それぞれの人生それぞれのゲキもは!

カイルア山本さんの場合

 いつも含蓄のあるメールをくださる観劇の大先輩、山本さん。大病を乗り越えて、また今年も、ブロードウェイを含むアメリカ観劇ツアーにお出かけでした。
 なお、新作『フル・モンティ THE FULL MONTY』の項はネタバレありですので、未見の方はご注意を。

 あっと云う間の 16日間でしたが、精一杯気張って、こんなものを観て来ました。
 幸い天気には恵まれましたが、気温の上下が激しく、着たり脱いだりが忙しく、体調の維持が難しかったのがこたえました(なにせ胃を摘出したもので摂食障害があり、いささか食べる事が苦痛に思える事もあるのです)。

●9月 22日(金)11:00『サムソンとデリラ SAMSON ET DALILA』メトロポリタン・オペラ(Final Dress Rehearsal)
 これは『コンタクト CONTACT』のチケットを購入しに行った機会にフリーで観る事が出来ました。ドミンゴとデニース・グレーブスが本役できっちりと演じていて、儲けものでした。

●同日 20:00『美女と野獣 BEAUTY AND THE BEAST』
 TKTS の半額チケットで再見、小屋が小ぶりになった分、ダンサーの数も減ったのかな。

●9月 23日(土)14:00『コンタクト』
 三つの挿話が全部、取り替えばや物語が底にある趣向と、デボラ・イェイツ Deborah Yates の小粋さにしびれました。ストロマン Stroman が料理すれば「Sing,Sing,Sing」はこんなもんよ、という他の作品との競い合いが伺え、楽しめました。

●9月 24日(日)14:00『ザ・ミュージック・マン THE MUSIC MAN』
 やはりメレディス・ウィルソン Meredith Willson の樂曲の魅力が一番ですが、クレイグ・ビアーコ Craig Bierko も時間が経過し、役が手に入ったとみえ、ロバート・プレストン Robert Preston を彷彿とさせ、だいぶ自信がついたようであの早口言葉をたっぷり堪能させています。ニューヨーク・タイムズ・マガジンにも取り上げられていました。
 私の世代ですと、この作品のメロデイはぐんと懐かしく感じられますね。
 マチネーで子供が多いので、いささか辟易気味でしたが、経済好調の表われでしょうか。

●9月 25日(月)20:00『ナッシュビル・シンフォニー THE NASHVILLE SYMPHONY』カーネギー・ホール
 月曜日はコンサートへ。
 「Beethoven The Creatures of Prometheus Op43」
 「Ives Symphony No.2」
 「O'connor Double Violin Concerto」
 「R.Staraus Der Rosenkavalier Op.59」
 指揮者のデビューで力が入ってました。二挺バイオリンの競演はグランオープリーのようでテネシー色を打ち出していました。

●9月 26日(火)20:00『ジキル&ハイド JEKYLL & HYDE』
 何故かずっと敬遠していましたが、TKTS 利用で観る事にしました。
 『ザ・ミュージック・マン』と比較してはいけないのですが、やはりメロディラインに魅力がないのが難ですね。本火の派手な使い方や、場面転換のスムースさは、さすがと思わせますが私の趣味とは云えませんでした。ロックオペラ的歌唱が苦手なのかも知れません。

●9月 27日(水)20:00『アイーダ AIDA』
 ミソッパさんのご指摘のとおり、これもエルトン・ジョンのメロデイラインの少なさが完全にオペラのイメージを裏切ってくれて、どこか自分との間の隙間風を強く感じてしまいました。
 ヘザー・ヘドリー Heather Headley も声は素晴らしいが、何か一本調子で単調なのが可哀相ですね。
 セット・照明・衣装と回りは豪華でも中身がカスカスだと退屈します。ミュージカルに必要なペップやウィットやトゥイストがなく、真面目過ぎるのかな。
 古典をアレンジするのは難しいもんですね。

●9月 28日(木)20:00『フル・モンティ』
 テレンス・マクナリー Terrence McNally がイギリスの話を、ニューヨーク州バッファローに置き換え、登場人物の挿話も色付けを変えて、アメリカ版に無理なく消化していますが、イギリスのひなびた田舎町の匂いが消えてしまうのは致し方がないのでしょうね。
 6人の男が切羽詰って裸で踊る段取りと、それにからむ家族の挿話が人情話の趣で展開されます。
 楽曲はデイヴィッド・ヤズベク David Yazbek で、挿話に合わせた詞とメロデイがきちんと作り込まれ、古風なタッチなので馴染みやすく感情移入は楽に行えます。
 主人公(Jeery Lukowsky)を演じるパトリック・ウィルソン Patrick Wilson は駄目男の「でたらめ」さを可愛いく造形して、ストーリー展開に抵抗を感じさせません。脇役のキャラクターの味付けが変化球たっぷりで、 5人それぞれに見せ場があり、特に「雨に歌えば」のドナルド・オコナーに憧れていて、チャンスがあれば、いつも壁を駆け上り回転に挑み失敗する役は笑いを取る儲け役で、彼にマクナリーの思いも込めて書いている様子です。
 また彼等のダンスレッスンの伴奏ピアニストとして映画「雨に歌えば」のオリジナルキャスト(奇声の女優ジーン・ヘイゲンの発声コーチ役)であるキャスリーン・フリーマン kathleen Freeman が愛嬌たっぷりに登場して場をさらっています。あの高年齢で元気な事。
 ダンスシーンでは、ダンスの出来ない彼等がバスケットボールの動きを真似しているうちに踊る事が出来るようになる、「Michael Jordan's Ball」と、よぼよぼの老人(African American)が踊れないと思わせておいて、リズムの展開と合わせて達者に踊り出す「Big Black Man」は笑わせ、またダンスの粋を感じさせます。
 フイナーレの「Full monty」のシーンは一瞬で、バックライトの目潰し効果でほとんど「一物」は確認出来ません(?)。

●9月 29日(金)20:00『ネイキッド・ボーイズ・シンギング Naked Boys Singing』
 ビレッジのオフの劇場で 2年目に入ったミュージカル・レヴューで、あっけらかんとした「ゲイ賛歌」でスケッチを積み上げて大いに笑わせます。
 登場人物 8名が Full monty で最初から登場し嫌味なく肉体美を見せてくれます。
 楽曲は全部オリジナルで、ロバート・ミッチャム Robert Mitchum を主題にしたナンバー、ゲイの芸人としての自負と悲しさを唄い踊る「The Entertainer」などのナンバーは、昔日の日劇ミュージツクホールの出し物と同じ匂いが感じられ、これはロスアンゼルスでのトライアウトを重ねて来た成果と思われますし、出演者の技量も一級で、役者の層の厚さがうらやましいく感じられます。
 この作品でもがっちりアンダースタディたちが控えていて、競争社会なんですもんね。

●9月 30日(土)13:30『トゥーランドット TURANDOT』メトロポリタン・オペラ
 Zeffirelli 版のプロダクションで演出、装置は豪華絢爛のオリエンタル趣味に貫かれています。
 トゥーランドットはシャロン・スウィート Sharon Sweet で、声は素晴らしいのですが、ソプラノ独特の太った体型で、傾国の美女にはどうしても見えないのは、無いものねだりでしょうか。
 プッチーニ Puccini のメロデイは日本的情緒にあふれていて、指揮者も良く魅力を引き出しています。宮廷外から宮廷への舞台転換には拍手が湧きますし、コーラス、ダンスとも大人数でスペクタクルが楽しめました。

●同日 20:30『フォッシー FOSSE』
 TKTS を利用し 2度目の観賞。
 今回は 2階最前列なのでステージ全体が把握出来ました。特に照明効果が前回のかぶりつきでは良く判りませんでしたが、凝り過ぎくらいでダンサーの足元が暗くなるのも問題かなという感想も湧きました。
 ダンサーたちの熱気はまだ持続しているようでしたが、初見とメンバーはだいぶ変っているようでした。
 現在上映されているチア・リーダーが主題の映画『BRINGING OUT』でもフォッシーの振付を取り入れる所があり、彼の影響力の大きさが感じられます。彼の作品を知っていて観るかどうかによって、この舞台の価値が大きく異なりますね。

●10月 3日(火)19:30『シルク・ドゥ・ソレイユのサーカスショウ“O”』ラスヴェガス
 水をメインに巨大なプールの魅力を生かし、アクロバットとシーソーのネットをプールの水に変え、シンクロのスイマー達の動きも変幻自由な出没で、MGM 映画『世紀の女王 BATHING BEAUTY』などエスター・ウィリアムス Esther Williams の夢のようなシーンを現実にステージ上に実現させてしまったスペクタクルで、前作の『MYSTE'RE』より一層洗練され、ネットを使わない分、緊張感が更に高揚します。
 出演者はやすやすと演じていますが、その技量の底に見える鍛錬の凄さが圧倒的な迫力を生んで、これがサーカスの魅力なんですね。
 それでも 1800名のキャパが連日売り切れとは凄いもんですよね。

 ――と以上が劇場関係の「観たもの」で、この他、映画も時間の有る限り観ました。映画館では、『MEET THE PARENTS』『FANTASTICKS』『ALMOST FAMOUS』『BEST IN SHOW』『REMEMBER THE TITANS』『THE BROKEN HEARTS CLUB』、 後は飛行機の中でのビデオが 6本。ホイトッニー美術館でのエドワード・ホッパーの 特別展示も私的には大満足でした。
 まあ、ずいぶんと欲張ったものと思います。帰宅してから 1週間以上、よれよれにへばっているのも当然かも知れません。

 『ファンタスティックス』の映画はとうとう公開されたんですね。長い間オクラ入りになっていたという噂を聞いていましたが。
 それにしても、お腹いっぱいの観劇ツアー。お疲れさまでした。

 山本さん、ありがとうございました。

(10/28/2000)

Copyright ©2000 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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