[ゆけむり通信Vol.32]

1/3/1999
『フットルース FOOTLOOSE』


青春 TV ドラマの味わい

 『シカゴ CHICAGO』に次ぐウォルター・ボビー Walter Bobbie の演出作で、間違いなくダンス・ミュージカルになることは予想できたが、題材が題材だけに、ほとんど期待していなかった。“その割には”――という条件付きでだが、けっこう楽しめた(もちろん『シカゴ』とは比較にならないが)。その最大の要因は、主演役者の魅力にある。

 元になった映画版の『フットルース』(監督/ハーバート・ロス Herbert Ross)は、パラマウントが 83年の『フラッシュダンス FLASHDANCE』に続いて翌 84年に公開、いくつかの使用楽曲と共にヒットした。

 シカゴからユタ州の田舎町に引っ越してきたダンス好きの主人公が、過激なほどに保守的な風土(モルモン教のイメージか)の中で、ダンス大会開催の自由を勝ち取る。――というストーリーは単純にして明快。
 宗教やモラルの問題もかなり単純化されていてわかりやすく、これほどピューリタン的な性格の町にしては、人種問題も、ないに等しい。
 同じようにアメリカの地方都市(と言っても、こっちは小さな町だが)を舞台にしていても、この作品には、『パレード PARADE』のようには、掘り下げて考えるべき問題があるわけではない。“ダンス禁止”の理由も、スモール・タウンの閉鎖性にではなく、最終的には禁止派の先頭に立つ聖職者の個人的心情の問題(彼の息子の死)に帰していて、ドラマのためにわざわざ設定した障害という印象を受ける。
 ここにあるのは、壁を乗り越えれば、その向こうにはハッピーエンドが待っている、という予定調和なのだ。

 しかし、そういうものだと割り切って観れば、青春 TV ドラマ的ではあるが、主要登場人物何人かのキャラクターが魅力的だし、演出のテンポもよく、ダンスにも新味があって、楽しく仕上がっている。

 特に、主人公レンを演じるカナダ出身のジェレミー・カシュニール Jeremy Kushnier がいい。
 美形でもマッチョでもないので第一印象はそれほどでもないのだが、舞台が進行するほどに、ナイーヴさをたたえた表情としなやかな身体の動きに魅せられ、感情移入してしまう。彼に感情移入するからこそ、この、あまり中身のない物語を最後まで観てしまう。
 もしかしたら『フットルース』は、彼のブロードウェイ・デビュー作として記憶されることになるのかもしれない。

 レンの友人で、コメディ・リリーフとなるウィラードを演じたトム・プロトキン Tom Plotkin も、客席を大いに沸かせて大活躍。
 さばけていて心(しん)の強いレンの母親を演じたキャサリン・コックス Catherine Cox や、憎まれ役の聖職者(ヒロインの父でもある)ショウ・ムーアを演じたスティーヴン・リー・アンダースン Stephen Lee Anderson らも達者で、その演技が登場人物に厚みを与えていたが、この日代役が立って残念ながら姿を観られなかったムーア夫人役ディー・ホッティ Dee Hoty も含めて、彼らにとっては役不足だったかも(でもまあ、彼らクラスが演じているからブロードウェイの舞台として成り立っているのだが)。
 ヒロイン、エイリエル・ムーア役のジェニファー・ローラ・トンプスン Jennifer Laura Thompson は、 OK だが僕には印象が薄かった。

 ステイシー・フランシス Stacy Francis、ロザリンド・ブラウン Rosalind Brown、キャシー・ディーチ Kathy Deitch というレンの級友“かしまし 3人娘”の役割が、音楽的には R&B コーラス隊になっているのは、ショウ場面で効果的。
 その中心となるフランシスは、『ストリート・コーナー・シンフォニー STREET CORNER SYMPHONY』でも歌の迫力で目立っていたが、時折クセのように見せる、目を細める妙な表情がマイナス。

 A・C・シウラ A.C.Ciulla の手がけた振付はアスレティック系だが、バスケット・ボールなどをうまく使った 1幕最後の体育館でのダンスは、躍動感がありヴァリエーションも豊富で、楽しかった。
 2幕最後のダンスも、最後だからといってやりすぎず、ビシッと終わって気持ちがいい。
 その辺は演出家の意図だろう。斬新さはないが、ウォルター・ボビー、さすがの手際のよさだ。

 実績のあるベテラン・キャストで脇を固め、ブロードウェイ経験のない新しい人材を、キャストのみならずスタッフにも起用したこのプロダクション。革新性からはほど遠いものの、僕はさわやかなものを感じて好感を持った。

(3/24/1999)

Copyright ©1999 Masahiro‘Misoppa’ Mizuguchi

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