それぞれの人生それぞれのゲキもは!

カイルア山本さんの場合 4

 1年ぶりの「それゲキ」は、前回同様、観劇の大先輩、カイルア山本さんからの 1年ぶりのブロードウェイ観劇記です(1月 5日にいただきました。アップが遅くなって申し訳ありません)。
 前回同様、ハワイからの米本土入り。 19日(金)は残念ながら発熱のため観劇を断念されたそうです。
 例によって、作品タイトルや人名などの表記を本サイトの原則に沿って統一させていただいた他、僭越ながら観劇関連以外の部分を省かせていただきました。

11月16日(火)
 14時13分ニューアーク着。 NJTをシニア割引で利用、ペンステーションへ。地下鉄で 50丁目へ。ホテルは 48丁目で少し旧いが劇場街の真ん中「プレジデント」旧型のエレベータを利用しないですむ 204号室。
 タイムズ・スクェアまで歩いてTKTS半額チケットのリストを確認してみる。
 『太平洋序曲 Pacific Overtures』は半額チケットを求める。
 『ラ・カージュ・オ・フォール La Cage Aux Folles』は100ドルで水曜の夜を求める。
 19時30分、 54丁目まで歩いて STUDIO 54へ。

『太平洋序曲』
 やはり 1階はキャバレー形式の設定のまま、ワインやカクテルを売りに来る、 2階席は普通スタンドの劇場スタイルだが、舞台が小さく見える。
 宮本亜門演出は以前に上演したものの集大成と思われるが、劇場のハード面の制約の中での変更や工夫に、彼のアイデアは大半生かされていると云える。視覚的効果としての橋掛かり、しおり戸、戸板返し、屋台崩しと、歌舞伎と能の手法が上手に消化されているが、センターステージの橋の上げ下げに時間がかかり、少し間の悪さが感じられるのは致し方ないか。
 脚本の視点がやはり日本人としては気になって仕方がない部分がある。日本人から見た幕末の混乱を描いているが、時々、作者ワイドマンの視点になってしまっていて違和感があり、ソンドハイムの感情移入が難しいメロディと共に消化不良が起きそうな感じであった。
 唯一 Kayama と Manjiro の連歌の掛け合い「I Will Make a Poem」は文句無く楽しめた。
 役者達の所作動作にぎこちなさは見えるが、日本的な仕草は良く身に付いているし、狂言回しの B.D.WONGの愛嬌のある柔軟な演技により、だいぶ内容の辛さが中和されている。全員がフィナーレではよく踊るが中年組の動きは少し切れが良くなかった。
 衣装はコシノ・ジュンコらしい色使いで、日本的とは云えない部分があるし、裾捌きが気になるのは致し方ないか。
 やはり最初の夜に向かない作品だったかも知れない。

11月17日(水)
 10時 30分、 TKTSへ、リンカーンセンターの小劇場での『ベル・エポック BELLE EPOQUE』を半額で購入。日本女性二人連れに『プロデューサーズ THE PRODUCERS』を勧める。
 13時20分、 The Mitzi E. Newhouseへ。シート数400程度のスタンド式円形小劇場である。

『ベル・エポック』
 マーサ・クラーク Martha Clarke とチャールズ・L・ミー Charles L. Mee の共同脚本・演出で、ベルエポック時代に生きた画家ロートレックを主人公に、酒場の一杯舞台に、ロートレックの各種の絵画やポスターに登場した人物を物語の要所に散りばめて、ロートレックと母との葛藤、愛人との齟齬、アルコールへの依存そして破滅を、当時の風俗、音楽、ダンスなどを時代考証も細やかに展開させる。
 何処かで見たような「絵に描かれた」登場人物が話を進めると云うアイデアの勝利と云える。
 ロートレックを演じる役者も、単なる見世物にならぬ演技者で、周囲の芸達者達と十分に張り合える実力をみせてくれる。
 音楽のドビッュシー・サテイ・古いシャンソンの使い方も旨いし、狭いステージでカンカンを思い切り踊るダンサー達の技量もさすがと云える。

 20時から Marquis Theatre へ。

『ラ・カージュ・オ・フォール』
 20年ぶりのリバイバルである。当時と社会情勢は大きく変化しているが、中心に流れる夫婦愛(?)家族愛のテーマは不変であり、ハーマンの判り易いメロデイは耳に馴染じみ、久しぶりのミュージカルコメデイの復活で嬉しくなる。
 演出ジェリー・ザックス Jerry Zaks の、これでもかと云う程のショーアップと、振り付けジェリー・ミッチェル Jerry Mitchell もタップダンスを禁じ手にして、ハイキックとラインダンスを中心にした、新体操ばりの激しい動きで派手に躍らせる事に徹している。
 お話の展開はハーヴェイ・ファイアスタイン Harvey Fierstein がきっちり書き込み、いじりようが無いので、ショーナンバーをどう変化させ「あっ」と云わせるかが眼目である。 3回のナンバーをそれぞれリド風、ムーランルージュ風、フォーリー・ベルジェール風に統一して、衣装も振り付けもそれらしく徹底している所がさすがと思わせる。前作に比較するといっそう衣装のセンスが良くなっている。
 アルバン役ゲイリー・ビーチ Gary Beach もジョルジュ役ダニエル・デイヴィス Daniel Davis も二人揃って実力を大いに発揮してキチンと唄えて踊れて芝居っ気も十分、2005年トニー賞のリバイバル部門は決まりと云う感じの仕上がりである。ダンサー達も筋骨隆々タイプを意識して揃え、くすぐつたい女装の効果を上げている。
 (ネタバラシ)になっていてすみません。

11月18日(木)
 TKTSで『ブルックリン BROOKLYN』を半額で求める。

『ブルックリン』
 5人の出演者(ホームレスと云う設定)が、その中のストリートパフォーマーの語る「父親探し」の現代お伽話の役を、それぞれに割って演じ唄う。
 歌唱力は満点で、ブルース・ゴスペル・ロックの要素がミックスされていてかなり難しい曲調である。全員が余裕のパフォーマンス、二人のディーヴァ誕生と評されている魅力的な歌声であるが、ただアメリカン・アイドル的に歌い上げるだけではと云う疑問点も生じてしまう。
 捨てられているゴミを小道具と衣装に生かすアイデアと色彩感覚が粋であり、 1時間 40分を一気に突っ走る。ただお話が類型的なので深みを求める向きには物足りない感じがすると思う。

11月20日(土)
 午後のマチネーはメトロポリタン・オペラへ。開始時間を間違えて覚えていて、慌てて地下鉄に飛び乗り、何とか間に合う。

『ラ・ボエーム LA BOHEME』
 プッチーニ Giacomo Puccini 作曲『ラ・ボエーム』、プッチーニの泣かせ節のメロデイを楽しむのと、演出のフランコ・ゼッフェレリ Franco Zeffirelli のスペクタクル趣味とその捌き方に興味が湧きます。
 それぞれのアリアで各歌手の実力が十分の発揮されているし、メットらしい大掛かりなセットと大群衆の登場で第 2幕は大いに楽しめました。
 ミミ役のルース・アン・スウェンソン Ruth Ann Swenson より、ミュゼッタ役のアンナ・ネトレブコ Anna Netrebko に人気があり、アンコールではミュゼッタにだけ大きな薔薇の花束が投げられました。
 手馴れたレパートリーとは云え、緻密な装置と照明は見事といえます。

 20時から Al Hirschfeld Theatre へ。雨が降って肌寒くなって来るが、劇場がホテルから近いので安心である。

『ワンダフル・タウン Wonderful Town』
 レナード・バーンスタイン Leonard Bernstein が作曲した初期の作品で、 1935年代のグリニッチ・ビレッジが舞台に設定され、オハイオからのお上りさん姉妹の成功物語。
 お話がミュージカル・コメディの典型とは云え、人物描写も、時代に対する皮肉も現在では軽く感じられてしまうのは否めない。
 姉役のブルック・シールズ Brooke Shields が初演当時の「ロザリンド・ラッセル Rosalind Russell」を思わせるコメディェンヌぶりで、美人女優とか純情役の殻をさらりと捨て、アンタそこまでやるか、という程の仕上がりで大いに唄い踊り芝居をして楽しませてくれる(ロザリンド・ラッセルは私のごひいき女優でアクの強さ、タフな役どころが当り役。映画『メイム叔母さん AUNTIE MAME』『ピクニック PICNIC』で偲べます)。
 振り付け・演出キャスリーン・マーシャル Kathleen Marshall が現代的センスを持ち込んでいるので群舞の切れが良い。

 70歳の誕生日を迎えられたのでしょうか。お元気で、これからも観劇のご感想をお聞かせください。

 山本さん、ありがとうございました。

(1/20/2005)

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