Old Globe Theatre in Balboa Park, San Diego 4/7/2008

[ゆけむり通信Vol.77]

4/2-4/8/2008


  • 4月 2日20:00
    『パッシング・ストレンジ PASSING STRANGE』
    BELASCO THEATRE 111 West 44th Street
  • 4月 3日20:00
    『ジプシー GYPSY』
    ST. JAMES THEATRE 246 West 44th Street
  • 4月 4日20:00
    『ケイタード・アフェア A CATERED AFFAIR』
    WALTER KERR THEATRE 219 West 48th Street
  • 4月 5日11:00
    『子豚と熊とがらがらどん PIGS, BEARS AND BILLY GOATS GRUFF』
    NEW VICTORY THEATER 209 West 42nd Street
  • 4月 5日15:00
    『アディング・マシーン ADDING MACHINE』
    MINETTA LANE THEATRE 18 Minetta Lane
  • 4月 5日20:00
    『クライ・ベイビー CRY-BABY』
    MARQUIS THEATRE 1535 Broadway
  • 4月 6日15:00
    『南太平洋 SOUTH PACIFIC』
    VIVIAN BEAUMONT THEATRE at Lincoln Center
  • 4月 6日19:00
    『イン・ザ・ハイツ IN THE HEIGHTS』
    RICHARD RODGERS THEATRE 226 West 46th Street
  • 4月 8日19:00
    『ダンシング・イン・ザ・ダーク DANCING IN THE DARK』
    OLD GLOBE THEATRE San Diego, California
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 ブロードウェイで春の新作を全部観て、その後、サンディエゴに飛んで(個人的に最も重要な)新作を観る。……というシナリオは完璧なはずだったのだが、 3月半ばになって、『グローリー・デイズ GLORY DAYS』が今シーズンのブロードウェイ入りを表明。プレヴュー開始が 4月 22日とあっては、今回の渡米では全く観られないことに。ま、致し方ない。サンディエゴの演目の上演が 4月 20日までなので、そもそも両立はむずかしかった、と自分を納得させ、とにかく機上の人に。
 4月初めのニューヨークからサンディエゴという移動は、かなり着るものに気を遣うことになるかと思っていたが、ニューヨークはさほど寒くなく、逆にサンディエゴはさほど暑くなく、天気予報を信じての最小限の衣類で済んだ。ホッ。一年を通して気候が安定しているらしいサンディエゴはもとより、ニューヨークでも比較的好天に恵まれ、またしても快適に過ごせたのは、やはり日頃の行ないのおかげか(笑)。

 まずは、今回観た中で、 07-08年シーズンのトニー賞候補の権利を有する(って単にオープン時期の話ですが)オン作品 6本の感想を、観た順に。
 『パッシング・ストレンジ』はオフのパブリック・シアターからの移行作で、オフ上演時は未見。プレイビル・オンラインではジャンルが「None」となっているので、始まるまではコンサート的な様相なのかとも思っていたが、 2幕構成の立派なミュージカル。音楽に目覚めたアフリカン・アメリカンの若者が 70年代前半にロスアンジェルス、アムステルダム、ベルリンと彷徨していく話は、脚本・楽曲を手がけたミュージシャン、ステュー Stew の自伝らしい。そのステューはナレーター役として舞台に登場。ギターを弾きながら歌う。残りのバンド・メンバー 4人も舞台上。役者は男女 3人ずつの 6人。即興劇風の自在な語り口が、ブルーズ+ゴスペル+ロックごった煮的音楽と相まって、熱い舞台を作り出す。豪華さは皆無だが、一見の価値あり。
 昨年 7月にシティ・センターで観たパティ・ルポン Patti LuPone 版『ジプシー』が、ほぼ、そのまんまの形でブロードウェイ入り。もちろん、ルイーズ(シプシー・ローズ・リー)役のローラ・ベナンティ Laura Benanti も一緒。『ジプシー』は、歌舞伎で言えば十八番。時代を超えて再演に耐えうる演目だが、ある種の冷徹さを感じさせた 03年のサム・メンデス Sam Mendes 演出版の後に、同作品の脚本家、老アーサー・ローレンツ Arthur Laurents が、おそらく生涯最後となるであろう演出を、もう 1度手がけたあたりに、なにがしかの意図を感じる。ママ・ローズが 1人残る幕切れが印象的。
 “結婚式騒動”とでも訳すべき『ケイタード・アフェア』のネタ元は、 1955年の同名 TVドラマと、タイトルの冠詞を「the」に変えての翌年の映画化作品。脚色を手がけたのは『ヘアスプレイ HAIRSPRAY』のママ役でおなじみのハーヴェイ・ファイアスタイン Harvey Fiersteinで、重要な役で出演もしている。ブルックリンで慎ましく暮らす家族間の、娘の結婚式を巡って浮かび上がる思わぬ軋轢という話の渋さ、母親役フェイス・プリンス Faith Prince、父親役トム・ウォパット Tom Wopat、娘役レズリー・クライツァー Leslie Kritzer、それにファイアスタインらの濃密な演技のやりとり、等、全体の感触は『グレイ・ガーデンズ GREY GARDENS』に近いかも。 53年のメモリアル・デイ(戦没将兵追悼記念日)という設定の意味が「アッ!」とわかる瞬間があり、そこから作品が強烈な今日性を持ち始める。ヒットはしないだろうから、早めに観ておきたい。
 『クライ・ベイビー』は、『ヘアスプレイ』に次ぐジョン・ウォーターズ John Waters 映画の舞台ミュージカル化。脚本家やプロデューサーもダブる。音楽的に、『ヘアスプレイ』が 60年代 R&Bへのオマージュなら、こちらは 50年代ロックンロール。そこが『グリース GREASE』とカブって、しかも『グリース』を超えていないのが物足りない。ドラマの芯が『ヘアスプレイ』ほどガツンとしていないのも弱い。ただし、ダンスには観るべきものがある。
 ロジャース&ハマースタイン Richard Rogers & Oscar Hammerstein U の『南太平洋』の初演は 1949年。 49-50年シーズンのトニー賞をほぼ総ナメにしているが、その背景には、“時代の気分”と合っていた、ということもあるのではないか。太平洋戦争時の米軍の滞在する南太平洋の小島での恋物語は、朝鮮戦争(50年 6月 25日〜)前夜のアメリカの人々には、どのように映っただろう。ともあれ、ロジャース&ハマースタインの作品が時代と共に古びることはこちらで少し書いたが、この舞台も例外ではない。その点、その朝鮮戦争が終了する直前の時代を描いた『ケイタード・アフェア』の生々しさと対照的。演出のバートレット・シェア Bartlett Sher はじめ、音楽監督、装置、衣装等の主要スタッフや、ケリー・オハラ Kelli O'Hara、マシュー・モリソン Matthew Morrison らの主要キャストが、同じリンカーン・センターの『ライト・イン・ザ・ピアッツァ THE LIGHT IN THE PIAZZA』組。前作同様の繊細で美しい舞台を作り出していて、それは見応えがある。
 昨年 2月に観た『イン・ザ・ハイツ』がオンで再オープン。基本的な感想はオフの時と変わらないが、前回よりもさらに深い感銘を受けたのは、オンに移ったことによるカンパニーのモチベーションの高さゆえか。この作品がトニー賞を獲っても、僕は驚かない。必見。

 今回、オフは 2本。
 子供向け劇場で演じられた『子豚と熊とがらがらどん』は、 3人の役者と 1人のピアニストが、舞台上の不思議な家の中で、日常的な小道具を使って、いくつかの童話を即興劇的に演じる作品。オーストラリアから来たパッチ・シアター・カンパニーのメンバーが、子供たちの反応を見ながら嬉々として演じていた。
 『アディング・マシーン』=「加算機」。 25年間、ひたすら読み上げられる数字を加算することを生業としてきた男が、加算機の導入で馘首される。そして起こる悲(喜?)劇。近代化が急速に進む時代に労働者側からの視点で書かれたエルマー・ライス Elmer Rice の戯曲(1923年)が原作で、ドイツ表現主義的な陰影のくっきりした照明の中、デフォルメされた表情と動きの演技が展開される。そこにオペラ的な楽曲と迫力のある歌唱が加わり、舞台は異様な魅力を放つ。救いのない話だが、不思議なカタルシスがあって心に残る。力作。

 さて、サンディエゴまで足を延ばして観た『ダンシング・イン・ザ・ダーク』は、このサイトの名前の由来でもある MGM映画『バンド・ワゴン THE BAND WAGON』の舞台化。基本設定はそのままながら、細部はかなり変えてある。まあ、誰もフレッド・アステア Fred Astaire にはなれないのだから、それも当然か。
 主要キャストにはブロードウェイの現役がズラリ。中で、楽曲作者夫妻の妻リリー役(映画ではナネット・ファブレイ Nanette Fabray。 11年前に舞台で観ました!)のベス・リーヴェル Beth Leavel が、全体を引っ張る熱演。傑作、と言うわけにはいかないが、それなりに楽しんだ。ブロードウェイにたどり着けるかは「?」。

 次回の渡米は、やっぱりトニー賞前に、か?。

(5/5/2008)

Copyright ©2008 MIZUGUCHI‘Misoppa’Masahiro

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