[ゆけむり通信Vol.32]

1/7/1999
『ブリング・イン・ダ・ノイズ、ブリング・イン・ダ・ファンク
BRING IN 'DA NOISE, BRING IN 'DA FUNK』


90年代の最重要作品

 タップ・ダンスの、と言うより、ミュージカルにおけるダンスの概念を塗り替えた画期的作品『ノイズ/ファンク』。 1月 10日に 2年 8か月半のロングランの幕を閉じることになったのだが、その最後の数週間、振付家兼オリジナル・キャストのサヴィオン・グローヴァー Savion Glover が舞台に戻ることになり、いきなりチケットが取りにくくなるという事態が起こった。
 しかし、そこは困った時の MiL 頼み。なんとかオーケストラ席を手に入れた僕は、熱心なファンたちの喚声と拍手が渦巻く客席で、 90年代の最重要ミュージカル作品に別れを告げることが出来た。

 どれだけ強調してもしすぎることはない、この作品の重要性については、前回の観劇記や、 [MY BACK STAGES] の『ジェリーズ・ラスト・ジャム JELLY'S LAST JAM』リポートで書いてきたので、ぜひ読んでみてください。
 極端な言い方に聞こえるかもしれないけれども、『ノイズ/ファンク』を観ずして『ノイズ/ファンク』以降のミュージカルのダンスについては語れない、と僕は思っている。

 しかし、ミュージカルやダンスについてなんらかの知識を持っている人ほど、この作品の成功を、“黒人系タップ”という“ジャンル”内の出来事として捉えて、その革新性に気づいていないように見えるのが残念だ。
 1) 作品のコンセプト、 2) 表現の形式・方法、 3) 表現者内部の文化的蓄積と表現欲求、の 3つが三位一体、緊密に結びついて、しかもなお現代性を充分に抱えた、時代の最先端のエンタテインメントとしても一級品に仕上がった。そんな奇跡のような舞台だったのだが。

 ともあれグローヴァーを中心にしたカンパニーは、やはりひと味違う迫力の舞台を見せてくれて大いに楽しんだのだが、自身も深く関わって大きな成功に導いた記念すべき作品に再び出演したグローヴァーは、相応の誇りを抱いて演じながらも、すでにその先へと心を移しているように見えた。
 “その先”――、いったいどのような展開を見せてくれるのか、期待せずにはいられない。

(5/4/1999)

Copyright ©1999 Masahiro‘Misoppa’ Mizuguchi

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