GODSPELL ad on a bus 11/25/2011

[ゆけむり通信Vol.99]

11/23-11/27/2011


  • 11月23日20:00
    『リシストラータ・ジョーンズ LYSISTRATA JONES』
    WALTER KERR THEATRE 219 West 48th Street
  • 11月24日14:00
    『クリスマス・スペクタキュラー THE RADIO CITY CHRISTMAS SPECTACULAR』
    RADIO CITY MUSIC HALL 1260 Avenue of the Americas
  • 11月24日20:00
    『シカゴ CHICAGO』
    AMBASSADOR THEATRE 215 West 49th Street
  • 11月25日14:00
    『ヒュー・ジャックマン・バック・オン・ブロードウェイ HUGH JACKMAN, BACK ON BROADWAY』
    BROADHURST THEATRE 235 West 44th Street
  • 11月25日20:00
    『鉄のカーテン IRON CURTAIN』
    BARUCH PERFORMING ARTS CENTER 150 East 25th Street
  • 11月26日14:00
    『パティ・ルポンとマンディ・パティンキンとの夕べ AN EVENING WITH PATTI LUPONE AND MANDY PATINKIN』
    BARRYMORE THEATRE 243 West 47th Street
  • 11月26日20:00
    『ボニーとクライド BONNIE & CLYDE』
    SCHOEFELD THEATRE 236 West 45th Street
  • 11月27日13:00
    『晴れた日に永遠が見える ON A CLEAR DAY YOU CAN SEE FOREVER』
    ST. JAMES THEATRE 446 West 44th Street
  • 11月27日16:30
    『霧の女王 QUEEN OF THE MIST』
    THE GYM AT JUDSON 243 Thompson Street at Washington Square South
* * * * * * * * * *

 ブロードウェイ秋の新登場作がほぼ出揃った 11月後半。まだプレヴュー中のものもあったが、航空運賃の高くならない内にと、約 1か月半のインターヴァルでニューヨークに飛んだ。
 新登場作と言っても純粋な新作は 2本のみ(『リシストラータ・ジョーンズ』『ボニーとクライド』)。残りはリヴァイヴァル(『晴れた日に永遠が見える』)と役者によるコンサート形式のショウ(『ヒュー・ジャックマン・バック・オン・ブロードウェイ』『パティ・ルポンとマンディ・パティンキンとの夕べ』)。なので、気が楽っちゃ楽。まあ、楽しみに行っていて気が楽もないもんだが(笑)、一応、初めての舞台は多少なりとも緊張しながら観るもので。
 今回も天候には恵まれ、チョロっと雨が降ったのみ。寒さも東京並みで、助かった。

 何はともあれ、ブロードウェイの新登場作から。

 夏にオフで短期公演を行なってからブロードウェイにやって来たのが『リシストラータ・ジョーンズ』。元ネタは、紀元前 411年初演とされるアリストパネス Aristophanes のギリシア喜劇『女の平和 Lysistrata』らしいが、そちらがセックス・ストライキの行使で女性が男性の戦争を止めさせようとするのに対し、こちらは逆にセックス・ストライキで戦いを鼓舞する、という違いがある。もっとも、こちらは現代で、“戦い”と言っても、大学のバスケット・ボール対校戦だが。そうした男(バスケット・ボール部)と女(チア・リーダー)の駆け引きが引き鉄になって、様々なカップルがギクシャクし始め、同時に同性同士の新たな関係が生まれていく、というミュージカル・コメディ。これも、『ハイ・スクール・ミュージカル HIGH SCHOOL MUSICAL』ブームの産物か。
 と一瞬思うが、むしろ、そのパロディなのだろう。なにしろ、『ザナドゥ XANADO』の主要スタッフ(脚本ダグラス・カーター・ビーン Douglas Carter Beane、演出・振付ダン・コネクタス Dan Knechtges)が関わっているだけあって、登場人物たちのとぼけたキャラクターが面白く、そこが最大の見どころになっている。ことに、リンゼイ・ニコル・チャンバーズ Lindsay Nicole Chambers 演じるロビンのやさぐれた感じはウケた。バスケット・ボールのプレイやチア・リーダーの動きを前提としたダンスの数々も躍動感があって楽しい。
 が、スケール感は、やはりオフのもので、そういう意味では物足りなさが残るのも事実ではある。

 映画界でもステイタスを築いているオーストラリア出身のヒュー・ジャックマン Hugh Jackman は、ブロードウェイでも人気者。それを証明するように、『ヒュー・ジャックマン・バック・オン・ブロードウェイ』なるワンマン・ショウがホリデイ・シーズンに的を絞って上演された。
 幕開けの『オクラホマ! OKLAHOMA!』「What A Beautiful Morning」や 2幕の始まりの『ボーイ・フロム・オズ THE BOY FROM OZ』メドレー等の過去に出演したミュージカルのナンバー(前者はロンドン版で主役を演じ、後者はブロードウェイ初お目見え作にしてトニー賞主演男優賞受賞作)、往年のハリウッド・ミュージカル映画ナンバー(タップ・ダンスでフレッド・アステア Fred Astaire に挑む!)等は予想のつくラインナップだが、地元オーストラリアからアポリジニのミュージシャンを招いての共演(アボジニアの伝統音楽を演奏)は新鮮な驚き。彼らへの差別の歴史についても言及していたが、そうした態度がわざとらしく見えないのがジャックマンの魅力なのだろう。客あしらいも自然で嫌味がない。
 フル・オーケストラをバックに、女性のシンガー&ダンサー数人を効果的に使って、ダレることのないショウに仕上げてあった(演出・振付ウォーレン・カーライル Warren Carlyle)。

 『パティ・ルポンとマンディ・パティンキンとの夕べ』は、ブロードウェイ版『エヴィータ EVITA』でエヴィータとチェ・ゲバラを演じた 2人のリユニオン・コンサート。 2幕中盤のパティンキンの MCで明かされるが、『エヴィータ』の米国内トライアウト時に異常なほどの重圧を分かち合うことで 2人は“同志”になったらしい。
 そんな 2人の舞台は実にストイック。 03年 1月に観たパティンキンのソロ・コンサートがそうだったから想像はしていたが、その時同様、 MCはほとんど(第 1幕に限っては全く)なく、ひたすらミュージカルのナンバーを歌い継いでいく。もっとも、今回は 2人なので、芝居的要素も強く、第 1幕では『南太平洋 SOUTH PACIFIC』のロマンティックな楽曲と『カンパニー COMPANY』の皮肉な恋愛観の楽曲とを巧みに繋げ、男女の心のすれ違いを描いて笑える内容に仕立てたりするアイディアもある。そう言えば 2人で激しく踊る場面もあった。
 第 2幕では、前述したように多少語りも入り、ファン・サーヴィス的要素も加わる。例えば、ルポンの近年の当たり役『ジプシー GYPSY』のママ・ローズのナンバー「Everything's Coming Up Roses」を配したり。で、その手のクライマックスが『エヴィータ』からの 2曲をそれぞれが歌う中盤で訪れる(この時に前述の“同志”発言がある)。
 とはいえ、第 2幕も基本的にはストイックな雰囲気で、観光客がフラッと入って楽しめるショウとは言いがたい。逆に言うと、ホントにミュージカルが好きな人たちにとっては、たまらなく魅力的。 1月 13日までの限定公演。

 日本でも翻訳上演が決まっている『ボニーとクライド』は、 11月 4日プレヴュー開始、 12月 1日正式オープンの後、 12月 30日に幕を下ろしてしまった。
 07年版『グリース GREASE』のローラ・オスネス Laura Osnes と『ニュージーズ NEWSIES』(来春ブロードウェイ登場予定)のジェレミー・ジョーダン Jeremy Jordan というイキのいい 2人を主役に据えて、ブロードウェイの(あるいはアメリカの)現状に釘を刺す新鮮な舞台を作ろうとしたようだが(演出も『ニュージーズ』のジェフ・カルホウン Jeff Calhoun)、残念ながら平板な印象に留まった。原因は 2つ。
 1つは、鮮烈な印象が公開後 40年以上経つ今も消えない映画版(『俺たちに明日はない BONNIE AND CLYDE』)に比べ(ほとんどの観客が無意識の内にも比較したはず)、ボニーとクライドがカッコよくなかったこと。もとより、それが狙いなのだろう。幼く無防備で無鉄砲な 2人は、けっして美しくはない。その背景にあるものも含めてドラマとして描きたかったのだと思う。しかし、映画の印象を凌駕する表現には到らなかった。おそらく、何か別の視点が必要だったのではないか(脚本イヴァン・メンチェル Ivan Menchell)。
 もう 1つの原因は、ますます凡庸になるフランク・ワイルドホーン Frank Wildhorn(作曲)の楽曲にある(作詞ドン・ブラック Don Black)。この舞台の TVやラジオで流れる CMでも使われていたジャズ・ソングっぽいバラードがかろうじて印象に残る程度で、それすらも、どこかで聴いたような気配があった。ワイルドホーン、そろそろ考えどころでは?

 ハリー・コニック・ジュニア Harry Connick, Jr. 主演の『晴れた日に永遠が見える』には大胆なリニューアルが施されている(初演は 1965年秋オープンで 280回のロングラン。脚本・作詞アラン・ジェイ・ラーナー Alan Jay Lerner、作曲バートン・レイン Burton Lane)。最大の変化は、オリジナルではヒロインの女子学生が実は 18世紀イギリスの公爵夫人の生まれ変わり、という設定だったのに対し、今回は、そのヒロインに当たる役がゲイの青年になり、彼は 1940年代の女性ジャズ歌手の生まれ変わりになっていること(新脚本ピーター・パーネル Peter Parnell)。
 もちろん初演は観ていないし、観たのは 93年のオフ(オフオフか?)の小さな劇場での期間限定リヴァイヴァルだけなので、比較してどうこうは言えないが、おそらく今回のヴァージョンの方が話がわかりやすくなっているのではないだろうか。
 前述のヒロイン(に当たる役)が精神科医を訪れ、催眠療法で前世の人格が現れる。その前世の人格に精神科医が惹かれる。というのがストーリーの根幹だが、オリジナルではヒロインと前世の人格を同じ女優が演じ、そこに精神科医とのねじれた三角関係が生じる。その複雑さが面白い、とも言えるが、わかりにくくもある。ところが今回は、ゲイの青年とジャズ歌手は男優と女優が別々に演じることもあり、精神科医との三角関係は、見た目にはすっきりしている。そして、実のところ、新ヴァージョンは、ゲイの青年にゲイの恋人がいることで誤解が誤解を生んでストーリー上はより複雑になっているのだが、その結果、わかりにくくなるのではなく、コメディの要素が強くなっている。それも功を奏していると言っていい。
 しかし、今回の改変で最も効果があったのは、前世の設定をジャズ歌手にしたところ。その役を与えられたジェシー・ミューラー Jessie Mueller が歌い手としての魅力を充分に発揮して、見せ場を作っている。
 初演以来ブロードウェイでは初のリヴァイヴァルだが、 SFファンタジー的な内容を、 65年というフラワー・ムーヴメント直前の空気感の中にノスタルジックな感覚で落とし込んで、ようやく、すんなり飲み込めるミュージカル・コメディになった。そんな気がする。ご承知の通り楽曲には素晴らしいものが多い。傑作ではないが、カラフルな装置も含め、気軽に楽しめばいいと思う。

 続いてはオフの新登場作。

 『鉄のカーテン』は設定が面白い。
 ベルリンの壁(1961〜1989年)が作られる以前、 1950年代半ばのニューヨークで買い手のつかないミュージカル楽曲を書き続けている作曲家・作詞家のコンビが、 KGBに誘拐されてソ連に連れ去られる。彼の地の舞台関係者がホンモノっぽいミュージカルを作りたがっていた、というのが、その理由。図らずも自分たちの夢を叶える機会を得た 2人は、意気揚々と“プロパガンダ・ミュージカル”を作り始める。が、やがて様々な矛盾が噴出し始め……、という話。
 冷戦というバカバカしい構図の中で右往左往する人々が面白おかしく描かれていくわけだが、さりげなく芸術と政治の関係性についても触れられていて、そこは苦い。
 時代設定に則って 50年代的なミュージカルが半ばパロディ的に展開されるのがミュージカル好きにとっては楽しみの 1つで、楽曲もうまく作られているが(作曲スティーヴン・ワイナー Stephen Weiner、作詞ピーター・ミルズ Peter Mills)、逆に、装置その他が予算のなさを感じさせて若干寂しくもあった。
 開演前にロビーのモニターで、冷戦時代の東側のミュージカル事情を伝えるドキュメンタリー(ドラマ?)が流されていたが、現実というのは、いつも創作以上にバカバカしいものではある。

 『霧の女王』は楽曲作者マイケル・ジョン・ラキウザ Michael John LaChiusa(『予告された殺人の記録 CHRONICLE OF A DEATH FORETOLD』『マリー・クリスティーン MARIE CHRISTINE』『ワイルド・パーティ THE WILD PARTY』)の新作で、ナイアガラの滝を樽で下った初めての女性アニー・エドソン・テイラー Annie Edson Taylor が主人公。なので、タイトルも、ニュアンスとしては“霧”ではなく“噴霧”といった感じかもしれない。
 数奇な運命を辿るテイラー(1838〜1921)の半生を描いて、ラキウザ(脚本も)は、聖俗入り乱れて大衆を扇動しようとするアメリカのセンセーショナリズムと、それに翻弄される人々の悲哀を浮かび上がらせる。ルーツ・ミュージックとオペラとを融合させたがごとき楽曲も充実。いい舞台だった。
 主演のメアリー・テスタ Mary Testa は、最近では『ザナドゥ』での怪演が印象深いが、『マリー・クリスティーン』では重厚な演技も見せた。その幅が、今回はテイラーというキャラクターに見事に生きていた。
 期間限定公演で、すでに終了。ところで、この小さな劇場、初めてだったのだが、今年の夏に『リシストラータ・ジョーンズ』が上演されたのはここだったようだ。

 最後に再見作 2本。

 感謝祭当日はオンもオフも休演が多く、結果観ることになったのが、おなじみ『シカゴ』。主な出演者は次の通り。
 シャーロット・ダンボワーズ Charlotte d'Amboise(ロキシー)、バイヤー・ヒバー(でいいのか発音?) Bahiyah Hibah(ヴェルマ)、ジョン・オハーリー John O'Hurley(ビリー・フリン)、クリス・サリヴァン Chris Sullivan(エイモス)、キャロル・ウッズ Carol Woods(ママ・モートン)。
 経験豊富なダンボワーズのロキシーが自由闊達に演じていて楽しい。指揮者の指揮棒が何本も出てくるギャグ(初めて観た)には笑った。

 『クリスマス・スペクタキュラー』は 4年ぶり。
 いつもながらにロケッツ The Rockettes が素晴らしい。大群のトナカイ、二階建てバスでマンハッタン見物、有名な木の兵隊の行進、タップ、と趣向を変え技を変えて魅せてくれる。
 途中、ドラマ仕立ての部分がシステム事故で一時中断。プログラムで確認したら、どうやら少し端折った様子。ま、 1日 3回公演で時間に追われてますからね。許してあげましょう。

 次回の渡米は春の新作の出揃う 3月下旬の予定。もっとも、 12月にプレヴューを始めた『ポーギーとベス PORGY AND BESS』がクローズを発表したら、弾丸で飛ぶつもりですが(笑)。

(12/31/2011)

Copyright ©2011 MIZUGUCHI‘Misoppa’Masahiro

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