Palace Theater after AIDA's gone. 11/18/2004

[ゆけむり通信Vol.60]

11/17-11/21/2004


 渡米前から体調が悪く、新装なって無料開放していた近代美術館(最近では MoMAって言う方が通りがいいのでしょうか)にも近寄ることすらせず、ただただ劇場にだけ通っていた今回のニューヨーク。振り返れば 5年連続になる 11月の滞在だが、秋のブロードウェイ新作を観ようと思うと、そうなってしまう、ということか。
 その“新作”とは――。前回(7月)プレヴュー開始が延びて見逃し、 [次に来るまで、やっているかどうか心配] と書いた『ドラキュラ』の他に、『ブルックリン』『太平洋序曲』『ラ・カージュ・オ・フォール LA CAGE AUX FOLLES』の計 4本。多い数ではないにもかかわらず、『ラ・カージュ・オ・フォール』は見送り。理由は、年を越しても続いてるだろうという予測の下に、他の限定公演を観ておこうと思ったからだ。
 それが、『シンデレラ』『ラーフ・ホール』
 その 2本も含め、今回の 10本中 4本はタイムアウト誌情報を元にスケジュールに組み入れた。いくらオンライン情報が充実してきても、演目選びについては現地に着いてタイムアウトを買うまでわからない、というのが最近の実感。『ラーフ・ホール』なんて、タイムアウトに“ミュージカル系マーク”が付いていなければ間違いなく観なかったところだ。土曜日に 4本観られたのもタイムアウトのおかげ。
 それにしてもだ、 Sutphin Blvd Archer Av 駅の売店よ、水曜日(タイムアウト発売日)に先週号を置いとくなよ。間違って買っちゃったじゃないか(笑)。

 『ドラキュラ』は、笑っちゃうぐらい仕掛けに凝った作品。でもコメディじゃないところが吸血鬼以上に怖い。楽曲が弱く、客の入りが悪いのも当然か。ロンドンでスタートすれば当たった(かもしれない)のに。
 『ブルックリン』は、『レント RENT』から『ウィキッド WICKED』へと続く“ロック風味熱唱系”(と命名したい)作品。2時間に満たない 1幕物であり、物足りなさがなくもないが、構成にアイディアがあり、好意的に観た。が、“ロック風味熱唱系”の流れは、時流への安易な迎合スレスレのところもあり、微妙。
 『太平洋序曲』は、もちろん宮本亜門版。ブロードウェイの劇場に合わせて、いくつかの改変があるが、基本的には新国立劇場版と同じ。ではあるが、原語(英語)版であり、演じるのは(アジア系とはいえ)もっぱらアメリカ人なので、別物として捉えた方がいい。目に見えて変わったのは、コシノ・ジュンコの衣装による色彩感。そして、精密な編曲・演奏による楽曲のよさが(日本語翻訳詞は極めて優れていたのだが、そのこととは別に)オリジナル英語詞の韻律と相まって、際立った。
 『ラーフ・ホール』は、リヴァイヴァル『アサシンズ』でも印象的だった(この人のソロ場面には歌はなかったけど)マリオ・キャントーン Mario Cantoneのワン・パースン・ショウ。実はスタンダップ・コミックの人で、しゃべりと同時に物マネも得意らしく、そちらが“ミュージカル系”に通じるわけだ。いや、うまいうまい。ジュディ・ガーランドからジム・モリソンまで、毒づいて、笑わせる。
 以上がブロードウェイ。
 『シー・ラヴズ・ミー』は、前回の『ガイズ・アンド・ドールズ GUYS AND DOLLS』同様、ニュージャージーはペイパーミル・プレイハウスの公演。ラウンダバウトによる 93- 94年シーズンのリヴァイヴァルに負けない仕上がりで、元がよく出来た作品であることを再認識。
 『シンデレラ』は、ロジャース&ハマースタインの TV版(近々、放映以来初めて再見の機会が生まれるとか)をシティ・オペラがレパートリー化したもの。で、今回は女優陣(?)が濃くて強力。魔法使いがアーサ・キット Eartha Kitt、継母がジョン・“リップシンカ”・エッパーソン John“Lypsinka”Epperson、義姉がアナ・ギャステイヤー Ana Gasteyer とリー・デラリア Lea DeLaria。大半の客は彼女(?)らを観に行ったと思しい。期待に応える怪演、いや快演だった。
 『みんな悪い!』は、現代版『ロッキー・ホラー・ショウ THE ROCKY HORROR SHOW』の趣き。主人公のカップルは、森の中の古城に行くのではなく、郊外に家を持つ。で、教祖のような男は、エコロジカルな企業の経営者として現れる。実話だと断って始まるが、それがウソではないと思われるあたりに、アメリカの怖さの一面がある。舞台の充実度はもうひとつか。
 『スラヴァズ・スノウショウ』は、ロシア出身のクラウン(道化師)のパフォーマンス。伝統的な芸と、例えば『ブルー・マン Blue Man TUBES』等にも通じる新しい感覚とが絶妙に絡まって、不思議な魅力のショウになっている。半端じゃない客いじりに戦々兢々しながら盛り上がる客席も面白い。
 『シンフォニー・ファンタスティーク』は、横 2メートル×縦 1.5メートルほどの小さな窓の向こうで展開される水中パフォーマンス。と言っても人間が現れるのではなく、人間の操作する様々な材質・形状の“物”たちが、屈折する水中の光線の中で、美しくも妖しくうごめく。公演後に見せてくれたバックステージには窓のサイズの 3倍はある水槽があり、ウェットスーツのパフォーマーたちが肩で息をしながら後片付けをしていた。
 『アンコールズ!バッシュ』は、何人かの楽曲作者を顕彰する“アンコールズ!”特別編。例によって出演者の顔ぶれが楽しい。詳しくは近々観劇記で。

 出演料以外には金のかからない有名人(ウーピー・ゴールドバーグ Whoopi Goldberg だのビリー・クリスタル Billy Crystal だの)のワン・パースン・ショウが、クリスマス・シーズンの観光客を見込んで大流行のブロードウェイ(『ラーフ・ホール』も、その 1つではある)を見ていると、ほんとに策が尽きてきた感じ。
 しかし、そんなブロードウェイの作品を呼んだり翻訳上演したりすることに躍起の日本のミュージカル界は、もっと寂しい。とはいえ、オリジナルでも、ミュージカルにする必然性の見当たらない四季のプロパガンダ・ミュージカル三部作みたいなのはノー・サンキューなのだが。

(11/25/2004)

* * * * * * * * * *

※◆マークはまだアップされていません。

Copyright ©2005 MIZUGUCHI‘Misoppa’Masahiro

previous/next

Let's go to BROADWAY

How to get TICKETS

[TITLE INDEX]


[HOME]