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[ゆけむり通信Vol.70]

11/21-11/26/2006


  • 11月21日20:00
    『90分で世界を救い真実の愛を見つける方法 HOW TO SAVE THE WORLD AND FIND TRUE LOVE IN 90 MINITES』
    NEW WORLD STAGES(STAGE 5) 340 West 50th Street
  • 11月22日14:00
    『カンパニー COMPANY』
    BARRYMORE THEATRE 243 West 47th Street
  • 11月22日20:00
    『ハイ・フィデリティ HIGH FIDELITY』
    IMPERIAL THEATRE 249 West 45th Street
  • 11月23日20:00
    『コーラスライン A CHORUS LINE』
    SCHOENFELD THEATRE 236 West 45th Street
  • 11月24日14:00
    『素晴らしき哉、人生! A WONDERFUL LIFE』
    PAPER MILL PLAYHOUSE Millburn, New Jersey
  • 11月24日20:00
    『春のめざめ SPRING AWAIKING』
    EUGENE O'NEILL THEATRE 230 West 49th Street
  • 11月24日23:00
    『イーヴィル・デッド EVIL DEAD』
    NEW WORLD STAGES(STAGE 1) 340 West 50th Street
  • 11月25日11:00
    『グリンチにクリスマスを盗まれた! DR. SEUSS' HOW THE GRINCH STOLE CHRISTMAS!』
    HILTON THEATRE 213 West 42nd Street
  • 11月25日14:00
    『マーティン・ショート 有名な僕 Martin Short: FAME BECOMES ME』
    JACOBS THEATRE 242 West 45th Street
  • 11月25日20:00
    『フロイドとクレア西部の空の下で FLOYD AND CLEA UNDER THE WESTERN SKY』
    PLAYWRIGHTS HRIZONS 416 West 42nd Street
  • 11月26日15:00
    『メリー・ポピンズ MARY POPPINS』
    NEW AMSTERDAM THEATRE 214 West 42nd Street
  • 11月26日13:00
    『フォービドゥン・ブロードウェイ:特別犠牲者編 FORBIDDEN BROADWAY: Special Victims Unit』
    47TH STREET THEATER 304 West 47th Street
* * * * * * * * * *

 昨シーズンのブロードウェイは新作の登場時期がバラバラで、渡米時期に迷ったが、今シーズンは秋の新作がまとめて登場。ならば一気に、と、『ハイ・フィデリティ』のプレヴュー開始に合わせて日程を組んだ。
 『アップル・トゥリー THE APPLE TREE』のプレヴュー開始の直前ではあるが、こちらは 3月までの期間限定公演なので次でも大丈夫だろうと踏んだのだが、前回訪米時にチケットを買ってあった『時代は変わる THE TIMES-THEY ARE CHANGIN'』が直前に終了してしまうという間の悪さ(余談だが、同作品終了が 19日。翌 20日にはシティ・センターでボブ・ディラン Bob Dylan のコンサートが行なわれている。どちらも観たかった!)。やはりチケットを買ってあったオフの新作『ミミ・レ・ダック MIMI LE DUCK』は、その公演がキャンセルになり(22日の『フォービドゥン・ブロードウェイ』は、その代案)、翌週にはクローズして、こちらも観られなくなってしまった。間わずか 2か月でも、こんなことになる。むずかしいものだ。

 さて、ブロードウェイの新登場作品は、前述の『ハイ・フィデリティ』の他に、『春のめざめ』、今回はロンドン発としてやって来たディズニーの『メリー・ポピンズ』、リヴァイヴァルの『カンパニー』『コーラスライン』、期間限定公演の『マーティン・ショート 有名な僕』『グリンチにクリスマスを盗まれた!』の 7本。ジュークボックス・ミュージカルが 1本もないのが最近では珍しい。

 『ハイ・フィデリティ』は、同名映画の舞台ミュージカル化であること以外にも、『ウェディング・シンガー THE WEDDING SINGER』と、いくつかの共通点があって似ている。まず、全体にパロディ色が濃いこと(既聴感のある楽曲の挿入から、なりきり有名人が登場するところまで、よく似ている)。主人公がロックを中心とした音楽愛好家であること。主人公が恋人を失ってから(相手が替わるか替わらないかの違いはあるが)再び獲得するまでの話であること。ブロードウェイらしい豪華さはセット転換の見事さのみの、やや小粒な作品ではあるが、適度にギャグも盛り込まれ、そこそこ楽しい。が、『ウェディング・シンガー』が早々にクローズした(注)ことを考えると、観るならお早めに、の舞台か。……とか書いてる内にクローズしちゃいました(笑)。
 『春のめざめ』は、ドイツの劇作家フランク・ヴェデキント Frank Wedekind が 19世紀末に発表した戯曲のミュージカル化で、ストレート・プレイとしては日本でも上演されているようだ。内容は、キリスト教原理主義的世界観が支配する抑圧的な社会(舞台は戯曲が書かれた当時のドイツ)で性に目覚める少年少女たちの悲劇、といったものだが、このミュージカル作品の特徴は、そんな大昔の話なのに、少年少女が突然、内ポケットからハンドマイクを取り出してロック的な激しい歌で心情吐露を始めるところにある。そんなわけで、印象は 19世紀版『レント RENT』(楽曲の印象から言えば、 19世紀版『トミー TOMMY』と言えなくもない)。プレヴュー中ながら、やたらに歓声を上げる“その手”の若い客も付いているようで、その辺がプロデューサー側の作戦に思えて個人的にはちょっと引いたのだが、それとは別に、この古い戯曲を持ち出してきた理由がイマイチ判然とせず、中途半端な気分が残った。ただし、楽曲には魅力がある。
 『メリー・ポピンズ』の印象は、こちらに書いたロンドン版と変わりない。「仕掛けにお金をかけてはいるが、それだけではなく、やるべきことはきっちりやった手堅い作り」。しかしながら、ディズニー作品特有の“誰が演じても同じ”的匿名性が全体に漂っていて、何度観てもノリきれない舞台ではある。
 『カンパニー』は、イギリスの演出家ジョン・ドイル John Doyle による、楽器演奏も出演者が兼ねるソンダイム Stephen Sondheim 作品リヴァイヴァル第 2弾。昨年秋に観た第 1弾『スウィーニー・トッド SWEENEY TODD』では役者が楽器を演奏する必然性が感じられなかったが、今回は違った。と言うのも、『カンパニー』は(会話の中身は具体的だが作品全体としては)コンセプチュアルな会話劇だからで、役者が楽器を携えても違和感がない。さらには楽器演奏がセリフとは別種の感情表現にも見え、逆に作品のイメージが膨らんだところもあった。歌いながら楽器も演奏するというサーヴィス満点のナンバーまであって、これは大ウケ。
 もう 1本のリヴァイヴァル、『コーラスライン』は、ニューヨークを訪れた始めた頃に初演版がロングラン中だったにもかかわらず観ずじまいに終わった 1本。四季版も観たことがなく、舞台版はこれが初見。関係者の証言集「ブロードウェイ物語―『コーラスライン』の舞台裏」を読んでいたせいもあるだろうが、とにかく演出の苦心が手に取るようにわかる舞台で、ギリギリのところで作品として成立している印象(初演版の関係者が作った今回の舞台は、おそらく初演版にかなり近い)。その出自の通りに、スケールは明らかにオフのもの。これがブロードウェイで大当たりした背景には、やはり時代の空気のようなものがあったのだろうと思わずにいられない。しかし、楽曲は今なお魅力があり、 CDで聴いているだけでは真価はわからない、という当然のことに改めて気づかされた。今度こそ正真正銘のオリジナル・キャスト主演となったシャーロット・ダンボワーズ Charlotte d'Amboise がハマり役で熱演。
 マーティン・ショートのワンマン・ショウ『マーティン・ショート 有名な僕』は、オープニング・ナンバーの内容からして最近ブロードウェイで流行っているスターのワンマン・ショウに対するからかいになっているという具合で、自己韜晦に満ちている。タイトル通り(このタイトルも自己韜晦ですね)有名になるまでの自分史を、“持ち芸”を絡めたスケッチとして語っていく、というオーソドックスな構成。芸達者な脇役にも助けられて、破綻のない舞台には仕上がっている。途中、客を舞台に上げてのツッコミなどでスタンダップ・コメディとしての本領も発揮するが、元々が変な脇役として魅力を発揮する人だと思うので、ブロードウェイでのワンマン・ショウでは、求心力不足は否めない。
 『グリンチにクリスマスを盗まれた!』は、(アメリカ人には)おなじみのドクター・スースの“悪い”キャラクター、グリンチが、その意図とは逆に子供たちに好かれてしまうという、ホリデイ・シーズン向けの“心温まる”物語(ただしチケットの値段は高いので懐は寒くなる)。あくまで“お子様向き”だが、それでも手を抜かないのは、この国のエンターテインメントの伝統。装置もそれなりに凝っていて、充分に楽しめる。

 オフで最も面白かったのは『フロイドとクレア西部の空の下で』。半ば世捨て人のようになっている酔いどれの中年シンガー・ソングライターと、プロの歌手を目指す孤独な少女とが、歌を通じて心を通わせ、愛し合うようになる。そんな一見ありがちなラヴ・ストーリーが、固定したセットにもかかわらず、 2人の役者(フロイド役/デイヴィッド・ケイル David Cale、クレア役/メアリー・フェイバー Mary Faber) の歌の力でロード・ムーヴィーのごとく興味深く展開していく。舞台上にいてカントリー風味の渋い演奏を聴かせるバンドも素晴らしい。
 『90分で世界を救い真実の愛を見つける方法』は、国連本部の売店に勤める気弱な男が、ひょんなことからテロリストの陰謀(!)に気づき、それを阻止して世界を守り、恋人も獲得するという、まあ描きようによってはサスペンスフルなアクションものにもなりかねない話をコミカルに描いた作品。最後には格闘することになる主人公とテロリストを同じ役者が演じるなど、オフらしいアホらしさに満ちていて、けっこう笑えた。
 アホらしさでは負けていないのが『イーヴィル・デッド』。呪いのかかった別荘のバンガローで起こる血の惨劇! 要するに“スプラッター・ホラー”のパロディで、あらかじめ配られた簡易のレインウェアを着た前列の客に向かって役者が血糊を吹きかける等、悪ノリがエスカレートしていくタイプの舞台。いろいろと面白いアイディアもあるが、演出がやや乱暴か。その辺、ある意味ドラッギーと言えなくもない。
 ニュージャージーのペイパーミル・プレイハウスで観た『素晴らしき哉、人生!』は、アメリカではクリスマス・シーズンには風物詩的に必ず TVでオンエアされるという同名映画(映画の方には頭に「IT'S」と付くが)の舞台ミュージカル版。楽曲も演出もオーソドックスで手堅く、そこそこ楽しませてくれるが、映画版の“あの”ロマンティックな雰囲気は残念ながら再現出来ていない。
 代案として観た『フォービドゥン・ブロードウェイ:特別犠牲者編』は、同ヴァージョンとしては 2度目だが、前回から 1年半以上経っているので、もちろん各所にマイナーチェンジが施されていて、大いに笑った。しかし、ホントにブロードウェイ全体が弱ってくると、この作品もつらくなるだろう、と妙な心配もした。

 次回の渡米は 2月の予定。

(12/31/2006)


 (注)正確には「早々にクローズを発表した」でした。同作品のクローズは昨年大晦日で、『ハイ・フィデリティ』のクローズより後でしたから。クワストさんのご指摘で気づきました。クワストさん、ありがとうございます。

(1/2/2007)

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