それぞれの人生それぞれのゲキもは!

はなさんの場合 2

序章 不幸の始まり
 1994年 8月。会社の同僚と宝塚雪組公演『風と共に去りぬ』を見に行くことになった。
 同僚のS学園時代の親友が出演していることもあり、第 2センター 2列目のチケットを手配してもらえる知り合いにチケットを頼んだ。ところが、その知り合いがチケットの引き換えに行くのが遅くなり、発送はしてくれたものの、公演前日までにわたしの手元にチケットが届かなかった。

第 2章 不幸の座席番号
 届かないことが予想されたので、その場合には「お忘れ券」(注)で入場すべく、チケットを頼んだ知り合いに公演前日に電話して席番を確認しておいた。願った通りの 2列目ロ列の 23、 24ということだった(昔の手帳にしっかり書いてあった)。

 (注)「お忘れ券」という券があるわけではありません。チケットを忘れた場合、もしくは紛失した場合、席番がわかれば入場を許されるというしくみのことを指します。ただし、開演5分前に係員が確認し、空席が認められることが前提です。かつ正規の所持人があらわれた場合には退席しなければならないことはいうまでもありません。劇場によってはこの「お忘れ券」の扱いをしてくれないところもあるようで……。

 観劇当日、劇場正面玄関を無視し、第 1受付に直行、「チケット忘れました。でも席番はわかっています」とわたしは元気に席番を係員に告げた。やがて開演5分前の 1ベルが鳴り、係員が座席のチェックに客席内に入った。……しばらくして戻ってきた係員。何と言ったと思いますか?
 「このお席にはお客様が座っていらっしゃいます」
 タリラ〜ン、タリラリララ〜ン(さあ、バッハのトッカータとフーガの旋律に合わせて歌ってみましょう)!

第 3章 不幸の食い下がり
 「そ、そんなぁ、確かこの席番だったと思うのですが……」(この時点では、あくまでわたしがチケットを忘れたことにしている。郵便が届かなかったということはこちらの落ち度なので言えない)
 「ひょっとしたら間違って座られているということはないでしょうか? もしくは観劇の日を間違えてしまったとか……」と再度の確認を依頼してみる。今度は別の人が確認に出向いた。
 一方、わたしは再度知り合いに電話をした。どうも席番が違うらしいと告げると、さすがに驚いたようで、直接手配してくれた人に確認するので 5分後にまた電話をしてほしい、と言われた。
 そして、席番の確認に行ってくれた係員の人が戻って来て言うには、座っている人の席番は正しいし、その周辺でも空席はなかったとのこと。
 ついに開演ベルが鳴り、扉の向こうでは開演アナウンスが聞こえている。ああ、無情。

第 4章 不幸の告白
 約 5分後、今度こそ席番がわかるに違いない、と期待して知り合いに電話をした。ところが、実際に手配してくれた人が今日は休みで連絡がとれないということが判明。知り合いもそれ以上は動きがとれないし、わたしは落胆しきって受話器を置いた。そして、最後の手段を考えた。
 わたしは、ちょっと権限がありそうな若手の男性に(ファンの間で明治大学と呼ばれていた人ではありません)声をかけた。
 「すいません、今日のお席は劇場のK氏に取っていただいたものなのですが、知り合いが確認しようとしたところ今日はお休みとのことです。K氏の枠で今日発券したお席を調べていただけないでしょうか?」
 ついでに、送ってもらったチケットが届かなかったことも、この際だ! と思い切って告白した。
 その男性社員は 2階の劇場事務所に行ってくれた。おそらく、まったく迷惑な客だなー、と思いながら。

終章 不幸の結末
 どのくらい待っただろうか。やがて 2階から、かの男性社員が下りてきた。
 「いやー、こちらではどこの席を出したかまでは控えていないんですよ……」
 それってひょっとしてチケット代を払ったのに見られないっていうこと? 友人にもわたしが声をかけたのに? そんな殺生な〜。
 ところが彼は、続けてこう言った。
 「ロ列では上手(かみて)に 2つ席が空いているので、もしチケットを持った人が現れたらどいていただくということを了解の上でしたら、ご案内します」
 早い話、知り合いの“記憶”と実際の席とは上手下手が逆だったわけである。しかし、この時ばかりは、いつも偉そうにしているこの男性社員がとってもいい人に思えた。
 ふぅー、これで一件落着。しかし、席に座った時にはすでに開演から 20分以上が経過していたのだった。もちろん上演中、チケットを持った人は現れなかった。

 翌日、チケットが届いた。席番はわたしたちが座った、まさにその番号だった。あくる日、わたしはお菓子を持って劇場へお礼に行った。

 教訓:チケットは譲る時も譲られる時も席番を控えましょう。

 この不幸話を読んだ人が幸せになりますように。

 いやあ、宝塚にはいろんなシステムがあるのですねえ。まず、そのことに驚きました。
 そう言えば、待ち合わせをした人が来ない時に、そのチケットを入り口で預かってもらえるシステムがありますよね。あれを知らなくて、開演時間過ぎまで友人を待ったことがありました。結局、その友人は体の具合が悪くなって来られなかったのですが(泣)。
 宝塚に関しては、いつまでも初心者の僕であります。“第 2センター”ってのもわかんないし、出演者の愛称も覚えられないし(笑)。
 しかし、その“ファンの間で明治大学と呼ばれていた人”のことが気になるなあ(笑)。

 ところで、はなさん、いや他のみなさんも。「ゲキもは」は必ずしも失敗談のコーナーではありません(笑)。
 劇場好きならではのこだわりのエピソードでしたら、どんなお話でも OK。ぜひ聞かせてください。でも、失敗談がいちばん面白いですが(笑)。

 はなさん、ありがとうございました。

(8/29/1998)

Copyright ©1998 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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