[ゆけむり通信Vol.37]

1/4/2000
『スウィング! SWING!』


むしろ見どころは歌場面

 『スウィング!』は、文字通り“スウィング”をキーワードにしたレヴュー。
 昨今のアメリカでのウェスタン・スウィング熱に乗って登場したショウで、昨年の今頃の情報で音楽担当がスクァーレル・ナット・ジッパーズ Squirrel Nut Zippers だと言われていた(実際には、その録音音源を 1曲使用)『コンタクト CONTACT』と、スウィング・ダンスをメインにしたショウとして真っ向からぶつかるのではないか、という予想もあったが、実際には、『コンタクト』はドラマ性のあるダンス・パフォーマンスで、音楽もスウィングばかりというわけではなかった。
 一方、『スウィング!』は、予想通りにスウィング・ダンスを中心に据えたヴァラエティ豊かなダンス・ショウだったのだが、実のところ、見どころはむしろ、歌=シンギング・パフォーマンスにあった。

 まず言っておくと、この作品、“スウィング”という 1点だけでつながっている舞台なので、統一感には乏しい。したがって、例えば『フォッシー FOSSE』のようなアーティスティックな深みはない。
 ただし、個々のパフォーマンスの質は高いので、理屈抜きで楽しむには、いいショウだ。

 で、見どころの歌だが――。

 何と言っても、アン・ハンプトン・キャラウェイ Ann Hampton Callaway。彼女の、幅の広い、洗練された歌の芸に魅了される。
 最も印象に残るのは、こちらも達者なエヴァリット・ブラッドリー Everett Bradley とのスキャットによるかけ合いのデュエット「Bli-Blip」。レストランに入ったカップルが互いに会話を交わしながら、一方でウェイターにオーダーもするのだが、その歌詞の大半が意味のないスキャット。なのに、ちゃんとニュアンスが伝わる。しかも、歌として、そのスキャットが実にうまい(ここでチラッと使った「I Won't Dance」を後半やはりこの 2人のデュエットの中で再び使うという細かい演出もある)。
 トランペット(ダグラス・オーバハマー Douglas Oberhamer)とのデュエット「Bounce Me Brother (With a Solid Four)」で聴かせるトランペットの音声模写も見事。
 かと思えば、「I'll Be Seeing You」や「Blues in the Night」をデュオ・ダンスのバックで、味わい深く歌ってもみせる。
 元々楽曲作者としての経歴も持つ彼女は、そちらでも貢献していて、前述の「Bli-Blip」等にユーモラスな歌詞を書き足している他、共演のローラ・ベナンティ Laura Benanti のためにユニークなナンバーを書き下ろしてもいる。

 キャラウェイの書いた「Two and Four」でぎこちなく登場する、そのローラ・ベナンティ。
 もちろん、ぎこちなさは、彼女のちょっと堅い印象の外見を生かした演出で、アタマ打ちのリズムで歌う歌手というトロい役どころ。それを熟練ミュージシャンのケイシー・マッギール Casey MacGill に矯正されるという設定で、楽曲タイトルの「Two and Four」は、 2拍めと 4拍めでリズムをとるんだよ、という意味。その教授のかいあって、アッと言う間にノリがよくなり、最後には妖艶にさえなるというオチがつく。
 ベナンティには、キャラウェイのような芸域の広さはないが、「Cry Me a River」で見せるトロンボーン(スティーヴ・アーマー Steve Armour)との対話のようなデュエットなどは、ユーモラスで面白い。

 歌手は他に男性が 3人。前述したエヴァリット・ブラッドリー、ケイシー・マッギールと、マイケル・グルーバ Michael Gruber。

 キャラウェイと軽妙なデュエットを聴かせるエヴァリット・ブラッドリーは、キャラウェイ同様自ら曲も書く才人で、このショウにも共作者として 2曲を提供。プレイビルによると複数の楽器もこなすらしい。
 ダンスもイケる。

 ケイシー・マッギールは白人ながら、ちょっとキャブ・キャロウェイ Cab Calloway を連想されるような人で、自身の仕事ではそういうスタイルのジャンプ・ナンバーなんかをやってるんじゃないかなあ。おそらく“スウィング”が最も身に染みている人で、自作曲はじめいくつかの濃いナンバーで、ホンモノらしいイメージを漂わせる。

 マイケル・グルーバは、上の 2人に比べると至極まっとうな(笑)ミュージカル俳優。ベナンティと組んで美男美女の甘いデュオも聴かせるが、「Boogie Woogie Country」でのロック寄りのヴォーカルが印象に残る。

 以上の 3人に女性陣 2人を加えた 5人によるマンハッタン・トランスファーばりの“スウィング”するコーラスも、このショウの聴きどころの 1つだ。

 さて、じゃあダンスはどうなんだというと、うまいです。ただし、初めに言ったように、全体の統一感に乏しいので、印象が弱くなるのは否めない。
 けれども、それぞれのダンスにアイディアはあり、シーン 1つ 1つは面白い。また、ブロードウェイ周辺のダンサーに加えて、ウェスタン・スウィングのチャンピオン・カップルも登場して華麗な技を披露するなど、他のショウでは観られない楽しみもある。
 個人的には、リヴァイヴァル版『シカゴ CHICAGO』のオリジナル・キャストとして印象的だったケイトリン・カーター Caitlin Carter が、キャラウェイの歌う「Blues in the Night」をバックに濃厚なダンスを見せてくれたのがうれしかった。

 今シーズンの作品の中では話題になることの少ない『スウィング!』だが、いろんな方面から集められた才能のあるキャストや、質の高い演奏陣(ゴッサム・シティ・ゲイツ The Gotham City Gates)の作り出す舞台は、けっして通り一遍のありがちなレヴューにはなっていない。むしろ、ジャズを中心にした過去の名曲に交えて、前述のキャストたちやバンマスのジョナサン・スミス Jonathan Smith、演出のリン・テイラー・コルベット Lynne Taylor-Corbett らが書き下ろしたり手を加えたりした楽曲も用意するあたりに、懐かしモードではないところで勝負しようという姿勢も見える。
 もし、観る舞台に迷った時には、一見をオススメしたい。ブロードウェイのショウとしての品質の高さは保証します。

(5/31/2000)

Copyright ©2000 Masahiro‘Misoppa’ Mizuguchi

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