油地獄』は、叔父仁左衛門の芸を愛之助がどう受け継いでいくのか、というドラマでもある。秀太郎(=母おさわ)、歌六(=徳兵衛)という配役が、それを如実に示している。で、悪くなかった。もちろん仁左衛門には、まだまだ及ばないが。
 『椿説弓張月』は曲亭馬琴の原作を基に三島由紀夫が歌舞伎化した作品。初めて観たが、これでもかというほど趣向が凝らされていて面白かった。筋書にも書いてあったが、ある種、歌舞伎名場面のパスティーシュになっている。さすが三島。染五郎が大活躍だが、けっこう七之助が場を攫う。が、先にも書いたように、翫雀が一番目立っていた。なお、為朝の子=為頼で玉太郎、為朝の嫡子舜天丸(すてまる)冠者=後に舜天王(しゅんてんおう)で鷹之資が出ていた。

 宝塚雪組公演の『ドン・カルロス』『シャイニング・リズム!』
 『ドン・カルロス』は脚本・演出が木村信司だけに心配しながら観たのだが、観念的になりすぎず、意外にもハッピー・エンドに落とし込んでくれて、面白かった。あと、舞羽美海がうまいなと思った。
 『シャイニング・リズム!』は“宝塚流”ラテン・ショウ。いつもながらの楽しさ。

 平成中村座ロングランも『平成中村座五月大歌舞伎』が最終月。
 第一部が、扇雀(=武田勝頼)+七之助(=八重垣姫)+勘九郎(=腰元濡衣)+彌十郎(=長尾謙信)で『本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)〜十種香』、染五郎と勘九郎で三社祭七百年記念と銘打たれた『四変化 弥生の花浅草祭』、勘三郎(=め組辰五郎)+橋之助(=四ツ車大八)+扇雀(=辰五郎女房お仲)+梅玉(=焚出し喜三郎)で『め組の喧嘩』。第二部が、橋之助の粂寺弾正で『毛抜』、勘九郎と鶴松で『志賀山三番叟』、最後の最後が勘三郎の『髪結新三』
 『本朝廿四孝』ってのは個人的に得意じゃない(笑)。だもんで、あんまり語ることがないが、いつ観ても不思議な話。
 『四変化 弥生の花浅草祭』は、染五郎と勘九郎の体力勝負の踊り対決、みたいな様相で面白かった。
 『め組の喧嘩』は、勘三郎の辰五郎が初役だそうで。当たり前だが、菊五郎より若々しい。セリフのキレもいい。でも、だからこっちがいい、とは一概に言えないところが歌舞伎の面白いところ。もちろん、勘三郎の辰五郎も、いい。辰五郎が喜三郎の家に行くところは(筋書に載っているインタヴューによれば)同場面の六代目菊五郎の録音を勘三郎が入手したのを機に、省かずにやることにしたとか。この芝居、鳶の連中が走り回るので、小さい小屋で観ると迫力満点。おまけに、この日は、外で雷が鳴りまくって、まことにおやかましゅうございました。
 橋之助の『毛抜』は、とぼけた感じがよかった。最近の橋之助、いいです。
 『志賀山三番叟』は“中村座”にとって縁の深い三番叟らしい。というあたりのことを、踊りの前に、勘三郎、並びに小山三が口上で述べる。もちろん、小山三を出したのは、ロングラン最終公演ならではの勘三郎の心配りに違いない。
 で、得意の『髪結新三』で締める、と。ここは勘三郎、抜群のノリだ。いつも大家をやる彌十郎が弥太五郎源七をやり、大家を橋之助がやるという、ひねった配役で、これが当たり。勘九郎の下剃勝奴は色気がイマイチだが、おなじみ亀蔵の他に、萬次郎や梅玉も顔を揃えて(あ、菊十郎のカツヲ売り、大家女房で橘太郎も登場)、楽しい舞台になっていた。
 ちなみに、今回平成中村座初参加は、染五郎、梅玉、彦三郎、萬次郎、錦之助といった面々。あと、お気づきかと思うが、染五郎、七之助は、昼は中村座、夜は新橋の掛け持ちだった。
 ともあれ、平成中村座ロングランの成功はめでたい出来事。

 松竹座は、改築のために歌舞伎座を閉めた直後の 2010年 5月に初めて大阪で開催された『團菊祭五月大歌舞伎』の 3回目。毎年 5月が恒例となりつつあるようだ。
 昼の部は、海老蔵(=武部源蔵)×松緑(=松王丸)×菊之助(=松王女房千代)による『菅原伝授手習鑑〜寺子屋』、菊五郎(=山蔭右京)×團十郎(=奥方玉の井)で『身替座禅』、藤十郎(=忠兵衛)×菊之助(=梅川)で『封印切』。夜の部は、團十郎(=武智光秀)×菊五郎(=真柴久吉)で『絵本太功記〜尼ヶ崎閑居の場』、海老蔵の『高坏(たかつき)』、三津五郎(=桶職弥六)×時蔵(=芸者の幽霊染次)で『ゆうれい貸屋』
 今回の團菊祭が過去 2回と違うのは、海老蔵が参加していることで、上に書いた以外に『絵本太功記』にも佐藤正清役で出ている。
 ざっと感想を書くと――。
 『寺子屋』は、全体にまだまだ“若い”が、梅枝の源蔵女房戸浪は、若いがゆえによかった。
 『身替座禅』は、團菊の芸と個性がたっぷり味わえて楽しい。
 『封印切』は、藤十郎の関西ノリの軽妙さとネチっこさは好き嫌いがあるだろうが、大阪まで来たからには黙って味わおう(笑)。憎まれ役・八右衛門の三津五郎はハマっている。左團次の槌屋治右衛門は大阪言葉がちょっと怪しいか。東蔵のおえんは立派。菊之助は相変わらずいい。
 『絵本太功記』には、先に挙げた他に、時蔵(=操)、菊之助(=武智十次郎)、梅枝(=初菊)らも出ていて華やか。
 『高坏』の海老蔵は、華はあるが芸はこれから、という印象。
 『ゆうれい貸屋』の眼目は、三津五郎、時蔵の面白いやりとりだが、幽霊役の市蔵、梅枝(悪い女!)、長屋連中の吉弥(=弥六女房)、團蔵(=大家)、権十郎、秀調といった面々もいい味を出して、染みる人情喜劇になっていた。

 国立劇場小劇場は『文楽五月公演』
 第 1部が、加藤正清(=加藤清正)の活躍を描く『八陣守護城(はちじんしゅごのほんじょう)〜門前の段〜毒酒の段〜浪花入江の段〜主計之介早討の段〜正清本城の段』と、歌舞伎で言えば踊りにあたる『契情倭荘子(けいせいやまとぞうし)〜蝶の道行』。第 2部が、歌舞伎でもおなじみ『傾城反魂香(けいせいはんごんこう)〜土佐将監閑居の段』、心中もの『艶容女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)〜酒屋の段』、琴・三味線・胡弓を弾かせて自白をさせようという不思議な設定の『壇浦兜軍記〜阿古屋琴責の段』
 『傾城反魂香』『壇浦兜軍記〜阿古屋琴責の段』以外は初めてだったので、半ばウトウトしながらも面白く観た。いや、文楽は音楽がいいのでウトウトしちまうのです(笑)。
 しかし、『艶容女舞衣』の最後を、重要無形文化財・竹本源大夫が語ったのだが、声量がかなり落ちてて、ちょっと心配した。

 さくらホールは、第 1回から数えて 10年目を迎えたという『ダウンタウン・フォーリーズ』。“デラックス”と付く今回は第 8回だそうだが、番外編も含めて確か全部観ている。
 出演は、無欠席の島田歌穂の他、玉野和紀、北村岳子、吉野圭吾、平澤智、樹里咲穂と、いつもより 2人多い 6人。芸達者が揃っていて、彼らの演技ひとつひとつは楽しいのだが、構成・演出の高平哲郎の、昔から変わらぬ“小洒落たTVコント”的な作りには、何年か前から疑問を抱いている。それを喜んで観る観客との緩い関係が、日本のミュージカル世界を小さくしている、なんて言うと各所から非難を浴びそうだが、ま、言っちゃいます(笑)。島健の素敵な編曲とバンドの丁寧な演奏がもったいない。

(7/3/2012)

Copyright ©2012 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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