Duffy Square 10/14/2011

[ゆけむり通信Vol.98]

10/12-10/16/2011


  • 10月12日20:00
    『エニーオ・マーチェット:活紙漫画 ENNIO MARCHETTO:The Living Paper Cartoon』(NYMF)
    47 STREET THEATRE 304 West 47th Street
  • 10月13日13:30
    『ニュージーズ NEWSIES』
    PAPER MILL PLAYHOUSE Millburn, New Jersey
  • 10月13日20:00
    『シスタズ SISTAS』
    ST. LUKE'S THEATRE 308 West 46th Street
  • 10月13日23:00
    『ボールズ…ミュージカル? BALLS...THE MUSICAL?』(NYMF)
    47 STREET THEATRE 304 West 47th Street
  • 10月14日19:30
    『セントラル・アヴェニュー・ブレイクダウン CENTRAL AVENUE BREAKDOWN』(NYMF)
    SIGNATURE THEATRE(THE PETER NORTON SPACE) 555 West 42nd Street
  • 10月14日20:00
    『フォリーズ FOLLIES』
    MARQUIS THEATRE 1535 Broadway
  • 10月14日23:00
    『凶暴な巡業 TOUR DE FIERCE』(NYMF)
    47 STREET THEATRE 304 West 47th Street
  • 10月15日13:00
    『タトゥ TUT』(NYMF)
    THEATRE AT ST. CLEMENT'S 423 West 46th Street
  • 10月15日16:30
    『ブラッド BLOOD[By The Mummers]』(NYMF)
    47 STREET THEATRE 304 West 47th Street
  • 10月15日20:00
    『青い花 THE BLUE FLOWER』
    SECOND STAGE THEATRE 305 West 43rd Street
  • 10月16日13:00
    『脳は死なず! 3D!!! THE BRAIN THAT WOULDN'T DIE! IN 3D!!!』(NYMF)
    TBG THEATRE 312 West 36th Street
  • 10月16日19:30
    『ゴッドスペル GODSPELL』
    CIRCLE IN THE SQUARE THEATRE 235 W. 50th Street
* * * * * * * * * *

 年に 1度の NYMF(ニューヨーク・ミュージカル・シアター・フェスティヴァル)とブロードウェイ秋の新作登場のタイミングを合わせたら、この時期になった、というのが今回のスケジュール。昨年の NYMF開催時期に比べて観劇本数がかなり少ないのは、滞在期間が 1日短いのと、ニュージャージー遠征を入れた(往復に時間がかかるので、細かい時間割で上演される NYMF作品を入れられなくなる)のが原因だが、このくらいのスケジュールでないと、もう身体がついていかない感じでもある。もっとも、入国審査が混んでなければ到着日にもう 1本観られたはず、と残念がってもいるのだが(笑)。
 ともあれ、気温はほぼ東京と同じで過ごしやすく、激しい雨が降る瞬間があったものの概ね晴れて、快適なニューヨークだった。

 ここで、昨年同様、“NYMF”の概略を。
 毎年 9月から 10月にかけて約 1か月、ミッドタウンの複数の小劇場(今年はアップタウンにも 1つあった)で行なわれる新作ミュージカルのショウケースで、すでに他の街(あるいは国)で公演をしてきている完成度の高い舞台から、“リーディング”と呼ばれる役者の本読み+コンサート形式のものまで、仕上がり具合はさまざまだが、いずれも、この後、オフや、場合によってはオンまで目指そうという意欲にあふれた作品がずらりと並ぶ。 6〜 7回という上演数の作品が多く、うまく調整すれば全ての作品を観られるようなプログラムが組まれている。料金は通常 25ドル(昨年まで20ドル)。中には無料の試演もある。ちなみに、来年は 7月の実施になるようだ。

 そんな NYMFの作品は後回しにして(笑)、まずは、オンの新登場作から。いずれもリヴァイヴァル。

 『フォリーズ』は 1971年初演のスティーヴン・ソンドハイム Stephen Sonheim(作曲作詞)作品。その 71年のブロードウェイの架空の劇場が舞台で、当時の状況を反映してだろう、取り壊されることになったその劇場に、往年のヒット・レヴューのプロデューサー(ジーグフェルドあたりを思わせる)の呼びかけで歴代の出演者たちが集まって名残を惜しむパーティを開く、という設定。
 今回が 2度目のブロードウェイ・リヴァイヴァルで、ラウンダバウト The Roundabout Theatre Company 製作の限定公演だった最初のリヴァイヴァルが 2001年。もう 10年前か。その時、この作品を初めて観たが、観劇記も残していないしプレイビルもすぐに出てこないので曖昧な記憶で書くと、伝説のマージ・チャンピオン Marge Champion(ご存命か!)目当てで行ったのに代役だった気がする。それでがっかりして地味な印象が残った(責任転嫁ですな)、と今では思っているのだが、本当はどうだったか……。改めて調べたら、ブライス・ダナー Blythe Danner が出てたんだな(トニー賞主演女優賞候補)。あと、若き日のケリ・オハラ Kelli O'Hara も。とはいえ、やはり地味めか。今回(9月 12日正式オープン)の看板は、バーナデット・ピーターズ Bernadette Peters。そして、ジャン・マックスウェル Jan Maxwell。まあ、華やかと言っていいだろう。
 核になるドラマは、その 2人と、その夫たち(ダニー・バーステイン Danny Burstein、ロン・レインズ Ron Raines)を中心に進む。当然、ピーターズとマックスウェルの演技合戦の様相を呈するのだが、上記の設定からわかる通り、他にも女優たちが大勢いるわけで(例えば、イレイン・ペイジ Elaine Paige、ジェイン・ハウディシェル Jayne Houdyshell、テリ・ホワイト Terri White といった人たち)、ドラマとはあまり関係なく、それぞれに見せ場が用意されていて、そちらはそちらで単独のショウ場面として面白いというのも、この作品の魅力。さらに言うと、集った出演者たちの若き日の姿が亡霊のように劇場のここかしこにいて、彼らが踊ったりする楽しさもある。
 逆に言うと、 4人による本筋のドラマと周りの人たちとの有機的結びつきが薄い、というのが、この作品の弱点か。まあ、リヴァイヴァルだし、気にしないで楽しみましたが。

 『ゴッドスペル』は 10月 13日にプレヴューを開始したばかりだった。この作品の初演は 71年。オフで 5年間上演された後、 76年にオンに移って 1年ちょっと続いている。ブロードウェイでのリヴァイヴァルは、その時以来。
 オンとはいえ、サークル・イン・ザ・スクエアは小ぢんまりした、しかも丸い舞台を客席が取り囲む形の劇場。なので気分はオフ。そして、そこで繰り広げられるのは、観客をも巻き込む即興劇のような集団劇。おそらく、そうした演出で初演時の空気を再現しようとしているのだろう(最初に全員で携帯電話を投げ捨てたりする現代性はあるが)。 08年にセントラル・パークの野外劇場で上演された(翌年ブロードウェイ入り)リヴァイヴァル版『ヘアー HAIR』がそう意図していたように。
 しかしながら、キリストと使徒との問答集のような内容は、どうにもまどろっこしくて、役者のエネルギーは感じるものの、イマイチ乗れない。いったい、この問答劇は、アメリカ人にとっては今でも有効なんですかね。観客が沸くのが、懐かしくて(あるいは伝説的作品を目の当たりにして)盛り上がっているのか、それとも心から感銘を受けてのことなののか、判断がつきかねた。
 ところで、青井陽治演出(翻訳・訳詞も)による翻訳版を 02年に観た時には、日本人が上演している意味が全くわからなかったものだが、昨年の山本耕史演出版はどうだったんだろう。観ておけばよかったな。

 続いては、ニュージャージー公演とオフの新登場作。

 ニュージャージーのペイパーミル・プレイハウスに登場した『ニュージーズ』はディズニーの新作。 92年製作の同名ミュージカル映画(やはりディズニー)の舞台化で、楽曲は共にアラン・メンケン Alan Menken とジャック・フェルドマン Jack Feldman。舞台化にあたって脚本をハーヴェイ・ファイアスタイン Harvey Fierstein が手がけている。
 ピュリッツァー Joseph Pulitzer が悪人として登場。簡単に言えば、 19世紀末のニューヨークを舞台にした新聞社主(ピュリッツァー)と配達少年たちとの賃金(正確に言えば新聞買取金)を巡る闘争のドラマ、ということになる。とはいえ、ディズニーだから、そこに少年たちの夢や友情が絡んで、最後はハッピー・エンドになるわけだが、意外に苦い描写もある。もっとも、本当の狙いは、イキのいい少年たちを集めて別種の『ハイ・スクール・ミュージカル HIGH SCHOOL MUSICAL』を作ろうという辺りにあるのかもしれないが。
 というわけで、ダンスはイキがいい。楽曲は、悪くないが、決め手に欠ける印象だった。

 『シスタズ』の登場人物は、黒人の家族。祖母の遺品を整理しながら、その娘と孫娘たちが思い出話をする、という構成の舞台。そこから浮かび上がってくるのは、アメリカにおける黒人女性の歴史なのだが、サブタイトルに“A musical journey of African-American women from Bessie Smith to Mary J. Blige”とあるように、その思い出話が様々な時代の黒人女性が歌った楽曲に姿を変えて立ち現れてくるのが、この作品の特徴。一歩間違えると、ただのカラオケ大会になりかねないところを、きっちりとドラマに仕立ててあるのは脚本(ドロシー・マーシック Dorothy Marcic)の手柄だろう。
 人生観の違う姉妹たちが、それなりに理解し合う成り行きが、イデオロギーを超えての融和というテーマと重なっていく。多少単調になるところはあるが、それを、みなさんご存知の楽曲群が救ってくれるのは、既成曲を使ったミュージカルの強みであり、僕のようなヒネた観客にとっては物足りなさでもある。

 『青い花』は、『正常の隣 NEXT TO NORMAL』等の冒険心に富んだ良作を生み出すセカンド・ステージの新作で(初期段階で 04年の NYMFに登場してもいたようだ)、これまた充実した舞台だった。
 主人公(マーク・カディッシュ Marc Kudisch)はオーストリアの画家で、その親友になる画家(セバスティアン・アーセラス Sebastian Arcelus)、その妻となる女性科学者(ティール・ウィックス Teal Wicks)、主人公の妻となる女優(メガン・マッギアリー Meghan McGeary)の人生が描かれるのだが、期間は 1889年(オーストリア皇太子ルドルフの死)から 1955年(主人公の死)まで。 4人の関係を軸に、彼らが否応なく巻き込まれる、第一次世界大戦、ナチスの台頭、第二次世界大戦といった歴史も、具体的な肌触りを伴って描かれる。時代が行きつ戻りつする構成は、死を迎える主人公の脳裏に過去の断片が去来するという意味かと思うが、これがミステリアスな効果を生んでいる。
 楽曲(ジム・バウアー Jim Bauer)は、背景に相応しいクルト・ヴァイル Kurt Weill を思わせる劇的なものと、主人公の友人の西部劇好きを反映したカントリー調のものとの 2系統があるが、それらが舞台上で絶妙に融合して、魅力的だった。

 さて、 NYMFの諸作。

 『エニーオ・マーチェット:活紙漫画』はエニーオ・マーチェットという人のひとり舞台で、繰り広げるのは、漫画的タッチで描かれた、正面から見ると衣装(やカツラ)に見える紙を、レオタード姿の身体に付けて、既成の音楽に合わせて口パクで踊る、という一見チープな芸。これが、けっこう面白い。
 面白さのポイントは 2つ。 1つは、その紙の衣装のアイディア。シンプルながら変化に富み、さらに意外な変化を見せて飽きさせない。もう 1つは、演者であるマーチェットの巧みな振り。何気ないようで、実に特徴をよく捉えていて、芸として深い。
 まあ、これがミュージカルかと言われると微妙だが(笑)、でも、なかなかでした。

 『ボールズ…ミュージカル?』は、ニューヨークでミュージカル俳優として成功することを夢見る男 5人の替え歌ミュージカル。“ボールズ”とは、男性が有する 2つの玉のことですな。
 替え歌の元ネタはいずれもミュージカルの楽曲で、いかにも生活の中でそんな替え歌を歌っていそうで、そのリアルな感じもおかしい。さらに、実際には“成功”には到っていないと思われる出演者の実人生が舞台上のドラマ(売れないミュージカル俳優の日常、的な内容)と重なって見えたりして、そんなところもペーソスを伴った面白さにつながっている。楽しく観た。

 『セントラル・アヴェニュー・ブレイクダウン』は、ビバップ誕生期の西海岸を舞台にした黒人ジャズ・ミュージシャンの物語。売れないジャズ・ミュージシャンだった父親は、息子たちを、やはりジャズ・ミュージシャンに育てるが、才能はそこそこだが人柄のいい兄に目をかけ、才能は素晴らしいが奔放なところがあって人間的に弱い弟を疎んじる。やがて兄はオーソドックスなプレイで成功をつかみ、弟はビバップ的才能を理解されず麻薬に溺れ……、というストーリーは意外性がなく面白みに欠ける。
 楽器の演奏も完全に吹き替え(後ろにいるホンモノのミュージシャンがシンクロ演奏する)だし、いろいろな面で中途半端な感じは否めない。

 『凶暴な巡業』は、ブロードウェイ・ミュージカル出演経験を持つ若手女優 5人が“ブロードウェイ・ドールズ”と名乗って見せる、歌と踊りのショウで、楽曲はミュージカル・ナンバーを中心に全て既成のもの。そういう意味では、『ボールズ…ミュージカル?』と似ているが、違うのは、こちらは、ある種のアイドル・グループ的な佇まいである、というところ。ドラマ仕立てでもない。
 要するに、若手女優の歌と踊りを楽しむ会、ってことでした。

 『タトゥ』。タイトルに、もう 1つ「U」が付けば、マイルス・デイヴィス Miles Davis のアルバム・タイトルと同じになって、発音も「トゥトゥ」となる。という訳で、これは、ツタンカーメンの物語。
 と言っても、話は、ツタンカーメン王その人の話と、ツタンカーメン王(のミイラ)を発掘したイギリス人ハワード・カーターの話とに分かれていて、それが交互に描かれていく構成。しかも、ツタンカーメン王その人の話はダンス表現で描かれる。ユニークと言えばユニークだが、残念ながら、散漫な印象の舞台になっていた。

 『ブラッド』は、バイ・ザ・ママーズ By The Mummers という演劇集団による、パンキッシュなロック・ミュージカル、といった趣の舞台。パンキッシュと言っても、さほど破壊的なわけではなく、むしろユーモラス。『ロッキー・ホラー・ショウ THE ROCKY HORROR SHOW』に近いテイストと言えばいいか。内容も吸血鬼ネタだし。
 高校が舞台のドタバタ吸血鬼ミュージカル、ってところで、ワイワイ楽しかったです。

 『脳は死なず! 3D!!!』『ブラッド』に似て、と言うか、『ブラッド』以上に『ロッキー・ホラー・ショウ』に似ているか。なにしろ、 1961年製作の同名カルト映画に触発されて作られた B級色満載の爆笑ミュージカルであるからして。そもそも“3D”ってのが、ね。ライヴなんだから“3D”に決まってるって。
 こちらは、純愛が招く恐怖のドタバタ医療ミュージカル、ってところか。楽曲も、それっぽくて、かなり笑えました。

 次回の渡米は本日より 5泊 7日です(笑)。

(11/23/2011)

Copyright ©2011 MIZUGUCHI‘Misoppa’Masahiro

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