[ゆけむり通信Vol.31]

10/3/1998
『シカゴ CHICAGO』


ビビ去りし後

 過去の同演目の観劇記は、 1 2 3 4 5、でお読みください。

 ついにビビ・ニューワース Bebe Neuwirth が去り、 4人のメイン・キャストからオリジナル・メンバーがいなくなった『シカゴ』。替わってヴェルマ役に就いたのは、ロンドン・オリジナル・キャストで同役をやったウテ・レンパー Ute Lemper。
 12月 13日オンエアの TBS の TV 特番で流された舞台映像が、彼女が出演中のロンドン版だったので、ご覧になった方も多いと思う。

 マレーネ・ディートリッヒ Marlene Dietrich を思わせるような波打つブロンド、くっきりとした顔立ち、蜘蛛のように長くしなやかな手足――ゴージャスと呼ぶにふさわしいルックス。プロダクションもその印象的な姿を生かして、ブロードウェイ沿いに出しているビルボードを彼女を大きくフィーチャーしたものに替えた。
 そのウテ・レンパー。舞台上では、ショートの黒髪のビビ・ニューワース( 2人ともカツラだが)と見た目こそ違うが、クールで皮肉な感じはそのまま。歌い方も、かなり近い。早い話、キャストは替わっても演出は変わっていないということだ。
 しかし、レンパーの方が、演技がやや派手。オーヴァーアクションとまでは行かない微妙なものだが、ニューワースを観慣れた目には気持ち野暮ったく映る。それがロンドンとのテイストの違いなのか、レンパーがもともと持っているものなのか、あるいはオリジナル・キャストに負けまいとする気負いから来るものなのかはわからない。
 が、それは些細なこと。総体として観れば、レンパーは、作品の顔になっていたニューワースの後を受けてヴェルマを見事に演じきっている。

 プレイビルによれば、レンパーは、 [クルト・ヴァイル Kurt Weill、マレーネ・ディートリッヒ(!)、スティーヴン・ソンダイム Stephen Sondheim、アーヴィング・バーリン Irving Berlin らのキャバレー・ソングズを中心にしたコンサートで世界的に知られている] らしいし、前述の TV番組のインタヴューでは『シカゴ』以前にはミュージカル経験がないかのような発言をしていたが、実は(これまたプレイビルによれば)、『ピーターパン PETER PAN』『キャバレー CABARET』『キャッツ CATS』『ブルー・エンジェル BLUE ANGEL』でそれぞれ主役を演じたという実績の持ち主でもある(『キャバレー』のサリー・ボウルズ役で得た最優秀女優賞がモリエール賞だと書いてあるから、これはフランス版だろう。てことは、その他も上演はロンドンではなくフランス、あるいはその周辺だったりするのかも。しかし、ピーター・パンを演じたって、いくつの時の話だ?)。
 彼女が見かけだけでないゴージャスさを備えていても、何の不思議もないわけだ。

 ところで、前回はヒントン・バトル Hinton Battle がスリリングに演じていた悪徳弁護士ビリー・フリン役と、ジョエル・グレイ Joel Grey が一時戻っていたエイモス・ハート役も、キャストが替わった。
 ビリー役のアラン・シックル Alan Thicke は、経歴を見ると主に TV で活躍してきた人らしい。タイプ的にはジェイムズ・ノートン James Naughton 系の伊達男だが、ロキシーを腹話術の人形に見立ててビリーが口八丁振りを発揮するナンバー「We Both Reached for the Gun」のクライマックス、ビリーが思いっきり長く声を延ばす部分を省略していたのは残念。そんなこともあってスケールダウンの印象を受けた。
 エイモスを演じたトム・マクガワン Tom McGowan はブロードウェイでもストレート・プレイ畑の人のよう。印象は、体型的に似通っていることもあって、グレイが一時復帰する前にグレイから同役を引き継いだアーニー・サベラ Ernie Sabella にかなり近かった。この役に限っては誰もグレイに及ばない。

 劇場窓口の近くに各国語による無料解説書を置いてあるのを発見。日本語版もあります。

(12/30/1998)

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Copyright ©1998 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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