[ゆけむり通信 番外2012]

  • 2/6/2012
    『二月大歌舞伎 夜の部(鈴ヶ森/口上/春興鏡獅子/ぢいさんばあさん)』
  • 2/7/2012
    『二月大歌舞伎 昼の部(鳴神/土蜘/天衣紛上野初花~河内山)』
  • 2/8/2012
    『文楽二月公演 第三部(菅原伝授手習鑑~寺入りの段・寺子屋の段/日本振袖始~大蛇退治の段)』
  • 2/9/2012
    『ハムレット』
  • 2/10/2012
    『文楽二月公演 第一部(彦山権現誓助剣~杉坂墓所の段・毛谷村の段・立浪館仇討の段)』
    『文楽二月公演 第二部(義経千本桜~椎の木の段・小金吾討死の段・すしやの段)』
  • 2/13/2012
    『二月花形歌舞伎 昼の部(義経千本桜~渡海屋・大物浦/女伊達/雪暮夜入谷畦道)』
    『二月花形歌舞伎 夜の部(青砥稿花紅彩画)』
  • 2/14/2012
    『復活~恋が終わり、愛が残った~
    『カノン~アワ・メロディ~


2012年 2月観劇記

 新橋の『二月大歌舞伎』は、サブタイトル(?)で謳われているように「中村勘太郎改め六代目中村勘九郎襲名披露」の月。
 昼の部が、橋之助・七之助の「鳴神(なるかみ)」、勘九郎・三津五郎・福助・橋之助に仁左衛門・吉右衛門・勘三郎・芝雀が花を添える「土蜘(つちぐも)」、仁左衛門の「河内山」
 夜の部は、吉右衛門・勘三郎の「鈴ヶ森」、六代目中村勘九郎襲名披露の「口上」(右から並び順に、吉右衛門・秀太郎・芝雀・彌十郎・三津五郎・我當・勘三郎・勘九郎・七之助・福助・橋之助・錦之助・扇雀・東蔵・仁左衛門)、勘九郎の「春興鏡獅子」、三津五郎・福助の「ぢいさんばあさん」
 「鳴神」の橋之助・七之助は、本人たちは大変かもしれないが、観ている分には楽しげで、気持ちいい。橋之助の六方も迫力充分。
 この月の主役・勘九郎の「土蜘」は、勘九郎自身の張り切った演技もよかったが、とにかく周りが豪華。特に、つなぎの狂言(間狂言と呼ぶらしい)に仁左衛門・吉右衛門・勘三郎が顔を揃えるのは贅沢の極み。夜の「口上」もそうだが、勘九郎という、歌舞伎の歴史の中ではけっして大きくはない名前の襲名披露公演に、これだけの顔ぶれが揃うのは、現勘三郎の功績に対する評価だろう。いずれにしても客はうれしい。
 仁左衛門の「河内山」を観るのは初めてだったが、いい。シビレる。
 「鈴ヶ森」は個人的には今回の目玉。不仲だと風の噂に聞いていた(あくまで噂!)吉右衛門(幡随院長兵衛)と勘三郎(白井権八)の顔合わせだから観たかった。観客は、役者のドラマってやつも観ているわけだ。それはともかく、勘三郎がまだ手探りな感じがしたのは気のせいか。 4月の中村座は昼夜共に通し狂言なのだが……。
 「春興鏡獅子」は昼の部の「土蜘」と対になってる感じ。こういう役は勘九郎の若々しさが際立って、いい。
 最後の「ぢいさんばあさん」は、 2年前に仁左衛門・玉三郎の黄金コンビ(!)で観た演目だが、三津五郎・福助も柔らかい感じがあって、よかった。

 国立劇場の『文楽二月公演』は、第 1部が「彦山権現誓助剣~杉坂墓所の段・毛谷村の段・立浪館仇討の段」、第 2部が「義経千本桜~椎の木の段・小金吾討死の段・すしやの段」、第 3部が「菅原伝授手習鑑~寺入りの段・寺子屋の段」「日本振袖始~大蛇退治の段」。ホントは第 2部の最後に「五十年忌歌念仏」という「お夏清十郎」ものがあったのだが、残念ながら時間の関係で諦めた。
 ここでは「日本振袖始~大蛇退治の段」についてだけ。
 昨年 11月に、同じ国立劇場の大劇場での歌舞伎公演で演じられた狂言だが、それは観逃した。これ、八岐大蛇(やまたのおろち)の話なので、大蛇が出てくる。首が、 8つは出ないが、 4つ出てくる。それが大迫力で楽しい(笑)。文楽のスペクタクルものは実に面白い。機会があったら、ぜひ。

 『ハムレット』はシアター・クリエの翻訳ミュージカル。
 元々はチェコ産(楽曲・脚本がヤネック・レデツキー Janek Ledecky というロック・スターらしい)。それを、ロバート・ヨハンソン Robert Johanson というニューヨーク演劇界の脚本・演出家が手直しした(単なる英訳とは違うらしい)英語版の翻訳、ということのようで。
 ヨーロッパ産によくある、ロック・オペラ的な(つまり、ほとんどのセリフを歌ってしまう)作りで、スピーディなのはけっこうだが、何と言うか、グッと来るところがないまま流れる。個人的には、涼風真世を久し振りに観られてよかったのだが(ハムレットの母親ガートルード役で、ハムレットとの間に近親相姦的感情が流れる場面があり、怪しく美しかった)、そのぐらいかな。演出・栗山民也、美術・松井るみ(アイディア豊富)をもってしても、この題材では、如何ともしがたい、という感じだろうか。
 ちなみに、プログラムに、チェコセンター東京所長・ペトル・ホリーという人が原稿を寄せていたが、その中にある「今はなきブロードウェイのランブスシアター」という記述は間違い。「ランブスシアター」は“LAMB'S THEATRE”なので「ラムズ・シアター」が正しいと思うが、これは翻訳者の小さなミス。大きな間違いは、ラムズ・シアターはオフの劇場だった、ということ。さらに言うと、その原稿の脇に、この作品の年表が載っているのだが、そこに「2007~2008年 アメリカ・ブロードウェイ」とある。これ、どういう意味だかわからないが、少なくとも、このチェコ発の「ハムレット」がブロードウェイの劇場で上演された記録はない。

 名古屋・御園座に遠征しての『二月花形歌舞伎』は、松緑と菊之助が中心。
 昼の部が、「義経千本桜~渡海屋・大物浦」「女伊達」「雪暮夜入谷畦道」、夜の部が「青砥稿花紅彩画」の通し。
 「渡海屋・大物浦」は松緑の銀平→知盛で、お柳→典侍の局が菊之助、義経が梅枝、弁慶が團蔵。夜の部でもそうだが、松緑の口跡が、この日は特に気になった。梅枝は成長著しいようで。
 「女伊達」は時蔵。それに息子(次男)の萬太郎と、尾上右近が絡む。油の乗り切った時蔵が観応えたっぷり。
 「雪暮夜入谷畦道」は菊之助が初役で「直侍」。時蔵の三千歳、丈賀の田之助、丑松の團蔵と、それ以外は菊五郎劇団いつもの面子で、菊五郎が菊之助にすっぽり入れ替わった、という舞台。演技的にはまだまだの所が多々あるのだろうが、いやあ若々しい色気で、よかった。
 「青砥稿花紅彩画」は、いわゆる「白浪五人男」で、弁天小僧菊之助(菊之助)・南郷力丸(松緑)・忠信利平(亀三郎)・赤星十三郎(梅枝)・日本駄左衛門(團蔵)という配役。他に権十郎(浜松屋)や萬次郎(局柵)らも出て楽しい舞台。橘太郎の浜松屋番頭も欠かせない。大詰めのスペクタクルも趣向がいろいろあって面白い。
 しかし、夜の部は、右隣のカップルのお兄さんの方が張り切ってやたらに声掛けする人で、ちょっとウザかった。でも、まあ名古屋での歌舞伎公演は少ないですから、許してあげましょう(笑)。

 『復活~恋が終わり、愛が残った~』『カノン~アワ・メロディ~は、宝塚花組公演。
 『復活』は、あのトルストイの「復活」のミュージカル化で、以前に宝塚で舞台化されたもののリニューアル上演になるらしい。重苦しいのかと心配したが、主役ネフリュードフ(蘭寿とむ)の親友シェンボック(壮一帆)をうまく狂言回しに使って、哲学的なところも軽妙に処理。カチューシャ(蘭乃はな)も抑制が効いていて悪くなかった。というわけで面白く観た。蘭寿とむの持ち味も功を奏しているのだろう。
 ショウの『カノン』がやや古臭く感じられたのは、使われていた楽曲のせいかも。内容は別に悪くはなかったのだが。蘭乃はなって、けっこう踊れる人なんだなと思った。

(4/8/2012)

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