[ゆけむり通信Vol.29]

3/21/1998
『シカゴ CHICAGO』


そしてビビだけが残った

 『シカゴ』の観劇記をここで初めてご覧になる方は、先に、 1 2 3、の順でお読みください。

 アン・ラインキング Ann Reinking がロキシー役を降りた後の空気の変化は前回書いたが、そこでツアー・カンパニーに参加中のカレン・ジエンバ Karen Ziemba のことにも触れた。
 そのジエンバが3代目ロキシーとして、メリル・ヘナー Marilu Henner に代わってブロードウェイに登場するというニュースが流れたのが確か2月。“交替の時期は3月のいつか”という曖昧なものだっただけに祈るような気持ちでニューヨークを訪れたが、残念ながら彼女の登板は僕がニューヨークを離れた翌日。絵に描いたようなすれ違いとなった。

 そんなわけで、やや気落ちしながら観た今回の舞台の変化は、ラインキングに続いて、ジェイムズ・ノートン James Naughton、ジョエル・グレイ Joel Grey が降板したこと。これでメインの4役の内、オリジナルで残るのはヴェルマ役ビビ・ニューワース Bebe Neuwirth だけとなった。
 ノートンに代わって悪徳弁護士ビリー・フリン役に就いたのがヒントン・バトル Hinton Battle。今生きている男優でただ1人トニー賞を3回受賞した人だそう。
 ジョエルと交替したのはアーニー・サベラ Ernie Sabella。映画版『ライオン・キング THE LION KING』でプンバの声をやった人だが、ブロードウェイでは、ジェリー・ザックス Jerry Zaks 演出のヒット・リヴァイヴァル『ガイズ・アンド・ドールズ GUYS AND DOLLS』『ローマで起こった奇妙な出来事 A FUNNY THING HAPPENED ON THE WAY TO THE FORUM』でエキセントリックなコメディ演技を見せていた。

 で、思うのは、このリヴァイヴァル『シカゴ』のような10年に1本ともいうべき舞台の場合、その充実度が非常に高い分、ちょっとしたバランスの乱れで並のヒット作程度の印象になってしまうということだ。それでも実は、けっこうよく出来た舞台なのだが、最初の凄みを知っていると物足りなさを感じてしまう。
 特に『シカゴ』は、役者に関しては、主役4人の個性と技が傑出していて、なおかつアンサンブルのダンサーたちのレヴェルも高いという、個人芸の集成のような舞台だったから、それを維持していくのは大変なことだろうとは思っていた。

 まあ、ラインキングが降りた時の変化からして、その後の展開は充分に予想できたことだが、その予想を超えて、今回、なんだかデコボコした落ち着かない印象を受けた。
 1つには、フリン役のヒントン・バトルが休演で代役だったこともあると思う。演じたルイス・ペレス Luis Perez は、ジェイムズ・ノートンをひと回り小さくした感じで、スマートだが、何を考えているのかわからないといった深みがない。
 ロキシーの夫役サベラは、グレイとは全く違ったタイプ。ショウストッパーとなるナンバー「Mister Cellophane」のイメージそのままに、グレイは風に揺れる柳のように頼りなげだったが、サベラはビヤ樽型の体型で、声も硬質。先入観なしに観ようと努力したが、違和感は埋められなかった。

 次回(来月)はいよいよカレン・ジエンバのロキシーで、ヒントン・バトルとも出会えるはず。もしかしたら、『シカゴ』を追いかけるのもここまでになるかもしれないが、とりあえず楽しみにしたい。

(5/16/1998)

この次の『シカゴ』観劇記はこちらを。

Copyright ©1998 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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