The Rockettes on the Gray Line bus 11/20/2009

[ゆけむり通信Vol.87]

11/17-11/22/2009


  • 11月17日19:00
    『カーライルの一夜 AN EVENING AT THE CARLYLE』
    ALGONQUIN THEATER 123 East 24th Street
  • 11月18日14:00
    『ドリームガールズ DREAMGIRLS』
    APOLLO THEATER 253 West 125th Street
  • 11月18日19:00
    『普通の日々 ORDINARY DAYS』
    BLACK BOX THEATRE/HAROLD AND MIRIAM STEINBERG CENTER FOR THEATRE 111 West 46th Street
  • 11月19日13:30
    『オン・ザ・タウン ON THE TOWN』
    PAPER MILL PLAYHOUSE Millburn, New Jersey
  • 11月19日20:00
    『フェラ! FELA!』
    EUGENE O'NEILL THEATRE 230 West 49th Street
  • 11月20日20:00
    『ラグタイム RAGTIME』
    NEIL SIMON THEATRE 250 West 52nd Street
  • 11月21日14:00
    『歌うように語れ TALK LIKE SINGING』
    SKIRBALL CENTER FOR THE PERFORMING ARTS 566 LaGuardia Place
  • 11月21日20:00
    『バイ・バイ・バーディ BYE BYE BIRDIE』
    HENRY MILLER'S THEATRE 124 West 43rd Street
  • 11月22日11:00
    『クリスマス・キャロル A CHRISTMAS CAROL』
    PLAYERS THEATRE 246 West 44th Street
  • 11月22日15:00
    『フィニアンの虹 FINIAN'S RAINBOW』
    ST. JAMES THEATRE 246 West 44th Street
  • 11月22日18:30
    『ガール・クレイジー GIRL CRAZY』
    CITY CENTER 55th Street between 6th & 7th Avenue
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 先月に続いての渡米を決めた理由は、もちろんブロードウェイ新作の登場だが、同時に、アポロ劇場での『ドリームガールズ』の限定公演も決め手になった。劇場の 75周年記念公演だそうだが、この演目がこれほどハマる劇場もないだろう。そう思って勢い込んで、かなり早めに予約したのだが、どうやら、ずっと半額チケットが出ていたようだ。アメリカ人観光客にとって、やはりハーレムは心理的に遠いのだろうか。観たのが昼公演だったこともあって、逆に日本人の姿が多く目についたほどだ。
 ところで、振り返ってみると、この 10年、毎年 11月にニューヨークを訪れている。秋の新作の多くがこのホリデイ・シーズンを狙って登場する、ということが逆に、それでわかる。去年は寒かったと書いているが、今年は過ごしやすかった。東京は何日か寒い日があったようだが。

 さて、まずは前回以降に登場したオンの新作から。
 『フェラ!』は昨年夏にオフで上演されていて、ソールドアウトで観逃した作品。主に 70年代に活躍し、“ブラック・プレジデント”(!!)と称されたナイジェリアのミュージシャン、フェラ・クティ Fela Anikulapo Kuti の波瀾の半生を、彼のライヴ・ステージの形で綴る。これが熱い。クティの音楽的評価の一例を挙げると、今年夏にミュージック・マガジン誌の 40周年記念増刊として出された「アルバム・ランキング・ベスト 200」(1969年〜2008年に出たアルバムから選出)で、彼の代表作『ゾンビ ZOMBIE』(76年)は 5位にランクイン。 ビートルズ『アビー・ロード ABBEY ROAD』、ニール・ヤング『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ AFTER THE GOLD RUSH』、トーキング・ヘッズ『リメイン・イン・ライト REMAIN IN LIGHT』、スライ&ザ・ファミリー・ストーン『暴動 THERE'S A RIOT GOIN' ON』に次ぐ順位で、 6位がローリング・ストーンズ『レット・イット・ブリード LET IT BLEED』。――と、世界的に高く評価されるクティだが、国内では政府批判ゆえに軍事政権の弾圧を受け、苦闘の活動を余儀なくされた。そんなわけで、この舞台にもヒリヒリするような焦燥感があり、不穏な空気もある。そんな中で、バンド、ダンサーが一体になって繰り広げる、クティの生み出した“アフロビート”の躍動感を再現するパフォーマンスが素晴らしく、思わずブロードウェイの劇場にいることを忘れる。ジェイ・Z Jay-Z やウィル・スミス夫妻 Will & Jada Pinkett Smith が追って出資したのも話題。演出・振付・共同原案・共同脚本は『春のめざめ SPRING AWAIKNING』の振付家ビル・T・ジョーンズ Bill T. Jones。
 11年振りのブロードウェイ・リヴァイヴァルとなる『ラグタイム』。 98年の初演は、そのプロデューサーでもあった、当時飛ぶ鳥を落とす勢いのライヴェント社が、クルマのフォード社と組んで、 42丁目の閉鎖されていたリリック劇場とアポロ劇場とを合わせて改装し完成させた劇場、フォード・センターのこけら落と公演でもあったが、その劇場も今や名前をヒルトン劇場と替えている。さほどに 11年の歳月は長いが、個人的には不思議に最近な気がする。大掛かりで充実した新作だった初演の感想はこちらに書いた通りだが、テーマに引きずられてか、重苦しさが先に立った。ワシントンD.C.のケネディ・センターから来た今回のリヴァイヴァルは、その点、演出に軽快さがあり、初演よりいい(演出・振付マルシア・ミルグロム・ドッジ Marcia Milgrom Dodge)。構造主義的美しさを持つ鉄骨による装置は、舞台を三階建てにし、なおかつ橋状の可動部を持つ。この装置が複雑に絡み合う物語の見晴らしをよくしている部分もある。楽曲のよさは証明済み。役者も、マザー役クリスティアン・ノール Christiane Noll はじめ、みんな、過剰さがなく、いい。
 フランシス・フォード・コッポラ Francis Ford Coppola の監督した映画版(68年)がフレッド・アステア Fred Astaire の出演した最後のミュージカル映画として知られる『フィニアンの虹』のブロードウェイ登場は、なんと 1960年の限定公演以来。その公演は、その 5年前にやはり短い限定公演を行なったシティ・センターのライト・オペラ・カンパニーのアンコール公演だったようで、実は今回も、今年 3月に上演されたシティ・センター“アンコールズ!”シリーズの舞台(未見)を基にしたブロードウェイ公演。ともあれ、事実上、 47年に幕を開けた初演以来約 60年振りの本格的リヴァイヴァル、ということになる。そんなわけでノスタルジックなんじゃないかと心配したが、根底に流れるボヘミアン賛歌の精神は現代にも通じ、初演当時の気分を反映していると思われる資本主義に対する皮肉な視線は、むしろ今、生々しい。それらをユーモラス、かつロマンティックに包み込んだ巧みな脚本、固定だがアイディアのある装置、テンポのいい演出、そして、味のあるうまい役者が揃って、のほほんとした、それでいて活気のある楽しい舞台に仕上がった。演出・振付は『二都物語 A TALE OF TWO CITIES』のウォーレン・カーライル Warren Carlyle。

 そして、オフ、他。
 ダウンタウンの劇場で日月火の夜だけ上演されている『カーライルの一夜』は、アップタウン・イーストに実在するカーライル・ホテルのバー、ベメルマンズの“ある夜”という設定で展開するレヴュー。初めはバーに集う幾人かのニューヨーカーの生態を描いているが、途中から有名人が登場してきて、そっくりショウの様相を帯びてくる。その意味では、かつての名物公演『フォービドゥン・ブロードウェイ FORBIDDEN BROADWAY』に通じる。この手のショウの常で、少人数の達者な役者が複数の役を演じ分ける。 1度は観てもいい。
 さて、『ドリームガールズ』。映画版を観て、これは舞台の方が面白いのでは? と思っていたが、その通りだった。なにしろテンポがいい。 1つには、映画と違って、余計なストーリー説明をしなくても、舞台転換やセリフで観客が事情を飲み込んでくれる。もう 1つは、歌の場面で、映画は画面に変化をつけないと間がもたず、ともすると冗長になるが、舞台では目の前で役者が歌っているだけで観客は満足出来る。と、まあ、いろいろあるが、ともあれ、知名度的にはツアー・クラスがほとんどの出演陣だが、充分に満足出来る舞台だった。演出・振付は、『サイド・ショウ SIDE SHOW』、 02年リヴァイヴァル『フラワー・ドラム・ソング FLOWER DRUM SONG』のロバート・ロングボトム Robert Longbottom。ちなみに、映画版用の書き下ろし楽曲も加えてあった。
 『普通の日々』は、ラウンダバウト劇場が自分たち専用の小さなオフ劇場で上演したオリジナル作品。ニューヨークで暮らす 2組のカップルの“普通の日々”の物語。これが、いい出来。あるカップルは一緒に住もうとして関係が壊れていき、もう 1組は、ふとしたことで知り合い、やがて互いを理解し合う。前者は、どちらかと言えば普通の大人の男女だが、後者の 2人のキャラクターが面白く(単純に言うと、人間同士のつながりを信じるオタクの男と、自分のことしか見えなくなってる上昇志向の女)、オタクの男の願う人間同士のつながりが全体のテーマになってくる。脚本(と言うか全て歌だが)がていねいで、アイディアがつまっていて、笑えて、感動する。ブロードウェイ級の役者を揃えて 20ドルで上演するラウンダバウトの志は偉い。楽曲アダム・グオン Adam Gwon、演出マーク・ブルーニ Marc Bruni。
 ニュー・ジャージー、ペイパーミル・プレイハウスの『オン・ザ・タウン』。この作品の初演は、おそらく、かなりバレエ色が濃かったはず。今回は、その感触に近づけようとしたのではないか。余計な装飾は出来るだけ省いて。それが功を奏した。シンプルだけれども清清しく、生き生きした舞台に仕上がっていた。ま、今のブロードウェイでは通じないだろうが、それが地方劇場のよさでもある。
 三谷幸喜脚本・演出の『歌うように語れ』は、ニューヨーク大学校舎ビル内の劇場で上演され、オフ扱いではなかったようだ(スタッフも大半が日本人だったようだからユニオンの問題絡みだろう)。生まれついて歌うようにしか語れない患者(香取慎吾)の症状改善を試みた心理学者(川平慈英)が、東京からニューヨークにやって来て行なう研究発表会、という設定。したがって、もっぱら川平が英語でしゃべり、残る 3人(香取、堀内敬子、新納慎也)はほとんど日本語。観客は 9割以上が日本人だったが、現地在住の人が多かったようで、川平の英語のジョークで笑っていた。脚本が非常に甘く、川平のキャラクターと個人芸に頼りっぱなし。香取と堀内のデートのシーン等、場面としては観るべき部分もあり、小西康陽の音楽も悪くないが、成功作とは言いがたい。
 『クリスマス・キャロル』は、ヴィレッジの小さな劇場で半素人なみなさんが演じる、地元のコミュニティのための上演のよう(ご近所の親子連れが大勢訪れてました)。衣装やセットも素人の手作りっぽい。なので、まあ、出来をどうこう言う舞台ではないですね(笑)。
 おなじみシティ・センターの“アンコールズ!”シリーズとして登場したのが『ガール・クレイジー』『クレイジー・フォー・ユー CRAZY FOR YOU』の元ネタとして知られ、確かに前半の展開はよく似ているが、途中からは(当然ながら)別の話になる。ジュディ・ガーランド Judy Garland、ミッキー・ルーニー Michey Rooney コンビによる映画版とも、やはり違っている。初演は 1930年。楽しいが、さすがに古さは否めない。個人的にはジンジャー・ロジャーズ Ginger Rogers、エセル・マーマン Ethel Merman の出演作(マーマンはブロードウェイ・デビュー)として当時を想像しながら観ていたが、マーマンの方はうまくイメージが湧かなかった。

 『バイ・バイ・バーディ』を再見したのは、前回、ディー・ホッティ Dee Hoty に代役が立っていたからで、確かブロードウェイは『フットルース FOOTLOOSE』以来だから 10年以上振りだと思うが、その時も代役で観られなかったからなあ。と、そんな気持ち。もっとも、今回の彼女の役は、さほど見せ場のある役ではないのだが。
 全体の感想はプレヴュー時の前回と変わらず。周りは溌剌としているが、主演の 2人が弱いです。セットも含め、雰囲気はいいんだけどな。

 次回ニューヨークは、急遽今月 28日出発に決定。久々に向こうで年越しです。

(12/18/2009)

Copyright ©2009 MIZUGUCHI‘Misoppa’Masahiro

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