[ゆけむり通信 番外2011]

  • 8/3/2011
    『美しき生涯~石田三成 永遠の愛と義~
    『ルナロッサ~夜に惑う旅人~
  • 8/8/2011
    『八月花形歌舞伎 第三部(宿の月/怪談乳房榎)』
  • 8/15/2011
    『八月花形歌舞伎 第一部(花魁草/櫓のお七)』
  • 8/15/2011
    『八月花形歌舞伎 第二部(東雲烏恋真似琴/魂まつり)』
  • 8/16/2011
    『三銃士』
  • 8/18/2011
    『ファントム』

2011年 8月観劇記

 宝塚歌劇宙組東京公演。
 第1部の『美しき生涯~石田三成 永遠の愛と義~』は“江ブーム”を当て込んでのネタか。
 大石静のオリジナル脚本だが、主人公が忠義(秀吉に対する)と愛(茶々に対する)の狭間で苦しむ、というのは、今日的視点からするとカッコ悪い。そこが問題。石田三成(大空祐飛)より、お市の方の命を受け茶々を守ろうとするニヒルな忍び(凰稀かなめ)の方がカッコよく見えてしまう。というか、史実に即して描くと三成ってカッコよくならないんじゃないですかね。何か一捻りがほしかったところ。
 茶々とかお市の方とか北の政所といった女性陣がイキイキしているのは、さすが大石静ということなのか。そうした諸々を超えて、秀吉役の未沙のえるが光っていたが。
 第2部『ルナロッサ~夜に惑う旅人~』は、幻想的でシャープな印象の、手際のいいショウだった。
 が、この日は、大詰め、ラインダンスが終わって、いよいよ大階段が登場する(はず)ってところで、突然演奏が止まって緞帳が下りてきた。結局、装置の点検に時間をとる、というアナウンスがあり、25分ほど中断して再開。大階段に問題があったのか。とにかく、再開後は大階段以降を何事もなかったように盛り上げて幕だったが、再開後最初に登場するのが大階段に立つトップ・スター大空祐飛だった、というのは不幸中の幸いだったと思う。演じる側にとっても観客にとっても。
 この事故で発見がひとつ。緊急事態発生を知らせるのに、指揮者の前にある(普段は見えない)警告灯がクルクル回るんですね。パトカーの屋根に載ってるやつみたいに。

 新橋演舞場の『八月花形歌舞伎』を観た順に。
 まず、第3部。橋之助・扇雀のユーモラスな踊り「宿の月」があって、その後が勘太郎・獅童・七之助による「怪談乳房榎」の通し。
 「怪談乳房榎」は、円朝の落語を関西歌舞伎の二世實川延若が舞台に仕上げ、それを継いだ息子の三世延若から、当代勘三郎が勘九郎時代に教わって練り上げてきた演目らしく、頻繁に出てくる早替りが見どころ。それを今月は勘太郎がやるということで、「中村勘太郎四役早替りにて相勤め申し候」と謳われている。
 なにしろ四役だから忙しい(と言っても一役は最後に出てくる円朝役なので、実質三役だが、それでも充分忙しい)。で、早替りの工夫も様々。ではあるが、そこのところは、さすがに子供の頃から観てきただけあって、勘太郎、がんばってこなしている。まあ、実際のところ、早替りは、入れ替わる役の人たち(中村屋の部屋子のみなさんということになるのでしょうか)との呼吸だから、勘三郎に鍛えられた人たちに支えられてのことなのだろうが、でも、きちんと見せている。
 そこ(早替り)はいいのだが、問題は芝居。
 悪役のうわばみ三次が辛うじて合格点だが、あとは、まだまだの印象。まあ、それでも勘太郎は、勘三郎をなぞりながら、これからよくなっていくのだろう。
 本当にいけないのは、相手役の獅童。まるでなっていない。この人、歌舞伎がうまくなるのだろうか。心配。もっと身を入れて修行していただきたいところだ(と、第3部を観た時点では思った)。
 その後、第1部と第2部を同日に続けて観た。第1部は、福助・獅童に勘太郎・彌十郎・扇雀が絡む「花魁草」と、七之助の人形振りが見られる「櫓のお七」。第2部は、G2作・演出の「東雲烏恋真似琴(あけがらすこいのまねごと)」と、芝翫・福助・橋之助に橋之助の息子、国生・宜生まで揃った成駒屋一家の踊り「魂まつり」
 まず言っておくと、第3部を観てクサした獅童が、「花魁草」では、青っ白いが実のある役者を演じて、悪くなかった。「東雲烏恋真似琴」にも出ていたが、こちらも役柄がハマっていたせいか、まずまず(と甘めに)。
 さて、話題は何と言っても、その新作歌舞伎「東雲烏恋真似琴」。純朴で実直なサムライ(橋之助)が一目惚れして結婚することになった花魁(福助)が祝言前夜に死ぬ。が、サムライは、その死を認めない。そこに、左甚五郎の末裔(獅童)の作った花魁の人形が持ち込まれるや、サムライはその人形を生きた花魁として遇する。事情があって、家族もそれに従わざるを得なくなり……。という奇妙な話に、花魁の死の真相究明や、人形が発揮し始める悪意、といったサスペンスが盛り込まれ、のほほんと始まった舞台が急展開していく。ケレンも充分に含みながら、至極真っ当な歌舞伎として作られていて、新作としては、かなり面白い出来だろう。このところの橋之助の意欲的な取り組みは、観ていて楽しい。福助の人形芝居も怖くて、さすが。
 七之助が全日を通して大活躍で(第2部は「東雲烏恋真似琴」で橋之助を慕う武家娘役)、もうなんだか貫禄が出てきていて、楽しみ。あと、「花魁草」「東雲烏恋真似琴」で、芝のぶが、いい味出してました。

 帝国劇場は、オランダ産(らしい)ミュージカル『三銃士』の翻訳舞台。e+の割引が出たので5000円のA席を買ったのだが、それが1階の席だったのでビックリ。
 とにかく気になったのが、井上芳雄演じるダルタニアンのキャラクター設定(井上の演技のことではない。念のため)。めちゃめちゃ軽薄なんですけど大丈夫ですか? と問いかけたくなった。それと、リシュリュー役の山口祐一郎の演技(こちらは山口の演技そのもの)。役作りとか、そういったことではなく、不自然で不気味。
 連続活劇的なスラップスティックの線を狙った部分もあるのだろうが、そういったところは日本の役者が最も苦手とするところ。まあ、とにかく全体にチグハグで、なんだかなあ、な出来。キイになる役を振られている瀬奈じゅんの力不足も痛かった。

 宝塚歌劇花組公演『ファントム』は、蘭寿とむのトップお披露目公演。もちろん、モーリー・イェストン Maury Yeston 版だ。
 2004年の宙組公演(和央ようか)、2006年の花組公演(春野寿美礼)の時には、“怪人”でありつつ“少年”である(そういう話なんです)というあたりが矛盾を孕んでいるように感じて気になったのだが、今回は、そこがすんなり腑に落ちた。3回目で慣れたのかもしれないが、蘭寿とむの“少年”性の表現が自然だったのが理由か、とも思う(劇団の側も3回目で慣れたのかもしれない)。実は父親であるところのキャリエール(壮一帆)と、ファントムとのやりとりも無理な感じがなく、納得。ま、これも慣れたせいかも(笑)。
 ただ、クリスティーヌよりカルロッタ(今回は桜一花)の方が歌がうまいのは、前回、前々回同様。どうにも困った(って、客が困る必要はないのだが)。まあ、あの花總まりのクリスティーヌですらそうだったのだから、この辺が宝塚歌劇団娘役の最大の弱点なのかもしれない。

(9/26/2011)

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