それぞれの人生それぞれのゲキもは!

KJ さんの場合

サンセット・ブールヴァード事件

 僕のNY珍道中の中からひとつ失敗談をお送りします。

 まずはどの本にも載っていない海外公演のチケット入手方法からお話ししなければなりません。
 英語のできない人にとって、手っ取り早い方法が、“ワールドチケット○あ”な どのチケットエージェンシーを利用する方法ですが、手数料がかなり割高になります。
 そこで、僕が利用する方法は、クレジットカード会社の「海外旅行に行く際、レストランの予約や演劇のチケットの手配をします」いう日本語サービスです。
 ゴールド会員になれば、このサービスが受けられ、当時も手数料が安かったため、現地で入手困難だろうと思われるチケットは、いつも旅行前にここで予約していました。ちなみに、4月以降は手数料が不要になったとのこと。おそらく、どこのカード会社も同様のサービスをしていると思います。

 さて、いよいよ本題です。
 ロンドンでパティ・ルポンの『サンセット大通り』(このときもそこで予約をしておいて、なんと最前列やや上手寄りの席というラッキーだった)を観ていた僕は、ブロードウェイのオープニングにあわせてサンセットを観ようとNY旅行を敢行しようとした。
 グレン・クロース主演で前評判も高かったため、まずはチケットの手配とそのカード会社に電話をした。体調の整う到着日3、4日目を希望したが売り切れ。ならばと全滞在日のいつでもいいし、多少高くなってもかまわないと希望を出した。すると、翌日信じられないような回答があった。
 チケットが予約できたその日は、忘れもしない 94年11月17日、なんと初日だった。よくそんな日が取れたと確認をしたがその日で間違いないという。
 以前、ウィーン国立歌劇場のチケットを手配したとき、ドミンゴが出演するからメンバーズがチケットを押さえて売り出されていないといわれたが、料金の4、5倍は出してもいいから何とかならないかと頼んだらチケットを入手できたこともあったので、ルンルン気分でNYに出発した。
 当初、劇場に入れなくても初日気分を楽しもうと、NY到着日をサンセットの初日にしていたため、ホテルで荷をといて休憩を取り、夕刻いそいそとミンスコフ劇場へ向かった。
 さすがブロードウェイの初日。劇場の前は、報道陣は集まるは、リムジンは停まっているは、見物客は集まるは、有名人を照らすであろう巨大なライトはあるは、気分は最高に盛り上がってくる。
 劇場の窓口でチケットを引き替えようとすると、窓口の係員はてんで相手をしてくれない。チケット引換書に打ち込まれた日付を差すが、やはり相手にしてくれない。おいおい、英語のできないやつに、そんな早口で喋るんじゃないよ。
 しかたなく、近くの公衆電話から、カード会社の日本語デスクに電話をし確認するが、電話に出た現地の係員は今日で間違いがないという。また劇場に戻り、別の窓口で引換書をみせるが、取り合ってくれない。たまたま支配人らしき人がいたため、引換書をみせた。
 日付は 94年11月17日、間違えなく今日だ。困惑する支配人に、日本語デスクの電話番号を指さし、電話をかけるポーズをとると、オフィスに招き入れダイヤルし受話器を僕に渡してくれた。とにかくチケットを引き換えてくれない理由を支配人と話してくれと日本語デスクの係員にいい、電話をかわった。
 オフィスのモニターにはステージが映し出されており、(げっ)もう舞台は始まっているじゃないか。
 支配人から電話をかわると、日本語デスクの係員は「支配人は今日は招待客でのみで、一般の客は入れいてないといっている」、どうしてこんなことがなったのか今から調査し後ほどホテルに電話します、と。(冗談じゃねぇよ)
 サンセットを初日にみることは絶望的になったが、ホテルで悶々と夜を過ごしてもしょうがないと、その日の夜は当日券で『トミー』を観た。
 どうして、こんな事件が起きたかというと、チケットを予約した日は翌年の11月17日だったという。
 カード会社の日本語デスクには、この舞台を観るためにNYに来たのだから滞在中にサンセットのチケットを入手してくれないと旅行代金を請求するというと、何とか5日後のチケットを手配してくれた。また代金も、今回のことでどれだけ精神的ダメージが大きかったか、あなたたちは何かペナルティを受けるべきではないこかと、ニューヨーカーよろしく自己主張いっぱいに訴えたら無料にしてくれた。(当然といえば当然。向こうからいうべきことだ)

 それが、サンセット・ブールヴァード事件の顛末です。
 ま、これさえなければ、ヴァネッサ・ウイリアムスの『蜘蛛女のキス』、キャロル・キングの『ブラッド・ブラザーズ』、ハロルド・プリンス演出『ショー・ボート』、NYでは初めて観る『クレージー・フォー・ユー』など高い成果を上げたミュージカルを観ることができていい旅だったと思います。

 期待が大きかっただけに、がっくりくる気分、よくわかります。初日って普通、一般人は入れませんもんねえ。罪なカード会社だ。でも、カード会社にそんな無料サーヴィスがあるとは知らなんだ。どこですか、それ?
 まあ、タダになってよかったけれども、代わりに観た『トミー TOMMY』はアタマから観られたんでしょうか。『サンセット大通り SUNSET BLVD.』が始まっていたのなら、こちらも始まっていたのでは。なんてことが自分のことのように気になります。
 僕は、『サンセット大通り』はパティ・ルポン Patti LuPone 版を観て失敗作だと思いました(ルポンは悪くなかった)。でも、一応ブロードウェイ版も観とくかと 94年9月に翌年1月のチケットを買ったんですが、オーケストラだと最前列の右端なんていう席しかない。とにかく開幕前の人気は高かった。だから、そのカード会社の用意した5日後のチケット、きっとメチャクチャ高かったと思いますよ(笑)。

 余談ですが、ヴァネッサ・ウィリアムズ Vanessa Williams に主役が替わった『蜘蛛女のキス KISS OF THE SPIDER WOMAN』にヴァレンティン役で出ていたのが、今『ラグタイム RAGTIME』で主役を演じているブライアン・ストークス・ミッチェル Brian Stokes Mitchell でした(当時はストークスが抜けていた)。

 KJ さん、ありがとうございました。

(4/25/1998)

※KJ さんのご希望により一部訂正しました。(4/27/1998)

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