[ゆけむり通信Vol.30]

6/13/1998
『シカゴ CHICAGO』


バランスがとれた新キャスト

 過去の同演目の観劇記は、 1 2 3 4、でお読みください。

 前回、絵に描いたようにすれ違ったカレン・ジエンバ Karen Ziemba のロキシーと、代役で観られなかったヒントン・バトル Hinton Battle の悪徳弁護士ビリー・フリンが無事顔をそろえた『シカゴ』は、主演クラスが、アン・ラインキング Ann Reinking 降板以来の新たなバランスをようやく獲得して、ロングラン街道をまだまだ突き進みそうな気配。
 こうしてみると、やはり問題は、ラインキングの後釜メリル・ヘナー Marilu Henner が踊れなかったことにあったのだとわかる。

 3代目ロキシーとなったカレン・ジエンバは、踊りの実力は折紙付きだし、同役を演じていたツアー・カンパニーからのブロードウェイ入りだから、それなりのレヴェルでこなすだろうとは思っていたものの、彼女のファンとしては、ラインキングとのキャラクターの違いが実は心配だった(失礼、ミズ・ジエンバ!)。なにしろラインキングの存在感は尋常じゃなかったから。
 が、案ずるより産むが易し(って僕が産むわけじゃないが)。ジエンバはジエンバのロキシー像を作り上げて、ヴェルマ役ビビ・ニューワース Bebe Neuwirth にひけを取らない魅力を発揮していた。
 それに、このジエンバ=ニューワースのコンビネーション、初演のグウェン・ヴァードン Gwen Verdon (ロキシー)=チタ・リヴェラ Chita Rivera (ヴェルマ)と印象が近いんじゃないかなあ。最後のデュオ・ダンス・ナンバー2連発、「Nowadays」と「Hot Honey Rag」での調和の度合いなんて、ラインキングとニューワースが質的に違っていただけに(それはそれでスリリングだったが)、このコンビがこれまでで一番だと感じた。

 生存する男優でただ1人のトニー賞3回受賞者(ってプレイビルに書いてある)ヒントン・バトルも、強力だった前任者ジェイムズ・ノートン James Naughton とは違った魅力で大いに楽しませてくれた。
 見せ場も微妙に変わっていて、やはりダンス・シーンの比重が高くなっている。貫禄があるのはノートンと同じだが、体の切れはヒョウ並みで、アンサンブルを従えて動く時も一番シャープに見える。彼がオリジナル・キャストでもトニー(主演男優賞)を獲っただろうと思わせる素晴らしい出来だ。

 前回は違和感をぬぐい切れなかったロキシーの夫役アーニー・サベラ Ernie Sabella も、僕が慣れたせいもあるのだろうが、新たなキャラクターとして溶け込んできた。アンサンブルもずいぶん入れ替わってきているが、おそらく、このぐらいのキャスト水準、舞台のテンションで進んでいけば、しばらく『シカゴ』は安泰だろう。
 この顔ぶれなら、フルプライスを払ってでも、もう1、2度は観たいなあ。

(6/29/1998)

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Copyright ©1998 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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