[ゆけむり通信 番外2011]

  • 11/4/2011
    『平成中村座十一月大歌舞伎 昼の部(双蝶々曲輪日記~角力場/お祭り/義経千本桜~渡海屋・大物浦)』
  • 11/4/2011
    『平成中村座十一月大歌舞伎 夜の部(猿若江戸の初櫓/伊賀越道中双六~沼津/弁天娘女男白浪)』
  • 11/9/2011
    『吉例顔見世大歌舞伎 昼の部(傾城反魂香~土佐将監閑居の場/道行初音旅~吉野山/新皿屋舗月雨暈~魚屋宗五郎)』
  • 11/14/2011
    『吉例顔見世大歌舞伎 夜の部(外郎売/京鹿子娘道成寺/髪結新三)』
  • 12/5/2011
    『吉例顔見世興行東西合同大歌舞伎 昼の部(寿曽我の対面/お江戸みやげ/隅田川/予話情浮名横櫛)』
  • 12/6/2011
    『クラシコ・イタリアーノ~最高の男の仕立て方~
    『ナイス・ガイ!!~その男、Yによる法則~
  • 12/7/2011
    『平成中村座十二月大歌舞伎 昼の部(菅原伝授手習鑑~車引・賀の祝・寺子屋)』
  • 12/7/2011
    『平成中村座十二月大歌舞伎 夜の部(芦屋道満大内鑑~葛の葉/積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)/松浦の太鼓)』
  • 12/10/2011
    『十二月歌舞伎公演 夜の部(錣引(しころびき)/口上/勧進帳)
  • 12/13/2011
    『ザ・ナイスガイ~どうしてこんなにモテるんだろう~
    『ザ・ファンタスティック・トゥ~唄う二人は夢を見る~
    12/19/2011
    『十二月歌舞伎公演 昼の部(碁盤忠信/茨木)』

2011年 11月~ 12月観劇記

 『平成中村座十一月大歌舞伎』。平成中村座、浅草・隅田公園での公演は、第 1回(2000年)以来。
 昼の部は、橋之助・勘太郎(二役)の「双蝶々曲輪日記~角力場」、勘三郎の「お祭り」、仁左衛門の「義経千本桜~渡海屋・大物浦」
 正直、物足りない。約 1年半ぶりに東京の舞台に帰ってきた勘三郎は、正に「待ってました!」(「お祭り」で、この掛け声がかかると役者が「待っていたとはありがてえ」と応えるのがお約束)なのだが、残念ながら、仁左衛門との絡みがない。ちなみに「渡海屋・大物浦」で仁左衛門と絡むのは、孝太郎・橋之助・彌十郎・勘太郎・七之助。要するに勘三郎以外みんな。勘三郎、やっぱり本調子じゃないのかな、と心配になった。
 しかしながら、夜の部は満足。勘太郎・七之助・彌十郎の「猿若江戸の初櫓」、仁左衛門・勘三郎・孝太郎の「伊賀越道中双六~沼津」、七之助の「弁天娘女男白浪」
 「伊賀越道中双六~沼津」での仁左衛門と勘三郎の熱演に、すっかり魅せられた。「弁天娘女男白浪」の七之助もよかった。一応書いておくと、七之助=弁天小僧、橋之助=日本駄右衛門、勘太郎=南郷力丸、彌十郎=忠信利平、新悟(彌十郎の長男)=赤星十三郎、浜松屋の倅が国生(橋之助の長男)。
 全体を通して勘太郎が出づっぱりでがんばっている。この中村座のロングランでの成長を期待。七之助も大きくなるのだろう。橋之助は貫禄。出てくると安心する。安心すると言えば、彌十郎も同様。そして、仁左衛門は素晴らしい。勘三郎には、ただ一言「中村屋!」と心からの声援を送りたい。

 新橋演舞場の『吉例顔見世大歌舞伎』。この月の新橋は菊五郎劇団で、七世尾上梅幸十七回忌、二世尾上松緑二十三回忌追善公演、と銘打たれていた。
 昼の部は、三津五郎・時蔵の「傾城反魂香」、松緑・菊之助の「道行初音旅~吉野山」、菊五郎・時蔵・左團次・三津五郎の「新皿屋舗月雨暈~魚屋宗五郎」。いずれも梅幸・松緑に所縁の演目のようだ。
 「傾城反魂香」は、実のところ、愉快ではない話なのだが、三津五郎の軽みを感じさせる演技には救いがある。時蔵との息も合っている。「吉野山」「義経千本桜」の一部で、踊りの場。松緑・菊之助で今後も長くやっていくんだろうな、とか思って観るのが歌舞伎の楽しみなのだろう。「魚屋宗五郎」の菊五郎は楽しいし、(当たり前だが)うまい。時蔵もいい。亀蔵がチョロっと出てくるのが個人的にはうれしいところ。と、昼の部もよかったが、ホントの楽しみは夜の部。
 夜の部の演目は、松緑の「外郎売」、菊之助の「京鹿子娘道成寺」、菊之助・左團次・三津五郎・時蔵の「髪結新三」
 「外郎売」は松緑の長台詞が鮮やかというところまで行かない。「京鹿子娘道成寺」の菊之助には何の文句もない。……と、初めの2つはさっと切り上げ(笑)、とにかく「髪結新三」。全編話が面白いし、役者もそれぞれ見せどころたっぷりなのだが、何と言っても、主役にして悪役である新三(菊五郎)の子分を演じる菊之助の、悪そうな色気がたまらない。気持ちのいいチンピラぶり。機会があったらご覧になることを強くオススメしたい。あと、亀蔵が、こちらには大家(三津五郎)の強欲女房役で出ていて、大いに楽しませてくれた。

 京都南座の『吉例顔見世興行東西合同大歌舞伎』
 観た昼の部は、孝太郎・愛之助・我當・秀太郎の「寿曽我の対面」、三津五郎・翫雀の「お江戸みやげ」、藤十郎・翫雀の「隅田川」、仁左衛門(与三郎)・菊五郎(蝙蝠安)・時蔵(お富)の「予話情浮名横櫛」
 目当ては、菊五郎が蝙蝠安を演じる「予話情浮名横櫛」。これを観るためだけに京都まで行った。なにしろ、普段なら与三郎かお富を演じる菊五郎が(筋書――関西では番付と呼ぶが――によれば、この二役を演じた役者は、この演目の初演以来、当代菊五郎だけらしい)、脇役の蝙蝠安をわざわざ演じるわけだから(初役だそう)、これは観るしかない。いやあ、実際、贅沢なものを観せてもらった。仁左衛門と菊五郎のチョイ悪コンビ、最高。
 ちなみに、「お江戸みやげ」の三津五郎・翫雀は 4月の新橋演舞場と同じ組み合わせ。その時同様、いい舞台だった。

 宝塚歌劇宙組公演は『クラシコ・イタリアーノ~最高の男の仕立て方~』『ナイス・ガイ!!~その男、Yによる法則~』
 『クラシコ・イタリアーノ~最高の男の仕立て方~』は副題が暗示するように(しないか?)イタリアの服飾業界が舞台。 1960年代、経済復興を遂げつつあるイタリアで一介の仕立て職人から有名ブランドの社長にまで昇りつめた男が、経済的成功(アメリカ企業との共同事業)と職人的信条(昔からの仲間や師匠)との間で揺れる、という話にどう決着をつけるのか、けっこうドキドキしながら観た。いや、ひどいオチだったらどうしようと思って(笑)。でも、腑に落ちる話になっていて一安心。逆に、ちょっと泣けた(笑)。
 2部のショウ『ナイス・ガイ!!~その男、Yによる法則~』の副題にある“その男、Y”というのは、男役トップの大空祐飛のことだそう。その大空はじめ、今の宙組は男役が充実してるなあ、と、1部を観ている時から思った。これから楽しみ。

 ロングラン 2か月目の『平成中村座十二月大歌舞伎』
 昼の部「菅原伝授手習鑑」の(半)通しで、勘太郎(梅王丸)・菊之助(桜丸)・彌十郎(松王丸)・亀蔵(藤原時平)で「車引」、亀蔵(松王丸)・勘太郎(梅王丸)・菊之助(桜丸)・彌十郎(白太夫)で「賀の祝」、勘三郎(松王丸)・扇雀(千代)・菊之助(武部源蔵)・七之助(戸浪)「寺子屋」
 夜の部は、扇雀に松也と亀蔵が絡む「芦屋道満大内鑑~葛の葉」、勘太郎・菊之助・扇雀・七之助で「積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)」、勘三郎(松浦鎮信)・菊之助(大高源吾)・彌十郎(宝井其角)で「松浦の太鼓」
 ゲストの菊之助が昼夜で「葛の葉」以外の全ての演目に出演して女形と立役の両方を演じる大車輪の活躍。それだけで楽しい。さらにこの月は、勘太郎が荒事を張り切って演じて、よかった。「車引」の梅王丸が飛び六方で引っ込む時は、花道の脇の席だったこともあり迫力満点。勘九郎襲名への期待が高まる。勘三郎も昼夜の最後で、さすがの演技。ことに松浦の殿様は、もう絶品の部類。ここでの彌十郎の其角も味がある。あと、扇雀の葛の葉も愛嬌と凄みが同居してて、よございました。亀蔵は、時平や松王丸はちょっと荷が重い感じだが、「寺子屋」での春藤玄蕃なんて憎まれ役をやると素晴らしい。

 日生劇場『十二月歌舞伎公演』
 「七世松本幸四郎襲名百年」と銘打たれた公演で、七世松本幸四郎の曾孫である染五郎・松緑・海老蔵の3人が共演。と言っても、昼の部には 3人全員が出る演目はない。「碁盤忠信」は染五郎メイン、「茨木」は松緑メインで、両方に海老蔵が共演、という形。
 「碁盤忠信」は七世松本幸四郎の襲名公演で演じられて以来の復活だそうで、ユーモラスなところもある荒事が楽しい。「茨木」「勧進帳」と同じく松羽目物なので、前半はやや退屈。士卒たちの狂言的な踊りの場を挟んで(高麗蔵の踊りはいつ観ても端正)、鬼(松緑)が正体を露わにしてからは、見得の連続で見応えがある。いずれにしても、海老蔵が出ると華やぐのは間違いのないところ。
 夜の部は、「錣引(しころびき)」には海老蔵は出ないが、「口上」と(当たり前か)「勧進帳」には 3人が揃って出た。
 やっぱり、海老蔵が弁慶をやる(松緑が富樫、染五郎が義経)「勧進帳」が楽しい(前述の通り、個人的には、「勧進帳」自体は前半が退屈だと思うので、あまり好きな演目ではないのだが)。いつも 3階席で観る歌舞伎だが、こればっかりは 1階席で観てよかった。なにしろ海老蔵の顔が重要なので。

 明治座での前川清・秋元順子特別公演『ザ・ナイスガイ~どうしてこんなにモテるんだろう~』『ザ・ファンタスティック・トゥ~唄う二人は夢を見る~』
 第 1部がミュージカル仕立ての『ザ・ナイスガイ~どうしてこんなにモテるんだろう~』、第 2部が歌謡ショウ『ザ・ファンタスティック・トゥ~唄う二人は夢を見る~』だが、第 1部が 30分の休憩を挟んで前半 65分、後半 45分、その後再び 30分の休憩を挟んで第 2部は 55分、という構成に問題あり。別に 30分の休憩 2回が長すぎるということではなく(まあ、明治座ですから)、第 1部が 65分+ 45分という時間に耐えうる内容を持っていないところが問題。高平哲郎の脚本(演出も)が、大きな骨格から細かいギャグに到るまでユルユル。プログラムに脚本家本人が「(アチャラカは)台本による喜劇ではなくて、出演者が作る笑いの喜劇ともいえます」と書いているぐらいなので、最初からキチンと仕事をする気がなかったのかもしれないが……。そんなわけで、小松政夫の奮闘空しく、かなり退屈な第 1部と相成った。
 芝居は 80分ぐらいで締めて、残りを歌謡ショウに当てて欲しかったところ。歌謡ショウに休憩が入っても全く問題ない。前半秋元順子、後半前川清で歌をたっぷり聴かせていただく、と。宝塚 OG 8人が絡めれば、充分に時間はもったはずだ。

(1/8/2012)

Copyright ©2012 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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