それゲキ・アンケート篇


第 7回
好きなオリジナル・ミュージカル
(前編)

 “好きな日本のオリジナル・ミュージカル”アンケートへのご回答ありがとうございました。
 アンケートの内容は以下の通りです。

 [質問 1] ご覧になった日本のオリジナル・ミュージカルの中で、いちばん好きな作品は何ですか?
 (あるいは、いちばん印象に残る、最も理想に近かった、可能性を感じた、という視点で選んでいただいてもけっこうです)

 [質問 2] 選んだ理由を、出来るだけ具体的に教えてください。

 今回のご回答は 9人の方からいただきました。ありがとうございました。
 前回に比べ回答数が少なかったのは、あまりにも漠然とした質問だったからでしょうか。それとも、日本のオリジナル・ミュージカルを観てる人が少ない? まさか、ね。

 ミュージカル・タイトルはじめ若干の表記の統一と若干の改行をさせていただいた他は、基本的に、いただいたメールのままです。
 掲載は到着順。前後編に分かれています。
 なお、前回同様、僕の僭越なコメントは最後にまとめました。

 ●NANAさんの場合。

 [質問 1]

 やっぱ『アイ・ガット・マーマン』でしょう。
 1987年 12月、築地本願寺・ブディスト・ホール。

 本来なら次点は初演時の『シューズ・オン!』。 1998年 10月、俳優座劇場。
 だけと博品館に移ってからの再演がダメダメなので、現在の次点はなし。

 [質問 2]

 とにもかくにも、私に「観劇」の楽しさを教えてくれた作品だから。
 以下、私のサイトの同作品観劇記(http://nana.musical.to/tubuyaki/Butai/I_GOT.html)から、肝心な個所をコピペします(こーゆーの、あり?)。

 ブロードウェイの大女優、エセル・マーマン(1909〜 1984)の生涯を 3人の女性が演じていくスタイルは、それまで私が観てきた舞台とは、何もかもが違いました。

 歌唱力も個性もバツグンな 3人が、良いバランスで舞台に存在している事。
 しかも 3人の誰か 1人がマーマン役なのではなく、 3人が 3人の個性を生かしたマーマン像を、その時々で演じていく事。
 また 3人には役名が無く、舞台上では本名で呼び合う事。それが演技なのか地なのかと一瞬疑っちゃうほどすごく自然で、その分、芝居仕立てのミュージカルではなく、どこかのクラブでショーを見ている感覚になる事。
 回転するピアノ 2つと男装した 2人の女性ピアニスト。そのピアノの位置だけでシーンが変わり、時にはピアノ自体がステージになり、またピアニストも、演奏者でありながら出演者にもなり、舞台に色々な変化を与えていた事。
 観客 1人がステージに連れ出され、出演者になってしまう等、客いじりがある事。

 しかしこの舞台の良さは、こんな外観的なことだけでは言い表せないです。
 センスが良くて、小粋で、斬新で、気分はオフ・ブロードウェイと言っても言い過ぎではありませんでした。
 (しかし実際は日本の寺の中…)
 なにより、これが日本の若き演出家のデビュー作だった事が、世間的にも一番の衝撃だったのではないでしょうか。
 亜門氏は当時まだ 29歳だったそうですが、私も今月で 29歳。私のこの年齢の時にあんな作品を作っちゃうなんて、やっぱりスゴイとしか言えません。
 普通なら、どんな舞台でもアラが見えるし、それが新人の演出家なら尚更です。
 しかしそれが、この舞台には(高校生の私が見る限り)ありませんでした。
 当時は歌手芝居ばかり見ていた私ですが、こんな舞台の使い方、演出の仕方があったんだと、いろんな意味で衝撃を受けました。

 ●すどやんさんの場合。

 [質問 1]

 1本しか選べないんですよね?
 それならば、『とってもゴースト』を選びます。(同率 1位として『おれたちは天使じゃない』。あと、『ひめゆり』『グッバイ・チャーリー』『魔女の宅急便』『泣かないで』も入れたいなぁ)

 観劇したのは、 93年の NHK BS-2での舞台中継、そして、同年秋の岐阜県垂井町立文化会館にて上演された移動芸術祭公演を観賞しました。
 この公演には思い入れがありまして、その前年にも『おれたちは天使じゃない』の公演が同じ会場で行われたんですが、そこの職員の方と親しくなりまして、作品について色々教えたり、脚本が掲載されていた「月刊ミュージカル」を貸してあげたりと、ちょっとした関係者気分でした。

 [質問 2]

 やっぱり、旧音楽座ミュージカルの全作に共通する、「いのちの輝き」、「生きることへの肯定」の最大公約数というべき作品だからです。
 生きているときは愛することを知らなかったヒロイン入江ユキは、不慮の事故で死んだことにより、本当の愛と、生きることの素晴らしさを知るのです。
 そして、彼女と主人公の服部光司の愛情に触れた地縛霊の「かたまり様」が、その愛情によって、彼女自身に掛かった呪いが解けて昇天していくというように、愛情から生まれる生きる力を見せてくれる作品です。
 ラストシーンも、初老の光司と、生まれ変わったユキがもう一度出会うというロマンチックな場面で、性善説なんて信じない私ですが、この作品を観ているときは、人間の優しさを信じられる気がするのです。

 ぜひ、次回のアンケートに、「ミュージカル化して欲しい作品および題材」を聞いてほしいです。
 ちなみに、私は森村桂さんの「天国にいちばん近い島」と、東京ローズと呼ばれた日系アメリカ人女性の哀しい運命をミュージカル化してほしいです。

 ●KJさんの場合。

 「アンケート」お送りします。 作品うんぬんより、それを観たときの自分の状況が印象深かったということで選びました。

 [質問 1]

 青年座『私はルビィ』
 1976年名古屋市市民会館中ホール、あるいは今はなき愛知県文化会館(たぶんこっち)。
 (26年も前のことなので、記憶が曖昧で)

 [質問 2]

 日本のミュージカルはというと、数えるほどしか観ていない。ましてオリジナル作品となると、テアトルエコーの井上ひさし作品をミュージカルとカウントしても、 4本くらいか。
 高校時代、演劇部でミュージカルのようなもの(井上ひさし作『どうぶつ会議』『11ぴきのネコ』)を上演(前者は脇、後者は主役) し、自分でもオリジナル作品(歌入り劇)の作演出をしていた。
 ちょうどそんなときに観たのが『私はルビィ』だった。
 主演は、若き日の西田敏行と山本与志恵。
 あまりにも昔のことで、内容は記憶の彼方へいってしまっているが、感動したことだけは鮮明に覚えている。
 今まで観たオリジナルミュージカル(歌入り劇)とは、楽曲もストーリーもぜんぜん違っていた。
 かつて森繁久弥が『屋根の上のバイオリン弾き』をリタイヤするという話しがあったとき、後釜は西田敏行しかいないと思ったのだが、あの頃すでに大物の片鱗があった。歌は当時からうまかったし、あの顔(失礼)がだんだんハンサムに見えてくるという演技力の素晴らしさ(舞台のマジック)が印象的だった。
 自分の歌唱力ではミュージカルは無理と、思い知らされる作品でもあった。
 その後、某劇団の入団試験に合格しながら親の猛反対で断念したため、演劇がトラウマとなり、当時の思い出を封印したため記憶が極端に薄れている。
 同じ理由で、劇場に行くことが極端に減り、当時、全盛をむかえた東京キッドブラザーズを一度も観なかったのは、今になって思えば残念だ。
 ナマ坪田直子、ナマ柴田恭兵、観たかったぞ。

 [後日談]
 当時買ったはずの『私はルビィ』のプログラムを何回かの引っ越しで紛失していまい、 2年前、古書ネット(紫式部)で注文し、旭川の古書店から届けてもらったときは、うれしかったと同時に、ネットの恩恵を大いに感じだものだった。
 (もしこの作品が、再演されるのなら、旭川でも行くだろう)

 ●乙井優子さんの場合。

 [質問 1]

 今回はじめてサイトにお邪魔したのに、アンケートに答えるのはずうずうしいかな、と思ったのですが、どうしても『アイ・ガット・マーマン』に 1票投じたくて、メールさせて頂きました。
 観劇したのは確か 2000年の 1月と 12月、大阪のシアタードラマシティーでした。
 残念ながら『香港ラプソディー』は見たことがないので、比較はできませんが、私の日本オリジナル・ミュージカルでは間違いなく一番の作品なんです。

 [質問 2]

 何より、お金のかかっていないシンプルなセット、たった 2人の生ピアノ、そして魅力溢れるたった 3人のキャストがあれほどパワフルな舞台を作り上げられるということに観劇しました。
 ストーリーはマーマンの人生を断片的にたどるだけ、なんのてらいもないシンプルな作りなのに、宮本亜門の「ミュージカルが好き」という情熱がビシビシと伝わってきて、私にとっては完璧なるエンターテインメントでした。
 他のオリジナルミュージカルにありがちな、ウエストエンド尊敬型日本くささというものもなくどちらかというと、ブロードウェイやミュージカル映画に単純にみせられた日本人が好きなものを作った、少しブロードウェイ的な香りが(音楽の効果なのでしょうが)私にはたまりませんでした。
 基本的に日本のオリジナル・ミュージカルは、音楽をあまり大事にしていないような気がしてなりません。
 オリジナルであってもなくても、いい音楽がなければ、ミュージカルとしては失敗だと思うのです。
 『アイ・ガット・マーマン』はミュージカル黄金期の曲しか使用されておらず、完璧なオリジナルミュージカルとは言えないのかもしれません。でも、この音楽たちが、私を楽しませてくれたのは事実でした。
 亜門さんの「ウルフルズ」「広瀬香美」を使ったミュージカルは、良かったとは言いきれません。
 でも、オリジナル・ミュージカルの、しかも若い層にうったえる、ミュージカルの可能性は広げたのではないかと感じています。(『世界中がアイ・ラブ・ユー』『ムーラン・ルージュ』も音楽において、対象的ですよね。ミュージカルが今特定の観客しか呼べないのは古い音楽にあるんじゃないかと思います。『ムーラン・ルージュ』は現代の音楽好きもよべて、客層が広がった気がします。ディズニー・ミュージカルの偉大さは新しくて一般的にいい音楽を生み出すところにあるのだと感じています)

 ●齋藤惠子さんの場合。

 [質問 1]

 さてアンケートですが、オリジナルっていくつあるのだろう?と考えた瞬間に選択肢がぐぐっと限定されてしまったのですが、敢えて挙げるのなら『オケピ!』でしょうか?
 観劇日はたしか一昨年の夏、だったと思います。

 [質問 2]

 好きかどうかはよくわからないのですが、少なくとももう一度見てみたい。 舞台の上にいた等身大の人間たちに、再会したい気持ちがあります。
 またキャラの面白さ、スピード感のあるストーリーに囚われて、一昨年には見えなかったものを、じっくりと見据えてみたい想いもあります。三谷幸喜個人に可能性も感じます。

 それからもう一つ、具体的な作品を選ぶことができないのですが、日本の伝統的なミュージカル「歌舞伎」は好きです。 『オケピ!』とは違った意味で、人間(役者)の確かな存在を感じます。

後編に続く。

(7/1/2002)

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