[ゆけむり通信Vol.74]

9/18/2007
『素晴らしい女性たちが素晴らしき女性ベティ・コムデンを讃える GREAT WOMEN SALUTE A GREAT WOMAN BETTY COMDEN』


思いがけない豪華メンバーのショウ

 『オペラ座の怪人 THE PHANTOM OF THE OPERA』をやっているマジェスティック劇場の前からタイムズ・スクエアの方向に伸びている 3〜 4人幅の列の長さは、ざっと 100メートルぐらいだろうか。これならイケるかも。そう思って並んだのが、開演予定から約 2時間前の正午過ぎ。当日の朝、プレイビル・オンラインをチェックして気づいた、同劇場で開かれる無料イヴェント、『素晴らしい女性たちが素晴らしき女性ベティ・コムデンを讃える』を観るためだ。
 最終的に列がどこまで伸びたのかは確認する余裕もなかったが、定刻の午後 2時直前に開場して無事に入場した僕が 2階前寄りの中央に席を確保出来たことから推して、かなりの人が入ることが出来たのではないか。
 そんな様子だったので、このイヴェントの開催は当日朝に初めて発表されたのかと思っていたが、後で調べたところによれば、業界ニュースのようなサイトでは、それなりに告知されていたようで、そう考えると、 2時間前に並んで観られたのはラッキーだったのかもしれない。なにしろ、出演者の顔ぶれが豪華だったから。

 ベティ・コムデン Betty Comden が亡くなったのは昨年の 11月 23日。享年 89歳。 02年 10月 23日に亡くなったアドルフ・グリーン Adolph Green とのコンビで生み出した名作は、舞台に映画に数知れず(今回の公演のサブタイトルに「IN THE WORDS OF COMDEN & GREEN とあるように、彼らの担当は脚本や作詞)。いちいち挙げないが、その内の 1つに、このサイトの名前の由来でもある MGM映画『バンド・ワゴン THE BAND WAGON』があるのは、ご承知の通り。
 その MGMも名を連ねる今回の公演のスポンサーは、プログラム記載順に、ベティ・コムデン一家(The Family of Betty Comden と書いてある)、 ASCAP(音楽著作権管理団体)、レナード・バーンスタイン・オフィス The Leonard Bernstein Office, Inc.、次が MGMで、最後がシューバート・オーガニゼイション The Shubert Organization。プロデュースと演出には、作詞家のデイヴィッド・ジッペル David Zippel の名前がある。
 具体的な金の流れやイヴェントの仕切りについては知識がないので全くわからないが、今回のイヴェントに関しては、シヴィアな業界関係者をして損得抜きでトリビュート公演を開かせるほどの尊敬をベティ・コムデンが得ていたのだ、と素直に思いたい。事実、そんな敬意と愛情に満ちたイヴェントだった。

 出演者は次の通り。

 Lauren Bacall
 Beth Leavel, Karen Ziemba, Stephanie J. Block
 Lucie Arnaz
 Christine Ebersole
 Phyllis Newman
 Amanda Green
 Judith Blazer, Mary Testa
 Carolee Carmello
 Ann Hampton Callaway, Liz Callaway
 Lillias White
 Leslie Uggams
 Elaine Stritch
 Lypsinka
 Barbara Cook

 ピアニストとベーシストが出てきた後、いきなりローレン・バコールが出てきて、自己紹介もなしに亡きコムデンを惜しむ挨拶。以降、司会者なしで、誰も出演者や楽曲を紹介したりしないのがカッコいい。
 残念ながらバコールは歌わないが、次が「New York, New York」(『オン・ザ・タウン ON THE TOWN』)で、歌い踊る(といっても簡単な振りだが)トリオに、リーヴェル、ジエンバの『クレイジー・フォー・ユー CRAZY FOR YOU』組が並んでいるのがうれしい(そう言えば 2人ともトニー賞女優だ)。もう 1人のブロックは『ボーイ・フロム・オズ THE BOY FROM OZ』でライザ・ミネリ Liza Minnelli を演じてた人。
 次に出てくるルーシー・アーネズがルシル・ボール Lucille Ball とデジ・アーネズ Desi Arnaz の娘とは知らなんだ。歌は、男に嫌われる方法を伝授する「One Hundred Easy Ways(to Lose a Man)」(『ワンダフル・タウン WONDERFUL TOWN』)。コメディエンヌの血筋ってことですか。
 4番目には今年のトニー賞女優エバーソールが登場。歌うのは、『特急二十世紀号 ON THE TWENTIETH CENTURY』から「Our Private World」。もはや大女優の貫禄――だが、さらなる大女優が、この後、まだまだ登場。
 ニューマンはアドルフ・グリーン未亡人。で、女優。自身が出演してトニー賞を得た『地下鉄は眠るために SUBWAYS ARE FOR SLEEPING』から「I Was a Shoo-In」を歌った後、スクリーンに映し出されていた出演時の若い自分の艶かしい写真を見て、「何が起きたの?」とコメント。さらに、グリーンにとって自分は(コムデンとは別の)「もう 1人の女」だったと言って笑いを獲る。そして次の出演者を“グリーンとの最初の共同作品”と紹介。
 出てくるアマンダ・グリーンはグリーンとニューマンの娘で、作詞家(『ハイ・フィデリティ HIGH FIDELITY』)。歌うは「If You Hadn't, But You Did」(『通路から二席目 TWO ON THE AISLE』)。
 続くブレイザー(『ラヴミュージック LOVEMUSIK』他)とテスタ(『ザナドゥ XANADU』他)が歌うのは、『ワンダフル・タウン』で最も有名な、姉妹のユーモラスなデュオ曲「Ohio」。
 いつもアッパーなカーメロは、『ベルズ・アー・リンギング BELLS ARE RINGING』のナンバー「I'm Going Back」を、大きなアクションを交えて一際アッパーに歌って喝采を浴びる。
 キャラウェイ姉妹は『ピーターパン PETER PAN』から「Neverland」。
 足を怪我していたらしく、車椅子で出てきたのがホワイト。歌うは『オン・ザ・タウン』から「I Can Cook Too」。
 『ハレルヤ・ベイビー! HALLELUJAH, BABY!』の「My Own Morning」を歌うのは、オリジナル・キャストだったアガムズ。
 でもって、ストリッチの登場。相変わらず元気。映画『いつも上天気 IT'S ALWAYS FAIR WEATHER』でジーン・ケリー Gene Kelly がローラー・スケートを履いて踊りながら歌った「I Like Myself」を、思いっきり自分流に歌って見事。
 リップシンカは初めて観たが、女装の(このイヴェント唯一の)男性出演者(伴奏者を除く)。名前が表わすように、“口パク”芸が売りで、やはり『いつも上天気』からのナンバー「Thanks a Lot, But No Thanks」(ドロレス・グレイ Dolores Grey の歌)に合わせて“口パク”って踊る。
 大トリは大貫禄のクック。マイクなしで、『オン・ザ・タウン』のナンバー「Some Other Time」を歌い上げる。
 そして最後が、全員再登場しての「Make Someone Happy」(『ド・レ・ミ DO RE MI』)。客席も、みんな歌ってました。

 ということで、あっさりしていると言えば、あっさりしてる。そこが、また気持ちが籠もってる感じで、とても素敵なショウでした。

(11/20/2007)

Copyright ©2007 Masahiro‘Misoppa’ Mizuguchi

[ゆけむり通信Vol.74 INDEX]


[HOME]