Duffy Square in twilight 4/8/2010

[ゆけむり通信Vol.90]

4/7-4/11/2010


  • 4月 7日20:00
    『ラヴ、リンダ LOVE, LINDA The Life Of Mrs. Cole Porter』
    TRIAD THEATER 158 West 72nd Street
  • 4月 8日11:00
    『101匹わんちゃん大行進 101 DALMATIANS』
    THE THEATER at MADISON SQUARE GARDEN
  • 4月 8日13:30
    『スモーキー・ジョーズ・カフェ SMOKEY JOE'S CAFE』
    PAPER MILL PLAYHOUSE Millburn, New Jersey
  • 4月 8日20:00
    『アメリカン・イディオット AMERICAN IDIOT』
    ST. JAMES THEATRE 246 West 44th Street
  • 4月 9日20:00
    『プロミセス、プロミセス PROMISES, PROMISES』
    BROADWAY THEATRE 1681 Broadway
  • 4月10日14:00
    『レンド・ミー・ア・テナー LEND ME A TENOR』
    MUSIC BOX THEATRE 239 West 45th Street
  • 4月10日17:00
    『ブラッディ・ブラッディ・アンドリュー・ジャクソン BLOODY BLOODY ANDREW JACKSON』
    NEWMAN THEATER at PUBLIC THEATER 425 Lafayette Street
  • 4月10日20:00
    『ラ・カージュ・オ・フォール LA CAGE AUX FOLLES』
    LONGACRE THEATRE 220 West 48th Street
  • 4月11日12:00
    『タイム・ステップ TIME STEP』
    NEW VICTORY THEATER 209 West 42nd Street
  • 4月11日15:00
    『ビリー・ヘインズを探して LOOKING FOR BILLY HAINES』
    LION THEATRE at THEATRE ROW 410 West 42nd Street
  • 4月11日18:30
    『エニワン・キャン・ホイッスル ANYONE CAN WHISTLE』
    CITY CENTER 55th Street between 6th & 7th Avenue
    * * * * * * * * * *

     中 2週という、競走馬並みのスケジュールでの渡米(笑)。目的は、前回以降に始まったオンの 3作(『アメリカン・イディオット』『プロミセス、プロミセス』『ラ・カージュ・オ・フォール』)がメインだが、あえて、この時期にしたのは、観ておきたい期間限定公演(『101匹わんちゃん大行進』『ブラッディ・ブラッディ・アンドリュー・ジャクソン』『エニワン・キャン・ホイッスル』があったからでもある。 5泊で 11本(てか、実際は 10本半。詳細は後述)。ハズレがないではなかったが、まず満足。
     天候は、最初の 2日が夏並みに暑く、真ん中が寒くて最後に落ち着くという、なんだか、いない間の東京と似たような変化の激しさで、服装には気を遣いました。

     では、オンの新登場作から、観た順に。
     『アメリカン・イディオット』は、ロック・バンド、グリーン・デイ Green Day が 04年にリリースした同名アルバム(グラミーでロック・アルバム賞を受賞)の舞台ミュージカル化。ほぼアルバム通りに楽曲が並び、それに沿って物語が展開する。田舎町に住む 3人の若者の軌跡を追ったもので、 1人はミュージシャンを目指して都会に出てクスリ漬けになり、 1人は軍隊に入って精神も肉体も傷つき、もう 1人は付き合っていた相手が妊娠したため町を離れられず鬱々とした日々を過ごす、というドラマは、いささか類型的だが、なにしろ楽曲がよく、説得力を持つので、その勢いで最後まで観てしまう(と言っても一幕ものだが)。舞台を天井まで使ったダイナミックなセットを生かして、演出はスピーディ。エネルギッシュな演技で全体をラフに見せているが、実は細かな点まで緻密に計算されているように見受けられる。『春のめざめ SPRING AWAKENING』でトニーの助演男優賞を受賞したジョン・ギャラガー・ジュニア John Gallagher, Jr. はじめ、若手中心の役者陣は魅力的。 1度は観ておいていい。
     以下 3作は全てリヴァイヴァル。
     60年代にユニークなヒット曲を量産したバート・バカラック Burt Bacharach(作曲)&ハル・デイヴィッド Hal David(作詞)のコンビが唯一書いたミュージカルが『プロミセス、プロミセス』(原作はビリー・ワイルダー Billy Wilder 監督『アパートの鍵貸します THE APARTMENT』)。初演は 68年で、 3年超のロングランを記録。タイトル曲と「I'll Never Fall in Love Again」がヒットした。というわけでブロードウェイには 30年振りの登場。舞台の人気女優クリスティン・チェナウェス Kristin Chenoweth と映画の人気男優ショーン・ヘイズ Sean Hayes という 2人を主役に据えて、舞台好きから観光客まで幅広く来てもらおうという目配り。と思いきや、意外にもブロードウェイ初登場のヘイズのコメディ演技のうまさが際立つ。ご承知かと思うが、この話、この(鍵を貸す)男性役の出来で成否が決まる。おかげで、新鮮味はないが、いい雰囲気の舞台に仕上がった。初演にはなかった「A House Is Not A Home」(64年のヒット曲で、すでにスタンダード化)が導入され、かなり重い使われ方をしているが、脚本(ニール・サイモン Neil Simon)も手直しされたのだろうか。
     『ラ・カージュ・オ・フォール』昨年夏のロンドンで観たヴァージョンをブロードウェイ移植したもの。もちろん、ほぼ同じだが、全体の雰囲気がロンドン版の方がしっとりしている気がするのは、やはりお国柄か。唯一こちらの方がよかったのは、ロンドン版で唯一よくなかったジョルジュの息子役。
     『レンド・ミー・ア・テナー』は、『クレイジー・フォー・ユー CRAZY FOR YOU』の脚本家ケン・ラドウィグ Ken Ludwig がブロードウェイ・デビューを飾ったストレート・プレイ(もちろんコメディ)で、初演は 89年。加藤健一の演出・主演版を本多劇場で観たことがあるが、原語でのブロードウェイ上演、どこまで理解出来るかは別にして、C4Yファンとしては観ないわけにはいかない。で、驚いたのが、こんなにセクシャルな内容だったっけ、ってこと。やっぱり、イタリア人オペラ歌手とかって、それに相応しい人がやんないと、セックス・アピールが、ね。日本人じゃ無理だわ。カーテンコールで、役者たちが早回し的な動きで全編のあらすじを見せてしまう演出が面白かった。

     続いて、オフ、オフオフを観た順に。
     『ラヴ、リンダ』は、アップタウンの小さなレストラン・シアターで水曜日だけ上演されている 1人ミュージカルで、ジャズ歌手スティーヴィ・ホランド Stevie Holland がコール・ポーター Cole Porter 夫人リンダの半生を、ポーターの楽曲を歌い継ぎながら描き出す、という趣向。脚本もホランド自身が共同で手がけている。特別なセットがあるわけでもなく、見た目はピアノ、ベース、ドラムスのバンドをバックにした普通のライヴなので、客も気楽に飲みながら楽しんでいるが、なるほど、こういうミュージカルもありだな、と興味深く観た。
     『101匹わんちゃん大行進』(原作アニメ映画をリアルタイムで観ている者としては「大行進」と付かないと落ち着かない)は、場所がマディソン・スクエア・ガーデンの大劇場ってことからもわかる通り、完全なファミリー向けのミュージカル。生イヌも時折何匹か出るが、演技するのは着ぐるみ役者。子役たちも含め健闘しているが、限界はある。後半の逃走部分を大幅に端折る等、舞台ならではの作りに徹して、よくまとめてあるが、逆に言うと、あまり舞台に向いたネタではなかったってことか。
     ニュージャージー遠征の『スモーキー・ジョーズ・カフェ』は第 2幕のみの観劇。と言うのも、同日 11時からの『101匹わんちゃん大行進』のチケットを買ったのを忘れて、午後 1時半の予約をしてしまったからで、それでも後半に間に合ったのは、マディソン・スクエア・ガーデンとペン・ステーションが同じ場所にあったが故。不幸中の幸いです。筋のないショウだったのも救い。演出はブロードウェイ版とはかなり違っていた気がする。
     刺激的だったのが、パブリック・シアターの『ブラッディ・ブラッディ・アンドリュー・ジャクソン』。第 7代合衆国大統領アンドリュー・ジャクソンの半生を、パンク・ヴォードヴィルとでも呼びたくなる自在な手法で描いた作品で、インディアン(ネイティヴ・アメリカン)を徹底弾圧したジャクソンが無教養でパンキッシュな若者として登場し、無軌道な行動を繰り返しながら、なぜか大統領にまで上りつめていく。ジャクソンを批判するというより、ジャクソンのような人物を生み出し、それを大統領にしたアメリカのストレンジなところを描こうとしているように見える。ユーモラスな表現が多く、それが逆に、批評性に深みを与えている。楽曲もいい。
     『タイム・ステップ』は、子供向け劇場で上演されたタップ・パフォーマンス。飽きさせないためか、物語仕立てになっていたが、むしろ、ストレートにタップ芸を見せてほしかった。ちょっと食い足りず。
     『ビリー・ヘインズを探して』のビリー・ヘインズとは無声映画で活躍した実在の男優で、ゲイであることをカミングアウトしていた。仕事の上でヘインズに興味を持った現代の若い役者が、その生涯を探っていく、というストーリーだが、ヘインズに関してはさほど掘り下げられず、むしろ、ヘインズ絡みで披露されるタップ・ダンスの方が見どころか。それにしても、人気絶頂の時に会社のボスであるルイス・B・メイヤー Louis B. Mayer から、ゲイであることを隠して偽装結婚しろと命令され、拒否して“恋人”との生活を選び、その後インテリア・デザイナーとして成功する、というヘインズの人生はユニークだ。
     『エニワン・キャン・ホイッスル』はスティーヴン・ソンダイム Stephen Sondheim(楽曲)の興行的失敗作。 64年に上演され、プレヴュー 12回、本公演 9回で幕を下ろしている。その後ブロードウェイでのリヴァイヴァルはなし。今回はシティ・センターのアンコール!シリーズ。これが面白かった。ざっくり言うと、政治と大衆のねじれた関係、世論の危うさ、といったテーマを孕んだ、ある種の寓話で、感触としては『ユーリンタウン URINETOWN』あたりに近いかも。そこに、洗練されきる以前のソンダイムのいきいきした楽曲が絡むと、スラップスティック風味のミュージカル・コメディが生まれる。おそらく、脚本(アーサー・ローレンツ Arthur Laurents)や楽曲の諧謔のレヴェルが高すぎて当たらなかったのだと思うが、その辺、こっちは元々よくわからないので問題なし(笑)。ドナ・マーフィ Donna Murphyやサットン・フォスター Sutton Foster のコメディ演技を楽しみました。

     ということで、 [これでトニー賞前に登場するオンの新作は打ち止めのはず] だったのだが、『エヴリデイ・ラプチャー EVERYDAY RAPTURE』が帰国の 1週間後にプレヴューを開始し、 4月 29日に駆け込みオープン。今シーズンのトニー賞に間に合ってしまった。同作はオフからの移行作だが、オフも不在中の上演だったので(って、お前はニューヨーク在住者か!)全くの未見。なわけで、今年のトニー賞予想は未見作 1で臨むことに。あーあ。
     ちなみに、次回渡米は『エヴリデイ・ラプチャー』を観に 6月 8日に飛ぶ予定。久々のトニー賞直前スケジュールです。

    (5/5/2010)

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