Daffy Square without tkts 9/19/2006

[ゆけむり通信Vol.69]

9/18-9/24/2006


  • 9月18日20:00
    『ローンチェア・マン飛ぶ FLIGHT OF THE LAWNCHAIR MAN』(NYMF)
    37 ARTS THEATRE 450 West 37th Street
  • 9月19日13:00
    『ホワイト・ノイズ WHITE NOISE』(NYMF)
    TBG THEATRE 312 West 36th Street
  • 9月19日19:00
    『セヴン・ギターズ SEVEN GUITARS』
    PETER NORTON SPACE 555 West 42nd Street
  • 9月20日13:00
    『ライムライトの影で BEHIND THE LIMELIGHT』(NYMF)
    THEATRE at ST. CLEMENTS 423 West 46th Street
  • 9月20日17:00
    『スモーキング・ブルームバーグ SMOKING BLOOMBERG』(NYMF)
    THEATRE at ST. CLEMENTS 423 West 46th Street
  • 9月20日20:00
    『ウォーレンバーグ WALLENBERG』(NYMF)
    NEW WORLD STAGES 340 West 50th Street
  • 9月21日13:00
    『チョコレートの木 THE CHOCOLATE TREE』(NYMF)
    SAGA THEATER 711 7th Avenue
  • 9月21日15:00
    『エンジェルズ ANGELS』(NYMF)
    DUKE THEATER 229 West 42nd Street
  • 9月21日20:00
    『シャウト! SHOUT! The Mod Musical』
    JULIA MILES THEATER 424 West 55th Street
  • 9月21日23:00
    『マクガフィン? THE MACGUFFIN?』(NYMF)
    SAGA THEATER 711 7th Avenue
  • 9月22日13:00
    『カンバーランド・ブルーズ CUMBERLAND BLUES』(NYMF)
    THEATRE at ST. CLEMENTS 423 West 46th Street
  • 9月22日16:00
    『デスペレイト・メジャーズ DESPERATE MEASURES』(NYMF)
    45TH ST. THEATRE 354 West 45th Street
  • 9月22日20:00
    『グーテンベルク! GUTENBERG! The Musical!』(NYMF)
    SAGA THEATER 711 7th Avenue
  • 9月22日23:00
    『子供のためのオイディプス OEDIPUS FOR KIDS!』(NYMF)
    SAGA THEATER 711 7th Avenue
  • 9月23日13:00
    『キングダム KINGDOM』(NYMF)
    TBG THEATRE 312 West 36th Street
  • 9月23日17:00
    『戦士 WARRIOR』(NYMF)
    THEATRE at ST. CLEMENTS 423 West 46th Street
  • 9月23日20:00
    『ドラムストラック DRUMSTRUCK』
    NEW WORLD STAGES 340 West 50th Street
  • 9月24日13:00
    『ランチ LUNCH』(NYMF)
    45TH ST. THEATRE 354 West 45th Street
  • 9月24日20:00
    『河の終わり RIVER'S END』(NYMF)
    TBG THEATRE 312 West 36th Street
  • 9月24日20:00
    『恋ならいいのに THIS COULD BE LOVE』(NYMF)
    SAGA THEATER 711 7th Avenue
* * * * * * * * * *

 昨年同時期に観て回って楽しかった“ニューヨーク・ミュージカル・シアター・フェスティヴァル NEW YORK MUSICAL THEATRE FESTIVAL(NYMF)”を目的に、出来るだけ多く観ようと出かけた 1週間のニューヨーク旅行。で、まあ、いろいろあったのだが、その辺はこちらで。フェスティヴァル自体は昨年以上の充実を見せていた。
 ともあれ、気候については「週末に少し雨が降ったものの、天候はほぼ良好で」という前回(4月)同様の快適さ。今回のようなハシゴの多い時には、天気に恵まれるとホントに助かる。

 昨年同様、フェスティヴァル参加作品にはタイトルの後に(NYMF)と付けておいた。まずは、それらの作品から。
 『ローンチェア・マン飛ぶ』は、 30歳を過ぎても飛行機乗りに憧れるイノセントな男が、唯一の理解者である恋人の協力で、風船を付けた庭用の椅子で空を飛び、大騒ぎになる話。コミカルなファンタジーとして描いているが、全体を覆うのは、異質な人間の存在を許さない社会(共同体や国家)の狭量さを告発する精神だ(今回の NYMFには、趣こそ違うが、こうした、全体主義に通じる不寛容さや差別感に対する反発を表現したものが多かった)。チープさを逆手にとった小道具のアイディアが面白く、オーソドックスな楽曲も悪くなかった。
 『ホワイト・ノイズ』は、人種差別的主張の歌で人気を獲得していく白人グループの物語。中西部の田舎町でフォーク・デュオとして細々と歌っていた姉妹が、スカウトされて都会に出る。キリスト教原理主義真っ只中で育った彼女たち(特に姉)は、自分たち白人が貧しいのは黒人とユダヤ人のせいだと信じている(その視野にアラブ人やアジア人は入ってこないほど彼らは狭い世界で生きてきたのだ)。男 2人を加えた“ホワイト・ノイズ”(グループの名)は現代的な装いの楽曲(ヒップホップ系。したがって、過激な歌詞も不自然でなくなる)をヒットさせていくが、一方で強い反発も生み、騒ぎが起きて死者が出たりする。グループを離れようとするメンバーも出てくるが、結局は狂信的なパワーに流され、グループは存続していく。脚本・構成に弱さはあるが、例えば中西部で上演された場合、反感を買うどころが、逆説としてではなくストレートな白人応援歌と受け取られかねないかも、と思わせる“どっちに転んでもおかしくない”スレスレ感があり、この怖さは観客を巻き込む演劇ならではのものだと思った。
 タイトルから想像がつくように、『ライムライトの影で』はチャーリー・チャップリン Charlie Chaplin の伝記ミュージカル。オーソドックスな演出といい、知られた役者を揃えているところといい、目指すはブロードウェイか。このキャストを集めてからの時間が短いのか、まだ細部はつめられていないが、全体的にはよくまとまっており、完成度は高い。ただ、チャップリンとアメリカとの相性の悪さをゴシップ・コラムニストのヘッダ・ホッパー Hedda Hopper の悪意に集約させたせいで、作品に厚みがなくなった。
 3“berg” in NYMF の 1つ『スモーキング・ブルームバーグ』は、近未来のニューヨークの過剰な管理社会を皮肉たっぷりに描くコメディで、感触は『ユーリンタウン URINETOWN』に近い。ドラマの眼目は禁煙問題だが、そこに人種問題が二重写しにされる。主人公はクリーニング店を営む韓国人女性。ブルームバーグ市長の厳しい禁煙政策のおかげで、衣類にタバコの臭いがつかなくなり需要が減る(オープニングを見逃しているので、この辺、推測)。いろいろあって、怒った彼女は、偶然知り合ったアラブ人の強力を得て、市長暗殺を企てる。てな話。やたらに狙撃班が出てきて、非西欧白人系の住民を相手に「文化の話をしたのは誰だ!?」と威嚇する等のブラックな表現も含め、全てを笑いにくるんでオチまで一気に持っていく勢いがあった。オフの規模での再上演を望む。
 3“berg”第 2弾『ウォーレンバーグ』は、第 2次世界大戦中にハンガリーでユダヤ人を救ったウォーレンバーグという実在の人物の話。セットのない舞台でナレーターが状況を説明しつつ役者が前に出て演じる“reading”だったが、ナチス相手の駆け引きには、かなりの緊迫感があり、スリリングだった。至極まっとうな展開で、ミュージカルとして面白いかどうかは疑問だが、力作ではある。
 やはり“reading”だった『チョコレートの木』は、不治の病で亡くなる少女の実話に基づく(らしい)物語。と言っても、お涙ちょうだいモノとは一線を画する。空想好きな彼女の日常は、いつも現実から夢の世界へとユーモラスに飛翔する。そんな彼女のペースに巻き込まれて、周りのみんなが少しずつ幸せな気持ちになる。死の場面も、夢の中で宇宙旅行に出た彼女が宇宙遊泳をしながらロケットから遠ざかっていく、という形で表現される。爽やかな気分になる小品。
 『エンジェルズ』は、天使たちと堕天使ルシファの戦いの物語。シンプルだが一応セットもあり、“reading”ではないものの、試作品の趣。と言うのも、おそらく仕上がる時には宙吊りも含めた大掛かりな舞台になるのだろうと思わせる“高級感”を醸しだしているからだ。しかしながら、“天使見習い”的な女の子が冒険の末ルシファを倒すことになる話は他愛なく、ルシファ及び側近の悪役 3人のキャラクター設定のみが面白いという点を含め、出来の悪いディズニーのアニメ的で、全くもの足りない。歌い上げ系の楽曲群も魅力に乏しかった。
 『マクガフィン?』は、ヘンな私立探偵と、ヘンな依頼人と、ヘンな証言者が、事件を解決するわけでもなく右往左往する、言ってみれば“脱力系”のミュージカル。こちらも、その日 4本目の深夜公演とあって、半ば朦朧。気がついたらオチもなく終わっていたような気が(笑)。
 『カンバーランド・ブルーズ』は、なんとグレートフル・デッド The Grateful Dead の楽曲によるストーリーのあるミュージカル。中心となるのはアルバム『WORKING MAN'S DEAD』『AMERICAN BEAUTY』のアコースティック・カントリー期の楽曲で、物語の舞台も中西部の田舎町。これも“reading”なので、セットはない。伴奏もピアノが 1台。そこにキャストが弾くギターが 3本加わるのが、楽曲の特徴を示している。町の実力者だった父親が亡くなった後の、生き方の違う 2人の息子の葛藤に、町の人々が絡む、という話は、登場人物のキャラクターが巧みに描かれていることもあって、面白い。デッドの楽曲も、彼ら自身の演奏で聴く時には気づかないほど正統トラディショナルな印象を受け、話と有機的に結びついていた。完成版を観たい作品の 1つ。
 やはり中西部を舞台にしているが、『デスペレイト・メジャーズ』は、シェイクスピアの『尺には尺を MEASURE FOR MEASURE』を下敷きにしているだけに、皮肉なコメディになっている。昨年冬にもシェイクスピアを西部劇に入れ込んだ『ローン・スター・ラヴ LONE STAR LOVE』がオフに登場したが、ちょっとした流行りなのか。ブロードウェイ級の役者 6人によるこの舞台は、オフ・ブロードウェイで今すぐ上演してもおかしくない作品として、すでに仕上がっていた。
 3“berg”第 3弾『グーテンベルク!』は、印刷機の発明で知られる同名人物が主人公のミュージカル……の出資者を募るための試演、というヒネりの入った設定。 2人しかいない出演者は、それぞれ楽曲作者と脚本家兼作詞家という役どころ。この 2人が、客席に向かって口上を述べつつ(つまり観客は出資候補者に見立てられている)自分たちの作品(つまりグーテンベルクのミュージカル)を演じてみせるのだが、その口上が、半ばミュージカルの現状批判、半ば愚痴になっているあたりが面白さの肝。グーテンベルクの印刷機発明譚も、自分たちのミュージカル観に沿って歴史的事実と違う風にどんどん修正されていく。一昨年のこのフェスティヴァルの参加作で、今年 2月にオフで上演された(この秋には再演もされていた)『「タイトル・オブ・ショウ」 [title of show]』と発想の根本が似ているが、あちらほどマニアックな小ネタを出してこない点、規模は小さいが間口は広い。楽曲と脚本さえあればミュージカルは出来る、という好見本。
 『子供のためのオイディプス』は、男 2人女 1人の劇団(?)が子供向けショウを演じるという設定。なので、観客は子供として扱われる(呼びかけに応えさせられる、とか)。そのショウのネタが『オイディプス』というあたりで想像がつくかと思うが、表向きは健全だが実はやさぐれた 3人組で、舞台裏がグシャグシャになっていくにつれて表舞台も過激に壊れていく。大笑いだ。女優は現実の脚のケガを押して出演。それが不自然に見えない役者と演出の臨機応変ぶりに舌を巻いた。
 『キングダム』は、ニューヨークに住むアフリカ系とラテン系の若者たちの、金網で囲まれた公園のバスケットボール・コートに閉じ込められたかのような出口のない厳しい現実を描いた、ニューヨリカン・ヒップホップ・ミュージカル。経済的、精神的に追いつめられる中で、彼らは人種を超えて手を組むのだが、最終的には破滅していく、というストーリーは救いがないが、ことさら悲劇的に描いたわけではないと思わせるところに迫真性がある。ギリギリな感じで歌われることの多い楽曲の中に時折含まれるラテン風味の甘さが魅力的だった。
 実在したネイティヴ・アメリカンのアスリートを主人公にしたのが、『戦士』。出自のハンディを背負いながら、アメリカン・フットボールのスーパースターになり、オリンピックにも出場して大活躍したものの、不遇の後半生を送ることになった男の生涯を、過剰に感情移入することなく描いていく。その冷徹な視線こそがアメリカだ、とでも言うような語り口に、『アサシンズ ASSASSINS』に通じるものを感じたが、傑作となるには、もう一歩の練り込みが必要か。マンドリン、フィドル、バンジョーの音色を生かしたカントリー調の楽曲は、物語に陰影を与えて効果的。
 『ランチ』はハイスクールを舞台にしているので、軽いミュージカル・コメディかと思いきや、集団生活に馴染めない連中が、常識的な連中に対して反旗を翻す展開に。学校の「キング&クイーン・コンテスト」の混乱がクライマックスという設定が『キャリー CARRIE』を思わせるが、もちろん超能力者は出てこない。ラフな感じの作りは狙いなのか? イマイチ不明。
 『河の終わり』は、グランド・キャニオンの河を下る冒険に出て行方不明になった夫婦の謎に迫るミステリー・ミュージカル。 1928年に実際に起こった事件で、無人のボートだけが発見されたという。面白いのは、夫婦役が 2組登場し、 2通りの推理が同時進行で展開される点。その 2つの推理の幅が、そのまま人の生き方の幅として表れる。謎解きそのものもスリリングだった。
 『恋ならいいのに』は、バーで出会って始まる 1組の男女の恋愛模様ミュージカル。よくあると言えば、よくある設定だが、必ずある水準のものを作るノウハウを持っていることに感心する。後ろに 2人用のソファ、手前に 2脚の椅子、というシンプルなセットを十全に生かして様々な場面を作る。うまいものだ。

 NYMF以外の 3本は、いずれもオフ・ブロードウェイ作品。
 『セヴン・ギターズ』は、 1996年春にブロードウェイに登場し、その年のトニー賞にも多部門でノミネートされた(助演男優賞で受賞)プレイだが、今回はミュージカル的趣きを加えての登場。とはいえ、ほとんどストレート・プレイだったが。 1948年のピッツバーグで暮らす黒人一家とその周辺の人たちのドラマは、時折陽気なエネルギーも弾けるが、全体には厳しいトーンで覆われる。殊に幕切れ前のエピソードはショッキング。細部まで作りこんだ不動のセットが素晴らしい。
 『シャウト!』は元々はロンドン産らしい。副題“The Mod Musical”の“mod”とは、modern を語源とし、 1960年代のロンドンを闊歩したオシャレな若者を指す言葉だ(複数形にして“モッズ”と呼ぶ)。彼らが好んだのが、ブラック・ミュージックと、それに準じる白人によるソウル、 R&B系の音楽。この舞台で使われているのも実際にその頃流行ったその範疇の楽曲で、 5人の女優たちが次々に歌い、そして踊るわけだが、 5人の個性の描き分けがうまく出来ていて、「シャウト!」という架空の雑誌を読んで彼女たちが時代の変化に呼応するという“ドラマ”もある。オフの演目としては充分に楽しめる出来だ。
 『ドラムストラック』はアフリカのパーカッション集団によるライヴ演奏。全ての客席に置かれてある胴の長い鼓(つづみ)のような太鼓を使って観客との交流を図るのが特徴だが、エネルギッシュな彼らの演奏そのものが眼目なのは『ブルーマン Blue Man Group TUBES』と同様。一夜のお楽しみとして、半額なら観て損はない。

 次回の渡米は 11月の予定。ブロードウェイの新作が出揃っているはず。

(10/18/2006)

Copyright ©2006 MIZUGUCHI‘Misoppa’Masahiro

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