[ゆけむり通信 番外2012]

  • 3/5/2012
    『平成中村座三月大歌舞伎 昼の部(暫/一條大蔵譚/舞鶴雪月花』
    『平成中村座三月大歌舞伎 夜の部(傾城反魂香/口上/曽我綉侠御所染/元禄花見踊)』
  • 3/6/2012
    『三月大歌舞伎 夜の部(佐倉義民伝/唐相撲/小さん金五郎)』
  • 3/7/2012
    『三月大歌舞伎 昼の部(荒川の佐吉/仮名手本忠臣蔵〜九段目山科閑居)』
  • 3/9/2012
    『一谷嫩軍記〜堀川御所/流しの枝/熊谷陣屋』
  • 3/11/2012
    『ト・キ・ノ・キ・ズ・ナ』
  • 3/17/2012
    『二十四の瞳』
  • 3/26/2012
    『レオン!!〜柚木礼音スペシャル・ライブ〜

2012年 3月観劇記

 浅草の『平成中村座三月大歌舞伎』は、二月の新橋に続いての「中村勘太郎改め六代目勘九郎襲名披露」公演。
 昼の部が、海老蔵(鎌倉権五郎)の「暫(しばらく)」、勘九郎(一條大蔵長成)の「一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)」、踊りの「舞鶴雪月花(ぶかくせつげっか)」
 夜の部が、仁左衛門(浮世又平)・勘三郎(又平女房おとく)による「傾城反魂香(けいせいはんごんこう)」「口上」、勘九郎(御所五郎蔵)・海老蔵(星影土右衛門)で「曽我綉侠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)」、若手のみによる踊り「元禄花見踊」
 「暫」は、ただただ海老蔵にシビれる芝居。中村座では毎度のごとく花道左脇のイス席最前列に座ったのだが、この月ほど、ここでよかったと思ったことはない。ほとんど海老蔵に寄り添う感じだった(笑)。この翌々日、新橋演舞場の幕間に、 TVで中村座の口上を観たというオバサン(と言っても同年輩)が、海老蔵のオーラがなくなってきた、等とほざいていたが、 TVで何がわかる!
 「一條大蔵譚」は、吉岡鬼次郎=仁左衛門、常盤御前=扇雀という豪華な布陣で、鬼次郎女房お京が七之助、「死んでも褒美の金が欲しい」八剣勘解由に亀蔵、でもって、勘解由女房鳴瀬を勘九郎の乳母とも言うべき小山三にやらせる粋な配役。泣かせる。
 「舞鶴雪月花」は、「さくら」「松虫」「雪達磨」の三種の踊りの言わば組曲。今回は、それぞれ、七之助、仁左衛門+千之助、勘三郎が踊ったが、元々は先代勘三郎が一人で踊ったという演目らしく、その時に当時の勘九郎(当代勘三郎)が「松虫」で千之助同様、松虫の子供を踊ったとか。そういう因果を含んでいたわけだが、今回の仁左衛門+千之助の「松虫」は、昨年 6月やはりこの祖父・孫が新橋で踊った「連獅子」に負けず劣らずのいい出来で、千之助のこれからが楽しみ。そして勘三郎の「雪達磨」。日本舞踊というよりパントマイムを観るようで、芸達者、と言うよりも至芸と言いたくなる。そんな見事さだった。
 「傾城反魂香」には「片岡十二集の内」と但し書きがあり、いつもと違って、又平の師・土佐将監の女房の代わりに剽軽な下女の出る演出。それだけで、ずいぶん明るい印象になる。仁左衛門と勘三郎の息もピッタリ。
 「口上」は、右から並び順に、仁左衛門・海老蔵・進之助・我當・勘三郎・勘九郎・七之助・笹野高史・亀蔵・扇雀。海老蔵と仁左衛門が並んでいるのが豪気だが、何と言ってもユニークなのが笹野高史が出ていること。勘三郎の心意気を感じた。
 「曽我綉侠御所染」に、その笹野高史が借金取り花形屋吾助役で出演。勘九郎・海老蔵の恋の鞘当ての対象となる傾城皐月が扇雀、人違いで殺される傾城逢州が七之助。
 「元禄花見踊」に出ているのは、福助の長男・児太郎、扇雀の長男・虎之介、勘三郎の部屋子・鶴松、橋之助の長男・国生と次男・宜生。こういう出し物を持ってくるのも中村座らしい。
 全体を通して、例によって七之助、それに今月は(出番を特筆しなかったが)猿弥が活躍していた。あと、このところ重い役も多い亀蔵も、いつものように。ただ、亀蔵で気になったのが、「曽我綉侠御所染」の発端で右側に作られた仮花道に並んだ時、ずっと震えていたこと。セリフは普通に言っていたのだが。うーむ。
 この月の主役、新・勘九郎はどうだったかと言えば、まだまだこれから、の印象。でも、期待してますぜ。

 新橋の『三月大歌舞伎』は、昼の部が、染五郎の「荒川の佐吉」、藤十郎(戸無瀬)・福助(小浪)・時蔵(お石)・幸四郎(加古川本蔵)・菊五郎(大星由良之助)・染五郎(大星力弥)で「仮名手本忠臣蔵〜九段目山科閑居」、夜の部が、幸四郎(木内宗吾)で 「佐倉義民伝」、菊五郎・左團次らによる「唐相撲(とうずもう)」、梅玉(金五郎)・時蔵(小さん)の「小さん金五郎」。
 「荒川の佐吉」は仁左衛門の当たり役で、前々回(06年歌舞伎座)、前回(10年新橋演舞場)の仁左衛門=佐吉で、染五郎は弟分の辰五郎を脇で演じた。というわけで、(筋書きに載った染五郎の発言によれば)今回の佐吉は仁左衛門直伝らしい。その辰五郎は今回、亀鶴。これがよかった。お八重の梅枝もよかった。てか、梅枝、どんどんよくなっていて楽しみ。福助も当然のことながら難役を見事にこなす。あ、染五郎も悪くなかった(笑)。もちろん、仁左衛門にはまだまだ及ばないが。
 「山科閑居」は、先に書いた配役で、もう満腹な感じ。特に、藤十郎・福助・時蔵が女形で 3人同時に登場する舞台って、(好き嫌いはあるかもしれないが)かなり贅沢。この芝居も、“実は実は”の連続でケレンに満ちているのが凄い。前半、ちょっと退屈ですがね(笑)。
 「佐倉義民伝」は、それに比べるとケレンが少ない。なにしろ実話に則ったレジスタンス劇だし。といって、しんねりむっつりばかりでもないな、と改めて気づいた。特に、妻(福助)や子たちとの別れの場面に挿入される子悪人・幻の長吉(梅玉)のエピソードは、愁嘆場にゾクッとする緊迫感をもたらして実に効果的(って、過去の名作を改めて褒めることもないのだが。笑)。
 「唐相撲」は、菊五郎劇団によるスラップスティック風味のアクション舞踊。ハチャメチャ寸前で“舞踊”として成立させるところが菊五郎劇団。いいなあ。
 「小さん金五郎」は昭和になってからまとめられた芝居らしく、どこか松竹新喜劇に通じるような味がある。色っぽくて芯の強い芸妓役・時蔵、若くて瑞々しい芸妓役・梅枝、ちゃらんぽらんな若旦那・松江、そして、惚れっぽいけど惚れられない女髪結・秀太郎(素晴らしい!)、といった面々がバタバタと駆け回って楽しかった。

 国立劇場大劇場の歌舞伎公演は、團十郎・三津五郎による『一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)』の通し。と言っても「陣門・組討」はなく、「堀川御所」「流しの枝」「熊谷陣屋」と続く(前 2つの上演は珍しいらしい)。
 一幕と三幕で、團十郎が熊谷次郎直実、三津五郎が義経を、二幕では、團十郎が薩摩守忠度、三津五郎が岡部六弥太忠澄という役を演じる。他に、彌十郎、市蔵、門之助、東蔵、魁春らが脇を固めるが、まあ、團十郎たっぷり、という舞台。成田屋抜きに歌舞伎が成り立たない(駄洒落じゃなくて)のが、よくわかる。満喫した。

 神奈川公会堂での公演『ト・キ・ノ・キ・ズ・ナ』は、“横浜しんさい市民ミュージカル”と銘打たれた作品。
 フェリス女学院が出した「関東大震災女学生の記録」という本を元に山谷典子(文学座)が脚本を書き、森さゆ里(文学座)が演出、音楽・後藤浩明、出演・(横浜?)市民+鬼頭典子(文学座)、製作・かながわ絆プロジェクト、という座組みで作られている。
 フェリス女学院がモデルと思われる横浜のカソリック系女学校の現在と過去(関東大震災当時)とを結んで、関東大震災直後の混乱・不安と東日本大震災後の今とを重ね合わせてみようとする試みだと思われる。過去の描写がメインで、肝となるのは震災直後の一般人による朝鮮人虐殺。のどかに始まる舞台だけに、かなりゴリッと来る。それを音楽で包み込んだのは、ある意味、成功だろう。観客が飲み込みやすくなったのは間違いない。幼い三姉妹のエピソードの活かし方もうまい。落とし所がきれいに決まった感がある。
 鬼頭典子が存在感を発揮して全体を締めたのは当然だろうが、周りの市民(?)キャストたちも思った以上だった。若干、歌が弱い面もあったが、まずは、よく仕上げた、ということで。

 住吉のティアラこうとうで観たのが、音楽劇『二十四の瞳』
 壺井栄の原作小説、木下惠介の監督映画化(高峰秀子主演)で知られる、あの「二十四の瞳」。というわけで、泣かせ所の決まった名作。
 プログラム他には、音楽劇と書かれた脇に「ミュージカル」とルビのように書いてあったりするが、オリジナル曲はカーテン・コールで歌われる谷山浩子作の「テーマソング」という楽曲だけで、劇中で歌われるのは、文部省唱歌をはじめとする、いわゆる学校で教わるような楽曲がほとんど。そんなわけで、ある種の“ジューク・ボックス・ミュージカル”と言えなくもないが、楽曲は劇中でも独立した楽曲として歌われるので、実際にはミュージカルではなく、“音楽劇”という表現の方が当たっている。
 で、結論を言うと、演出が稚拙。脚本もそれなりにまとまっているし、楽曲の扱いも編曲も含めて悪くない(というか、歌に助けられている)のに、残念。
 主演の島田歌穂も、あまり為所がない。“役不足”とは正にこのこと。まあ、彼女だから最後まで舞台がもったと言えるだろう。子供たち(1年生役12人+高学年役12人)も思った以上に健闘していた。

 日本青年館で観た『レオン!!〜柚木礼音スペシャル・ライブ〜は、宝塚星組公演で、トップスター柚木礼音のライヴという体裁のショウ。
 始まってすぐにポルノグラフィティの歌とかを歌いだした時には、新しめのヒット曲を並べる歌謡ショウになるのか、と落胆しかけたが、それは杞憂に終わり、ちゃんと宝塚らしい引き出しの多い楽しいショウに。各人が披露する機会の少ない得意技(アクロバティックな体技とかバトントワリングとかヒューマンビートボックスとか)を繰り出したりもして、飽きさせない内容だった。
 あと、カッコつけるだけじゃなくて、ちゃんと笑いをとるのも宝塚流で、いい感じ。ことに、第2幕のアタマから登場した紅ゆずるのコテコテの関西ねえちゃん“紅子”にはやられた。こんな人だったんですね。てか、これで名前覚えました(いつまで経っても、そんな程度の宝塚ファンです)。
 これまた余談だが、客席に AKB48の(記憶違いでなければ)まゆゆこと渡辺麻友がいて、紅子にいじられていた。生 AKB、初めて観た(笑)。

(7/3/2012)

Copyright ©2012 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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