[ゆけむり通信 番外2012]

  • 4/6/2012
    『四月花形歌舞伎 昼の部(仮名手本忠臣蔵〜大序〜三段目〜四段目〜道行旅路の花耳耳聟)』
  • 4/9/2012
    『平成中村座四月大歌舞伎 昼の部(法界坊)』
    『平成中村座四月大歌舞伎 夜の部(小笠原騒動)』
  • 4/11/2012
    『エドワード8世〜王冠を賭けた恋〜
    『ミスティ・ステーション〜霧の終着駅〜

  • 4/13/2012
    『絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)』
  • 4/17/2012
    『平成中村座四月大歌舞伎 夜の部(小笠原騒動)』
  • 4/22/2012
    『絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)』
  • 4/23/2012
    『四月花形歌舞伎 夜の部(仮名手本忠臣蔵〜五段目〜六段目〜七段目〜十一段目)』

2012年 4月観劇記

 新橋演舞場の『四月花形歌舞伎』「仮名手本忠臣蔵」の通し。
 昼の部は「大序」「三段目」「四段目」「道行旅路の花耳耳聟」。発端から松の廊下、切腹、城明け渡しと来て、最後が、おかる・勘平の道行き。
 主な配役は、高師直=松緑、塩冶判官=菊之助、桃井若狭之助=獅童、大星由良之助=染五郎、おかる=福助、早野勘平=亀治郎といったところ。あと、顔世御前=松也、大星力弥=右近という顔ぶれも“花形”らしい。斧九太夫=錦吾、師直家来の鷺坂伴内は、三段目が橘太郎、道行が猿弥で、それぞれ個性を発揮していた。
 夜の部は「五段目(山崎街道鉄砲渡しの場〜二つ玉の場)」「六段目(与市兵衛内勘平腹切の場)」「七段目(祇園一力茶屋の場)」「十一段目(高家表門討入りの場〜奥庭泉水の場〜炭部屋本懐の場)」
 「五段目」「六段目」が、昼の部の「道行」に続く“おかる・勘平”の場。勘平が義士の列に加わるための“上納金”百両を得るために、勘平に無断でおかるが身を売ろうとするのだが……という話で、百両を巡って回る因果の糸車、どんどん人が死ぬ。現代の常識で考えるとバカバカしいような話だが、これが面白い。この「五段目」「六段目」がなければ、「仮名手本忠臣蔵」はそんなに面白くない、とも言える。ちなみに、「六段目」はいつもと違う演出(上方風だとか)だった。
 で、「七段目」は、身を売ったおかるが、遊興に耽るふりをして敵を欺こうとする由良之助の秘密を偶然見てしまい……という話。こちらには、おかるの兄で、やはり義士一行に加わりたい足軽の平右衛門が絡む。ここでは、おかるの命が危うくなる。
 飛んで「十一段目」は討ち入り。
 配役は、昼の部と変わらないのが、大星由良之助=染五郎、おかる=福助、勘平=亀治郎、斧九太夫=錦吾、鷺坂伴内=猿弥、昼の部と役が変わるのが、斧定九郎=獅童、寺岡平右衛門=松緑。その他に、百姓与市兵衛=寿猿、母おかや=竹三郎、判人源六=薪車、一文字屋お才=亀鶴。夜の部の大星力弥は児太郎。
 全体を通して――。
 染五郎の由良之助は、さすがにこのメンバーにあっては貫禄。菊之助の塩冶判官も悪かろうはずがない。
 獅童は、昼の部の若狭之助は基本的に怒ってばかりの役なので問題なしだが、夜の部の定九郎は凄みが足りず、ちょっとがっかり。
 亀治郎の勘平は、猿之助襲名を前に張り切り過ぎだろうか。声を張ればいいというものでもない気がするのだが。
 最近の松緑は、どうしても台詞回しが気になる。あと、型にはまり過ぎて息苦しい気も。
 福助のおかるはお見事。錦吾の九太夫、猿弥の伴内は安心して観ていられるハマり役。竹三郎のおかや、薪車の源六も、よございました。

 『平成中村座四月大歌舞伎』は、第一部が「法界坊」、第二部が「小笠原騒動」の、それぞれ通し。というわけで、 11月に始まった浅草でのロングラン公演で初めての“通し” 2本。しかも、ご承知の通り「法界坊」は勘三郎が出突っ張り。ついに完全復活、という次第だ……ったのだが…。
 「法界坊」は、開幕直後に串田和美の登場人物紹介ナレーションが入って幕間が 1回のニューヨーク公演(07年)ヴァージョンに準ずる構成。
 勘三郎=法界坊、橋之助=甚三郎、勘九郎=要助実は吉田松若、七之助=野分姫、笹野高史=山崎屋勘十郎、亀蔵=番頭正八、彌十郎=永楽屋権左衛門、扇雀=お組、というお馴染みの顔ぶれで、久々の座長の奮闘に周りもノって思いっきりハジケる。最後の立ち回りは、例によって後ろが開いて、桜満開の隅田河畔が現れる中、作り物の桜吹雪が舞う、という絶妙の展開。感無量。中村屋!
 「小笠原騒動」は、橋之助が 1999年に南座で 22年ぶりに復活させた演目だそう。新橋でもやったらしいが、観ていない。殿様を色仕掛けで陥落してお家を乗っ取ろう、という話。
 悪役の親玉・犬神兵部&善玉・飛脚小平次が勘九郎、橋之助はチョイ悪で改心する岡田良助、善玉小笠原隼人&狐&良助女房おかのが扇雀、兵部の愛人にして殿様小笠原豊前守の側女お大の方&良助に殺されてしまう小平次女房お早が七之助、小笠原豊前守が彌十郎、その分家で善玉の小笠原遠江守が勘三郎、という布陣。
 兵部に騙されたと知って良助が改心する場面で、幼い子役が泣かせる演技をして大いに沸かせる。が、この子、女の子で歌舞伎役者ではない様子。惜しい。そんな口説きあり、アクションありで、面白く観た。
 ところで、中村座には、 2階席の幕内部分(舞台前に引かれる幕より内側)に「桜席」と名づけられた席が確か 2000年の初演の時からあって、一度はそこで観てみたいと思っていたのだが、昨年 11月からのロングランの終了もいよいよ翌月に迫ったこの月(5月の「桜席」はすでに売り切れだったこともあり)、観ることにした。
 いやあ、これが面白かった。花道の見える上手側はすでに売り切れで下手側の席だったが、舞台横の 2階なので、幕が上がる前の舞台の様子が丸わかり。
 まず、幕開きを知らせる(だけではないが)「柝(き)」と呼ばれる拍子木があるが、あれを打つ係の人がタイマーのような物を胸に下げているのに驚く。なるほど、この人たちは、ある種のタイム・キーパーなのか、と。でもって、その人たちは、舞台の準備の様子(装置や役者の配置等)を見ながら、案外にこやかに舞台をうろうろしつつ、「柝」を打ち始める。一方にまた、主に装置について最終的に確認するような舞台監督のような人もいて、その人はインカムを付けている。正直、もっと伝統芸能的なイメージで作法に則ったことが行なわれていたりするのかと思っていたが、かなり近代的だった。まあ、当たり前か。細かく書いていくと切がないので、この辺にするが、スタッフや仕掛けについては多くの発見があった。
 役者について言うと、幹部でない人たちは、努めてリラックスしようとしているように見受けられた。なにしろ毎日のことだから。
 幹部の人たちは、まあ様々だが……様々です(笑)。演目や役柄によっても雰囲気が違うだろうし。印象に残ったのは、勘九郎が 2階を見上げて目礼をしていったこと。下手の「桜席」は、花道が観えない代わりに、幕が閉まって引き上げていく役者の顔が見えるわけです。それが最大の楽しみかも。ただし、場面によっては(たぶんシリアスな場面)暗幕が下がって見せてもらえない時もあった。ともあれ、「桜席」、体験してよかった。

 宝塚月組公演『エドワード 8世〜王冠を賭けた恋〜『ミスティ・ステーション〜霧の終着駅〜は、トップの霧矢大夢×蒼乃夕妃コンビのサヨナラ公演。歌・踊り・演技の三拍子揃った霧矢大夢の卒業は実に残念。蒼乃夕妃との切れのいいダンスも観納めとなった。
 第 1部の『エドワード 8世』は、大野拓史の趣向を凝らした脚本が面白い。
 まず、幕開き前の観劇上の注意のアナウンスがラジオ放送という設定で、そこからすでに芝居に入っているのだが、これには主人公がラジオ放送と縁が深かったからという理由があり、その後も狂言回し的にラジオのアナウンサーが出てくる。さらに、開幕直後がいきなりエドワード 8世(霧矢)の葬儀のシーンなのだが、そこで泣いている未亡人ウォリス(蒼乃)に対し、エドワードの亡霊(?)が「嘘泣きは止めろ」とクレームをつける。さて、その真相は? という興味で物語を引っ張っていくわけだ。で、ある種のラヴ・コメディかと思っていると、終盤には政治絡みのサスペンスもあったりして、なかなかにドラマが重層的。
 エドワード、ウォリスのキャラクターも魅力的だが、一樹千尋が演じたチャーチルが一筋縄ではいかない感じで実に面白かった。エドワード 8世については各自ググったりして調べてください(笑)。
 第 2部『ミスティ・ステーション』は、若き日の人生を旅に見立てた形のショウで、もちろん、そこに霧矢大夢の宝塚人生がオーヴァーラップされている(サブタイトルが露骨にダブル・ミーニング)。宝塚はホント、サヨナラ公演の演出がうまい。
 というわけで、力のあるトップ 2人の卒業に相応しい、大満足の公演だった。

 国立劇場大劇場の歌舞伎公演は『絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)』の通し。
 昨年 3月 11日、すなわち震災当日に観るはずだった舞台の、個人的にも待望の再演。なにしろ、中止になった直後に別の日程で押さえた公演も結局キャンセルされたてしまったので。
 そんな事情だったこともあり、演じる側にも強い思いがあったのだろう。非常に充実した舞台だった。
 とにかく、仁左衛門の悪役二役が見事。普通、一人二役で悪役を演じる場合、どちらか一方は、ちょっと改心したりするものだが、ここで仁左衛門が演じる悪役はどちらも、とことん悪い。その憎々しい笑い顔が最高。いや、これまで観た仁左衛門の舞台の中でも最高の一作だったと思う。
 他に、時蔵、左團次、孝太郎、愛之助、秀太郎、市蔵、男女蔵、高麗蔵、梅枝、秀調といった顔ぶれ。誰もが気持ちの入った演技で素晴らしかった。先に書いたような思い入れがあったので、ハナから 2度観ることにしていたのだが、 2度観てよかった。素晴らしい。

(7/3/2012)

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