[ゆけむり通信Vol.27]

9/17/1997
『フォーエヴァー・タンゴ FOREVER TANGO』


競い合う踊り手たちの火花散る

 タンゴ・レヴューと聞いてすぐに思い出すのは、『タンゴ・アルゼンティーノ TANGO ARGENTINO』。85年10月にブロードウェイで幕を開け、198回の公演を行なっている。未見だが来日公演もあったと思う。
 芝邦夫「ブロードウェイ・ミュージカル事典」(劇書房)によれば、[12人のバンドと4人の歌手たちの前で、ブエノスアイレスから来たタンゴ・ダンサーたちが踊りまくる。(中略)キャバレーでみるフロア・ショーのような演出で、各ダンス・カップル(多くは夫婦)の得意な踊りやテクニックを披露する。]

 この『フォーエヴァー・タンゴ FOREVER TANGO』も基本的には同じ構成のショウで、やはりブエノスアイレス生まれ。イタリア、フランス、ドイツ、イギリス、アイルランド、トルコなどを回ってきている。

 バンドは11人。バンドネオン4人を中心に、ヴァイオリン2人、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、ピアノ、キーボードが各1人。
 男性歌手1人。
 ダンサーは男女のペアが8組。

 『タンゴ・アルゼンティーノ』のカンパニーにも加わっていたというバンドネオン奏者で音楽監督のリサンドロ・アドローヴァー Lisandro Adrover(今回は人名の読みが相当怪しいです)率いる、フォーエヴァー・タンゴ・オーケストラと名付けられたバンドが、まず素晴らしい。
 3、4曲に1曲ぐらいの割合でダンスのない演奏だけの場面があるのだが、全く飽きさせない。ソロイストのインプロヴィゼイションを適度に交え、情感豊かな演奏を繰り広げる。

 ダンスは、1、2幕の初めと終わりには、大きなバンドネオンの形をした装置を使ったりダンサーが全員登場したりして工夫が凝らされるが、基本的には、男女のカップルが自分たちの華麗な技を見せていく、というもの。
 自然、そこは競い合いになる。当然だろう、それぞれのカップルは独立したプロのダンサーとしてやっていて、その上でこのカンパニーに参加しているわけだから。
 同じ寄り合い所帯でも、『リヴァーダンス ザ・ショウ RIVERDANCE The Show』(ちょうど9月後半から10月半ばまでラジオシティでの公演が入っていた)のような異種格闘技なら、とりあえず食い合うということはあまりないと思うが、こちらは全員、全く同じ土俵に立っているわけだから、そのライヴァル意識たるや、ものすごいに違いない。ギャラの問題だってあるだろうし。
 なんてことを考えるだけで、気の弱い僕などはクラクラしてしまうが、その緊迫感が結果、舞台に火花を散らせ、このショウをより魅力的にしているのは間違いない。

 さて、その鎬(しのぎ)を削るカップル陣だが、それぞれに個性的な技を披露し、単調になることもなく魅せてしまうのは、さすが。
 中で一際鮮やかだったのが、セシリア・サイア&ジレルモ・メルロ Cecilia Saia & Guillermo Merlo の目にも留まらぬ足さばき。2人の足がこんがらがらないのが不思議なくらい。いや、ほんと。
 そして、クラウディア・メンドーザ&ルイス・カストロ Claudia Mendoza & Luis Castro のコミカルな味。サイレント映画を意識したとおぼしい誇張した動きで笑いを取りつつ、技術点も高いという熟練の技。バンドが入れるわざとらしい擬音のサポートも効果的だった。
 最後にミリアム・ラリシ&クラウディオ・ヴィラグラ Miriam Larici & Claudio Villagra が見せたアクロバティックな技の連発も、なかなかにすごかった(ちょっとフィギュア・スケートみたいだったけど)。

 1人だけの男性歌手は、ちょっとクサくて好みじゃなかったが、まあ悪くはないというところか。映画『ブロードウェイのダニー・ローズ BROADWAY DANNY ROSE』に出てくる歌手とイメージがダブってねえ。

 そんなわけでそれなりに満足したのだが、ブロードウェイの劇場で観るショウとして考えると、違和感を覚えるのも確か。おそらく、アメリカのフィルターが全くかかってないからだろう。
 構成・演出/ルイス・ブラヴォ Luis Bravo。
 これも限定公演で、98年1月4日まで。

 それにしても、アストラ・ピアソーラ Astor Piazzolla の作ったタンゴ・ミュージカル『ブエノスアイレスのマリア MARIA DE BUENOS AIRES』を舞台で観てみたいものだ。

(10/5/1997)


2/24/1999
来日公演(青山劇場)

 98年 1月 4日までと書いたブロードウェイ公演が、好評のためその後ロングランになった『フォーエヴァー・タンゴ』が、日本にやって来た。
 メンバーがほとんど同じなので、舞台の印象もほとんど同じ。違っていたのは、ブロードウェイで覚えた違和感が、東京では全くと言っていいほどなかったこと。
 タンゴが日本に馴染んでいるということもあるだろう。が、ブロードウェイに乗り込んでのタンゴ公演には、やはり演じる側に一種独特の緊張感があったのではないかという気もする。
 チケットの売れ行きがよかったのだろう、 5月に再来日公演があるようだ。見逃した方は、ぜひ。

 [それにしても……] と、前回の最後に書いたタンゴ・ミュージカル『ブエノスアイレスのマリア MARIA DE BUENOS AIRES』、コンサート形式ながら、この公演の 2日前に舞台で観ることが出来たというのも、不思議と言えば不思議。
 全くのコンサートだったんで、観劇記はアップしませんが(笑)。

(3/12/1999)

Copyright ©1997&1999 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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