The ads at the Shubert Alley 10/5/2009

[ゆけむり通信Vol.86]

10/1-10/7/2009


  • 10月 1日20:00
    『ブラインド・レモン・ブルーズ BLIND LEMON BLUES』
    THEATRE AT ST. PETER'S 619 Lexington Avenue
  • 10月 2日13:00
    『ナイチンゲールとサテンの女 NIGHTINGALE AND THE SATIN WOMAN』(NYMF)
    THEATRE AT ST. CLEMENTS 423 West 46th Street
  • 10月 2日16:30
    『グリーンウッド・トゥリー THE GREENWOOD TREE』(NYMF)
    TANK AT 45 STREET THEATRE 354 West 45th Street
  • 10月 2日19:30
    『ホワットエヴァ・マン WHATEVER MAN』(NYMF)
    TANK AT 45 STREET THEATRE 354 West 45th Street
  • 10月 2日22:30
    『キュア THE CURE』(NYMF)
    ATA CHERNUCHIN 314 West 5436th Street
  • 10月 3日13:00
    『モ・ファヤ MO FAYA』(NYMF)
    TBG THEATRE 312 West 36th Street
  • 10月 3日16:30
    『マックスはわかってる MAX UNDERSTOOD』(NYMF)
    TANK AT 45 STREET THEATRE 354 West 45th Street
  • 10月 3日20:00
    『アンディ・ウォーホルは正しかった ANDY WARHOL WAS RIGHT』(NYMF)
    MMAC(Manhattan Movement and Art Center) 248 West 60th Street
  • 10月 3日23:00
    『ルルレッド R.R.R.E.D.: A Secret Musical』(NYMF)
    TANK AT 45 STREET THEATRE 354 West 45th Street
  • 10月 4日13:00
    『ファット・キャンプ FAT CAMP』(NYMF)
    ACORN THEATRE 410 West 42nd Street
  • 10月 4日16:00
    『結婚したいメグ MARRYING MEG』(NYMF)
    THEATRE AT ST. CLEMENTS 423 West 46th Street
  • 10月 4日20:00
    『アンダー・ファイア UNDER FIRE』(NYMF)
    THEATRE AT ST. CLEMENTS 423 West 46th Street
  • 10月 5日19:00
    『定番RSO:ライアン・スコット・オリヴァの曲と詞 RATED RSO:The Music+Lyrics Of Ryan Scott Oliver』(NYMF)
    ATA CHERNUCHIN 314 West 5436th Street
  • 10月 6日13:00
    『玩具作り THE TOY MAKER』(NYMF)
    THEATRE AT ST. CLEMENTS 423 West 46th Street
  • 10月 6日17:00
    『ハリケーン HURRICANE』(NYMF)
    THEATRE AT ST. CLEMENTS 423 West 46th Street
  • 10月 6日20:00
    『メンフィス MENPHIS』
    SHUBERT THEATRE 225 West 44th Street
  • 10月 7日13:00
    『ロレンツォ LORENZO』(NYMF)
    ACORN THEATRE 410 West 42nd Street
  • 10月 7日16:30
    『太陽の暈 RAINBOW AROUND THE SUN』(NYMF)
    TANK AT 45 STREET THEATRE 354 West 45th Street
  • 10月 7日20:00
    『バイ・バイ・バーディ BYE BYE BIRDIE』
    HENRY MILLER'S THEATRE 124 West 43rd Street
* * * * * * * * * *

 秋恒例のニューヨーク・ミュージカル・シアター・フェスティヴァル(NYMF)詣で。到着日と帰国前日は風が強く、日が落ちると少し寒くなったが、全体としては、いつものこの時期と同様に、暑からず寒からず快適。雨もほとんど降らなかった。
 観た NYMF参加作品(タイトルの後ろに NYMFと入れてある)は都合 16本。これでも総数の約半分にすぎない。いつか全作品制覇をしてみたいものだ。と思いつつ、オンやオフの新たな作品も観ておかないと突然終わっちゃうかも、という強迫観念に駆られてスケジュールに入れる。今回は、オンの新作が 2本とオフの限定公演 1本(実はスケジュールを埋めた後で、もう 1本、オフの新作が滞在 2日目から始まったのに気づいたが、遅かりし由良之介。それは次回ということで)。ひっくるめて 1週間で 19本。堪能した。もっとも、例によって、うつらうつらした瞬間も何度かあったが(笑)。

 さて、まずは NYMFを観た順に、ざっと(気がついたら、昨年秋の NYMF作品について、 [改めて別にページを取ってまとめよう] とか言って、すっかり置き去りにしていたので、今回はこれから行きます)。
 おっと、その前に、 NYMFについて触れておくと、今回が第 6回。毎年 9月から 10月にかけて(しだいに 10月中心になってきている)約 1か月、ミッドタウンの複数の小劇場(当初はダウンタウンもあったが、最近はミッドタウンのみ)で行なわれる新作ミュージカルのショウケースで、すでに他の街(あるいは国)で公演をしてきている完成度の高い舞台から、“リーディング”と呼ばれる役者の本読み+コンサート形式のものまで、仕上がり具合はさまざまだが、いずれも、この後、オフや、場合によってはオンまで目指そうという意欲にあふれた作品がずらりと並ぶ。平均して 1作品が 3〜4公演を行ない、うまく調整すれば、ほぼ全ての作品を観られるようなプログラムが組まれているようだ。
 『ナイチンゲールとサテンの女』は、いわゆる“リーディング”に近い状況の舞台(なので、この演目は無料)。お宝を追って世界を駆け巡るフィルム・ノワール風味の冒険劇(のパロディ)、といった趣で、きちんと仕上げられたら楽しいのかもと思わせないでもなかったが、いかんせん、未完成すぎ。ハーモニーもきちんと定まってない様子。ま、無料ですからね。楽曲は、なんと、リーバー&ストーラー Jerry Leiber & Mike Stoller。
 同様に“リーディング”ながら有料だった『グリーンウッド・トゥリー』は、シェイクスピア William Shakespeare の喜劇『お気に召すまま AS YOU LIKE IT』の(部分?)ミュージカル化。装置や衣装や振付がないものの、役者は完全に出来上がっていて、歌も演技も見事。
 引っ込み思案の青年が超前向きな恋人の勧めで集団セラピーに参加すると、そこに集っていたのはスーパー・ヒーローたちで……というのが『ホワットエヴァ・マン』。ヒーローもののパロディを装った自己回復の物語、といったあたりがアメリカぽい。超能力を持たない主人公が最後に事を収めてヒーローになる、というオチに到る展開は、コメディ仕立てで面白い。
 『キュア』は、これまでこの題材で成功したミュージカルを観たことのない吸血鬼もの。これも残念ながら失敗作。冒頭に 100年前の、追いつめられた吸血鬼の姿が描かれ、現代のニューヨークの流行りのクラブに移る。ここが吸血鬼たちの本拠だということは、すぐにわかる。で、後は、そこで出会った吸血鬼の女と人間の男との愛と、日陰に生きることを旨とする旧来のボス対積極的に吸血鬼の世界を広げようとする新興勢力の争いとの行方が平行して描かれるのだが、話のための話な感じで説得力に乏しい。楽曲も大仰なばかりで、いただけない。
 『モ・ファヤ』はケニアからの参加。首都ナイロビのスラムを舞台に、そこで生きる生命力溢れる人々、彼らの心の支えであるスラム出身の DJ、表向きは親密で密かにスラム再開発を目論む不動産業者、その手先のギャング、といった登場人物が。それぞれの思惑を抱えて交錯する。表情豊かで躍動感に満ちた楽曲、歌唱、演奏が素晴らしく、コミカルな狂言回しがシリアスな話を飄々と回していく演出もいい。
 音楽的にユニークだったのが『マックスはわかってる』。自閉症(“自閉的”ではなく文字通りの病状)の少年がマックスで、彼の弾く電子音の出るオモチャのキーボードと、客席最前列左端にいる音楽監督の(音源を収納した)PCだけが“楽器”。マックスのキーボードは彼の意思表示でもある(それを両親は自分に都合よく解釈してしまうが)。この変わった“楽器”編成が、ハウス・ミュージック的感触を生んで新鮮。それは、そのまま、ひんやりとした作品世界とつながってもいる。ある種の家族再生の物語だが、“心温まる”レヴェルで終わらない厳しさがある。
 『アンディ・ウォーホルは正しかった』はダンス作品(MMACは、バレエも含むダンスのスタジオを兼ねた複合劇場)。「誰もが 15分間は有名になれる」というウォーホルの発言を核に、 1968年(撃たれた年)の彼とその周辺の様子を、熱のこもったダンス表現で綴る。 60年代後半気分横溢で楽しい。
 『ルルレッド』の「R.R.R.E.D.」とは「The Real Redhaired Revolutionary Evolutionary Deflance」という組織の略称。赤毛に対する迫害に反対する革命組織で、その辺が副題の“秘密のミュージカル”ということになるのだろう。観客は R.R.R.E.D.の情宣活動に巻き込まれた形で、音楽で“赤毛革命”思想を吹き込まれる。果ては、賛同者の振りをして会場に現れたゲストの正体(スパイ!)を見破って壮絶な流血戦に。大笑いで観たが、プログラムには、ご丁寧に「Based On A True Story」と書かれていた。真偽のほどは不明(笑)。
 すぐにでもオフで上演出来そうな仕上がりだったのが『ファット・キャンプ』。内容は、『第25回パットナム郡スペリング競技会 THE 25TH ANNUAL PUTNAM COUNTY SPELLING BEE』に映画『スクール・オブ・ロック』をプラスした感じ(『〜スペリング〜』の印象的なオリジナル・キャスト、サラ・サルツバーグ Sarah Saltzberg が出演!)。肥満な高校生のための夏休みダイエット・キャンプを舞台に、陰湿なデブ差別に邁進する歪んだ精神のコーチらのいじめを克服する中で、個々に悩みを抱えた参加者たちが自信を取り戻す話は、 B級の青春映画的な面白さ。ま、あくまで B級ですが。
 『結婚したいメグ』の元は、アレグザンダー・リード Alexander Reid という人がスコットランドの 2つの民話を紡ぎ合わせて書いた劇作らしい。そのミュージカル化で、ブロードウェイ役者がずらりと揃って、下世話な表現を含みながらもシェイクスピアの喜劇を思わせる上質な仕上がり。役者の格ってやつはミュージカルでも歌舞伎でも威力を発揮するものだな、と改めて思う。
 『アンダー・ファイア』は同名映画(1983年)の舞台ミュージカル化。ニカラグアの内戦を取材するアメリカ人カメラマンが政府軍と革命軍の狭間で正義とは何かを自問する。簡単に言うと、そういう内容だが、楽曲も含め表現が説明的で、ストーリーをなぞっているという印象に終始した。
 『定番RSO:ライアン・スコット・オリヴァの曲と詞』は、タイトル通りスコット・オリヴァの書いた楽曲のコンサート。いくつかのミュージカル作品のために書かれた楽曲のようで、一応、筋を追った構成。ロック的なビート感と従来の劇場音楽なハーモニーがうまく融合していて、なかなかに魅力的だった。ぜひ完成舞台を観てみたい。
 今回、最も感銘を受けたのが『玩具作り』。過去(ナチス占領下のチェコの村リディツェ)と現在(その村で作られた玩具に導かれてチェコにやって来るアメリカ人女性)の出来事を交錯させ、少しずつ結びつけていく、そのミステリー的手法(脚本・演出)が丁寧で、ドラマの鍵になる玩具がミュージカル的にも十二分に生かされていて見事。オペラ的楽曲も作品のテイストに合って、こちらの心に深く届く。リディツェの惨劇(これを観て初めて知った)をことさらに告発するのではなく、人と人とのつながりを見つめ直すような視線で描かれているのも素晴らしい。
 1938年、“被害に遭うはずのない場所”ニュー・イングランドをハリケーンが襲い、 600人の死者を出す大災害となった。その背景には、偏狭な常識に囚われる予報組織のミスがあった。というのが『ハリケーン』のドラマ。災害に巻き込まれる人々を群像劇として描き、ハリケーンの接近でサスペンスを増していく、という演出で、子供たちの乗ったスクールバスが津波に飲まれるクライマックス等、最小限のセットの中で工夫を凝らしているのはわかるが、いかんせんドラマの芯が弱いので、感情移入が難しい。最終的には、そういうハリケーン被害があったのか、ということで終わってしまった。
 『ロレンツォ』は、モーツァルトのオペラ、『フィガロの結婚 Le nozze di Figaro』『ドン・ジョヴァンニ Don Giovanni』の作詞を手がけたイタリアの詩人、ロレンツォ・ダ・ポンテ Lorenzo Da Ponte の半生を、彼が生存中のニューヨーク(彼はニューヨークにも渡っている)の劇場で上演する劇として描く、という入れ子構造なのだと思うが、こちらの理解力不足のせいもあってか、なんだか曖昧。奔放に生きたロレンツォは魅力的に見えたのだが……。
 『太陽の暈』は、まず、マシュー・アルヴィン・ブラウン Matthew Alvin Brown が 2006年に出した同名のアルバムがあり、それの映像化があって、今度の舞台化、という段取りで出来上がったらしい。楽曲作者でもある、そのブラウン自身が主演する、破滅型ロック・ミュージシャンの物語。とは言っても、基本はバンドのライヴの形式で、しかしながら同様のスタイルの『ヘドウィグ・アンド・ジ・アングリー・インチ HEDWIG AND THE ANGRY INCH』ほどのひねりがなく、意外性に乏しいので、やや退屈した。

 オンには 2本の新作が登場。
 09-10年シーズンのオリジナル・ブロードウェイ・ミュージカル第 1号となったのは『メンフィス』。楽曲は魅力的だが、残念ながらストーリーに難がある。
 50年代のメンフィスで、黒人音楽好きの白人(主人公)が、黒人オンリーのクラブに出入りして信用を得、黒人たちの楽曲を積極的に流して DJとして成功し、愛し合った黒人女性歌手と結婚する、と話がトントン拍子に進む感じと、その結果として浮かび上がってくる保守的な白人からの強い反発や黒人の側の猜疑心といった人種問題の、かなりシリアスな感じとが、どうもチグハグ。前者の感じで行くのなら、ひねったコメディにした方がいいだろうし、後者のシリアスさを取るのなら、前者の運びは余りにお気楽すぎる。さらに言うと、チャド・キンボール Chad Kimball の演じる主人公が、表情にヴァリエイションがないこともあって、どこか病的に見えるのもマイナス。長く続かない気がするが、どうか。
 ブロードウェイでのリヴァイヴァルは約 50年ぶり(初演 1960年)となる『バイ・バイ・バーディ』は、凝ったセットの効果もあって、手堅い仕上がり。
 しかしながら、 50年代のアメリカ白人中流階級の価値観で覆われた舞台は、(エルヴィス Elvis Presley 入隊騒ぎの)パロディだという前提があったとしても、現代の感覚から言うと、お行儀が良すぎてズレてる感じがする。オリジナル・キャストでディック・ヴァン・ダイク Dick Van Dyke とチタ・リヴェラ Chita Rivera が演じた役を(その 2人ほど)踊れない 2人(ジョン・ステイモス John Stamos とジーナ・ガーション Gina Gershon)がやっているのも期待外れで残念。ビル・アーウィン Bill Irwin が献身的な体技で 1人気を吐いている。ラウンダバウトの製作なので、例によっての期間限定公演です。

 残る 1本がオフの『ブラインド・レモン・ブルーズ』。 07年に短期間上演されたことがあるらしい。
 盲目のブルーズ・マン、ブラインド・レモン・ジェファーソン Blind Lemon Jefferson が 1948年に行なったという最後の録音現場を舞台とし、その時共演したレッドベリー Leadbellyや、その他の歌手たちも登場して、ジェファーソンの半生を振り返るという趣向だが、ほとんどライヴ・コンサートの様相。到着日夜の観劇だっただけに、失礼ながら、いささか眠くなった。

 次回ニューヨークへは本日出発(笑)。

(11/17/2009)

Copyright ©2009 MIZUGUCHI‘Misoppa’Masahiro

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