ST. ANN'S WAREHOUSE in Blooklyn 11/20/2010

[ゆけむり通信Vol.93]

11/16-11/21/2010


  • 11月16日19:00
    『レイン RAIN』
    NEIL SIMON THEATRE 250 West 52nd Street
  • 11月17日14:00
    『メリー・ポピンズ MARY POPPINS』
    NEW AMSTERDAM THEATRE 214 West 42nd Street
  • 11月17日20:00
    『ピーウィー・ハーマン・ショウ THE PEE-WEE HERMAN SHOW』
    STEPHEN SONDHEIM THEATRE 124 West 43rd Street
  • 11月18日19:00
    『エルフ ELF』
    AL HERSCHFELD THEATRE 302 West 45th Street
  • 11月19日20:00
    『逢びき BRIEF ENCOUNTER』
    STUDIO 54 254 West 54th Street
  • 11月20日14:00
    『赤い靴 THE RED SHOES』
    ST. ANN'S WAREHOUSE 38 Water Street Blooklyn
  • 11月20日20:00
    『リトル・ナイト・ミュージック A LITTLE NIGHT MUSIC』
    WALTER KERR THEATRE 219 West 48th Street
  • 11月21日12:00
    『ソバカス顔のストロベリー FRECKLEFACE STRAWBERRY』
    NEW WORLD STAGES(STAGE4) 340 West 50th Street
  • 11月21日15:00
    『神経衰弱ぎりぎりの女たち WOMEN ON THE VERGE OF A NERVOUS BREAKDOWN』
    BELASCO THEATRE 111 West 44th Street
  • 11月21日18:30
    『ベルズ・アー・リンギング BELLS ARE RINGING』
    CITY CENTER 55th Street between 6th & 7th Avenue
* * * * * * * * * *

 10月はもっぱらニューヨーク・ミュージカル・シアター・フェスティヴァル(NYMF)巡りだったが、ようやく秋の新作が出てきたニューヨーク。と言っても、残念なことに期間限定公演ばかりだが。
 はっきり言えば、ホリデイ・シーズンに合わせた上演ばかりで、観客の少なくなる冬を乗り切るつもりの作品はない。ロングランを目指す作品が出てくるのは春から。
 あ、当初の予定から半年遅れてプレヴューを開始した『スパイダーマン SPIDER-MAN TURN OFF THE DARK』てのがあったか。と忘れたふりをしたのは、春に続き、またしてもキャンセルの憂き目にあったから。 11月 19日夜のチケットを押さえてあったのだが、結局 28日からの上演開始になってしまって観られず。そう言えば、主演男優がケガしたり、その後もご難続きなようで。大丈夫かなあ。
 ちなみに、 11月のニューヨーク、やや肌寒いぐらいの日本と同程度の気候で、楽に過ごしました。

 まずは、オンの新登場作を観た順に。いずれも期間限定上演作品。

 『レイン』はビートルズ The Beatles のそっくりショウ。全く期待していなかったが、案外楽しめた。
 大まかに言うと、アメリカから見たビートルズ史。アメリカ上陸から解散までを、ほぼ時代を追って、映像的に知られている場面を中心にファッションと音楽的な変化で見せていく。この“映像的に知られている場面を中心に”というところがキモで、しだいに、その時代のその場面に立ち会っているような気分になってくる。メンバーは、この種のビートルズ・ショウのエキスパートのようで、見かけの似ている度はほどほどながら演奏が実にうまく(逆に、ビートルズがうまかったことも、よくわかった)、その点での満足度が高いのがよかった。もっとも、ブロードウェイの劇場で観るものではないと思うが。
 1月 15日までの限定公演。

 『ピーウィー・ハーマン・ショウ』は、ポール・ルーベンス Paul Reubens 演じるピーウィー・ハーマン Pee-wee Herman の子供向け TVショウ『PEE-WEE HERMAN'S PLAYHOUSE』の舞台版(厳密にはミュージカルではないが、子供向け TV番組の多くがそうであるように、“ほぼ”ミュージカル)。 80年代後半の人気番組らしいが、日本でも公開された 85年映画『ピーウィーの大冒険 PEE-WEE'S BIG ADVENTURE』(ティム・バートン Tim Burton 監督長編第 1作!)しか観たことがない身としては実感はない。 91年に不幸な事件があってルーベンス(=ピーウィー)は雌伏を強いられるが、近年ケーブルチャンネルで同番組が再放送され人気が再燃。そのタイミングでの上演のようだ(2度目の映画化話もある様子)。
 という訳で、客席を埋めたかつての子供たちは、番組のセットを再現した舞台にノッケから大騒ぎ。舞台上は、オンエア当時ですら懐古的であっただろう平和すぎるような、いささかファニーな幼児的世界で、現実逃避と言ってしまえばそれまでだが、そこになにがしかの肯定的な温かさを見出せる気がしたのも事実。当然のように極めて TV的な作りだが、不思議に小さな満足感があったのは、ピーウィーや周りのキャラクターの魅力のせいか。

 この『ピーウィー・ハーマン・ショウ』を含め、以下、全て 1月 2日までの限定公演。でもって、以下 3作は全て同名映画の舞台化。

 『エルフ』は、原作映画の内容(日本 DVD化の際の副題は「〜サンタの国からやってきた〜」)からもわかるように、クリスマスに照準を合わせてのファミリー向けミュージカル。サンタクロースや妖精(エルフ)たちに育てられた人間の子供が成長して、父親に会うために北極からニューヨークにやって来る、というファンタジーを、舞台ならではのアイディアで楽しく見せる。
 最初の方は子供っぽすぎる感じで怪しかったが、結果、存分に歌って踊って、なかなかの出来だった。達者な脇役(ベス・リーヴェル Beth Leavel、マイケル・マコーミック Michael McDormick 他)と献身的なアンサンブルのおかげか。演出は 06年 4月に観た『ドロウジー・シャペロン THE DROWSY CHAPERONE』のケイシー・ニコロウ(でいいのかな、発音?) Casey Nicholaw。作曲マシュー・スクラー Matthew Sklar と作詞チャド・ベグーリン Chad Beguelin は『ウェディング・シンガー THE WEDDING SINGER』(やはり 06年 4月観劇)のコンビ。

 プレイビル・オンラインによれば、イギリス産の舞台『逢びき』のジャンルはプレイ・ウィズ・ミュージックだったが、ノエル・カワード Noel Coward の書いた詞にステュ・バーカー Stu Barker が曲を付けて作った楽曲が歌われて(一部カワードが詞曲を書いた楽曲のアレンジもあり)、ほとんどミュージカル。これが面白かった。
 元の映画(1945年)は、原作の戯曲『スティル・ライフ STILL LIFE』を書いたカワード自ら脚本(及び製作)を手がけたもので、監督はデイヴィッド・リーン David Lean。未見だが、ほろ苦い既婚者同士の恋愛映画で、日本でも 48年に公開されて“名作”と呼ばれているようだ。それを、演出のエマ・ライス Emma Rice が、ほぼ換骨奪胎、“人間喜劇”とでも呼びたくなるような、ある種のコメディに仕上げた。
 換骨奪胎の手法は、装置も含め全体をヴォードヴィル的表現で統一して、舞台上の世界が演劇的虚構であることを強調する、というもの。役者が歌ったり楽器を演奏したりするのも、その一部。これによって、渦中のカップルの深刻なロマンスは大時代的に見え、周囲の俗っぽい空気から浮いてしまう。しかしながら、時折吹く強い風に、カップルも周囲の人間たちも一様に煽られ(全員が一斉に上半身をクルリと回す)、深刻な者も俗な者もみな時の波に容赦なく呑まれていく。……みたいなことかな。
 で、ですね。例えば、上記の「全員が一斉に上半身をクルリと回す」の“一斉に”の揃い方が半端ないわけですよ。そこにウットリする。こうした表現が随所に出てくるから、たまらない。
 そう、アイディアに満ちた手法も面白いのだが、手法を実現する役者たちの身体的技術がもっと面白い、というか素晴らしい。そういうところは、 08年 6月に観た『三十九夜 THE 39 STEPS』とよく似ている。どちらもイギリス産で、ここらが彼の国の凄さか、と思う。お見事。

 『神経衰弱ぎりぎりの女たち』の元は 1987年のスペイン映画。
 複数の男女の恋愛を巡る狂騒曲といった内容だが、筋が入り組んていて、まあ、そこが面白くなるはずなのだが、あまりうまくいっていない。その辺をカヴァーするためにか凝った装置(コンピュータ制御の大道具+プロジェクター類の映像)を導入していたが、それも、かえって煩雑な印象。演出のバートレット・シェール Bartlett Sher は、『ライト・イン・ザ・ピアッツァ THE LIGHT IN THE PIAZZA』(05年 4月観劇)や『南太平洋 SOUTH PACIFIC』(08年 4月& 09年 2月観劇)を手がけた際には、大掛かりな装置をさりげなく生かして美しい舞台を作り上げた人だが、慌しいコメディには向いていないのかもしれない。もちろん、脚本(ジェフリー・レイン Jeffrey Lane)のせいもあるだろう。ちなみに、デイヴィッド・ヤズベク David Yazbek の楽曲も決め手に欠けた。
 そんなわけで、豪華な顔ぶれ(シェリー・レネ・スコット Sherie Rene Scott、パティ・ルポン Patti LuPone、ローラ・ベナンティ Laura Benanti、ブライアン・ストークス・ミッチェル Brian Stokes Mitchell、ダニー・バースタイン Danny Burstein らに加え、「アメリカン・アイドル」出身のジャスティン・グァリーニ Justin Guarini まで投入)の演技合戦は楽しめたが(ちょこちょこ歩くベナンティのコメディ演技は見ものだった)、全体としては(悪い意味で)ドタバタした舞台になった。その結果だろう、本来は 1月 23日までの限定公演が 2日で打ち切りに。

 続いて、オフの新登場作を観た順に。

 『赤い靴』は、『逢びき』を元々作ったニーハイ Kneehigh というイギリスはコーンウェルの劇団の新作(『逢びき』もニューヨーク初上演は、このブルックリンの劇場だったようだ)。という訳で、演出と翻案はエマ・ライス、音楽はステュ・バーカーが手がけている(バーカーは舞台に出て演奏もしていた)。原作はハンス・クリスチャン・アンデルセン Hans Christian Andersen の同名童話。それをライスが、かなり自由に翻案して、いささか残酷な物語に仕立て直した。
 見せ方は、『逢びき』がヴォードヴィル風味なら、こちらは旅芸人風味。それも、ちょっと暗黒舞踏入ってる感じの。音楽は、生演奏+録音で、録音音源はクラシック(オペラ)からヒップホップまで幅広い。まあ、要するに前衛的な感じ。
 『逢びき』のような緻密な表現ではないので、やや冗長に感じたが、それでも様々なアイディアが繰り出されて面白かった。でも、これはブロードウェイには行かないな。昨年 12月 12日までの限定公演。

 10月に観ようとした回がお子様団体貸切状態で観られなかったのが、ロングラン中の『ソバカス顔のストロベリー』。女優のジュリアン・ムーア Julianne Moore が書き、ルーイェン・ファム Leuyen Pham が絵を描いてベストセラーとなっている(らしい)絵本シリーズが原作の子供向けミュージカルで、小さな劇場は親子連れでいっぱい。しかし、もちろん、こうしたショウの常で、手抜き感全くなし。
 1幕ものだが、主人公の部屋、教室、校庭、バレエ教室、といった具合に場面が変わり、そのたびに違った趣向の楽曲が(ヴォードヴィル風からラップまで)歌われるのが楽しく、ダンスもしっかり。キャラクターの描き分けも手堅くきっちりしている。全く、ニューヨークのお子達がうらやましい。

 シティ・センターの超短期リヴァイヴァル“アンコールズ!”シリーズとして登場したのが『ベルズ・アー・リンギング』。今回のスターは、出産のために降りるまで『南太平洋』に出ていたケリー・オハラ Kelli O'Hara。相手役はウィル・チェイス Will Chase。
 ご承知の通り、簡易なセットによる(本質的には)リーディング的上演なので、全体としては 01年リヴァイヴァルのフェイス・プリンス Faith Prince 版とは比ぶべくもないが、オハラは充分に魅力的だった。うまい役者です。

 再見作は 2本。

 『メリー・ポピンズ』は、プレイビル・オンラインで「Step In Time」の映像を何気なくクリックしたら無性にこの派手な舞台が観たくなってチケットを獲った。
 06年の感想では [ディズニー作品特有の“誰が演じても同じ”的匿名性が全体に漂っていて、何度観てもノリきれない舞台] と書いているが、いや、今回は正直楽しみました(笑)。ポピンズ役がロンドン初演のローラ・ミシェル・ケリー Laura Michelle Kelly に変わっていたのも一因じゃないかなあ。彼女の動きのキレ(反射神経と運動能力)のよさに、しばしば感心した。 05年 6月にロンドンでも彼女を観たはずなんだが、席が遠かったせいか(確か 2階席の後ろの方)、それとも昼公演だっただけに代役だったか(プログラムがすぐに出てこないので、いずれ調べよう)。しかし、バート(ギャヴィン・リー Gavin Lee 続演中)の天井歩きとか、すっかり忘れてたな(笑)。

 さて、『リトル・ナイト・ミュージック』一昨年暮れは、わざわざこの作品を観るために飛んだのだが、その時の目当てだったキャサリン・ゼタ・ジョーンズ Catherine Zeta-Jone がバーナデット・ピーターズ Bernadette Peters に代わり、もう 1人の主演扱い、アンジェラ・ランズベリー Angela Lansbury もイレイン・ストリッチ Elaine Stritch に代わった。となれば、再見せざるをえまい。
 やっぱりピーターズはうまい。別の個性とはいえ、演技も歌もゼタ・ジョーンズより上だと思った。ちなみに、これは全くの別個性ってことでランズベリーと比較出来ないが(なにしろ 2人とも、あまりにも個性的なので)、ストリッチの存在感も大きかった。セリフが出てこない一瞬があったが、素でいらだって、それで問題ないのはストリッチならではだろう。観てよかった。
 1月 9日まで。

 次回(『スパイダーマン』のため)の渡米は 1月 12日の予定です。

(1/6/2011)

Copyright ©2011 MIZUGUCHI‘Misoppa’Masahiro

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