Everybody's talking about her on Broadway 4/20/2006

[ゆけむり通信Vol.67]

4/18-4/24/2006


  • 4月18日20:00
    『アイ・ラヴ・ユー・ビコーズ I LOVE YOU BECAUSE』>
    VILLAGE THEATRE 158 Bleecker Street
  • 4月19日14:00
    『ジョージ・M・コーハン・トゥナイト GEORGE M. COHAN TONIGHT』
    IRISH REPERTORY THEATRE 132 West 22nd Street
  • 4月19日20:00
    『ターザン TARZAN』
    RICHARD RODGERS THEATRE 226 West 46th Street
  • 4月20日14:00
    『真夏の夜の夢 A MIDSUMMER NIGHT'S DREAM』
    PAPER MILL PLAYHOUSE Millburn, New Jersey
  • 4月20日20:00
    『ドロウジー・シャペロン THE DROWSY CHAPERONE』
    MARQUIS THEATRE 1535 Broadway
  • 4月21日20:00
    『三文オペラ THE THREEPENNY OPERA』
    STUDIO 54 254 West 54th Street
  • 4月22日14:00
    『ウェディング・シンガー THE WEDDING SINGER』
    AL HIRSCHFELD THEATRE 302 West 45th Street
  • 4月22日20:00
    『レスタット LESTAT』
    PALACE THEATRE 1564 Broadway
  • 4月23日11:00
    『サラ、不細工でノッポ SARAH, PLAIN AND TALL』
    LUCILLE LORTEL THEATRE 121 Christopher Street
  • 4月23日15:00
    『ホット・フィート HOT FEET』
    HILTON THEATRE 213 West 42nd Street
  • 4月23日20:00
    『ジャック・ブレルは今日もパリに生きて歌っている JACQUES BREL IS ALIVE AND WELL AND LIVING IN PARIS』
    ZIPPER THEATRE 336 West 37th Street
  • 4月24日20:00
    『素敵で個人的な場所 A FINE & PRIVATE PLACE』
    THEATRE AT ST. PETER'S 619 Lexington Avenue
* * * * * * * * * *

 前回の予告通り、出揃った 06- 07年シーズンの新作ブロードウェイ・ミュージカルを観るために(でもってゴールデン・ウィークが近づいて航空券が高くなる前に)ニューヨークへ飛んだ。
 週末に少し雨が降ったものの、天候はほぼ良好で、トラブルなく観劇を楽しんだ。……のだが、帰国便がキャンセルになり 1日延泊に。 1本余計に観られたものの(と言っても 24日の『レント』特別公演は観てません。なにしろ最低料金 1000ドルですから。もちろん、ジュリア・ロバーツ Julia Roberts 主演のストレート・プレイも観てません)、ちょっと疲れました。

 ともあれ、前回観劇以降、新たにブロードウェイに登場したミュージカルは 6本。いきなりだが、良否を分けてしまうと、うまくいっているのが、『ドロウジー・シャペロン』『三文オペラ』『ウェディング・シンガー』、そうでもないのが、『ターザン』『レスタット』『ホット・フィート』、ということになる(ちなみに、観劇前日に初日を迎えた『三文オペラ』以外は全てプレヴュー中)。

 うまくいっている方の筆頭は、意外にも『ウェディング・シンガー』。ごぞんじの通り他愛ないストーリーのヒット映画のミュージカル舞台化だが、 1985年のニュージャージー(ニューヨーク通勤圏の田舎町)という設定をうまく生かして、バブリーな“あの頃”を再現。細かな風俗描写で笑いをとりつつ、拝金主義への批判も匂わす。楽曲も、オリジナルではあるが“あの頃”のヒット曲をうまく引用して、まるで“ジューク・ボックス・ミュージカル”であるかのような印象を与えるというあたりに、『ヘアスプレイ HAIRSPRAY』と共通の戦略を見る。全く期待していなかったがゆえの高評価という面もあるし、“あの頃”を知らない世代にどう受け取られるかも不明だが、ハマると楽しい。
 『ドロウジー・シャペロン』は休憩なしの 2時間弱の舞台(ミュージカルはそのぐらいの長さがいい、と主人公が最初に言う)。にもかかわらず、達者な役者陣と作劇上の豊富なアイディアとで満足度の高い舞台に仕上げている。ミュージカル好きの主人公が 1920年代のオリジナル・キャスト・アルバム(LP 2枚組)を聴きながら想像する(架空の)古き佳きミュージカルがそのまま舞台上に現出する、という設定によって、 20年代的ミュージカルを作りたいという欲求と(同じ劇場で上演の記憶も新しい『モダン・ミリー THOROUGHTLY MODERN MILLIE』に通じる。それゆえのミリー役者サットン・フォスター Sutton Foster 起用か)、ブロードウェイの現状に対する批判的姿勢とを両立させたところがミソ。主人公が狂言回し的に発するツッコミが、劇中劇の 20年代的ルーティンに対する批評的視点を生み、それが同時に現代ミュージカルへの批評にもなっている、という構造だ。しかしながら最終的に、このマニアックな作りや上演時間の短さは、やはりオフのものでは? という疑問は残る。
 リヴァイヴァル『三文オペラ』は、やはりラウンダバウトの作ったヒット・リヴァイヴァル『キャバレー CABARET』でスターになったアラン・カミング Alan Cumming が主演。もとより因縁浅からぬ 2作だが、劇場も『キャバレー』が途中で引越した先で、演出家は違うが全体の暗く冷たい感触もよく似ている。舞台上は個性的な役者たちの演技合戦の様相を呈し(シンディ・ローパー Cindy Lauper の演技は心許ない)、非常に見応えがある。ではあるのだが、カーテンコールもないという突き放した演出は(終わると電光掲示板に「GO HOME」と出る)、ややカタルシスに欠け、不満が残る。
 前作『アイーダ AIDA』が興行的に必ずしも成功しなかったディズニーは、ブロードウェイ第 4弾『ターザン』で再びアニメーション映画の舞台化という安全策に立ち戻った。しかしながら、これは失敗作。そもそも“ターザンもの”の面白さの 1つは、ドラマとは別に、主人公の“超人”ぶりにあると思うのだが、この舞台では、主人公を助けてくれたゴリラの群れのゴリラたちが皆“超人”的アクロバットを披露する。でもって、観客の目にはゴリラたちも人間が演じていることは一目瞭然なので、ターザンがちっとも“超人”に思えない。じゃあドラマはどうかと言うと、人間に対する不信感からターザンに距離を置く父ゴリラとの葛藤を軸に据えるものの、ターザンがスネ者に見えるので、深まっていかない。おまけに、ワルモノがちゃっちいので、サスペンスもない。結果、フィル・コリンズ Phil Collins の楽曲も効果なく、意味なく装置に凝った“宙吊りミュージカル”になってしまった。
 『ライオン・キング THE LION KING』『アイーダ』に関わったエルトン・ジョン Elton John が前 2作で組んだティム・ライス Tim Rice ではなく長年の相棒バーニー・トウピン Bernie Taupin と楽曲を書き、『美女と野獣 BEAUTY AND THE BEAST』の脚本家と演出家が参加した“非”ディズニー作品『レスタット』。ネタは、最近ブロードウェイで 2本続けてハズしている吸血鬼もの。ただし、「ヴァンパイア年代記 THE VAMPIRE CHRONICLES」という原作を持つこの作品の吸血鬼は、飛ばないし、十字架も恐れない。彼らは不死身となって何百年にも生き続け、その孤独さに苦悶する。『レ・ミゼラブル LES MISERABLES』の線を狙ったと思われるが、哲学的な分、ストーリーやセリフが思わせぶりで退屈。息子に血を吸われて若返り、溌剌とした演技を見せるキャロリー・カーメロ Carolee Carmello は印象に残る。
 『ホット・フィート』はアース・ウィンド&ファイア Earth, Wind & Fire の楽曲を使ったミュージカルだが、他のいくつかの作品のストーリーやスタイルをゴチャ混ぜにした印象。急遽ダンス・カンパニーの主演の座に着いた少女が(『フォーティセカンド・ストリート 42ND STREET』)、悪魔の陰謀で(『くたばれ!ヤンキース DAMN YANKEES』)赤い靴を履き、踊り狂って死んでしまう(『レッド・シューズ RED SHOES』)。眼目は、そのダンス・カンパニーのレッスンや本番のダンス場面だが。その際に流れる楽曲の歌手はバンドの一員で姿は見えない(『ムーヴィン・アウト MOVIN' OUT』)。一方、ドラマ部分では登場人物が時折、アース・ウィンド&ファイアのヒット曲をとってつけたように歌う(『マ(ン)マ・ミーア! MAMMA MIA!』)。ダンスには一部観るべきところもあるが、ストーリーが陳腐で、演出もたどたどしく、長すぎるダンス部分がドラマと融合していない。早晩クローズするのでは?

 ブロードウェイ以外では、『真夏の夜の夢』をまず推しておきたい。オーソドックスなリヴァイヴァル上演の多いペイパーミル・プレイハウスには珍しい刺激的な演出(ティナ・ランドウ Tina Landau)が楽しい。リー(レアか?)・デラリア Lea DeLaria 他、キャストも充実。同劇場の高齢の観客と全くソリが合っていないのは不幸だが。 5月 21日まで。
 『アイ・ラヴ・ユー・ビコーズ』は、タイトルもよく似た『アイ・ラヴ・ユー、ユア・パーフェクト、ナウ・チェンジ I LOVE YOU, YOU'RE PERFECT, NOW CHANGE』(何か妙な邦題が付いてましたね)に内容も似た、よくあるタイプの少人数によるラヴ・コメディ・ミュージカル。ただし、こちらには一貫したストーリーがある。
 『ジョージ・M・コーハン・トゥナイト』は、(日本では映画『ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ YANKEE DOODLE DANDY』のモデルとして知られる)コーハンが自分の半生を振り返るという設定の 1人ミュージカル。いい楽曲が揃っているということもあるが、構成がうまく、役者(ジョン・ピーターソン Jon Peterson)のソング&ダンスも達者で、全く飽きない。
 02年初演のリヴァイヴァルらしい『サラ、不細工でノッポ』は、原作が児童小説というから本来は子供向けなのかもしれないが(午前公演だったこともあり、実際子供の観客も多かったが)、楽曲・脚本・演出・装置・照明・役者、全てにわたって非常に充実した出来。 1幕ものながら、描いている内容も濃い。どこかで、このタイトルを見かけたら、ぜひ。
 翻訳公演の観劇記にも書いたが、 93年に 25周年記念公演を観ている『ジャック・ブレルは今日もパリに生きて歌っている』。劇場の仕様のせいもあるが、その時よりも装置や演出が凝っていて、より舞台が充実して見えた。ロバート・クチオリ Robert Cuccioli 以下、役者もうまい。
 オマケの 1本となった『素敵で個人的な場所』の初演は 1989年@グッドスピード・オペラ・ハウス(一昨年キャスト・アルバムが出ている)。その時のカラス役(!)ガブリエル・バレ Gabriel Barre が、今回は同役と演出を担当。人間界と幽界の狭間になっている墓地を舞台に、幽界に旅立てない若い男女の幽霊と人間界に馴染めない若くない人間の男女とが不思議な交流をすることで自分の人生を振り返る、という、ファンタジックな設定のほろ苦い話。カラスは言葉を解す狂言回し役。楽曲もよく、演出が的確で、若くない人間界に馴染めない人間の 1人としては(笑)心に沁みた。

(5/1/2006)

Copyright ©2006 MIZUGUCHI‘Misoppa’Masahiro

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