[ゆけむり通信Vol.26]

6/12/1997
『シカゴ CHICAGO』


ラインキングに低温やけど

 やっぱり最高なのはアン・ラインキングAnn Reinking。彼女こそ、96-97年シーズン最優秀ミュージカル主演女優の名にふさわしい。

 3度目の『シカゴ』
 マニアックに言えば、シティ・センター(5/4/1996)、リチャード・ロジャース(1/9/1997)、そして今回のシューバート、3劇場にまたがってのオリジナル・キャスト・ニューヨーク公演“完全”制覇。

 ってな自慢をしたくなるほど『シカゴ』は素晴らしいが、3度観て確信したのはアン・ラインキングの重要性。
 ボブ・フォッシー Bob Fosse直伝のエロティックかつユーモラスな人間臭いダンスもさることながら、サイレント・コメディを思わせる誇張された動きと表情の巧みさ。そうしたことを、さりげなく見せてしまう肉体的鍛錬。

 観るたびに打ちのめされてきたが、これが見納めだと思うと感激もまたひとしおだ。

 そう、もうニューヨークではオリジナル・キャストは観られない。
 アン・ラインキングは、6月22日のマチネー公演を最後にブロードウェイを去った。

 その22日の公演を観た友人、矢崎由紀子が送ってくれたメールの一部を紹介する(俳優名の後の英語表記は筆者が追加)。

 [(前略)ラスト・パフォーマンスならではのお楽しみが盛りだくさんで、たとえば、「I Can't Do It Alone」のベルマのナンバーのあと、後半部分をニューワース Bebe Neuwirthとライキングが一緒に踊るなんてハプニングがありました。
 もちろん観客は大ウケ。で、その後、思わずニューワースと抱き合ったラインキングは芝居が続かなくなってしまい、困った彼女が笑い出すとニューワースもつられて笑うというナゴミの場面も。
 最後は、ニューワースがラインキングに花束を贈呈。
 「今日のパフォーマンスは、あなた(ラインキング)に捧げようと、私たちみんなでベストをつくしました。アンと同じステージをシェアできて、私はホントに光栄で した。彼女は今日で降板するけど、コリオグラファーとしては永遠です。ベベは、ずっとあなたに着いて行きます」みたいな送辞を述べました。
 ライキングの答辞もあるのかなと思ったけど、その前から、彼女は大喝采にウルウルしていたよう(席が席だけに表情まではよく見えなかった)で、ニューワースとジェームズ・ノートン James Naughtonにキスして、何度かディーバっぽくお辞儀をしただけでコメントはせず、最後はニューワースと肩を抱き合って中央の階段から去って行きました(カッコイイ!)。]

 トニー賞他で主演女優賞を獲ったニューワースとの比較で言えば、ニューワースは大熱演。矢崎の報告にある「I Can't Do It Alone」は彼女の長いソロ・ナンバーで、激しく踊り、歌って、息の乱れも感じさせない。言ってみればジーン・ケリー Gene kelly 型。
 一方、ラインキングの白眉は、その直前のやはり長いナンバー「Roxie」。客席に語りかけるように始まり、しだいに動きが付いてゆき、最後は男性ダンサーを従えてのダンスになるのだが、その盛り上がり方が時間をかけてジワジワジワジワ。低温やけどをする時のようで、気がついたら取り返しがつかないような痕が心に残っているという感じ。
 それをフレッド・アステア Fred Astaire型とは言わないが、やはりワン・アンド・オンリーと言いたくなるようなもので、直にすごみが見えない分、逆にすごい。

 ともあれ、ニューワースの言うように、演出のウォルター・ボビー Walter Bobbieと共に作り上げたラインキングの振付は、舞台の続く限り残っていくわけで、ぜひ、その目で素晴らしさを確かめてみてください。

 なお、オリジナル・キャストはロンドン初演に向けて続々と海を渡るらしい。あちらで押さえるというのも、ありでしょうか。
 あ、それから、映画化の話はもう伝わってますか。マドンナ主演だそうで(ラインキング、ニューワース、どちらの役だろう)。

(6/26/1997)

前回の『シカゴ』観劇記はこちら、この次の『シカゴ』観劇記はこちらを。

Copyright ©1997 Masahiro‘Misoppa’Mizuguchi

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