[ゆけむり通信Vol.30]

6/14/1998
『ヘドウィグ・アンド・ジ・アングリー・インチ
HEDWIG AND THE ANGRY INCH』


ロック・ライヴ+1人芝居

 チェルシー地区の南側、ハドソン川にほど近いところにある小さなホテル、リヴァーヴュー。タイタニックの生き残りの船員を収容したとか、作家のメルヴィルがフロントで働いていたとかっていう逸話があるという(後者は噂の域を出ないようだが)。
 そこのボールルームを改造して出来た劇場で上演されているのが、『ヘドウィグ・アンド・ジ・アングリー・インチ』。アウター・クリティクス・サークル賞で最優秀オフ・ブロードウェイ・ミュージカルに選ばれたこともあって、 6月の段階では、なかなかチケットが手に入らないほどの人気を得ていた。

 なのに、正午『ウィンド・イン・ザ・ウィロウズ THE WIND IN THE WILLOWS』、午後 3時『ハイ・ソサエティ HIGH SOCIETY』と続いた日曜日変則 3連チャンのラスト、午後 7時公演。さすがに疲れが出て、途中何度かウトウトしてしまい、歌詞やセリフの聞き取りもままならず、あんまり内容を把握しきれないまま終わってしまった。残念。

 それと言うのも、心地よいロックのビート及び歌→しゃべり→歌→しゃべりの繰り返しという構成が、否応なく眠気を誘うのですよ。
 言ってみれば、歌付きの1人芝居なわけで、集中してセリフを聞く状態じゃない人間にとっては、ほとんど変化が感じられないのであります。

 場所は、カンザスのとあるトレイラー・パーク(トレイラー・ハウスの駐車地)。
 ここに住むヘドウィグは旧東ドイツからやって来た性転換者。だからドラッグクイーン(女装の同性愛者)と言うのは正確には当たらないが、まあでもドラッグクイーン。
 4人組のバンド、アングリー・インチを従えて繰り広げるライヴの中で、彼女は自分の過去と心情を語っていく。

 アングリー・インチ、ことチーター Cheater の演奏する楽曲が魅力的。作曲・作詞は、バンドのメンバー、スティーヴン・トラスク Stephen Trask。
 彼と、脚本を書きヘドウィグを演じるジョン・キャメロン・ミッチェル John Cameron Mitchell の出会いから、この作品は生まれたらしい。
 ミッチェルは『秘密の花園 THE SECRET GARDEN』(1991)に出ていた時の清廉な印象が鮮やかだっただけに、今回の変貌ぶりには驚いた。もっとも、繊細さを感じさせる点は共通していて、ヘドウィグの漂わせる濃密な孤独感は、彼自身が内包しているものなのかもしれないと思った。
 舞台には、もう1人、ヒゲをはやした強面のヴォーカリストが登場するが、そのハイトーンが非常に素晴らしい。また、注意していれば途中でわかるかと思うが、最後にちょっとしたドンデン返しがある。

 この舞台をご覧になって、もっと深く理解なさった方、作品の感想を送っていただければ幸いです。

(8/8/1998)

 ヘドウィグとアングリー・インチのニューヨーク・デビュー公演。そういう設定だったという情報を得ました。そう言えば、そんなこと言ってたような気もする(笑)。

(8/18/1998)

Copyright ©1998 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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