The east side of Duffy Square 10/6/2010

[ゆけむり通信Vol.92]

10/5-10/10/2010


  • 10月 5日20:00
    『知られざる偉人 THE GREAT UNKNOWN』(NYMF)
    THEATRE AT ST. CLEMENTS 423 West 46th Street
  • 10月 6日13:00
    『セラピー・ロックス THERAPY ROCKS』(NYMF)
    URBAN STAGES 259 West 30th Street
  • 10月 6日14:00
    『カエルの王子 FROG KISS』(NYMF)
    THEATRE AT ST. CLEMENTS 423 West 46th Street
  • 10月 6日21:00
    『スペシャル・レター SPECIAL LETTER』(NYMF)
    DUKE ON 42ND 229 West 42nd Street
  • 10月 7日13:00
    『馘首になった I GOT FIRED』(NYMF)
    TBG THEATRE 312 West 36th Street
  • 10月 7日17:00
    『ヘルズ・キッチンの上で ABOVE HELL'S KITCHEN』(NYMF)
    TBG THEATRE 312 West 36th Street
  • 10月 7日20:00
    『同志! FELLOWSHIP!』(NYMF)
    ATA CHERNUCHIN 314 West 5436th Street
  • 10月 7日23:00
    『ウィズアウト・ユー WITHOUT YOU』(NYMF)
    TBG THEATRE 312 West 36th Street
  • 10月 8日13:00
    『ペトリューシュカ PETROUCHKA』(NYMF)
    DUKE ON 42ND 229 West 42nd Street
  • 10月 8日20:00
    『パンドラの箱 PANDRA'S BOX』(NYMF)
    THEATRE AT ST. CLEMENTS 423 West 46th Street
  • 10月 8日23:00
    『Vデイ V-DAY』(NYMF)
    URBAN STAGES 259 West 30th Street
  • 10月 9日13:00
    『戦争の歴史 THE HISTORY OF WAR』(NYMF)
    ATA CHERNUCHIN 314 West 5436th Street
  • 10月 9日17:00
    『シャイン! SHINE!』(NYMF)
    THEATRE AT ST. CLEMENTS 423 West 46th Street
  • 10月 9日20:00
    『イン・トランジット IN TRANSIT』
    59E59 THEATER A 59 East 59th Street
  • 10月 9日23:00
    『史上最高にアホらしい騙り THE MOST RIDICULOUS THING YOU EVER HOID』(NYMF)
    URBAN STAGES 259 West 30th Street
  • 10月10日14:00
    『ブラッディ・ブラッディ・アンドリュー・ジャクソン BLOODY BLOODY ANDREW JACKSON』
    BERNARD B. JACOBS THEATRE 242 West 45th Street
  • 10月10日17:00
    『ポップアート POPART』(NYMF)
    ATA CHERNUCHIN 314 West 5436th Street
  • 10月10日20:00
    『スコッツボロ・ボーイズ THE SCOTTSBORO BOYS』
    LYCEUM THEATRE 149 West 45th Street
* * * * * * * * * *

 秋恒例のニューヨーク・ミュージカル・シアター・フェスティヴァル(NYMF)詣で。観た NYMF参加作品(タイトルの後ろに NYMFと入れてある)は都合 16本。違っているのは、これでも総数の約半分にすぎない。いつか全作品制覇をしてみたいものだ。と思いつつ、オンやオフの新たな作品も観ておかないと突然終わっちゃうかも、という強迫観念に駆られてスケジュールに入れる。今回は、オンの新作が 2本とオフの新作が 1本。ひっくるめて 1週間で 19本。堪能した。もっとも、例によって、うつらうつらした瞬間も何度かあったが(笑)。
 ……と、ここまでは昨年 10月渡米時の観劇リストの導入部の(ほぼ)コピペ。違っているのは観た作品の数が今回の方が 1本少ないこと。 NYMF作品が都合 15本だったので、トータルで 18本。そこを入れ替えれば、まんま今回の導入となる。劇場公演は 1本少なかったが、やはり NYMFの一環で上映された『ブルマー・ガール BLOOMER GIRL』の古い TV版を観たので、まあ、同等。って競う必要はないか(笑)。
 気候は実に気持ちよく、暑からず寒からず、空は見事に晴れ、爽やかな日々だった。

 まずは NYMF(第 7回)を観た順に。
 おっと、その前に、NYMFの概略についても、これまた昨年同時期に書いた説明をコピペしておく。
 [毎年 9月から 10月にかけて(しだいに 10月中心になってきている)約 1か月、ミッドタウンの複数の小劇場(当初はダウンタウンもあったが、最近はミッドタウンのみ)で行なわれる新作ミュージカルのショウケースで、すでに他の街(あるいは国)で公演をしてきている完成度の高い舞台から、“リーディング”と呼ばれる役者の本読み+コンサート形式のものまで、仕上がり具合はさまざまだが、いずれも、この後、オフや、場合によってはオンまで目指そうという意欲にあふれた作品がずらりと並ぶ。平均して 1作品が 3〜4公演を行ない、うまく調整すれば、ほぼ全ての作品を観られるようなプログラムが組まれているようだ。]
 ちなみに、今年のプログラムを見ると 1作品あたりの上演回数は 6〜 7ですね。料金は通常 20ドル。中には無料の試演もあります。

 『知られざる偉人』は、南北戦争で英雄になった男が、義弟を含む仲間(かつての部下)たちと、グランドキャニオンのコロラド川を下る冒険に出る話。人間関係がしだいに緊張してくる話自体は、とりたてて言うほどのこともないが、ブルーグラス、カントリー系の楽曲はよく出来ていて、聴き応えがあった。
 『セラピー・ロックス』の主人公はシンガー・ソングライターの女性。恋に不器用な彼女が、恋の得意な親友の勧めでセラピストのところに行き、結果的に彼と恋に落ちる。主人公と親友、主人公とセラピストの対話で進む話は、ダイナミズムはないが、おそらくTVドラマ的な面白さがあるのだと思う。心情吐露の楽曲が主人公のリハーサルの形で挿入されるのがアイディアと言えばアイディア。
 『カエルの王子』は、グリム童話のあの話(ごぞんじですよね?)を、ちょっと登場人物を現代的にヒネることで面白くしてある(そこに寓意がありそうだが、イマイチ不明)。と同時に、有名ミュージカルのパロディを随所に配してある。でもって、スタイルはオーソドックスなソング&ダンス・ミュージカル。カエル足のタップもある。というわけで、ミュージカル好きが気楽に楽しめる、という作品だった。
 『スペシャル・レター』は韓国からの直輸入なので、韓国語上演、英語字幕付き。徴兵される若者たちの悲哀をユーモラスに綴った作品。欧米ミュージカルの模倣ではなく、地に足の着いた表現が好ましい。洗練なんて気にしない類のエネルギッシュさで最後まで突っ走るが、かと言って雑な作りというわけではない。兵役に対する複雑な心情をミュージカル・コメディにしてみせた手腕は賞賛に値する。途中、恋する女性をアイドルに例えて、想像の中で K-POP的ソング&ダンスを見せるアイディアも楽しい。
 『馘首になった』は、作者キース・ヴァーニー Keith Varney(原案・脚本・作曲・作詞・主演)の体験が元との触れ込み。次々にライヴァルを追い落としていく強烈な上昇志向の女性の犠牲になる主人公の悲劇、といった内容だが、社員たちの描き方が皮肉でありながらユーモラスで、ちょっと変わった人々に対する愛情が感じられて、そこが面白い。狭い舞台上で少なくない登場人物を的確に動かしてみせる演出も見事。
 『ヘルズ・キッチンの上で』のネタ元は『ドン・ジョヴァンニ DON GIOVANNI』。そのロック・スター版といったところ。怪しげな人物がいろいろ出てくるが、主人公のロック・スターがセラピストに相談に来て体験を語るという構成が(オチも含めて)、あまりうまくいっていない。ただし、セラピスト役アンドレア・フリエルソン Andrea Frierson のゴスペル・ライクな歌は素晴らしい。
 『同志!』『ロード・オブ・ザ・リング』(ロンドンの舞台版は未見)のパロディ。チープなセットの中、少人数で大掛かりな話をやる、というあたり、モンティ・パイソン的。ミュージカルとしてどうこうじゃなく、大笑いすればオーケーってところが、いっそ痛快。
 『ウィズアウト・ユー』は、『レント RENT』のオリジナル・キャストとして知られるアンソニー・ラップ Anthony Rapp の 1人ミュージカル。自身の回想録を元に、亡きジョナサン・ラーソン Jonathan Larson と亡き母への思いを軸に半生を振り返る。ミュージカル好きには興味津々の内容で、要所要所に『レント』のナンバーも入るから、退屈はしない。しかし、『レント』から逃れられない人生ってのも辛いっちゃあ辛いかも。
 『ペトリューシュカ』は、同名バレエ作品の現代化ダンス作品。と言っても、音楽はストラヴィンスキーではなく、ミケランジェロ・ソスノウィッツ Michelangelo Sosnowitz のオリジナル。ストーリーも変わっていて、ペトリューシュカが好意を寄せるのは、バレリーナではなく兵士(ムーア人?)で、バレリーナは悪役。つまり、ゲイ的な世界になっていた。まあ、それがなければ、現代版にしたところで面白味はないかも。ダンスの水準は高い。
 『パンドラの箱』の原作は、『彼女の彼は、彼女 GAZON MAUDIT』のタイトルで日本公開もされたフランス映画。浮気なダンナに嫌気がさした主婦がレズビアンの隣人と知り合い……という話で、途中から皮肉な展開を見せるが、ま、想像の内。スタッフに TV界の人が多いせいか、連続シチュエイション・コメディの雰囲気で、ちょっと小ぢんまり。ケリー・バトラー Kerry Butler、ディードリ・グッドウィン Deidre Goodwin といったブロードウェイでおなじみの役者の登場と、ウェイン・シレント Wayne Cilento の振付が最大の見どころ。
 『Vデイ』は、ロック・バンドのライヴの形で語っていくスタイルのコミカルな作品で、バンドのメンバーも役をこなす。「Vデイ」=ヴァレンタイン・デイで、モテない主人公は、その日が嫌い、という話だが、正直、途中から眠くて(自分のせい)よく覚えていない。何かニール・ダイヤモンド Neil Diamond が絡んでくるのだが……。
 『戦争の歴史』は、『イントゥ・ザ・ウッズ INTO THE WOODS』『ファルセトーズ FALSETTOS』のオリジナル・キャストとして知られるチップ・ジェン Chip Zien の脚本による、複雑な構成の、苦い反戦ミュージカル。父親を戦場で亡くした少年が過去の独裁的戦争指導者に憧れる。その少年の妄想世界(独裁者たちが少年宅に現れてプロパガンダを繰り広げる)と現実(少年を心配する母と継父、及び、様々な時代の前線の兵士)とが交錯して描かれる。戦争の国アメリカならではの重いリアリティが、寓話的表現を超えて迫ってくる。
 『シャイン!』は、 19世紀に活躍した大衆小説作家ホレイショ・アルジャー Horatio Alger 作品のミュージカル化。目端の利く靴磨きの少年が強い向上心でチャンスをつかんでいくが、妬まれて陥れられた上に、誘拐事件に巻き込まれる。その誘拐事件の顛末が『オリヴァー! OLIVER!』にソックリで、不思議な気分。完成度は高いが、この真っ当で新味のない話、オーソドックスで手堅い演出の作品が、フェスティヴァルの性格と合っていないように思えた。
 『史上最高にアホらしい騙り』は、マルクス兄弟 The Marx Brothers のラジオ番組(実際に 1932年 11月から半年ほどオンエアされていた『FLYWHEEL, SHYSTER, AND FLYWHEEL』という番組を下敷きにしているらしい)の収録現場という設定。ラジオなだけに、実際の番組にはチコとグルーチョ(グラウチョ)しか出てなかったようだが、無口な(!)ハーポはここでは効果音係として登場。うまい設定。見どころは兄弟のソックリ具合だが、グルーチョのオーラが足りないことを除けば、かなりのもの。あの時代の気分を再現したオリジナル楽曲もいい感じ。素材を研究し尽くしてあり、趣味に走り過ぎの感はあるが、面白かった。
 『ポップアート』は、郊外の普通の家庭に育った少女がゲットーにあるアート・スクールに進学して、一風変わった連中に揉まれながら成長していく、という話で、教師や生徒のヘンなキャラクターが見せ所なのだと思うが、あまりピンと来ず。なにより、登場人物の作品たるアートに驚きがないのが痛い。

 NYMF以外は全て再見。これまた観た順に。

 『イン・トランジット』は、ニューヨークの地下鉄(と駅)を舞台にしたスケッチ集的なオフ作品で、特徴は、ヒューマンビートボックスと呼ばれる人声ドラム×ベース奏者を軸にしたア・カペラのミュージカルなところ。そもそもタイトルに聞き覚えがあったのだが、すぐには再見とは気づかなかった。と言うのも、観たのは 2年前の夏なのだが、その時はイス以外に舞台装置のないリーディングで、印象が全く違っていたのだ。
 [恋愛を軸にしたコミュニケーション回復のドラマが描かれる。コント的な短い場面がバラバラに現れ、それらが、やがて絡み合い……という手法が、オーソドックスながら、よく出来ていて、案外沁みた。] という、その時の感想は今回も同じ。コーラスの手法も多彩で、音楽的にも楽しい舞台だったが、すでに終了かあ。残念。

 これが 3回目となる『ブラッディ・ブラッディ・アンドリュー・ジャクソン』は、オフからオンに移行。舞台は大きくなったが、装置も演出も変わらず。
 初見の際の感想を再掲すると、 [第 7代合衆国大統領アンドリュー・ジャクソンの半生を、パンク・ヴォードヴィルとでも呼びたくなる自在な手法で描いた作品で、インディアン(ネイティヴ・アメリカン)を徹底弾圧したジャクソンが無教養でパンキッシュな若者として登場し、無軌道な行動を繰り返しながら、なぜか大統領にまで上りつめていく。ジャクソンを批判するというより、ジャクソンのような人物を生み出し、それを大統領にしたアメリカのストレンジなところを描こうとしているように見える。ユーモラスな表現が多く、それが逆に、批評性に深みを与えている。楽曲もいい。]
 『スコッツボロ・ボーイズ』共々、必見。

 やはり、オフ公演の後オンに移ってきた『スコッツボロ・ボーイズ』。こちらも初見の感想を再掲するが、 2箇所の修正が必要。
 [1931年にアラバマで実際に起こった冤罪事件を描いたもので、 9人の黒人少年たちが無実の罪で逮捕され、最終的に数人が死刑になる。これを、陽気な顔つきのミンストレル・ショウ仕立てで描く、という辺りからしてビターな感覚。ジョン・カラム John Cullum がショウの座長役で出てくる他は全員が黒人で、話の中に登場する白人も彼らが扮装して演じるのも皮肉な感じを強める。楽曲は悪くなく、ダンスも含め全体の構成も面白いのだが、時に直情的にシリアスすぎる演技が(もちろん題材はシリアスなのだが)、作品としての懐の深さを失わせていて、そこが残念。]
 修正箇所の 1つは [最終的に数人が死刑になる] というところで、死刑になった者はいない。ここは、とりあえず舞台上で表現されたところまでで言うと、 1937年に 4人が釈放されて 5人が残る、ということになる。その後、さらに年を経て最終的には全員が釈放される。
 もう 1つの修正箇所、と言うか、オンで観て違う感想を抱いたのが、 [時に直情的にシリアスすぎる演技が(もちろん題材はシリアスなのだが)、作品としての懐の深さを失わせていて、そこが残念] というところ。演出が変わっていたかどうかは定かではないが、今回はシリアスな演技も過剰には感じられず、全部まとめてガツンと来た。ぜひとも 1度は観ておきたい。

 NYMFの一環で上映された『ブルマー・ガール』 TV版について簡単に。オンエアは 1956年だったようで、主演は 44年の舞台版オリジナル・キャスト、セレステ・ホルム Celeste Holm ではなく、バーバラ・クック Barbara Cook。 TVのオンエア枠の関係上、かなり場面を端折ったようだが、南北戦争前後を舞台にしながらリベラルな空気を孕んだ作品だ、という雰囲気はわかった。なお、当日はクックも臨席しての上映だった。

(11/15/2010)

Copyright ©2010 MIZUGUCHI‘Misoppa’Masahiro

previous/next

Let's go to BROADWAY

How to get TICKETS

[TITLE INDEX]


[HOME]