[ゆけむり通信Vol.39]

5/11/2000
『コンタクト CONTACT』


主人公の妄想が伝染?

 アウター・クリティク賞に続いてドラマ・デスク賞も制した『コンタクト』。オフでの限定公演から同じリンカーン・センター内のオン扱いの劇場に移ってロングラン態勢。トニー賞も射程圏内だが、はたして……?(トニー賞の予想はこちら

 多少広いが、構造的にはよく似た新たな劇場で観直しての感想は、根本的に前回と変わらない。
 面白い。細部に到るまでアイディアがあふれていて楽しい。ことに、擬音と役者の動きとのタイミングなど、実によく練れている。ダンサーたちの踊りも見事(中でも、第 2部を引っぱるカレン・ジエンバ Karen Ziemba のコミカルかつ正確なダンスは、彼女の技量とキャラクターなしには考えられない彼女ならではのもので、素晴らしい)。
 同時に、第 2幕=第 3部にやや難あり、という印象も同じ。ダンサーたちが踊っている間、バーテンダーと話していたり、思い悩んだりしている主人公の男(ボイド・ゲインズ Boyd Gaines)が(まあ、ドラマ的には意味がなくはないものの)、手持ち無沙汰な感じに見えてしまうのが惜しい。それに、踊れない男を演じるゲインズが本当に踊れないのが、やはりもどかしい。
 とは言え、全体の出来から見れば、それも些細なこと。作り手の野心とエンタテインメント性が高いレヴェルで融合した、優れた作品であることは間違いない。その意味で、今シーズンのトニー賞のミュージカル作品賞は、候補作の中では『コンタクト』しかないと思う。
 ご覧になるなら、お早めに。

 それはともかく、今回の観劇記を書くにあたって前回分を読み直したのだが、あ、これは訂正しなくちゃ、という箇所が 2つあった。

 1つは、第 2部のストーリーで、 [何かにつけてわめき立てる夫が騒ぎに巻き込まれ、撃ち殺されてしまう] という箇所。ここははっきり、妻(カレン・ジエンバ)が撃ち殺した、と書いておかなくてはならなかった。
 自分で撃ち殺す、という妄想が彼女のストレスの強さを表してるわけで、これは重要。その後の歓喜と絶望も、これがあればこそだ。

 もう 1つは……。これが今回の本題。
 第 3部の結末なのだが、こう書いた。

 [――と思ったところで我に返ると、そこは自室の床の上。今までの出来事は、自殺に失敗して気絶している間に見た妄想だったのだ。
 そこに隣室(階下?)から苦情の電話が入り、電話の主がやって来る。ドアを開けると、それはなんと、黄色いドレスの女そっくりの人。
 これでハッピー・エンドかと思いきや、その場面までも妄想で、実は男の自殺は成功していたのだった……。]

 [(階下?)] は間違いなく階下、なんてことはどうでもよくて(笑)、問題は最後の一文。この“再どんでん返し”が、実はなかったのだ。
 主人公が自殺(→自殺失敗→黄色いドレスの女をめぐる夜の彷徨)→自殺失敗→黄色いドレスの女にそっくりの女登場、で第 3部の話は終わってハッピーエンド。主人公の妄想はカッコの中の部分だけ。その後に出てくる黄色いドレスの女にそっくりの女は、妄想じゃなかった。
 確かに、観劇後のメモにも、 [結末はヨメるが、再び自殺シーンになるのがうまい] としか書いていない。なのに、なぜ、もう 1度ひっくり返ると思い込んだのか。主人公の妄想が伝染したとしか思えない(笑)。それとも、無意識の内にブロードウェイ的ハッピーエンドを拒否しようとしたのか……。
 と、僕の無意識を探ってもしょうがないので、この辺にしておきます(笑)。それとも、オフの時には、やっぱり暗い結末があったとか……。だから妄想だって(笑)。

(5/22/2000)

Copyright ©2000 Masahiro‘Misoppa’ Mizuguchi

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