[ゆけむり通信 番外2011]

  • 5/20/2011
    『スウィーニー・トッド~フリート街の悪魔の理髪師~
  • 5/23/2011
    『五月大歌舞伎 夜の部(籠釣瓶花街酔醒/あやめ浴衣)』
  • 5/24/2011
    『たいこどんどん』
  • 5/25/2011
    『五月大歌舞伎 昼の部(敵討天下茶屋聚)』
  • 6/2/2011
    『こんにちは赤ちゃん』
  • 6/9/2011
    『ノバ・ボサ・ノバ~盗まれたカルナバル~
    『めぐり会いは再び』
  • 6/11/2011
    『盟三五大切』

2011年 5月後半~ 6月前半国内観劇記

 『スウィーニー・トッド~フリート街の悪魔の理髪師~ SWEENEY TODD』の翻訳版を観るのは初めて。
 演出・宮本亜門、装置・松井るみ、翻訳訳詞・橋本邦彦、というスタッフの組み合わせは、やはり(作曲作詞)スティーヴン・ソンドハイム Stephen Sondheim 作品である、日本語版『太平洋序曲 PACIFIC OVERTURES』と同じ。だからチケットを取ったんだろうと思う。記憶が曖昧。あと、市村正親と大竹しのぶの主演コンビを観ようと思った、とか。でも、同じ顔ぶれの初演は観てないのに、なぜ再演だけ観ようと思ったのか……。とにかく、先行予約のメルマガが来た時に予約したのは間違いない。
 青山劇場は、いつも開幕直後の音響がよくない気がする。今回も歌の内容がよく聴き取れなった。まあ、あの畳みかけるような英語の歌を、わかりやすく日本語にする、なんてことが、そもそも至難の業なんだろうが。
 見ものだったのは、舞台が進行するにつれてノッてくる大竹しのぶ。熱量の大きさに驚く。あと、福麻むつ美は、どんな舞台に出ていても存在感があって素晴らしい。

 新橋演舞場の『五月大歌舞伎』は、昼が、幸四郎が悪役二役を早替わりで演じる『敵討天下茶屋聚』の通し、夜が、吉右衛門・福助の『籠釣瓶花街酔醒』の通しと、芝雀・錦之助・歌昇の踊り『あやめ浴衣』
 『敵討天下茶屋聚』は初めて観たが、幸四郎の演じる悪役の、いい加減な性格の方がユニークで面白い。通しじゃないと何がなんだかわからないくらい揺れ動くキャラクター。こういう役を演じると、幸四郎はハマる。
 『籠釣瓶花街酔醒』は、吉右衛門・福助の組み合わせも含めて何度か観ているが、今回の通しは、通常上演される場の前後がくっついていて、なるほどそうか、という由来がわかる仕掛け。最後に恨みの相手以外もドンドン斬っちゃうのは、刀の憑き物のせいだったんだ、と納得。なんにしても面白い演目だ。

 『たいこどんどん』は、故・井上ひさしの初期作品。
 演出が蜷川幸雄で、古田新太、中村橋之助、鈴木京香が主演格。
 とにかく橋之助がよかった。色っぽくて悲しくて。で、改めて、歌舞伎役者はうまいなあ、と感心したしだい。セリフも体の動きも。
 この日だけなのかもしれないが、古田新太は声が出てなかった。
 初めて観る作品だったが、井上作品としては理屈が少なめで、むしろ勢いで見せる舞台(そう演出したのかもしれないが)。鈴木京香の美しさも含め、楽しんだ。
 宮本裕子が、えーっ!宮本裕子?って役で出ていて驚いた。『香港ラプソディー』以来好きな女優さんです(『ピーターパン』もよかった)。追っかけてはいませんが(笑)。

 『こんにちは赤ちゃん』は、伊東四朗一座・熱海五郎一座合同公演。
 ご承知かと思うが、伊東四朗一座は伊東四朗と三宅裕司が中心になった仮の劇団で、熱海五郎一座は伊東四朗のいない伊東四朗一座。というわけで、要するに今回は伊東四朗一座の公演。
 元々この一座の公演は好きなのだが、今回はなにしろ、真矢みきが客演。となれば観ないわけにはいかない。なんたってアタクシ、まだ宝塚在籍中の真矢みき武道館公演まで観に行ったぐらいですからして。これまた、追っかけてはいませんが(笑)。
 で、やっぱり真矢みきが素晴らしかった。この人、天才だわ。
 言葉を微妙に言い間違える(言い間違える理由が全体の伏線になってる)ヘンな美女を演じるのだが、(微妙に言い間違えるという設定なので逆に難しいと思われるにもかかわらず)言い間違いに淀みがない。というのは当然のこと、そこに妙な力みも衒いも全くない。ひたすら自然で、それがすこぶるおかしく、かわいくすらある。
 さらに、終盤、宝塚まがいのショウ場面があるのだが(これも必然性あり)、そこで歌われるのは、とぼけた感じの CMソングのメドレー。それを、内容と関係がなさそうでありそうな派手な振付で SET(三宅裕司の劇団)の若手陣と一緒に踊りながら歌う真矢みきの、カッコいいおかしさ。極めつけは、そこで時折見せる、「どう? 付いてきてるよね?」という、観客への目配せ。シビレました。
 そんなこんなで、今回は、レギュラー陣はあまり目立たず。もちろん伊東四朗のボケは芸術ものだが、それ以外では、東貴博の小倉久寛への小気味よいツッコミが印象に残ったぐらいか。ま、劇場が少し大きすぎたというのはあると思うが。

 宝塚歌劇団星組公演は、『ノバ・ボサ・ノバ~盗まれたカルナバル~『めぐり会いは再び』
 『ノバ・ボサ・ノバ』は名作(初演は1971年で、70年代に3度再演。さらに、99年になって再演を重ねている)。カーニヴァルの一夜を緩いストーリーでつなぐダンス作品、つまり宝塚で言うところのショウなのだが、筋のハッキリした、これまた宝塚で言うところのミュージカルよりも、はるかに深みがあり面白い。ブラジルを通過してアフリカにまで到達した音楽が素晴らしく、振付もレヴェルが高い。自分が観た中では宝塚最高の舞台作品だと思っている。
 初めて観たのは 1999年の夏。仮設の TAKARAZUKA1000days劇場で、 7月に雪組(轟悠・香寿たつき・汐風幸・月影瞳)、 8月に月組(真琴つばさ・紫吹淳・大和悠河・檀れい)、と 2か月連続で観ている。その雪組が素晴らしかった。先に観たから印象が強かった、ということもあるが、あの頃の轟悠は輝きのピークにあったのではないだろうか。スケールの大きな作品をさらに大きく見せる、ただならぬオーラを感じた(あ、真琴つばさがよくなかったわけではない。念のため)。
 で、今回の星組。柚希礼音、ついに大当たり、っというのが正直な感想。彼女のスケールの大きさ、ダンスのうまさがホントに生きる作品に、ようやく巡り合った気がする。若手も溌剌としていて、とてもいい舞台だった。
 『めぐり会いは再び』は、フランスの喜劇作家マリヴォー(ピエール・カルレ・ド・シャンブラン・ド・マリヴォー Pierre Carlet de Chamblain de Marivaux)の古典を元にした、人物入れ替わりのミュージカル・コメディ。脚本・演出の小柳奈穂子の大劇場デビュー作だそうだが、よく勉強しているな、という印象。『ノバ・ボサ・ノバ』の後に観るにはちょうどいい軽さだった。

 今年のコクーン歌舞伎は、鶴屋南北の『盟三五大切』。コクーンでは 1998年以来の再演だ。
 今回は、勘三郎がいなくて、菊之助が初参加。その菊之助が小万、源五兵衛が橋之助、三五郎が勘太郎。彌十郎、亀蔵、笹野高史といったコクーン歌舞伎の常連も出ている。
 お囃子系の他に、「源五兵衛のテーマ」的にチェロ演奏が入ってきて、それが最後に、源五兵衛の回想と言うか、あったかもしれない別の現実と言うか、そういう幻想的なエンディングの表現につながっていく。でもって、今回は、最後に討ち入りの一団に加わるシーンはなし。そのせいで、物語全体が、源五兵衛の無残な青春、といった印象になった。これほど串田和美の独自の解釈が強く反映された演出は、過去のコクーン歌舞伎にはなかったと思う。
 このところ進境著しい(と素人が言うのもオコガマシイですが)菊之助が、今回もよかった。前月に続きコクーンに登場の橋之助もいい。
 最後に源五兵衛に語りかける幻聴のようなセリフが勘三郎の声に聴こえましたが、どうなんでしょう。

(6/19/2011)

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