[ゆけむり通信 番外2012]

  • 1/5/2012
    『平成中村座寿新春大歌舞伎 昼の部(義経千本桜~鳥居前/身替座禅/雪暮夜入谷畦道)』
  • 1/5/2012
    『平成中村座寿新春大歌舞伎 夜の部(寿曽我対面/於染久松色読販)』
  • 1/6/2012
    『アイ・ガット・マーマン(オリジナルキャスト)』
  • 1/11/2012
    『オーシャンズ11』
  • 1/12/2012
    『寿初春大歌舞伎 昼の部(相生獅子/金閣寺/加賀鳶)』
  • 1/13/2012
    『アイ・ガット・マーマン(ニューキャスト)』
  • 1/16/2012
    『寿初春大歌舞伎 夜の部(矢の根/連獅子/神明恵和合取組~め組の喧嘩)』
  • 1/17/2012
    『アイ・ガット・マーマン(ファビュラスキャスト)』
  • 1/18/2012
    『初春歌舞伎(三人吉三巴白波/奴凧廓春風)』
  • 1/27/2012
    『チェス・イン・コンサート』

2012年 1月観劇記

 中村座の年明けは、『平成中村座寿新春大歌舞伎』
 橋之助は中村座常連なので、今月のゲストらしいゲストは獅童のみ。おまけに、来月の勘九郎襲名の準備からか、勘太郎も不在。それを反映してだと思うが、料金も 11月、 12月に比べて若干安い。ということで、あまり期待していなかったのだが、けっこうよかった。
 ことに、七之助。「雪暮夜入谷畦道」の三千歳も、橋之助を相手に全く引けをとっていない感じでよかったが、凄かったのが「於染久松色読販」の 7役。お染・久松の男女を演じ分けるのみならず、お染と年の近いお光、大人の女である、後家貞昌、奥女中竹川、芸者小糸、そして悪女お六まで見事に演じきっていて素晴らしい。ことに、お六は、ここでまた相手役になる橋之助(鬼門の喜兵衛)と張り合う、悪さと軽妙さが綯い交ぜになった演技で、実に楽しかった。
 獅童の忠信は、一生懸命なだけ、とも言えるが、小さい小屋で観る分には、力演がそれなりに映える。「寿曽我対面」での朝比奈はまだまだな感じだが、「身替座禅」で神妙に演じた太郎冠者も悪くはなかった。精進してください。
 勘三郎は、彌十郎を相手にした「身替座禅」で、持ち前の愛嬌を発揮。日に日に元気になっているようだ。
 あと、今月も亀蔵が出演。「鳥居前」の弁慶、「蕎麦屋」「雪暮夜入谷畦道」の前半)の按摩丈賀、「寿曽我対面」の鬼王新左衛門で味のあるところを見せてくれた。
 若いところでは、「鳥居前」での、梅枝の静御前、萬太郎の義経が、品があってよかった。この兄弟、「於染久松色読販」でも、七之助に絡んで端正な踊りを見せてくれた。

 シアター・クリエの『アイ・ガット・マーマン』は、キャスト違いによる 3ヴァージョン。
 初演から 25年、でもって10年振りの上演らしいが、オリジナル・キャストが、諏訪マリー、田中利花、中島啓江の 3人。当初、コンサート版とかって言われていたが、普通にやっていた。いやあ、変わらないっちゃあ変わらない。ほぼ記憶の通り。むしろ、最後に観た時より、いきいきしてるぐらい。
 余談だが、 1幕終盤、マーマンが道ならぬ恋をするという場面があって、当て馬として男性客が舞台に上げられるのだが、最前列に座っていたせいで引っ張り出された。まさか、マーマンの舞台に立つとは! とんだサプライズでした(笑)。
 ニュー・キャストは、樹里咲穂、西国原礼子、 Mizの 3人。がんばっていたが、なかなか苦しい。樹里咲穂に救われてるところがあるのは間違いないが、それ以前に、この舞台はオリジナル・キャストのもの。10年前にも、そう思った。……この時点では……。
 ファビュラス・キャストは、浦嶋りんこ、シルビア・グラブ、エリアンナ。いや、よかった。キャストが 3人ともみんな。中でも、シルビア・グラブは、ホントにうまかった。うまいとは思っていたが、こういう役も出来るんだ、と。お見事。この作品にも新たな可能性がある、ということか。

 宝塚歌劇は星組公演で、『オーシャンズ11』全 2幕。
 脚本・演出は小池修一郎。もちろん、元は映画だが、制約の多い中、よくまとめた、と言うべきだろう。
 柚木礼音の魅力全開。他の男役も、それぞれ個性を発揮して、いきいき演じていた。聞けば何人か組替えでいなくなる予定だったようで。そんなこともあって、よりまとまったのかもしれない。娘役では、ヒロインのライバル……でもないか、コメディ・リリーフ兼ショウの花形的役割を担った白華れみがよかった。
 ……といろいろあるが、何と言ってもショックなのが、未沙のえる(専科)の卒業(引退?)。宝塚で一番うまくて、出てくるだけで楽しくなる、そんな人なだけに残念。ここでもメチャメチャいい味出してた。長年楽しませていただいて感謝です。

 新橋演舞場は『寿初春大歌舞伎』
 昼の部は、魁春・芝雀の「相生獅子」、三津五郎・梅玉・菊之助で「金閣寺」、菊五郎・吉右衛門・時蔵で「加賀鳶」
 「相生獅子」は女形二人による「連獅子」の亜種。ちなみに、「連獅子」は今月の夜の部に入っている。「連獅子」には新年っぽいめでたさがある、ということなのだろう。
 「金閣寺」は元が文楽の、まるでリアリティのない、だからこそ楽しい話。謀反人・松永大膳(三津五郎)の元に、敵方の軍師である此下東吉・実は真柴久吉(梅玉)が主君を見限ったと言ってやって来る、という大筋からして、観客に結末を読まれることを前提に作られていて、いい感じ。菊之助は雪姫。大膳の人質で、あの雪舟の孫。その設定から、またいろいろと面白く話が展開するのだが、きりがないのでこの辺で(笑)。錦之助の佐藤正清がハマっている。
 「加賀鳶」は黙阿弥の作で、加賀鳶の若い連中が花道に勢揃いする(三津五郎・菊之助・又五郎・錦之助・松江・亀三郎・亀寿・松也・権十郎・秀調・團蔵・左團次)華やかな序幕と、それ以降の“悪い按摩”道玄の話とは、加賀鳶の兄貴分・松蔵(吉右衛門)が登場するという共通項はあるものの、ほぼ別の話。序幕で加賀鳶の頭として粋に出てくる菊五郎が、後半、ずる賢くて薄汚い道玄を演じるのが楽しい。道玄の愛人・お兼の時蔵との名コンビぶりも見もの。「金閣寺」に続いて東蔵が渋い役で舞台を支える。驚いたのが、梅枝が出てたこと。中村座の昼夜に出てて、こっちにも! ま、浅草と近いっちゃ近いが。
 夜の部は、三津五郎の「矢の根」、吉右衛門・鷹之資の「連獅子」、菊五郎・左團次・梅玉の「神明恵和合取組~め組の喧嘩」
 「矢の根」は、踊りに近い狂言で、こういうのは三津五郎は実にうまい。
 「連獅子」は、中村富十郎一周忌追善狂言と謳われえていて、ずっと歌舞伎を観ている人にとっての見どころは、故・富十郎が年老いてからの息子・鷹之資(1999年4月生まれ)と、その後見を託された吉右衛門との、まあ、何と言うか、新たな擬似親子関係の始まり、というところだろう。て言うか、そういう文脈に沿ってワタクシは観ました。で、邪推になしに言えば、「連獅子」は吉右衛門は馴染んでおらず(実際に、あまり演じていない)、鷹之資は超若いので元気いっぱい。というわけで、納まりがいいわけではない。……ではあるのだが、そこが歌舞伎の面白いところで、富十郎の幼い息子・鷹之資を、息子のいない吉右衛門(その年齢差55歳)が、とりあえず手をとりあって、これからやっていく、という物語があるわけで。中間の狂言に、富十郎に弟子入りした錦之助、播磨屋を名乗って吉右衛門と同門になった又五郎が出てくることも含め、歌舞伎は役者のドラマだなあ、と改めて思った次第。
 「め組の喧嘩」は、昼の部の「加賀鳶」の(発端部分の)続編の趣のある作品で、実際、三幕目は「加賀鳶」の作者である黙阿弥が書いたという説もあるそうだ。というわけで、菊五郎劇団の世話物の魅力全開だが、個人的には、め組の一員として出てくる菊之助の粋な姿に首ったけ。重ねて言えば、こういう演目での團蔵とか権十郎とか、もちろん左團次もだが、いいなあ。松也も、よくなってきている。あと、時蔵は欠かせませんね。

 国立劇場の『初春歌舞伎』は、黙阿弥作の「三人吉三巴白波」(通し)と「奴凧廓春風」
 「三人吉三」は、和尚=幸四郎、お坊=染五郎、お嬢=福助。とにかく、コクーン以来、福助のお嬢吉三が個人的に大好きで、実際、福助も楽しそうに演じている。今回もシビレた。幸四郎も、こういう軽妙さを必要とする役はいい。染五郎も福助を相手に健闘。楽しく観た。
 「奴凧廓春風」は、幸四郎、染五郎、その息子・金太郎が出ての高麗屋三代揃い踏みに、福助も共演する、祝祭的演目。染五郎の宙乗りもあって、こちらも面白かった。

 青山劇場で上演されたのが、『チェス・イン・コンサート CHESS IN CONCERT』
 『チェス CHESS』はイギリス産のミュージカルで、元々は、『ジーザス・クライスト・スーパースター JESUS CHRIST SUPERSTAR』と同じように、まず、楽曲が LPとしてリリースされたようだ(1984年)。この辺、『ジーザス~』で成功したティム・ライス Tim Rice(作詞)が関わっていることと無縁ではないと思われる(ちなみに、やはりライスが関わった『エヴィータ EVITA』の時も「Don't Cry For Me Algentina」を先行シングル発売)。作曲はベニー・アンダーソン Benny Andersson とビョルン・ウルヴァース Björn Ulvaeus(僕らの世代の前にはビョルン&ベニーとして登場したが、今ではアバ ABBA の男性 2人と言った方がわかりやすいだろう)。で、同じ年に、 LPの内容をコンサート形式でロンドン、ハンブルク、アムステルダム、パリ、ストックホルムで上演した後に、ウエスト・エンドで舞台ミュージカルとしてロングランに入る、という手法も『ジーザス~』と似ている。それが功を奏してか、ウエスト・エンドの『チェス』は 1986年春から 3年近く公演を続けている。
 が、ブロードウェイ版は、ウエスト・エンドで上演中の 1988年 4月に幕を開けたものの、2か月もたずにクローズの憂き目に。そういう事情があったからかもしれないが、これまで日本で上演されることはなく、今回の上演も、タイトルからわかるように、各国で好評を博したらしいコンサート・ヴァージョンだ。
 というわけで、これまで観る機会のなかった作品。一度観てみたかった、というのがチケットを買った動機の半分。で、あと半分は、敬愛する島健が音楽監督を務めると同時に舞台でピアノを弾くから。
 オーケストラのサウンドは、繊細さと強いビート感の按配が絶妙な、島さんらしい豊かなもので、満足のいく出来。コーラスも含め役者も安定した歌唱力の人たち(安蘭けい、石井一孝、中川晃教、 AKANE LIV、…浦井健治はやや弱いが乱れはない)なので、歌も悪くないのだが、青山劇場はいつも歌やセリフが聴こえづらいところがある。 PAのせいばかりではなく劇場の特性じゃないかと思っているだが、とにかく、そこがちょっと残念。
 それ以前に、話自体がさほど面白くないのと、欲張りすぎて不必要に複雑に作り込まれたように聴こえる楽曲とがブロードウェイで当たらなかった原因か、なんてことを考えてしまう作品ではあった。
 萩田浩一の演出(訳詞も)は大健闘だろう。大野幸人のダンス(振付・港ゆりか)も舞台を引き締めて効果大。美術や衣装も面白く観た。

(2/26/2012)

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